自動車を保有している人は、被害者保護の観点から自賠責保険への加入が義務付けられています。
実際に事故を起こしたら、自賠責保険による補償の請求ができます。そこで疑問となるのが、自賠責保険はどうやって請求すればいいのか?という点です。
自賠責保険には加害者請求と被害者請求があります。そして、請求できる期限にも限りがあります。
街に出れば、自分が交通事故に巻き込まれる可能性は多少なりともあります。いざという時のために、自賠責保険の請求方法について覚えておくといいでしょう。
自賠責保険の2種類の請求方法
自賠責保険の請求方法は、大きく分けて「加害者請求」と「被害者請求」があります。
加害者の中には賠償金を支払わないという人もいます。そのような時には被害者から請求できるようになっているため、この2つの方法について詳しく見ていきます。
加害者請求は、被害者に保証するお金を加害者自信が保険会社に請求する方法です。
支払いの際の順序としては、いったん加害者が被害者に対して賠償金を支払います。その上で、加害者が自分の加入している保険会社に保険金の請求をする流れになります。
加害者請求をするためには、被害者に対して賠償金を支払った証拠が必要です。賠償金を支払った際に、被害者が確かに受け取ったことを証明できるような領収書の提出が求められます。
中には被害者が病院で治療費を支払うたびに、加害者が賠償している場合もあるかもしれません。このように、総損害額が確定する前でも被害者に対してお金を支払ったのであれば、保険金請求は可能です。
加害者が誠意ある対応をせずに、いつまで経っても賠償金を支払わない場合は、被害者の方で加害者が自賠責保険に加入している保険会社に対して保険金請求ができます。これを被害者請求と言います。
自賠責保険は加害者のためではなく被害者救済を目的にしているので、このような措置が可能です。
また、被害者請求に関しても、総損害額が確定する前でも保険金を受け取ることができます。例えば、治療が必要で医療機関に通院して治療費を負担している場合、そのたびに保険会社に費用請求することもできます。
自賠責保険の請求方法の基礎知識
自賠責保険を請求するにあたって、押さえておきたい基礎知識がいくつかあります。覚えておくべき事柄について、以下にまとめました。
自賠責保険は、ずっと保険金請求できるものではありません。請求できる期限があります。
また、自賠責保険で請求できる対象にも限りがあり、自賠責保険で請求できる金額にも制約があるので、ここで解説します。
自賠責保険には、請求可能な期間が設けられています。基本的に3年で時効になり、保険金の請求権が消滅します。
ただし、どこから3年かについては加害者請求と被害者請求とでは異なります。
損害賠償金を被害者に支払ってから3年以内
程度によって変わってきます。
傷害を負った場合には事故発生から3年以内となります。また、後遺障害の場合は、症状が発生し固定状態になってから3年以内です。
死亡した場合には、被害者が亡くなってから3年以内が請求期間です。
自賠責保険には、仮渡金制度が設けられています。
加害者が自賠責保険に加入している保険会社に対して、請求ができます。
傷害の場合、その程度によって3段階に分類されます。5万円・20万円・40万円のうちのいずれかが請求可能です。
被害者が亡くなった場合でも、仮渡金を請求できます。死亡した場合には、一律で290万円を請求できるシステムになっています。
自賠責保険への加入は、自動車損害賠償保障法という法律に基づいています。この法律の中では、「被害者の保護と自動車運送の健全な発達を目的」と明記されています。
自賠責保険は、被害者に対して迅速かつ公正に保護するために存在する保険です。そのため、あくまでも被害者のための保険であると認識してください。
自賠責保険が保障している対象は、交通事故によって被害者が何かしらの損害を負った場合となっています。よって、交通事故で加害者もケガをした場合は補償の対象外となります。
また、被害者の持ち物に関する損害についても、補償から外されます。
以上のことから、自賠責保険の保障は大変「限定的」です。よって、任意保険の加入も必要であると考えた方がよいでしょう。
自賠責保険で請求できる保険金額も一律で決められています。
120万円が上限であり、治療費のほかに休業損害や慰謝料など、すべて含んでこの金額となります。
3000万円までが上限です。この3000万円の中には、葬儀費用の100万円と慰謝料400万円も含まれます。
75~4000万円です。かなり金額に幅がありますが、これは後遺障害等級に応じて金額が確定されます。
また、死亡した場合の保険金3000万円ですが、この額では不十分であることが多いです。被害者が亡くなった場合、過去の事例などを見ると億単位の賠償金となることも珍しくありません。
