この記事では、車を廃車する際に知っておきたい手続きについて解説します。
免許返納や海外赴任など、今後車に乗らない場合は処分に悩むでしょう。多くの場合は業者に買い取ってもらいますが、車の状態によっては廃車手続きが必要です。
車を廃車する場合は「永久抹消登録」と「一時登録抹消登録」の2種類に分けられるため、両者の特徴やメリットの把握が大切です。
記事の後半では、還付金についても分かりやすく解説するため、両者の特徴や手続きが必要なケースを確認して維持費の削減を目指しましょう。
一時抹消登録した車の再登録方法
ここからは、一時抹消登録した車に再び乗る際に必要な手続きを解説します。
なお、再び車を走らせるためには「中古車新規登録」という手続きが必要です。ここでは一例として下記4つの手続きを紹介します。
車庫証明書を発行する
まずは車を復活させた際に駐車させる場所の確保を行います。その際に、車庫証明(自動車保管場所証明書)の発行手続きを行いましょう。
手続きはお住まいの地域を管轄している警察署の交通課で進めます。手続きの際には下記の書類や情報が必要です。
- 所有者の認印
- 車検証情報
- 保管場所(駐車場)の地図等
また、申請時は下記の費用がかかります。
- 自動車保管場所証明書交付手数料:2,100円程度
- 標章交付手数料:500円程度
費用は地域によって若干異なるため、管轄の警察署にあらかじめ確認しておくことが大切です。
なお、車庫証明の取得までは3~4日ほどかかるため、前もって申請しておきましょう。
自賠責保険に加入する
次に自賠責保険を再度申し込みます。自賠責保険は義務付けられているため必ず加入します。
なお、自賠責保険では人身事故のみが保障され、物損や単独事故には対応していないため任意保険への加入もおすすめです。
自賠責保険・任意保険ともに各保険会社で申し込みましょう。
一時抹消登録する前に利用していた保険会社もしくは新規で複数社に見積もりを出して決定します。
参考までに、自賠責保険に加入した際に受け取る「自賠責保険証明書」は仮ナンバー取得時に提出が求められるため事前に加入しておきましょう。
自賠責保険の支払いはまとまった期間の保険料を支払います。自家用普通自動車の場合、24ヶ月で17,650円の支払いが必要なため、事前に費用を準備しておきましょう。
仮ナンバーを取得して車検を受ける
次に仮ナンバーを取得して車を車検に出しましょう。
一時抹消した車の再登録においては、車検を通して安全性を確認します。車検の際は最寄りの陸運支局まで車を持ち込むため、公道を走行できるよう一時的に仮ナンバーを発行してもらいます。
仮ナンバーの申請は市区町村役場で行い、必要になる主な書類は下記のとおりです。
- 自動車臨時運行許可申請書
- 自動車損害賠償責任保険証明書
- 一時抹消登録証明書(登録識別情報等通知書)
- 運転免許証など申請者の現住所と氏名が確認できる本人確認書類
- 印鑑
なお、必要書類は市区町村役場によって異なるため事前に確認すると手続きがスムーズです。
また、仮ナンバーの発行手数料は1台につき750円かかり、使用期間は5日程度の決まりがあります。いつ車を車検に出すかを計画して、期限内に済ませましょう。
陸運支局で登録手続きを行う
仮ナンバー取得後は陸運支局で車検を受けて中古車新規登録を行います。
なお、車検は予約が必要なため、前もって自動車検査インターネット予約システムで予約しておきましょう。
長年乗っていない車の場合、さまざまなパーツの取替で費用がかさむためまとまった金額の用意も欠かせません。
なお、登録完了後は自動車税センターで自動車税と自動車取得税の支払いを行います。あわせてナンバーセンターでナンバープレートを購入し、仮ナンバーを返却します。
参考までに、新規ナンバーの取得には費用がかかります。普通のナンバーからご当地ナンバーまで費用が異なり1,500円〜7,000円程度を見込みましょう。
一時抹消登録した車の再登録に必要な書類
ここからは、一時抹消登録した車を再登録(中古車新規登録)する際に必要な書類を紹介します。
いずれも事前に手配が必要なため、早めに書類を集めておきましょう。また、書類の期限にも注意が必要です。
再登録に必要な書類は所有者(車検証に記載がある人物)と使用者(普段車を使う人物)の相違によって若干異なります。
ここでは、所有者と使用者が合致するケースにおいて必要な書類を下記に一覧します。
- 申請書
- 手数料納付書
