輸入車
更新日:2020.12.24 / 掲載日:2020.08.05

AWD特集/ハイパフォーマンスモデルがAWDにこだわる理由

VISUAL MODEL : PORSCHE 911 CARRERA 4S

写真●内藤敬仁
(掲載されている内容はグーワールド本誌2020年9月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


ハイパフォーマンスカーの常識が変わりつつある。エンジンで生み出されたパワーをいかに効率よく、余すことなく路面へと伝え、なおかつドライビングプレジャーをドライバーに味わわせるための最適解。そのメソッドに変化が生じているのだ。従来では一部の特殊なモデル向けだった高度なAWDシステムを、高性能モデルが続々と採用。もはや、ハイパフォーマンスモデルのトップグレードは、AWDで占められている。今回の特集では、ハイパフォーマンスモデルがなぜAWDをこだわるのか、各ジャンルの最新モデルを通じて、その理由をひも解いていく。

気になる最新モデルでみる圧倒的なポテンシャル

文●石井昌道 写真●内藤敬仁、澤田和久、ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


いつの時代でも性能面で頂点を極めるのはスポーツカー。その最新モデルが続々とAWDを採用している。彼らは何を求めAWD化の道を選んだのか。歴史的背景を交えてその理由を解説する。

AWDが高性能モデルの主役に躍り出た理由

 いまやハイパフォーマンスカーの大半がAWDシステムを採用するようになってきている。直噴ターボなどのテクノロジーがパワーウォーズを加速させ、FFやFR、MRといった2WDでは路面へ上手にパワーを伝えきることができないからだ。
 たとえばメルセデスAMGのA45 Sはたった2Lながら最高出力421馬力、最大トルク51kgm。2009年まで販売されていたフェラーリF430のV8 4.3Lが490馬力、47.4kgmだったのだから、10年ちょっとの間でCセグメントのホットハッチがスーパースポーツと肩を並べるまでになったということでもある。
 ハイパフォーマンスカーとAWDの組み合わせで一躍脚光を浴びたのが1980年に発売されたアウディのクワトロ。フェルディナント・ポルシェの孫であり、天才的なエンジニア兼経営者でもあったフェルディナント・ピエヒが、ポルシェからアウディに移籍してきて最初に作り上げたクワトロは、オフロード主眼のパートタイム式が一般的だった当時、さまざまな路面に対応するようセンターデフを備えたフルタイム式という画期的なシステムを開発。WRCで大活躍してAWDスポーツ時代を切り開いたパイオニアだ。
 ピエヒというパイプによってポルシェとアウディはテクノロジーで密接な関係にあったと噂されているが、ポルシェは959でAWDを世に出している。1986年に限定発売された959は、外観こそ911と似ているものの、コンピューター制御を積極的に取り入れた可変トルクスプリット式で当時としては最先端の技術だった。日本では1989年発売の日産GTーRがハイパフォーマンスAWDでレースシーンを席巻したが、959を研究して開発されたというのは有名な話だ。
 959は特殊なモデルだったが、その技術をフィードバックしたのが964型911で初登場したカレラ4。RRはフロントが軽いため、直進安定性が悪く、コーナーでの限界も低くスライドしたときのコントロール性に難があるが、それを解決するのがAWD。ポルシェはそれこそが進むべき道だとして964型の発売当時はカレラ4のみだったが、コアなファンはRRを望むので1年後にはカレラ2も追加されている。あれから5世代を経た992型の現行911でもカレラ4とRRがラインアップされているが、エンジニアリング的な本懐はカレラ4だといっていいだろう。現代では前後だけではなく左右でも駆動力配分を制御するトルクベクタリングも採用。4輪を完璧に電子制御することで運動性能とドライバビリティ、安全性を究極まで高めるのがハイパフォーマンスカーの進化の形であり、その点からもAWDは必須といえるのである。
 BMWはFRスポーツの代名詞でもあるが、近年ではxDriveと呼ぶAWDを積極的に取り入れている。ただし、BMWは駆け抜ける歓びはFRという駆動方式によるところも多かったと認識しているからか、M8やM5などのFRベースAWDでは、ドライビングモードをスポーツにすればかなりFRよりのAWDとなり、完全にAWDオフとしたFRにすることも可能となっている。