自賠責保険では不十分なので、任意保険にも加入すべきと言われる理由の一つでもあります。
自賠責保険を自分で請求するやり方
街に出れば、誰しもが多少なりとも交通事故に遭遇する可能性があります。
自分で自賠責保険を請求する事態に遭遇するかもしれません。その時のために、自賠責保険を請求する流れについてここで詳しく見ていきます。
何段階かステップを踏んで保険会社に請求するため、いざという時のために大まかな流れを把握しておくとよいでしょう。
まずは自賠責保険に加入している保険会社に対して、事故が発生したことを伝えてください。その時のために、自分が入っている保険会社がどこか、保険証券などで確認しておくことです。
保険会社には、事故対応センターのようなものが設けられています。いつ事故に巻き込まれても連絡できるように、電話番号を控えておくと安心です。
ほとんどの保険会社で事故対応センターは、24時間・年中無休で対応しています。週末や深夜の事故などでも、翌営業日まで待機する必要はありません。
事故対応センターは、フリーダイヤルになっているところがほとんどなので、通話料は無料です。保険会社に連絡すれば、事故の状況をできる限り詳しく伝えましょう。
そして、オペレーターに今後の流れについて指示を仰いでください。
保険会社の連絡の後には、請求書類の作成と提出が必要になります。保険会社に連絡すると、申請書類の一式が送付されるはずです。
請求書作成のほかにも、提出書類がいくつかあります。提出書類の詳しい情報は別項目で詳しく紹介しますが、できるだけ早く一式揃えるようにしましょう。
いったん自腹で被害者に賠償金を支払います。その上で後日、保険会社に請求する流れになります。
加害者から賠償金が支払われなかった場合に請求するので、この場合は自分ではなく「加害者の加入している保険会社」に対して請求手続きを進める形になるので気を付けてください。
必要書類の提出を受理すると、保険会社が損害調査を実施します。
損害調査では、事故の発生状況や、事故と傷害の因果関係があるかなどについての審査があり、保険金を支払う必要性があるか、ある場合はどの程度の損害額を支払うべきかについて判断されます。
損害調査の期間ですが、被害状況などによって違いが見られます。ちなみに後遺障害等級認定申請の場合、3/4以上が30日以内で結果が出ているようです。
損害保険料率算出機構の調査事務所が損害調査を行い、結果が出次第保険会社にその旨が通知される仕組みです。保険会社は、その結果に基づき支払額を確定します。
国土交通省と金融庁で、法律に基づき支払基準を設けています。保険会社はこの支払基準に基づき、保険金の支払いを行うシステムです。
金額は状況に応じ、基準により一律で決められています。そのため、保険金額の確定と支払いは速やかに行われるのが一般的です。
自賠責保険の上限額が支払われたとしても、それでは不十分ということもあるでしょう。その場合、加害者自身が不足分をまかなわなければなりません。
場合によっては、自分で負担する分が多額になることも十分考えられます。その時のために、任意保険に加入しておいた方が安心です。
自賠責保険請求書類について
自賠責保険の補償を請求する場合、請求申請書類だけでなく、いくつか必要書類が出てきます。これらを準備しないと、不備ということで保険金が支払われません。
この項目では、自賠責保険を請求するにあたって、主な必要書類についてまとめました。
交通事故が発生した際に、警察署や交番で手続きすると交通事故証明書が発行されます。自賠責保険だけでなく、任意保険を請求する際にも交通事故証明書は必要となります。
警察署や交番に行くと、交付申請用紙がもらえますので、必要事項を記載し郵便局で600円を支払って申請する流れです。
申請後1週間以内に、証明書が自宅に郵送されます。郵送以外では、自動車安全運転センターに交付申請書を持っていくとその場で発行できます。
任意保険に一括対応を受けている場合は、任意保険会社が交通事故証明書を受け取っているはずなので、保険会社に依頼してコピーを使用しても手続きは可能です。
事故発生状況報告書も、必要書類として提出しなければなりません。
事故が起きた日付、時間、天候、交通状況などを記載しなければいけないため、事故発生状況報告書の書き方で苦戦している請求者は少なくないようです。保険会社から記入例に関する書類があるので、それに基づいて記載するのが一番確実でしょう。
特に記載するのが難しいと言われているのは、道路幅と言われています。道路幅を考える場合、横断歩道の白線の本数を思い出してください。
横断歩道の白線は45~50cm、白線の間も同じ幅になっています。つまり、白線が何本あったかで道路幅はおおよそ見当がつくわけです。