- 一時抹消登録証明書(登録識別情報等通知書)
- 自賠責保険証明書
- 自動車検査票
- 定期点検整備記録簿
- 自動車重量税納付書
- 所有者の実印と印鑑証明書
- 自動車保管場所証明書(車庫証明書)
一時抹消登録証明書(登録識別情報等通知書)は一時登録抹消した際に発行された書類です。再発行ができないため、もし紛失した場合は運輸支局に問い合わせて指示を仰ぎましょう。
また、車庫証明は普通自動車と一部地域の軽自動車において申請が必要です。
所有者と使用者が異なる場合は上記書類にあわせて下記書類の提出が求められます。
- 所有者の委任状(代理人による申請を行う場合は、所有者の実印が必要)
- 使用者の現住所が分かる書類(住民票や印鑑証明書など)
- 使用者の印鑑
- 使用者の委任状(使用者がさらに代理人による申請を行う場合は、使用者の認印が必要)
- 使用者の自動車保管場所証明書
注意したい点は、自動車保管場所証明書(車庫証明)の取得場所です。所有者と使用車のお住まいが離れている場合は、車庫証明を使用者の住所を管轄する警察署で申請・発行します。
一時抹消登録した車の再登録申請にかかる費用
中古車新規登録を行う場合は各種費用がかかります。
自治体や車、希望によって金額が異なりますがおおよその費用を下記に記載します。
- 車庫証明費用:約2,100円
- 登録手数料:約700円
- 申請書代:約100円
- 検査手数料:2,000円〜2,100円程度
- 小型:ナンバー検査登録印紙400円+審査証紙1,600円
- 小型以外:ナンバー検査登録印紙400円+審査証紙1.700円
- 仮ナンバー:750円
- ナンバープレート:普通自動車は1,450円〜1,900円、希望ナンバーは3,910円〜4,440円
- 自賠責保険:普通車は24ヶ月で17,650円(軽自動車は17,540円)
- 自動車税・自動車取得税・自動車重量税:車によって異なる
かかる費用は地域や条件によって変動するため、問い合わせて確認しておいたほうが安心です。
一時抹消登録した軽自動車の再登録方法
参考までに軽自動車の中古車新規登録についても紹介します。
大まかな手続きは普通車と同じく、下記のとおりです。
- 車庫証明書を発行
- 自賠責保険と任意保険に加入
- 仮ナンバーを取得する
しかし、再登録の手続きは軽自動車検査協会で行います。なお、各種費用が異なるため下記に一覧します。
- 中古新規手数料(印紙代):約1,400円
- 重量税:最大8,800円※年式によって金額が変動します
- ナンバープレートの費用:通常は1,470円〜1,900円、希望番号は3,860円〜4,480円
廃車には一時抹消登録と永久抹消登録がある
ここからは、混同されやすい「一時抹消登録」と「永久抹消登録」について違いや利用シーンを紹介します。
いずれも車の登録を解除する手続きです。先を見据えると必要な手続きがおのずと限定されるでしょう。
永久抹消登録は車を解体して処分する場合の手続きを指します。
所有者が亡くなったり高齢で免許を返納したり、明らかに今後車を使用しない場合は永久抹消登録が適しています。
永久抹消登録は、解体の準備が整っていることが条件です。そのため、解体業者に依頼して手続きを進めましょう。
一時抹消登録は再び車に乗る可能性がわずかでもある場合におすすめの選択肢です。
一時抹消登録を行うと自動車税や自賠責保険の支払いがなくなる一方で、ナンバーを返却することから公道を走れなくなります。
しかし、車自体は自分で保存できるため再度登録して使用できる点がメリットです。
例えば、海外赴任で3年程度車を使用しない場合や現在大学生の子どもが就職する際に渡すなど、期間に見通しがある場合に適しています。
再登録するまでは費用が一切かかりませんが、エンジンやバッテリーの状態を定期的に確認したり、専用カバーをかけたりして丁寧な保管を心がけましょう。
一時抹消登録のメリット
ここからは、車の一時抹消登録におけるメリットを5つ紹介します。
車にゆくゆく乗る可能性がある方にとって、一時抹消登録は金銭面でもメリットがあります。
一時抹消登録を済ませた車は自動車税や自賠責保険を支払わなくてもよいため、長年車を保有する際の金銭的負担を軽減できます。
車の登録をしたまま放置すると毎年数万円の自動車税がかかる他、車検や自賠責保険の支払いが発生し、年単位で数万円〜十数万円の費用が発生します。
