事故で車両が損傷した場合、修理に出すか廃車として処分するかの2択を迫られます。どちらにしても、一旦は車両をどこかに保管しておかなくてはなりません。

事故車両をそのまま放置するのは道路交通法で禁じられているため、必ず移送が必要です。そこで、この記事では事故車の保管場所や移送のポイント、廃車手続きまでの流れをスムーズにする方法について解説していきます。

事故車の保管場所は決められている

事故車は修理と廃車、どちらにしても一旦移送する必要があります。

事故車の保管場所は「自宅」「修理工場」「警察が管轄する保管所」のいずれか3カ所のみで、解体工場や買取業者へ持っていくことはできません。

特に加害者がいる事故の場合は警察が事故の事実確認と詳細を確認するために、車両は必ず管轄の保管場所へ移送されます。

事故の存在を無視して、勝手に自宅や修理工場へ移した場合は「当て逃げ」の重罪に当たる可能性があります。

加害者がいない単独事故の場合、損傷は軽微なら自身の運転で、運転が不可能なほど損傷している場合はレッカー車を手配しなければなりません。

公道でも他人の私有地でも、事故車をそのまま放置することは原則NGです。

事故車の保管場所は3つ

事故車の保管場所は3つ
ここからは、事故車の保管場所である「自宅」「修理工場」「警察が管轄する保管場所」の3つについて解説します。

事故の状況や車両の損傷具合など、条件次第で取るべき手段は異なります。突然の事故対応でパニックに陥らないよう、対応措置を知識として蓄えておきましょう。

自宅

単独事故の場合、事故車は自宅でも保管できます。賃貸物件なら借りている駐車場、戸建てならガレージにて事故車を一旦保管しましょう。大破してレッカーを手配する場合でも、自宅に送ってもらえます。

自宅への移送がおすすめなのは、例えば以下のケースです。

  • 急いで修理に出す必要がない
  • 深夜の事故で修理工場へ持っていけない
  • 車両の損傷が軽微で自走できる

修理が必要な場合でも、深夜の事故だと修理工場が開いていないため、改めて後日車両を持っていく必要があります。

修理工場が開いている時間なら、レッカー業者や保険会社、警察に一度相談しましょう。

車は動くが損傷具合が判然としない場合、運転中に事故の影響が現れて故障や不具合を起こす可能性があります。突然の故障でさらなる事故を起こす可能性も否定できないため、車両の状態が不安な場合はレッカー車を手配しましょう。

修理工場

急いで修理しなければならない理由がある場合、運転やレッカー車の手配で直接修理工場へ持っていくのがおすすめです。

修理工場での保管がおすすめなケースは、主に以下が挙げられます。

  • 私生活に車が不可欠なため急いで修復する必要がある
  • 車両保険で修理費や買い替え費用を補填してもらう
  • ドアや窓ガラスなど重大な損傷がある

もし車両保険の適用を検討するなら、車の状態に関わらず、一度修理工場へ車両を移送しましょう。

保険の適用には車の状態を保険会社か修理業者に判断してもらう必要があるため、明らかに修理できない大破した状態であっても一度は持っていかなくてはなりません。

しかし、修理工場は24時間営業しているわけではなく、大体のところは朝8時〜10時に開店します。修理工場へ問い合わせても連絡がつかないときや営業時間外の場合は、一旦自宅に移送しましょう。

警察が管轄する保管場所

自分が事故の加害者もしくは被害者の場合、事故車両は一旦警察に預けなければなりません。これは事故状況や被害者と加害者の証言が一致するかを確認するために必要な措置です。