Profile
モータージャーナリスト

石井昌道
ジャンルを問わず幅広い執筆活動を展開しているモータージャーナリスト。近年では、自動運転の分野で政府の戦略的イノベーション創造にも参画する。

icon ポルシェ 911 CARRERA 4S

ポルシェのアイコンがフルモデルチェンジ
 911らしさを受け継ぎながらも、時代が求める運転支援技術とインフォテインメントシステムを採用した新型911。特にインテリアは大型ディスプレイを採用したことで一気に現代的な印象となった。AWDに加えてウエット路面での安定性を向上させるモードを追加するなど、全天候型スポーツカーとして進化した。

ポルシェ 911 カレラ 4S(8速AT・PDK) ●全長×全幅×全高:4519×1852×1300mm ●車両重量:1640kg ●エンジン:水平対向6DOHCツインターボ ●排気量:2981cc ●最高出力:450ps/6500rpm ●最大トルク:54.0kgm/2300-5000rpm ●新車価格帯:1835万円(911 カレラ 4S)

時代を超えたアイコンとしての911デザインを受け継ぎながら、現代的にアップデート。ボディは剛性を鍛えながらさらに軽量化を進めた。後輪操舵による安定性と俊敏性の両立も見どころ。

icon BMW M8 コンペティション

Mの頂点に君臨するレース直系の高性能車
 市販車よりも先にレースカーが登場した8シリーズ。そのMモデルは、生息域をよりサーキットに近づけた辛口バージョン。コンペティションモデルではエンジンチューニングはさらに過激になり、4.4LV8ツインターボエンジンは625馬力を発生させる。Mモデルのフラッグシップにふさわしい、超一級の性能の持ち主。

BMW M8 コンペティション(8速AT) ●全長×全幅×全高:4870×1905×1360mm ●車両重量:1910kg ●エンジン:V8DOHCツインターボ ●排気量:4394cc ●最高出力:625ps/6000rpm ●最大トルク:76.5kgm/1800-5860rpm ●新車価格帯:2241万円~2444万円(M8クーペ全グレード)

クロスバンクエキゾーストマニホールドの採用などにより最高出力は625馬力を発揮。シャシー性能も大幅に引き締められている。

[M xDrive]安心してアクセルを踏めるスマートなM xDrive

 アクティブディファレンシャルによって4輪に駆動力を配分するM xDrive。たとえばコーナーのターンインではリアがFRらしくスライドを許しながらも、アクセルを踏み込むとフロントにトルクが伝わり安定性を保ちつつ脱出していく。ドリフトを楽しめるFRモードも存在する。

[進化するAWD制御]高い走りの資質を備えたFF系AWDモデルたち

 ホットハッチなどFFアーキテクチャーのモデルでもAWDは増えている。FRやMRに比較してFFのパワー上限は低く、概ね300馬力程度。メガーヌRSあたりが限界だろう。それ以上のパフォーマンスを得るにはAWD化はマストなのだ。
 ハイパフォーマンスAWDの祖であるアウディ クワトロもFFアーキテクチャーであり、じつは運動性能やドライバビリティからみて、FRやMRがベースのモデルよりも利にかなっている。後ろから押し出すよりも前から引っ張るほうが車体が安定するのは当然で、高速道路での直進性などは圧倒的に有利。コーナリングでも、立ち上がりでアクセルを踏み込んでいくときに、RWDはパワーをかけすぎるとスライドして姿勢を崩すが、FWDはそうならず、上手にトラクションをかけて前から引っ張らせれば、旋回力を増しながら強力に加速していける。アクセル全開率を高くできるのだ。それぞれをAWD化すると似た特性は残る。フロントタイヤ主体で加速するのか、リアタイヤ主体で加速するのかでは、前者が有利なのだ。たとえばFRベースAWDの日産GTーRも、チューニングで速くしようとすると、なるべくフロントの駆動配分を増やしたほうが手っ取り早いことからも、それはわかる。
 だから、ここに紹介しているFFベースAWDのホットハッチたちは、Cセグメントと比較的にコンパクトながらポテンシャルは末恐ろしいほど。特にウエットなど滑りやすい路面になってくると真価が発揮される。M135i xDriveは「とうとう1シリーズもFF化されたか」とファンの嘆き声も聞かれそうだが、身内で格上のM2とウエットのサーキットやワインディングで戦ったら、簡単に勝ってしまうだろう。トラクションコントロールの進化形といえるARBはパワーアンダーステアを巧みに抑え込み、ステアリングフィールにも好印象をもたらす。電子制御でFFベースAWDの悪癖も克服しているのだ。FFスポーツの代名詞ともいえるMINIも、最速のJCWはALL4がもはや必須であり、M135i xDriveと共通のユニットで武装。史上最速のMINIとなっている。
 もともとエンジンチューナーだったAMGが手がけるモデルはエンジン性能がずば抜けているが、これを堪能させるのが4MATIC。AMGトルクコントロールはリアディファレンシャルで左右のトルク配分を可変させるので、FFではまだアクセルを踏み込めない状況でも、踏むことで旋回力を増していく。FFやFR、MRなどでは味わえない痛快なハンドリングなのだ。
 FFベースAWDはハイパフォーマンスカーとして理にかなっていると前述したが、祖であるアウディのクワトロでもDセグメント以上はエンジンが縦置きであり、シンメトリーという点でさらに上をいく。RS4はもちろん、さらに強力なエンジンを搭載するRS6もある。他のFFベースAWDは横置きのためあまり大きなエンジンは載せられないが、クワトロは別格だ。40年前に生まれたハイパフォーマンスAWDの祖は、現代でも最強のアーキテクチャーとして君臨しているのである。

