マツダの躍進を支える超巨大マシンとは？

　宇品工場では、昭和39（1964）年5月に製造されたプレス機がいまだ第一線で活躍しているそう。マツダにとって初の量産モデルである軽乗用車「R360クーペ」が発売されたのが昭和35（1960）年なので、マツダの乗用車の歴史にほぼまるっと関わり続けてる機械ということになります。そう考えると、ものすごい長寿だということがわかりますよね。

　大きな故障もなく52年間も生産の最前線で稼働し続けられているのは、専門の保全員が、油を差し、点検し、整備して、きっちりメンテナンスを行っているからこそ。プレス部品生産時には、マシンを稼働させながら行える給油、稼働点検、部品整備を、休業時には機械を停止させて点検、整備を行っています。保全員は、平日も休日も関係なくほぼ年中無休で、どんなに狭い場所でも、サウナのように蒸し暑い場所でも、油まみれになることを厭わずに直接点検を続けているそう。ベテランになると、聴診棒1本でモーターの異常を判別できるようになると言います。

　ところで、なぜ半世紀以上も前の機械を使い続けているんでしょう？　ブログには書いていなかったので、車体製造部の藤井さんにお聞きしました。

　「プレス機械に必要とされる能力は、主に加圧力、制度、速度などですが、50年以上前の機械であっても自動車のボディ部品をプレス加工するうえで必要十分な能力を維持し、発揮できているからです。新しい機械とくらべてまったく遜色ありません。それを可能にしているのは、ブログでも取り上げたプレス保全員によるメンテナンス。日々点検、月次点検、年次点検を怠らずに続けてきた賜物です」（藤井さん）

　ちなみに、宇品工場では全部で52台のプレス機械が稼働中で、最大のものは5200tにもなるのだとか。ブログで取り上げられていたのは、プレス加工の材料（鉄板およびアルミ）を切断する「ブランキングプレス」という機械で、フロントフェンダーやサイドフレーム、ボンネット、トランク、リフトゲートなど主に車両の外郭を構成するパーツを切断加工しているそうです。

　「ブログに掲載した機械のほかにも48年使っているプレス機械が30～40台あって、生産の主力となっています。加工しているパーツは、大物、中物部品ばかりではなく、フロアパネルやピラーインナー、ルーフレールなど、クルマの内側の中物～小物部品などもプレス加工しています」（車体製造部 藤井さん）

　なんと、50年選手は1台だけではなかったんですね！　きちんと手を入れて長く使い続けられてきたプレスマシンが、先進のクルマづくりの一翼を担っていたとは驚きました。

　保全員の方たちがどんなメンテナンスをしているのか、詳細はぜひマツダの公式ブログを読んでみてくださいね。