もし心配であれば、現場に行って横断歩道の白線の数を確認しておいてもいいでしょう。
被害者が傷害を負った場合、診断書や診療報酬明細書を用意しなければなりません。
任意保険に一括対応をお願いしている場合には、保険会社の方で診断書と診療報酬明細書を保管しているためです。その場合、コピーをもらっておいてください。
特に被害者請求する場合、診断書を見ればケガの経過を把握することができます。健康保険を使って治療している場合には、診療報酬明細書を病院が発行してくれないため、病院にお願いして診断書のみを作成してもらいます。その上で、領収書を添付して提出すれば問題ありません。
診療報酬明細書の代わりに、診療報酬明細書不添付報告書を提出しましょう。接骨院や鍼灸院で治療を行っている場合には、施術証明書を回収する形で請求します。
交通事故の被害者が事業主の場合、ケガの治療などで一定期間仕事ができなくなる場合も考えられます。この場合、自賠責保険に休業補償を請求することも可能です。
休業補償を請求する場合、休業損害証明書を提出しなければなりません。休業損害証明書は、どのような形で働いているかによって変わってきます。
源泉徴収票を用意します。勤務先の会社に所定の手続きをして、作成を依頼してください。
納税証明書もしくは課税証明書、確定申告書のいずれかを準備します。
休業損害証明書は事故の状況によって必要ない場合もあるので、保険会社に相談するといいでしょう。
被害者がケガをして病院に通院することになった場合、通院するために必要な交通費も自賠責保険で請求可能です。この場合、通院交通費明細書を提出しなければなりません。
通院交通費明細書は、自賠責保険の保険会社で決まった書式を指定されます。保険会社に請求の連絡をすると、書式を取り寄せることができます。
所定の形式に基づき、被害者が自分で作成する形です。記入例などが用意されているので、その方式に則って作成を進めましょう。
中には、病院までタクシーで移動していた人もいるかもしれません。タクシー料金も通院交通費として請求することができます。領収書を発行してもらい、それを添付してください。
自賠責保険は被害者請求がおすすめ
上記で何度か紹介したように、自賠責保険を利用する際には、加害者請求と被害者請求の2通りがあります。
もし自分が交通事故の被害者になった場合、被害者請求をすることをおすすめします。加害者請求の場合、被害者にとって不利な条件で保険金が支払われる可能性があるからです。
特に被害者請求を行うべきケースについても、いくつかピックアップしてみました。
自賠責保険の加害者請求のデメリット
加害者請求の場合、被害者自身が手続きをする必要がないので負担を軽減できます。一方で、保険会社の請求手続きの一切を加害者に任せてしまう形となります。
加害者の中には、事故について過少申告する可能性があります。本来もらえるべき金額よりも少ない保険金しか受け取ることができないかもしれません。
加害者請求の場合でも、被害者の主張を含めることも可能です。しかし、被害者自身の主張が100%通るとは限りません。
また、加害者に手続きを任せるため、その内容に不透明な部分が出てきます。被害者の主張が通らなかった場合、その理由がわからない恐れが出てきます。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
自賠責保険の被害者請求を行うべきケース
交通事故のケースによっては、絶対に被害者請求をすべき事例もあります。具体的に被害者請求を行った方がいい事例について見ていきましょう。
加害者の中には、示談交渉に応じようとしない人もいます。
自賠責保険の支払いの条件として、示談の成立を条件としている場合が多いです。示談が一向に成立しなければ、被害者はお金を受け取れなくなってしまいます。
特に、交通事故の結果負傷し病院に通っている場合、保険金が下りなくても治療費や交通費などがどんどん必要になります。保険金が支払われないと、被害者の持ち出しになってしまうのです。
なかなか加害者側が交渉に応じないのであれば、被害者の方で自賠責保険の請求をするべきです。この場合、加害者の加入している保険会社に請求しましょう。
任意保険会社の中には、不利な条件で示談交渉を打ち切ろうとする場合があります。特に、被害者が大きなケガをしてしまい、長期にわたって治療が必要な場合に起こる場合が多いです。
この場合、一括払いを利用していると、自賠責保険の支払基準の上限まで使い切ってしまうかもしれません。そこで、任意保険会社が自分たちの負担を軽減するために、治療費の支払い打ち切りを迫ってくる場合があります。