icon メルセデスAMG A 35 4MATIC エディション1

すべてが洗練された大人のホットハッチ
 世界一パワフルな2Lエンジンを搭載するA 45 S 4MATIC+に注目が集まるが、運転の楽しさでいえばこちらのA 35も負けてはいない。306馬力のパワーを伝えるAWDシステムは、100対0~50対50までシームレスに駆動力を可変配分。0-100km/h加速4.7秒もの俊足を確実に路面へと伝えてくれる。

メルセデスAMG A 35 4MATIC エディション1(7速AT・7G-DCT) ●全長×全幅×全高:4436×1797×1405mm ●車両重量:1570kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●排気量:1991cc ●最高出力:306ps/5800rpm ●最大トルク:40.8kgm/3000-4000rpm ●新車価格帯:634万円~750万円(A 35 4MATIC全グレード)

icon アウディ RS 4 アバント

最新版クワトロの採用で最適に駆動力を配分
 トップスピードは280km/h(リミッター制御)にも達するハイパフォーマンスワゴン。高級ワゴンとしての日常的な扱いやすさとスポーツカー級の高性能が両立したドリームカー。2.9LV6ツインターボが生み出す450馬力を路面に伝える伝統のクワトロは、各ホイールに個別に駆動力を配分する最新式のシステムを採用。

アウディ RS4 アバント(8速AT) ●全長×全幅×全高:4780×1865×1435mm ●車両重量:1840kg ●エンジン:V6DOHCターボ ●排気量:2893cc ●最高出力:450ps/5700-6700rpm ●最大トルク:61.2kgm/1900-5000rpm ●新車価格帯:1218万円(RS 4 アバントのみ)

icon MINI ジョン・クーパー・ワークス クラブマン ALL4

最強エンジン搭載で大幅にパフォーマンス向上
 MINIのハイパフォーマンスシリーズであるJCWも、2019年に登場した306馬力の最強エンジン搭載モデルは、ALL4と名付けられたAWDシステムを搭載。マイナーチェンジ前のモデルと比べて75馬力もの上乗せなのだから辛口だ。0-100km/h加速も従来の6.3秒から4.9秒へと大幅に短縮している。

MINI JCW クラブマン ALL4(8速AT) ●全長×全幅×全高:4725×1800×1470mm ●車両重量:1600kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●排気量:1998cc ●最高出力:306ps/5000rpm ●最大トルク:45.9kgm/1750-4500rpm ●新車価格帯:569万円(JCW クラブマン)

icon BMW M135i xDrive

FFベースとなったことで広く、そして速くなった
 1シリーズが従来のFRベースからFFベースになったことで得られたのは、広く快適な室内空間とラゲッジスペース、インテリジェントAWDによる道とコンディションを選ばないトラクション性能だ。新開発のMスポーツディファレンシャル(機械式トルセンLSD)の採用によってコーナリング性能も一級品。

