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更新日:2023.12.22 / 掲載日:2023.08.25

【メルセデス・ベンツ EQE SUV】電気SUVフルラインアップ最後のピースが登場

文●大音安弘 写真●ユニット・コンパス

 メルセデス・ベンツ日本は、2023年8月25日、都内にて、新たにメルセデス・ベンツのEVシリーズに加わったミッドサイズSUV「EQE SUV」を日本初披露し、同日より販売を開始したことを発表した。価格は、13,697,000円~1,707,000円となる。

 発表会には、メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長に加え、ドイツ本国より来日したメルセデス・ベンツ グループ社のオラ・ケレニウス会長が登壇。今後のメルセデス・ベンツブランドの戦略についても語った。

メルセデス・ベンツ グループ社のオラ・ケレニウス会長とメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長

 ミッドサイズSUV「EQE SUV」は、新たに開発された上級EV向けプラットフォーム「EVA2」を採用した4番目のモデルで、その名が示すようにEクラス級EVセダン「EQE SUV」のクロスオーバーSUVだ。モデルラインは、標準車の「EQE 350 4MATIC SUV」と高性能仕様となる「EQE 53 4MATIC+ SUV」の2タイプを設定。いずれも導入記念特別仕様車「Launch Edition」で、全車が右ハンドル仕様となる。

EQE SUV

 エクステリアデザインは、メルセデス・ベンツEV「EQ」モデル共通のブラックパネルにスリーポインテッドスターを散りばめた「スターパターングリル」を中心とした先進的なフロントマスクを採用し、同じプラットフォームを採用する最上位のSクラス級となる7人乗りラージサイズSUV「EQS SUV」との共通性も高いエクステリアデザインが与えられているが、こちらは5人乗りのミッドサイズSUVのため、全長とホイールベースが短い。そのボディサイズの違いをスタイルに反映するように、躍動感ある走りを意識したデザインとなっているのが特徴だ。

EQE SUV

 ボディサイズは、全長4880mm×全幅2030mm×全高1670mmとミッドサイズとしても大きめ。さらにEVの構造的メリットを活かしたショートオーバーハングが生む3030mmのロングホイールベースを持つ。そのサイズの大きさを忘れさせる街中でも扱いやすい取り回し性の実現のために、最大10度の切れ角を持つ後輪操舵機能「リヤアクスルステアリング」を全車に標準化。その結果、コンパクトカーに迫る最小回転半径4.8mを実現しているという。

 ロングホイールベースを活かしたキャビンは、前後共に十分な広さを確保。コクピットデザインもEVらしい個性的なデザインに仕上げられており、フラットなダッシュボードデザインの上に、コンパクトなメーターパネルと縦型大画面インフォテインメントモニターを配置。装備機能の多くをタッチスクリーン操作とし、メカスイッチ類は最小限に留められている。さらにE53には、ダッシュボード全面をガラスパネルとし、3つの高精細液晶パネルを備える「MBUXハイパースクリーン」が装備され、未来のクルマを一足先に手にしたような先進的なデジタルコクピットが提供される。SUVとして重要なラゲッジスペースもしっかりと確保されており、標準で520L~最大1675Lまで拡大可能だ。

 電動パワートレインは、全車2モーターのAWDを採用。現時点での日本仕様のスペックが公表されているのは、EQE350のみだが、標準のエントリーグレードといえど、最高出力292ps(215kW)、最大トルク765Nmとかなりパワフルだ。フロア下に収めた駆動用リチウムイオンバッテリーは、89kWhの大容量を搭載し、航続距離528km(WLTCモード)を実現している。充電システムは、200V普通充電で6kWまで、CHAdeMO式急速充電は150kWまで対応する。充電時間については、普通充電の場合、6kW出力の普通充電器で、電池残量10%から満充電まで、約17時間。急速充電では、電池残量10%~80%まで回復させた場合、50kW出力で102分、90kW出力で54分、150kW出力で49分という社内データが公表された。

 またEVの高効率化のための技術として、SUVでありながら、Cd値0.25という優れた空力特性を始め、走行状況に応じて、前輪とフロントモーターを切り離すことで前輪の抵抗を減らすディスコネクトユニットや熱管理の効率化を図るためのヒートポンプなど様々な工夫によりエネルギーの有効活用を行っている。

 日本仕様では、給電を行えるV2LとV2Hに対応。これらの機能により、自宅の太陽光発電の電気を車載電池に蓄え、夜間の電源としての活用や、電源設備の無いアウトドアシーンなどで家電を利用することが可能となる。大容量バッテリーを搭載するのため、災害時などの非常用電源としても心強い存在となる。

 プレゼンテーションでメルセデス・ベンツ日本の上野社長は、「世界でメルセデス・ベンツのEV販売は、今年の第2四半期では、前年の2倍を超える伸びを見せている。日本でも、21年では1,000台だったが、22年は2000台まで成長。既に今年は、昨年を上回るペースでの伸びを見せており、通年では前年同様の伸びとなるのではないかと期待する」と、EV販売への前向きな姿勢をアピールした。

 メルセデス・ベンツとしても、カーボンニュートラル社会の実現のために、EVシフトを図っていく方針で、2022年には生産工程におけるカーボンニュートラルを実現。2030年には、市場が許す限り100%電気自動車化を目標とする。そして、2039年には、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラルの実現を目指す。メルセデス・ベンツ グループ社のケレニウス会長は、乗用車の電動化をBEVに集中させる理由について、「カーボンニュートラルな車の実現には、様々な選択肢があるが、乗用車に関してはBEVが、最も現実的な選択だ。そのために、充電インフラが重要で、自動車メーカーも一緒に取り組む必要がある。メルセデス・ベンツも、充電インフラの拡大に取り組んでいき、日本でも独自の急速充電サービスを検討している。ただ全ての人が快適に使える環境が整うまでは、プラグインハイブリッド車の存在も重要。使う人がベストな選択をすればよい。ただ将来的にはBEVに集約していく。」とメルセデス・ベンツとしては、乗用車はBEVがベストという考えを示した。

 EQE SUVの投入で、EVシフトを強調する他ブランドに先駆けて、BEVのSUVフルラインアップの構築を実現させたメルセデス・ベンツ。顧客のブランドへの信頼の高さを武器に、販売車両のBEV比率を加速的に高めることに挑んでいくようだ。

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大音安弘(おおと やすひろ)

ライタープロフィール

大音安弘(おおと やすひろ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。

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