管轄の保管場所とは、一般には警察署の施設内や倉庫のことを指します。

事故調査が完了すると警察から連絡がくるため、引き取りに必要な証明書類や保管料金を用意して、警察署に向かいましょう。

また、原則として交通事故を起こした場合は警察の連絡を必要とします。これは加害者がいる場合だけでなく、単独事故でも同様です。

もし連絡漏れが判明した場合は「危険防止措置義務違反」や「安全運転義務違反」に抵触する可能性があります。

事故車を保管場所まで運ぶ方法

事故車を保管場所まで運ぶ方法
車が問題なく動く状態なら運転で保管場所に移送できますが、損傷が激しい場合はこの限りではありません。

ここからは、事故車を保管場所まで運ぶ方法を3つ紹介します。

車が動く場合は自分で自宅や修理工場に運ぶ

かすり傷や表面の軽い歪みなど、車の動力や重要なフレームに損傷が及んでいない場合は、自分で運転して保管場所に移送して問題ありません。

レッカー車の手配は費用がかかるため、無保険の場合やレッカー費用を抑えたい方は、車の状態をよく確認したうえで運転しましょう。

ただし、事故を起こして警察を呼ばずに単独で車を保管場所へ移送するのは禁止です。車両状態の判断が難しい場合は保険会社に連絡するか、警察に判断を仰ぎましょう。

保険会社のロードサービスを利用する

車両保険に加入している場合は、保険会社へ連絡すれば無料のロードサービスを受けられます。サービス内容は保険会社によって異なりますが、レッカーの手配や24時間の事故対応サービスは備え付けられていることがほとんどです。

個人でレッカー車を手配すると、移動距離に応じて数千円〜数万円のけん引料が発生します。業者によっては深夜料金が別途発生するところもあるため、距離や時間帯次第では費用が大きくかさむかもしれません。

事故後の車の扱いが分からない場合は、ひとまず契約している車両保険会社へ連絡しましょう。

JAFに依頼する

JAFとは「日本自動車連盟」の略称です。会員登録すれば、車に関連したトラブル時や事故を対象としたロードサービスを24時間受けられます。

もしJAFに加入しているなら、事故車の移送前にJAFへ連絡しましょう。

JAFは入会金2,000円と年会費4,000円がかかりますが、入会後のロードサービスは基本無料で利用できます。

個人でレッカー車を手配するとおおよそ万単位の出費が発生するため、事故による大きな出費をできるだけ抑えたい方はJAFがおすすめです。

自分で事故車を保管場所まで運ぶ際に注意することはありますか?
事故を起こしたら警察には必ず連絡しましょう。損傷が大きい車で公道を走ると道交法違反に該当し処罰の対象です。
また、公道での事故は交通の妨げや後続車両による衝突など二次災害が発生する可能性があります。そのため、事故を起こしたら車両のハザードランプを点灯、進行方向の逆側に三角表示板を設置して交通の安全を確保しましょう。
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事故車の保管場所は状況によって異なる

事故車の保管場所は状況によって異なる
事故車の保管場所は、基本的に保険会社や警察の判断を仰ぐことがほとんどですが、状況に応じて変わます。

ここからは、事故車の保管場所ごとに、その対応について解説します。

①軽微な傷の場合は自宅へ

損傷が軽微かつ問題なく運転できる状態なら、自宅へ車両を移しても問題ありません。

軽い擦り傷や小さなへこみ程度なら、自宅へ移送して後日修理工場へ持って行きましょう。

事故後に修理工場へ直接持って行くこともできますが、これは緊急の修理を要する場合や当日の時間に余裕がある場合に限ります。

修理費用や対応は業者によって異なるため、特に急がないなら修理業者を自宅で比較検討したほうが賢明です。

また、修理工場や警察の保管所は、保管期間に応じて料金が発生する場合があります。事故の費用を抑えたいなら、自宅での保管がおすすめです。

②明らかに修理が必要な場合は修理工場やディーラーへ

バンパーのへこみや窓ガラスが割れているなど、運転に支障をきたすレベルの損傷なら事故現場から直接、修理工場へ持っていきましょう。新車で購入した車両の場合は、購入したディーラーに持っていくことも可能です。

ただし、修理工場やディーラーに車両を直接移送する際、かかるのは修理費だけではありません。レッカー車によるけん引料や保管料だけで数万円程度の出費がかかります。

損傷具合によっては廃車の検討も視野に入りますが、事故現場から直接廃車手続きは行えません。そもそもレッカー車の手配では選択肢が自宅か修理工場の2つに限られ、解体工場や廃車専門業者には持っていけないと設定されています。