BMW M135i xDrive(8速AT) ●全長×全幅×全高:4355×1800×1465mm ●車両重量:1580kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●排気量:1998cc ●最高出力:306ps/5000-6250rpm ●最大トルク:45.9kgm/1750-4500rpm ●新車価格帯:633万円(M135i xDrive)

ハイパフォーマンスAWDの頂上モデル2台が同時マイナーチェンジ[さらなる高みを目指して]

文●ユニット・コンパス 写真●メルセデス・ベンツ、BMW
メルセデスとBMWがプライドをかけて開発しているハイパフォーマンスモデルが、E 63 SとM5。本国にて、ほぼ同タイミングマイナーチェンジを受けた2台について紹介する。

生粋のカーガイをも満足させる最新AWD

 道なき道をゆくためのAWDではなく、オンロードをより速く、快適に走るためのハイパフォーマンスAWDは、いま輸入車のなかで非常に成長しているジャンルだ。
 その元祖がアウディのクワトロであることに異論はないだろう。1980年、アウディはセンターデフを使ったオンロード向けフルタイムAWD機構を採用した初代クワトロを発表。通常は50対50で駆動力を分配し、スリップを検知すると駆動力を自動的に配分して安定性を高めるという画期的なシステムだった。
 その後、同様の機構を採用したスポーツ クワトロが世界ラリー選手権を席巻。後輪駆動モデルはおろか、運動性能的資質に優れるはずのミッドシップにも完勝したことで、それ以降、ラリーの世界ではハイパワー+AWDが勝利の方程式となった。
 一方で、90年代を代表する高性能セダンは、メルセデスのE500や先代までの歴代BMWのM5がそうであったように、依然として後輪駆動が主流だった。
 理由のひとつにはフィーリング面での問題があった。当時のAWDはコーナリング時にアクセルを踏み込むと外側に軌道がはらむアンダーステアの傾向が強く、アクセルワークでクルマの向きを変えることに喜びを感じる手練れのユーザーに受け入れられないと考えられていたからだ。
 しかしここ10年で、状況は一気に変化した。スポーツモデルや高級セダンの高性能モデルでAWDを採用するモデルが増えてきたのだ。BMWが現行M5をAWD化したのは、そのなかでも象徴的な出来事だ。
 その背景には、高性能モデルのパワーが600馬力を超えるなど、もはや2輪では支えきれないほど強力になってきたこと。そしてAWD技術、特に制御系の進化が著しいことが挙げられる。駆動力を分割、分配するデファレンシャルギアの電子制御が緻密になり、ドライ路面ではリアタイヤに多くパワーを伝え、まるで後輪駆動のような自由自在のハンドリングを実現。先ほどの現行M5は、後輪に100%の駆動を分配して擬似的にFR化するモードも用意されている。
 E63 S 4MATIC+とM5、本国で新型が公開された2台のハイパフォーマンスAWDがどのような新しい世界を見せてくれるのか。楽しみで仕方がない。

icon メルセデスAMG E 63 AMG S 4MATIC+

すべての性能が最高峰 究極の高性能セダン
 ビッグマイナーチェンジとなった新型では、エクステリアにメルセデスの最新デザイン言語を導入。シンプルでありながら抑揚を感じさせるデザインとなった。一方でインテリアと操作系は最新テクノロジーを一挙に導入し、自動運転技術を活用した運転サポートとインフォテインメント系を強化。もちろん、4LV8ツインターボエンジンのハイパフォーマンスには陰りなし。最高出力は612馬力、最大トルクは86.7kgmと圧倒的だ。

メルセデスAMG E 63 S 4MATIC+(9速AT・AMGスピードシフトMCT) ●エンジン:V8DOHCツインターボ ●排気量:3982cc ●最高出力:612ps/5750-6500rpm ●最大トルク:86.7kgm/2500-4500rpm ●0-100km/h加速:3.4秒 ●最高速度:300km/h(電子リミッター作動) ※欧州参考値

