車のニュース
更新日:2024.04.19 / 掲載日:2024.04.01

日比谷のレクサスカフェでモリゾウのもてなし

文●池田直渡 写真●レクサス、池田直渡

 4月18日、トヨタは東京ミッドタウン日比谷のレクサスミーツをリニューアルオープンした。

 これまでレクサス車を展示し、そのコレクションなどが買えるカフェとして運営されてきたレクサスミーツは新しいコンセプトの下、サービスも内装も大幅に変更してオープンした。

 日比谷という東京でもハイエンドの立地でありながらゆったりしたスペースと一流の椅子やテーブルを配したカフェでは、とうぜん食事やお茶が楽しめるのだが、全てがなかなかに贅沢。そしてそこは世界のトヨタ。飲食ごときで儲けるつもりがないので、この界隈ではちょっと考えられないコスパでおもてなしを楽しめる。

 コンセプトは日本、あるいは「和」。インテリアにはエリアごとに日本各地にちなんだ装飾やアート、書籍や写真が置かれる。トヨタは従来から「道がクルマを鍛える」と主張してきたわけだが、その道を作り上げるのはそれぞれ各地の自然や文化である。

 とすれば、我が国発祥のレクサスのプレミアムとは何かを考えていった時、そのたどり着く先は、日本の各地方の道である。だから新しいレクサスミーツは、レクサスの故郷である日本の地方それぞれを感じ、味わう場所として新たなスタートを切ったのだ。

ブランド体験を充実させるべくあえて車両の展示をやめ、展示品や飲食物でレクサスの世界観を表現している

 まずクルマの展示を止めた。商売なのでクルマを売る。それはそうなのだが、そんなにストレートなやり方ははしたない。別にここでクルマを売っていたわけではないが、だったらこれ見よがしに飾る意味もない。それは全国のレクサスディーラーがすべき仕事である。その結果、従来70席ほどだった客席をゆったりしたスペース使いのまま110席に増やした。

 その代わり、従来から行なっていた試乗車の貸し出し時間を最大7時間まで延長した。11:00のオープンにぶらりと行って、受付カウンターで相談しながら、どれか気に入ったレクサス車を借り出し、ひとっ走り箱根でも房総でも好きな場所を巡って帰ってきてから、カフェで晩御飯という芸当もできてしまう。もちろんあらかじめ乗りたい車種が決まっているなら、webサイトから試乗車の予約も可能だ。

レクサスミーツ日比谷では試乗も受け付けている。リニューアルで貸し出し時間を7時間まで拡大した

 飾られる写真1枚まで含めた内装の全て、そして食べ物も飲み物も全て、マスタードライバーモリゾウ氏がチェックし、いくつかについてはダメ出し、リテイクもしている。そういう意味では、レクサスミーツのおもてなしの全てはモリゾウ氏のもてなしである。

 「銀鱈と旬の根菜 酒粕西京焼き定食」が1500円。「日比谷 五街道団子」は5本セットが1300円、3本だと800円。写真の右から東海道の抹茶餡、中山道の栗餡、日光街道のいちご餡、甲州街道の赤ワイン餡、奥州街道のずんだ餡とそれぞれの道にちなんだご当地の味が楽しめる。

提供されるメニューは日本各地から選りすぐられたもの。レクサスが日本発のブランドであることを表現した

 どちらも試食したが納得の味だった。西京焼きは甘辛の味噌がきっちり効いた濃いめの味付けでご飯がすすむ。付け合わせのごぼうの素揚げは薄味で素朴な土の香りが豊かに漂う。団子はどれも美味いが、特にいちごとワインは独特のナチュラル感があって、人工的な味とは一線を画した手作りならではの風味が魅力的だった。土地の名産の味。それは道で伝えられた地方文化の味と言っても良いかもしれない。

 それと忘れてはならないのがかき氷。モリゾウ氏はコロナの期間、蒲郡の研修センターに籠って、早朝から膨大な仕事をこなしつつ、午後になるとダートコースでGRヤリスのラリー車をしごき倒す生活を送っていたと聞くが、その蒲郡で出会ったのが、秀月堂のかき氷。今回その秀月堂に監修を依頼して、モリゾウ氏お気に入りのかき氷をメニューに加えた。

 当節の高級かき氷についてはいまさら説明されなくともご存知の方も多いと思うが、例えばいちごやレモンのシロップは本物の果実を使って作る手間のかかったもの。もちろん、子供の頃縁日や海の家で食べたかき氷とは全然違う。吟味した素材に手間暇をかかた分お高くて、今や相場は2000円超えも珍しくない中、儲ける気の無いレクサスミーツでは1000円で提供。写真は季節限定の桜かき氷。トッピングにかかった桜塩が良いアクセントで飽きずに楽しめる。

 そのほか「塩角煮と旬野菜のせいろ蒸し定食」や軽食のサンドイッチ、小林可夢偉監修の水出しコーヒー、どら焼きなど魅力的なメニューが並ぶ。

 さて、こうしてレクサスの原点を見つめ直し、モリゾウ氏が吟味したもてなしで生まれ変わったレクサスミーツ。しかしながら、肝心のレクサス車がもう一歩のところで抜け切っていない。新たなコンセプトのもてなしに恥じぬ製品になって欲しい。ニッポンの道という原点に戻って、本当の意味で日本ならではのプレミアムになれるかどうかは、もう少し見守りたいと思う。

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池田直渡(いけだ なおと)

ライタープロフィール

池田直渡(いけだ なおと)

1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(『カー・マガジン』『オートメンテナンス』『オートカー・ジャパン』)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。

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