車に乗る場合であれば必要ですが、海外赴任で車にまったく乗らなかったり、子どもが数年後に成人してから譲り渡す予定だったりする場合は費用のみがかさみます。そのため、明らかに使用しない場合は一時登録がおすすめです。
車の一時抹消登録を行うと、タイミングによっては一度納付した自動車税の還付を受けられます。
自動車税は毎年4月1日時点で所有している車にかかってくるため、4月以降に一時抹消登録手続きを行った場合は、残りの月数分の還付があります。
ただし、自動車税の還付があるのは普通自動車のみで軽自動車は対象外です。そのため、軽自動車の一時抹消登録を行う場合は3月の早めの段階で手続きを済ませましょう。
一時抹消登録を行うと強制保険である自賠責保険の還付が受けられる点もメリットです。
自賠責保険は公道を走るすべての車が購入時・車検通過時に支払いを済ませる義務がありますが、一時抹消登録でしばらく乗らない場合は、すでに納めた金額の還付を受けられます。
なお、自賠責保険は普通自動車も軽自動車も還付されるため、加入した保険会社に申請を行います。
申請は保険代理店では行えず、保険会社の窓口か郵送でやり取りする方法がほとんどです。一時抹消登録を行う際に保険会社に問い合わせ、指示に沿って手続きを進めましょう。
なお、自賠責保険と同時に任意保険の契約解除を行うと還付を受けられます。
ただし、任意保険の解約は自身で日にちを決めるため注意が必要です。早めに契約を切ってしまい、その後事故を起こして費用の支払いが発生する可能性もあります。
廃車の日を決定した後に保険会社に「先付け解約」として手続きを依頼しましょう。
一時抹消登録は永久抹消登録と比較して手続きが簡単に済むメリットがあります。
もし少しでも車に乗る可能性がある場合は永久抹消登録ではなく、手続きが容易な一時抹消登録を選択しましょう。
一時抹消登録は売却や解体の手間がかからないため、手続きが少ない特徴があります。一方、永久抹消登録は解体業者の手配や売却の作業が必要です。
手間をかけて永久抹消登録したにも関わらず、「やっぱり残しておけば良かった…」と後悔しないためにも、一時抹消登録の選択肢を視野に入れておきましょう。
長年放置していた車の再登録手続きについて
ここからは、しばらく乗っていな車の再登録を行う際に確認したいポイントを4つ紹介します。
放置されている場合、車の状態だけでなく手続きがどこまで行われているかのチェックが欠かせません。
長年乗っていない車の場合、所有者が分かったとしてもどのような手続きを済ませているか不明なケースが多々見られます。そのため、第一に今も自動車税が発生しているかを確認します。
普通自動車は都道府県の自動車税納税係に、軽自動車はお住まいの市区町村役場の自動車納税担当に問い合わせましょう。
各種抹消手続きが行われていない場合、未納の税金が発生している可能性が考えられます。
次に、車両が一時抹消登録もしくは永久抹消登録の手続きをとっているか確認します。
もし永久抹消登録されている車であれば、再登録ができないため使用せず廃車手続きをとります。
そもそも、永久抹消の場合は廃車もしくは車検証が切れている状態で手続きを行うため、廃車証明書(登録事項等証明書)があるはずです。
しかし、長年手入れしていない車の場合は書類の確認ができないため、陸運支局に問い合わせが必要です。
一時抹消登録していた場合は、新たに車検を受けて中古車新規登録を行うため冒頭の手続きを進めます。
次に車検証を確認します。
車検は通常、新品で購入した場合は有効期限が3年、その後は2年ごとに更新します。車検切れの車は公道を走行できないので必ず確認しましょう。
なお、ほとんどの場合、一時抹消登録した車は手続きの時点で車検切れの状態になっています。そのため、中古車新規登録を行う場合は新たに車検に通すと理解しておきましょう。
一時抹消登録を行った車の期限は原則として決まっていません。そのため、何十年か保管した後に再び使用することも可能です。
自分が大切に乗っていた車をお子さんに譲ったり、こだわりのスポーツカーを資金にゆとりができたときに復活させたりするケースも多く見られます。
しかし、時間をおいて車を復活させる中古車新規登録をした場合、車の状態に注意しましょう。
しばらく乗っていない車はバッテリーやタイヤの状態が悪く、エンジンがかからないことがあります。また、仮ナンバーを取得しても走行不可能な場合はレッカー移動が必要です。
一時抹消登録を行った場合、車に専用のカバーをかけたり、定期的にエンジンをかけたりしてある程度メンテナンスすることが必要です。