12.3インチディスプレをふたつ繋げたディスプレイやMBUXといった最新のインフォテインメントシステムを採用。ステアリングも機能性を高めたニューデザインとなっている。

icon BMW M5

レースカーレベルの運動性能を路上で体験
 ベースモデルである5シリーズのマイナーチェンジに合わせて改良されたM5。薄型化したヘッドライトと灯体を新しくしたテールランプ、拡大されたグリルが新型の識別点で、もちろん中身もアップデートされている。スポーツ性と快適さを高次元で融合させるコンセプトは不変で、そのために新型にはM8で採用された新型ダンパーを導入。また、センターコンソールにモード切り替えスイッチを追加して操作性にも磨きをかけた。

BMW M5 コンペティション(8速AT) ●エンジン:V8DOHCツインターボ ●排気量:4395cc ●最高出力:625PS/6000rpm ●最大トルク:76.5kgm/1800-5860rpm ●0-100km/h加速:3.3秒 ●最高速度:305km/h(電子リミッター作動)※欧州参考値

ベースモデルの進化に合わせて、インテリアの大型ディスプレイも12.3インチに拡大。新型ダンパーの採用により、限界付近でのハンドリングを改善しながら、路面からの衝撃吸収性を高めた。

日本導入が待ち遠しいRS 6のニューモデル

 ドイツでは2019年末に発表された新型RS6も、ハイパフォーマンスAWDを語る際には見逃せない存在だ。新型は4LV8ツインターボエンジンを搭載し、最高出力600馬力、最大トルクは81.6kgmと、そのスペックはスーパーカーレベル。一方で48VマイルドHVシステムを搭載し、エコ性能についても抜かりはない。

[スポーツ性と快適性の狭間で]ハイパフォーマンスAWDが選ぶべきタイヤとは

文●ユニット・コンパス 写真●メルセデス・ベンツ、ブリヂストン、ミシュラン、コンチネンタル、ピレリ、グッドイヤー

どんな状況でも安定した走りを提供するハイパフォーマンスAWD。スポーツカーの性能と高級車の快適性、その両方を求められる高性能モデルが選ぶべきタイヤを紹介します。

車両の性能に見合った高性能タイヤが必要

 有り余る高性能を4輪を使って地面へと伝えるハイパフォーマンスAWD。当然、それらが装着するタイヤにも高い性能が求められる。何しろドイツ本国では250km/h以上の超高速走行も想定されるのだ。
 では、ハイパフォーマンスAWDが選ぶべきタイヤとは、一体どのようなものなのか。
 まずは純正タイヤ、または承認タイヤ。これはメーカーがテストを行い、性能と安全性を確認したもの。ディーラーだけでなく、タイヤショップで承認タイヤを探していると伝えれば用意してくれる。
 次に選択肢となるのが、リプレイスタイヤのハイグレードモデル。いわゆるプレミアムスポーツタイヤと呼ばれるジャンルの商品。各メーカーが技術の粋を結集したもので、すべての性能を高次元でバランスさせているのが特徴となる。
 当然価格は高くなるが、吸い付くようなグリップと乗り心地、静粛性が一体となった乗り味を体験してしまうと、きっと納得するに違いない。
 また、メーカーによっては同じカテゴリーでも味付けの異なる商品を用意しているので、より自分の好みに近いタイヤを探せるのも、市販タイヤのメリットになる。

 高性能タイヤの魅力は幅広い環境で性能を発揮してくれること。ドライはもちろんのこと、ウエット路面でのハンドリング性能、ブレーキ性能もキープされているため、安心してパフォーマンスを引き出せる。

  • グッドイヤー イーグル F1 アシメトリックスリー
    EAGLEシリーズのフラッグシップモデルとして高速性能と快適性を追求。速さだけではなく、不測の衝突を回避するための安全性能を徹底的に追求しているのもポイント。

  • ピレリ ピーゼロ ロッソ
    電子制御式トラクションコントロールとのマッチングを考慮し、中から大排気量モデルとのマッチングに優れる。路面状態に関わらず正確なステアリング操作を可能とする。

  • コンチネンタル スポーツコンタクト6
    コンチネンタルは、数多くの欧州ハイパフォーマンスモデルに純正装着されてきたブランド。こちらは350km/hもの走行に耐えられる同社の最高峰モデルとなる。

  • ミシュラン パイロットスポーツ 4S
    ミシュランが世界のモータースポーツで培ってきた技術を注ぎ込んだフラッグシップモデル。サーキット走行を可能にする高いグリップ力と高速安定性能が魅力。

  • ブリヂストン ポテンザ S007A
    世界のハイパフォーマンスカーに認められたポテンザ S001の後継モデル。定評あるドライ&ウエットでのグリップ力に加えて、上質さや快適性を磨き上げている。

ハイパフォーマンスAWDの実力をドイツ アウトバーンで実感!