③事故の加害者だったり検証が必要だったりする場合は警察管轄の保管場所

こちらが事故の加害者側、または双方の過失があり得る場合は車両を一度警察に預けます。もらい事故のケースでも過失の有無は主に警察が判断するため、こちらが被害者と感じていても個人で勝手に判断はできません。

車両の損傷具合によってはレッカー車が必要ですが、警察側がレッカーを手配してくれるかは事故の状況によって異なります。気になる場合は相談してみましょう。

また、事故の状況や現場次第では、車両をすぐにレッカー車で移動する「緊急避難」が警察から指示されることがあります。この場合、到着に時間がかかるという理由から保険会社のレッカー車は利用できず、基本的に近くのレッカー業者へ連絡しなければなりません。

なお、警察署で保管される場合、保管料金や修理工場への移送の有無、車両の引き取りに必要な手続きは地域によって対応が異なります。スムーズに修理まで進められるよう、事前に必要な措置や手順を警察署へ問い合わせて確認しましょう。

事故後にそのまま仕事に行くのは問題ありませんか?
単独事故でも相手がいる場合でも、原則事故を起こしたら警察へ連絡しなければなりません。用事や仕事に行けるのは、事故現場の聴取や検証が終わった後に限ります。また、車の損傷が軽微で走行できる状態なら運転しても問題ありませんが、損傷が大きい車は道交法で運転が禁じられています。

【参考】事故車の定義とは?

【参考】事故車の定義とは?
事故を起こした車のすべてが事故車として扱われるわけではありません。事故車とみなされるには明確な定義があります。

ここからは、事故車として扱われる境界と、事故車が査定に与える影響について解説します。

車の骨格部分から破損した車

日本自動車査定協会によって定められている事故車の定義は「交通事故や災害などで骨格部分が欠陥し修理した車」です。

骨格部分とは、いわゆるフレームのことです。事故の衝撃で骨格部分が歪むと走行に大きな支障をきたします。

車体のフレームは、フロント・ダッシュパネル・リア・センター・ルーフを含めた車のあらゆるところに存在する重要な部品です。小さなへこみや傷では問題ありませんが、歪みや大きなへこみが生じると、重大な破損がある事故車として扱われます。

骨格から修理が必要な車が「事故車」になる

修理によって事故車扱いされるかは、パーツの中でも特定部位に修復跡や履歴が残る、いわゆる「修復歴」とみなされるかどうかが重要です。

車両の修理といっても、修復歴に該当する部位とそうでない部位があります。以下は修復歴として扱われるパーツの例です。

  • フロントインサイドパネル
  • ダッシュパネル
  • ルームフロアパネル
  • トランクフロアパネル
  • ルーフパネル
  • フロントクロスメンバー
  • ピラー
  • ラジエータコアサポート
  • フレーム

一方、以下の部位は骨格部分に該当しないため、修理したとしても修復歴は残りません。

  • フロントバンパー
  • フロントフェンダー
  • リアバンパー
  • リアフェンダー
  • トランクリッド
  • ロアスカート
  • サイドシルパネル
  • ドア
  • ボンネット