保険会社は被害者に対して敵意はないものの、加害者側であるがために被害者の要望を100%受け入れることはないパターンです。このような場合、保険会社に手続きを一任するのではなく、自賠責保険の被害者請求をした方がいいでしょう。
ほかにも、慰謝料などの示談交渉が長引いた場合にも、不利な条件で示談成立させようとしてくる場合もあります。
交通事故の結果、後遺障害が残ってしまう可能性も十分考えられます。この場合、後遺障害等級認定の申請をすることとなります。
後遺障害等級認定の申請手続きは、相手の任意保険会社にお願いすることも可能です。これを事前認定と言いますが、すると後遺障害等級の認定が加害者にとって不利な結果になりかねません。
事前認定は、必要最低限の書類しか提出されない恐れがあります。その結果、資料不十分で適切でない後遺障害等級になってしまうかもしれません。
被害者請求すれば、陳述書をはじめとして、自分で詳細な資料を用意して手続きできます。適切な後遺障害等級になって、より多くの保険金の支払われる可能性も高まります。
自賠責保険の被害者請求は弁護士依頼がおすすめ
交通事故の被害者になった場合、被害者請求と言って被害者自身が自賠責保険の補償申請を行えます。もちろん、自分自身で手続きを進めても構いません。
しかし、いざ自分で手続きを行うとなるといろいろと必要書類を準備しなければならず、面倒も多いでしょう。
被害者請求をするのであれば、弁護士など交通事故の専門家に依頼するのも一考です。
被害者請求をする場合、交通事故証明書などの必要書類を準備しなければなりません。必要書類を用意するだけでもそれなりの時間を要するため、なかなか大変でしょう。
もし、弁護士に代理人となってもらって被害者請求をする場合、必要書類も弁護士が変わって集めてくれます。迅速に必要書類を集め、被害者請求の手続きを完了させてくれます。
つまり、それだけ早く保険金が受け取れるということです。治療費などがかなりかさんでしまっている場合には、弁護士への依頼を検討してみてください。
特にケガをして通院しながら、自分で必要書類を集めるのは大きな負担がかかります。弁護士に事務手続きは任せて、自分は治療に専念した方がいい場合もあります。
事故の結果、後遺障害が残った場合、後遺障害等級の申請をしなければなりません。この時、適切な等級認定してもらうためには、できるだけ多くの添付資料を付けた方がいいでしょう。
等級認定を適切に行うためには認定基準など専門的な知識が必要ですが、交通事故専門の弁護士であれば、安心して任せられます。
認定基準を意識して適切な添付資料を用意してもらえるでしょう。また、自分で申請手続きをすると後遺障害等級認定が納得できないことがあるかもしれません。
弁護士にお願いしておけば、異議申し立てなどのサポートが受けられるところもメリットの一つです。後遺障害等級が適切なものとなり、適正な保険金を受け取ることができます。
弁護士の中には被害者請求だけでなく、加害者側との示談交渉まで任せることができる人も少なくありません。示談交渉を弁護士に任せることで有利に交渉を進められ、より多くの示談金を受け取れる可能性も出てきます。
損害額の基準はあるのですが、低額から高額までいろいろな相場があります。加害者側の保険会社が、低い相場の損害額を提示してくる恐れもあります。
しかし、専門の弁護士を立てれば不利な条件で示談をまとめられる心配はありません。高額相場での示談を迫ることができるからです。
弁護士の提示する基準は、裁判所の基準とほぼ一緒です。示談が決裂すれば裁判という形になりますので、こちら側の要求した示談金で決着する可能性が高いでしょう。
交通事故にケガをした際に使える保険
ここまでは自賠責保険にまつわる種類や手続きについて紹介しました。しかしながら、保険にはいくつかの種類があります。これから紹介する各種保険にはそれぞれの特徴があり、対象事項も様々です。
ここからは、各種保険にまつわる詳細を紹介します。
車両保険は所有する車自体にかける保険です。そのため、車両保険と他の保険をまとめた自動車保険のほうが聞き馴染んでいるのではないでしょうか。
自動車保険の中には対人保険や人身傷害保険が含まれており、交通事故で怪我をした際にはこちらの保険が使えるでしょう。人身傷害保険は自分や同乗者が事故に遭遇した場合において、治療中の収入保証を担います。また、契約する保険会社の特約によっては、歩行中に車にぶつけられたといったようなケースでも保証を受けられるようです。
相手方からの補償の有無によらず、実際に発生した被害額相当が支払われるケースがあるため、事故に遭った場合は速やかに保険会社の担当者へ連絡しましょう。
労災保険は公的な補償です。仕事中に発生した交通事故に対して適用されます。