文と写真●ユニット・コンパス
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


グーワールド取材班が過去のドイツ取材で体験したリアルなアウトバーンの生態。そこで追い越し車線の主役となっていたのは、ハイパフォーマンスAWDだった。

性能差が明らかになる追い越し車線という舞台

制限速度無制限区間を有するドイツのアウトバーン。なかでも追い越し車線は特に速度域が高い。

 立場が人を育てるように、道がクルマを育てるというのは本当だ。
 新型コロナの影響で、海外に出かけることは今はまだできない状況だ。しかし、そんな状況でも輸入車を通じて海外の文化、海外の道が育てたクルマに触れることはできる。
 ハイパフォーマンスAWDに乗るたびに思い出すのは、ドイツの高速道路アウトバーンだ。ルールを厳格に守る彼らも、制限速度無制限区間になればアクセルは全開。そこで追い越し車線を維持できるのは、絶大なトラクションであふれるパワーを路面に伝えるハイパフォーマンスAWD。走りゆくその後ろ姿は、どれも自信に満ちあふれていた。

  • こちらを追い抜いてゆくEクラス。AWDである4MATICのエンブレムが誇らしげに掲げられている。欧州車はこのように、追い抜かれる側の目線を大切にしており、デザインやエンブレムの位置も計算されている。

  • 突然のスコールに周囲がひるむなか、まったく動じずに追い越し車線を走るA6アバント。もちろんクワトロだ。これぞAWDの強み。

  • ポルシェ博物館に展示されていた959。同社におけるオンロード系AWDの草分けだ。その技術はスカイラインGT-Rにも影響を与えた。

[路面を選ばず快適ツーリング]ハイパフォーマンスAWD注目モデル6選

文●ユニット・コンパス
※中古車参考価格、物件相場はグーネット2020年7月調べ。
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


新車では高嶺の花なハイパフォーマンスAWD。しかし中古車になると、現実的な存在に…… ここでは、いま注目すべき6モデルをチョイス。AWDといえばアウディが思い浮かぶが、その他のメーカーにも個性派が揃う。魅力ある高性能マシンの中古車相場をチェック!

450馬力の走りは一度味わうとやみつきに

 13年にデビューした高性能ワゴンのアウディRS 4アバント。4.2LV8という大排気量エンジンを搭載し、最高出力は450馬力を発揮する。クワトロシステムによる安定感のある走りも見どころで、雨や雪などの悪路でも安心の走りを提供する。
 中古車物件は、この手のハイパフォーマンスモデルとしては流通している。すでに新型が登場しているゆえ、相場はかなり下がっており、低走行な物件ならば300万円台後半の予算でも購入可能。そろそろ買い時といってもよさそうだ。

icon アウディ RS 4アバント(先代)

全長4720mm、全幅1850mm、全高1435mmとミドルクラスのステーションワゴンとしては平均サイズ。前後バンパーは専用デザインで、タイヤは265/30R20が装着されている。

大排気量エンジンは現行型にはない魅力
 現行型RS 4アバントは、450馬力という最高出力は同じながら、2.9LV6ターボを搭載。それに対し先代は4.2LV8と大排気量エンジンを搭載するから、走り味はかなり異なる。最近はダウンサイジング化が進み、スポーツカーも低排気量が主流。先代のようなエンジンを味わうなら、今がラストチャンスかも!?
中古車参考価格帯:390万円~620万円(※13年~18年 RS 4アバントのみ)

サイドサポートに優れたシートが与えられ、ブラック基調のインテリアはスポーティ。高性能モデルとはいえ、ステーションワゴンなので実用性も十分。

450馬力/43.8kgmという数字は非常に高水準。これに7速Sトロニックを組み合わせる。

icon アウディ S6(先代)