例えば、フロント部分であってもインサイドパネルの損傷は修復歴が残りますが、バンパーなら修復歴として扱われません。

見た目がひどく損傷した場合でも事故車扱いとは限らないため、まずは修理工場へ持って行き状態を判断してもらいましょう。

買取時は「修復歴あり」となる

車を中古車として売却する場合、事故車かどうか、つまり修復歴の有無で査定額に影響が出ます。

「修復歴あり」の車は、内容次第で査定額が大幅減、最悪の場合は買取不可と査定されるかもしれません。

中古車として査定できない場合、廃車として売却、または処分する必要があります。業者によって車両状態の判断は異なるため、複数の業者に査定してもらうのがおすすめです。

事故車の保管場所とあわせて知りたい買取の選択肢

事故車の保管場所とあわせて知りたい買取の選択肢
修理が不可能で廃車として処理するしかない車両でも、事故後に一度は保管しておかなければなりません。

とはいえ、いつまでも保管場所に置いていても仕方がないため、速やかに処分する必要があります。

ここからは、事故車を廃車として買い取ってもらう方法について解説します。

事故車でも買取に出せる

原則、修理が必要な車をそのまま中古車として査定には出せません。ただし、一度修理した車なら中古車として売却可能です。

修復歴がある場合は査定額に大きく影響しますが、査定してもらうことはできるため、まずは中古車として売れる可能性があるか確かめましょう。

もし中古車として買取が難しい場合でも、廃車としてなら買取に出せます。廃車の場合、使えるパーツや素材を売却できるため、未修理の車両でも問題ありません。

事故で損傷した車両をそのまま処分するなら、廃車として買い取ってもらえるか検討しましょう。

買取時は修復歴の有無で価格が下がる

事故車を中古車として売却する場合、本来の車両価値より数十万円程度減額される可能性があります。

基本的に修復歴は査定においてマイナス評価です。修復歴が多く、年式が古い車は買い取りすらしてもらえないこともあるため、事故車の査定額はあまり期待していけません。

買取が難しい場合は廃車を検討する

中古車として買取が難しい場合は、廃車専門業者へ車を持っていき、スクラップとしての買取と廃車手続きをお願いしましょう。

廃車は一部の中古車販売店でも取り扱っていますが、手数料を取られる可能性があります。廃車専門業者ならスクラップやパーツ単体として事故車を買い取ってもらえるだけでなく、格安で廃車手続きを代行してくれます。

基本的に車の廃車処分は廃車専門業者がおすすめです。

廃車手続きは自分で行うものですか?
廃車は個人で手続きすることもできますが、専門業者に代行してもらう方法もあります。個人だと車両を解体工場に持って行き、市役所で各種証明書を発行するなど手間がかかります。そのため、廃車専門業者に手続き代行を依頼するのがおすすめです。

廃車から次の車を購入するまでの流れを解説

廃車から次の車を購入するまでの流れを解説
車両の損傷が激しく廃車にせざるを得ない場合、廃車手続きや保険の適用と同時に次の車をどうするか決めなければなりません。

ここからは、廃車手続きから新しい車の購入までの手順について解説します。

①廃車の代行を行える業者へ依頼する

まず、車両の廃車が決まれば廃車の取り扱いがある業者や販売店へ車両を持って行きましょう。電話連絡で引き取りの日程を決め、レッカー車を手配してもらいます。

廃車手続きの代行ができる業者は、主に以下の3つです。

  • 廃車専門業者
  • 中古車販売店
  • ディーラー

基本は代行手数料が無料または格安の廃車専門業者を選択しますが、車が急ぎで必要な場合は廃車と購入を同時に行える中古車販売店もしくはディーラーを選びましょう。ただし、代行手数料が高い傾向があるため、注意しましょう。

②ディーラーや中古車販売店で次の車を見積もり・購入

廃車手続きと同時進行でディーラーや中古車販売店で次に買う車を検討しましょう。

店舗によっては車両の状態次第で新車購入の下取りとして扱ってもらえる可能性があります。下取り可能なら購入の負担を大きく下げられるため、来店前に一度店舗へ電話して相談しましょう。

③廃車手続きと車購入に必要な書類を揃える

廃車手続きと車の購入に必要な書類には、何点か共通のものがあります。同じ書類を何度も発行するのは手間なので、1度で用意しましょう。

廃車手続きを代行している場合、基本的に市役所ですべての書類が揃えられます。

廃車手続きの代行と車の購入で共通の提出書類は以下の3点です。

  • 実印を押した委任状
  • 運転免許証のコピー
  • 印鑑証明書

この他、廃車手続きには車検証や自賠責保険証が、車の購入では車庫証明書が必要です。

なお、車の購入で下取りがある場合は、譲渡証明書・自賠責保険証・車検証・リサイクル券の預託証明書・自動車税の納税証明書も必要です。

まとめ

①事故の後に車を移せる場所は「自宅・修理工場・警察が管轄する保管所」の3つのみ
②損傷が軽微な場合は自分で運転、損傷が激しい場合はレッカー車を手配
③レッカー車の手配は基本有償だが、保険会社のロードサービスやJAFの利用なら無料
④車両が事故車として扱われるかは骨格部分が損傷しているかによる
⑤事故車を処分する際は買取できないか査定を受けるところからスタート

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