こちらも被害者救済がメインの保険です。そのため、交通事故で受けた傷の治癒に対して、治療期間にかかる所得補償を主としています。また、療養費に対しても支給されるため、労働者にとって手厚い公的保障といえるでしょう。
ただし、加入には条件があります。それは、雇用期間や雇用人数に限らず労働者を1人でも雇用している事業所に所属していることです。そのため、個人事業主には該当しないことに注意しましょう。
労災保険を申請する場合、申請対象は労働基準監督署です。一般的には会社が請求を代理しますが、場合によっては労働者個人が申請しなければならないため、手続き方法は必ず事業主へ確認しましょう。
健康保険は全国協会けんぽや各社の健康保険組合によって運営されている保険です。公的保証に該当するため、補償内容を実感する機会はあまりないかもしれません。とはいえ、ケガで病院を受診した際に受けられた治療や入院代を自己負担が3割まで抑えられるのは健康保険のおかげでしょう。
健康保険は会社に属すれば基本的に加入します。労働にまつわる交通事故でなければ健康保険が適用されると考えてよいでしょう。労働に関する場合、管轄が労働保険になるためです。また、窓口負担が一定額を超えた場合、高額療養費制度も活用できます。治療費が高額になった場合、所得に応じて負担額が減額されるため、転ばぬ先の杖として日々の生活を支えています。
生命保険は民間の保険会社が運営しています。そのため、補償の範囲や支払い内容によってしばしば自動車保険と比較されます。主な比較ポイントは二つあり、補償の対象と支払額の基準です。
補償の対象について、自動車保険は交通事故であれば同乗者も補償の対象に含まれます。しかし、生命保険は保険をかけている本人しか対象に含まれません。また支払額の基準について、自動車保険は実損額をそのまま保証してもらえます。しかしながら、生命保険は契約にそった定額支払いが採用されています。そのため、実損が契約内容を超えた額であったとしても決まったお金しか支払われない点に注意しましょう。
ただし、これらの保険や制度はどれか一つだけが採用されるわけではありません。状況によって補償を組み合わせられる点を覚えておきましょう。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
事故後に経済的支援が必要な場合に使える制度
事故後に経済的支援が必要な場合にも使える制度は複数あります。こちらについては基本的に公的サービスがメインです。そのため、公的サービスにどのような種類があるのか知っておくことが重要です。
ここからは、事故後に経済的支援が必要な場合に使える制度について紹介します。
遺族年金は交通事故などによって、家計を支える一家の大黒柱を失った場合において遺族や遺児を支える公的支援制度です。亡くなられた方が加入していた保険(国民年金、厚生年金)によって制度が異なる点に注意しましょう。
国民年金に加入されていた方が亡くなられた場合、その方が支えていた配偶者もしくは子どもに対して遺族基礎年金が支払われます。厚生年金に加入されていた方が亡くなられた場合においては、その方によって生活を支えられていた方が、①配偶者または子ども、②父母、③孫、④祖父母の中で優先順位の高い順に遺族厚生年金が支払われます。
厚生年金加入者においては、国民年金にも加入しており、子どものいる奥さんまたは子どもには遺族基礎年金も支払われるため、制度ごとに請求できる内容は確認が必要です。
詳しい申請内容については、お近くの年金事務所に問い合わせましょう。
労災年金では、業務中または通勤途中の交通事故によって亡くなった場合において、遺族に対する遺族補償給付もしくは遺族給付が支払われます。それぞれの給付については発生原因によって区別されており、遺族補償給付は業務災害が原因の場合、遺族給付は通勤災害が原因の場合とされています。また、葬祭を執り行った遺族に対しては葬祭料または葬祭給付も支払われるため、手厚い補償制度があることを知っておきましょう。
補償を受給できる対象は、労働者が亡くなられたタイミングで生計をともにしていた配偶者や子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が該当します。ただし、労災年金を受け取る場合に遺族年金も受け取れるものの、併給してもらった場合は労災年金が減額される点に注意が必要です。
こちらは交通事故に限らず、低所得者や障碍者手帳世帯も支給の対象に含まれます。交通事故によって何かしらの資金を他から借り入れなければならなくなった場合、借り受けが困難な世帯を対象に必要な資金の貸付や生活サポートを受けられる制度です。
貸付種類や条件等の詳しい情報については全国社会福祉協議会のホームページを参照してください。