200万円台から探せるプレミアムセダン/ワゴン
 アウディA6の高性能バージョンがS6。先代(現行型は2020年7月時点で日本未発売)は2012年に登場している。420~420馬力を誇る4LV8ターボを搭載し、7速Sトロニックを組み合わせる。新車時は1000万円オーバーの高額なモデルだったが、現在は200万円台の物件も見かけるようになり、買いやすくなっている。
中古車参考価格帯:220万円~580万円(※12年~19年 S6セダン/アバント)

icon アウディ S7スポーツバック(先代)

スタイリッシュな4ドアモデルの高性能仕様
 S7スポーツバックは、S6セダンに近いサイズの4ドアモデルだが、なだらかに傾斜するルーフラインなどはクーペに近い。エンジンは、S6と同じく4LV8ターボを搭載し、最高出力は420~450馬力。物件数もS6と同程度流通しているものの、相場はこちらのほうがやや高め。パーソナルカーが好きな人にオススメだ。
中古車参考価格帯:310万円~660万円(※12年~19年 S7スポーツバックのみ)

icon メルセデス・ベンツ E 63 AMG S 4MATIC(先代)

思いのままに操れる懐の深いAMGの走り
 AMGの走りはいつの時代も鮮烈。特に先代Eクラスからは、ドライビングの楽しさを追求し、今も進化を続けている。先代のE 63は当初FRのみだったが、マイナーチェンジでAWDを追加している。中古車市場はFRのほうが主流となるが、AWDもわずかに流通している。
中古車参考価格帯:580万円~650万円(※13年~16年 E 63 AMG 4MATIC セダン/ワゴン)

スッキリとしたデザインのインテリア。ハイパフォーマンスモデルと言えども、快適性はEクラスそのもの。ホワイトのレザーシートは室内を明るい雰囲気にしてくれる。

トランスミッションは7速ATを組み合わせる。サイズの大きさゆえ、トランクルームも広大。セダンでもさまざまなシーンで活躍できるはず。

「E 63」シリーズには標準モデルと高性能版「S」の2仕様を設定(写真はS)。同じ5.5LV8ターボを積むが、前者は557馬力、後者は585馬力。

icon フォルクスワーゲン ゴルフR

コンパクトなボディだが走りは上質
 ゴルフのトップモデルに位置付けられるのが「R」。ハッチバックとヴァリアントともに設定される。エンジンは280馬力(後に310馬力に進化)を発揮する2L4気筒ターボを搭載。駆動方式はAWDなので、高速域での安定感も抜群だ。中古車物件数も充実し、走行距離5~7万km前後なら200万円台前半でも購入可能。
中古車参考価格帯:200万円~460万円(※14年~20年 R ハッチバック/ヴァリアント)

ホールド性の高いシートなど、高性能モデルらしい仕立てのR。GTIよりも重厚かつ安定感のある走りで、街中からサーキットまで幅広いシーンで活躍してくれる1台である。

2Lターボを搭載するR。トランスミッションは当初6速DSGだったが、6速MTも追加された。また改良により7速DSGに変更され、さまざまなバリエーションが存在する。

icon マセラティ ギブリ

情熱的なデザインを持つエントリーモデル
 マセラティのなかでエントリーモデルとしての役割を担うギブリ。基本的にはFRとなるが、Q4と呼ばれるAWDモデルも設定されている。中古車の大半はFRでAWDが探しにくいのが難点ではあるが、じっくり探せば400万円以下の物件も存在する。意外と走行距離が伸びた個体も目立つので、留意しておきたい。
中古車参考価格帯:370万円~460万円(※13年~20年 Q4のみ)

BMW 5シリーズ(先代)

もっと低予算で探すなら5シリーズはいかが?
 正確にはハイパフォーマンスモデルではないが、5シリーズにもAWDモデルが設定されている。もともとスポーティな性格のクルマだから、積極的に運転を楽しみたいドライバーにはぴったり。本格派のM5と比べると動力性能は控えめではあるが、価格とのバランスがよい。535i xDriveならば300万円台で探せる。
中古車参考価格帯:300万円~380万円(※10年~17年 535i xDriveのみ)

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