英国潜水艦レンジャー号、そしてソビエトの原子力潜水艦ポチョムキン号が次々と行方不明になった。指令を受け調査に向かったボンドは、ソビエトから派遣されてきたKGBのエージェント・コードネーム「トリプルX」と呼ばれるアーニヤ・アマソワ少佐と砂漠で出会う。そして一連の事件が、海運王、ストロンバーグの仕業であることを突き止め、彼の世界制覇の野望を阻止しようとする。

シリーズ第10弾。ロジャー・ムーア=ボンド第3作。ロジャー・ムーア版ボンドは、ダンディでクールでおしゃれ。そして、テンポの良いアクションと奇想天外で壮大なストーリーが売りだが、この作品もボンド映画ではおなじみのスキーチェイスを展開。急傾斜を直滑降し、断崖絶壁の谷をハイジャンプして落下して、ユニオンジャックのパラシュートを開くまでの間の緊張感はたまらない。このスタントを演じたリック・シルベスターの命がけのテクニックは、正に芸術品としか言いようがない。このパラシュートを使用したアクションは「ムーンレイカー」へと発展する。他にも、『ユア・アイズ・オンリー』や『美しき獲物たち』でも豪快なスキーチェイスが見られるが、007で最初にスキーチェイスを始めたは『女王陛下の007』だった。
ストロンバーグの要塞やマンモス・タンカー「リパラス」も実にユニーク。何しろ潜水艦が二艦もまるまる納まってしまうのだから。これは「二度死ぬ」にそっくりなアイディアではあるが、第3次大戦を引き起こそうとするストロンバーグの持つ技術の凄まじさに屈服させられる。
鉄鋼版の歯を持ち、何度もボンドに襲い掛かるジョーズという男がボンドシリーズ一の悪役と言われている。ボンドに巨大な磁石に吊り下げられ、水面に落とされたジョーズが本物のジョーズ(サメ)に噛み付くシーンもあったりして洒落がきいている。このジョーズは、『ムーンレイカー』にも続いて登場している。シリーズで連続して登場した悪役はブロフェルドとジョーズだけである。
初代ボンドカーのアストンマーティンDB5から、はじめてロータスがその座を奪った。追いすがリ銃撃してくる敵の後続車に、エスプリのリアのナンバープレートが倒れ、セメントを発射する。それをフロントグラスにくらった車は崖から谷へまっさかさま。敵のナオミが操縦する戦闘ヘリの執拗な攻撃をかわし、遂には港の桟橋からジャンプして海へダイブしてしまう。この斜めになって水面へダイブするシーンがかっこ良すぎるのだ。車輪が内部に取り込まれフィンが出てきて潜水艦に早代わりし、後部にはスクリューも現われる。空中でホバーリングしているヘリに向かってレーダーでロックオンしてシフトノブのスイッチを押すと小型ミサイルが発射され、ヘリは撃墜されてしまう。最後に海水浴場の遠浅から走って水中から地上に現われるが、遠くの海面が徐々に盛り上がってエスプリがやがて現われる様子は蜃気楼が現実になるような感覚だ。窓を開けたボンドが小さな魚をつまんで捨てるのは笑える。