ひとり親世帯、父母のない世帯が対象の制度です。交通事故などによってどちらかの親を亡くしたような家庭に対して就職するタイミングや子供の就学のタイミングで資金が必要になった場合に資金援助を受けられます。
支給元は都道府県、指定都市、中核市です。貸付の形式をとるため返済が必要な点に注意しましょう。また、連帯保証人が用意できなければ、有利子になります。
後遺障害が残ったときに使える制度
交通事故に遭った場合、ケガや死亡による経済的な支援が必要なケースもありますが、場合によっては後遺症が残ってしまうこともあるでしょう。ケガや死亡はあくまでも一時的なものではありますが、後遺症については事故後も長年継続するため、より長期間の補償が必要です。
ここからは、後遺障害が残ったときに使える制度を紹介します。
障害年金は国民年金と厚生年金とで加入している年金の種類によって補償が異なります。
国民年金加入者では、年金加入期間中に初診日がある病気やケガが障害等級表で定められた障害に該当する場合に障害基礎年金が支給されます。
厚生年金加入者では、厚生年金の加入期間内に障害基礎年金が支給される状態になれば上乗せで障害厚生年金が支払われるため、厚い補償額が特徴です。
ただし、障害状態が続けば支給され続ける年金制度ですが、初診日から5年以内にケガが治り、障害厚生年金の支給要件より症状が警戒した場合には障害手当金といった一時金のみが支払われます。状態や状況によって支給内容は細かく変わるため、詳しい情報についてはお近くの年金事務所に問い合わせましょう。
労災年金は業務中もしくは通勤中において発生した交通事故によって体の一部に障害が残った場合に適用されます。給付の種類は2つに分かれており、業務災害の場合は障害補償給付、通勤災害の場合は障害給付と名付けられています。
この労災年金については、障害者等級によって給付される項目が分かれている点が特徴です。障害等級第1級から第7級に該当した場合、障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金が支給されます。障害等級第8級から第14級に該当する場合は障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が支給されるため、障害の重い第1級から第7級に対して手厚い補償が用意されているでしょう。
ただし、障害基礎年金や障害厚生年金と併給できるものの、労災年金が減額される点に注意しましょう。詳しい話はお近くの労働基準監督署に問い合わせが必要です。
労災介護給付は労災年金の受給対象者の方で、障害等級第1級、第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」の方を対象に給付されるものです。身体介護が必要なため、介護負担の軽減を目的としています。
業務災害の場合は介護保障給付、通勤災害の場合は介護給付が支給されるため、原因によって名称が異なる点に注意しましょう。
詳しい要件や情報についてはお近くの労働基準監督署が教えてくれます。
こちらは交通事故により脳、脊髄、胸腹部臓器が損傷し、重度の後遺障害が残った方を対象に介護料が支払われます。障害が重くなると移動や食事などの日常生活にまつわる介助が必要となり、介護費用がかさむため負担軽減を目的に設立されました。
支給自体は独立行政法人自動車事故対策機構(ナスバ)により介護費用と自己負担額に応じて額が決定されます。支給タイミングは月ごとです。
支給額の下限を下回った評価額だとしても、下限額は必ず支給される点がメリットといえます。ただし、労災保険の介護給付等との併給はできません。
こちらは障害者の自立支援を目的に行われています。これまでの給付についてはお金がメインでしたが、ここでいうサービス給付とはお金ではありません。例えば、ホームヘルプや重度訪問介護、ショートステイの利用や自立訓練が該当します。実際の医療や計画作成支援が給付内容です。
これらのサービスを利用するためには市長区孫に申し出て、障害区分の認定などを受けなければなりません。支援が決定されると受給者証が交付されます。
前述の障害福祉サービスを受けるほかに、障害の程度によった障碍者手帳も交付されます。障害者手帳の交付を受けることで住宅設備改善費の支給や所得材、住民税の控除などが支給されるため、生活にかかわる部分の費用を負担してもらえる制度と認識しておきましょう。
詳しいサービス内容については各地域によって異なるため、一度お住いの市区町村の障害福祉担当部署に問い合わせましょう。
これは重度後遺障害者の方の健康維持や家族の介護負担軽減を目的とした短期入院、短期入所にかかる費用を助成する制度です。ナスバの介護料受給資格を有している方が対象です。
協力病院や協力施設は国土交通省のホームページから検索しましょう。