親名義の車を売却することは十分想定できます。例えば、親からマイカーを譲ってもらったときや、親が亡くなって車を相続した場合も考えられます。
親名義の車をそのままの状態で売却できるかは、ケースバイケースです。そのままで売却できるケースもあれば、名義変更してから売りに出さないといけない場合もあります。
この記事では、親名義のままで売却できる場合と名義変更しなければいけない場合について見ていきます。また、名義変更の手続き方法についても紹介するので、参考にしてください。
親名義の車を売却できるかどうかはケースバイケース
親名義の車をそのまま売却できるかどうかは、ケースバイケースです。まず、名義になっている親が健在かどうかで変わってきます。
親が存命であれば、名義変更しないでそのままで車売却は可能です。ただし、死亡していなくても、売買の場に立ち会えるのか、売却する意思があるかどうかによって手続きの方法は変わってきます。
親が認知症になっていて、意思疎通が難しくなっていると成年後見人制度を利用しなければならない場合もあります。
親名義のまま車売却できるケースについて
親名義のままで車売却できるケースは、実はいろいろとあります。名義変更の手続きをせずに売却できるので、いち早く車を処分したい時には重宝します。
親が車売却に関して協力できれば、円滑に売却できるでしょう。協力が何かしらの理由で得られない場合、必要書類をより多く準備するなど手続きが複雑になるかもしれません。
ここでは、親名義のままで車売却できる代表的な事例について、いくつかピックアップしました。
名義になっている親が健在で、売買手続きの場に同席できる場合には名義変更せずに売却できます。自分名義の車を売却する時とほとんど同じような手続きの流れで売却可能です。
名義変更のために必要な書類を準備して、売買契約を交わしましょう。書類に押印するための印鑑は親名義のものを準備してください。普通車を売却する場合は実印でなければならないので、印鑑証明書も手配してもらいましょう。
このように自分の車を売却する時と手間はほとんど変わりありません。車を売却する際は親に同席をお願いするのがおすすめです。
親は健在でも、売買の場になんらかの理由で立ち会えないという事態も想定できるでしょう。仕事などでスケジュールの都合がどうしてもつかなかったり、遠方に住んでいて交渉の場に出てくるのが難しかったりする場合です。
親が売買の席に出られない場合、子どもが代理人となって車を売却する方法があります。委任状を作成して提示すれば、問題なく親名義のままで売却が可能です。
委任状の他にも、代理人である子どもの印鑑と身分証明書も必要です。普通車の売却であれば実印が必要で、印鑑証明書もあわせて準備しなければなりません。
親が病気やけがで入院していて、立ち会えない場合もあるでしょう。親から自分の車を処分してほしいとお願いされたら、このように代理人として手続きするのも一考です。
親が認知症になって、売買契約の判断能力が失われている場合、成年後見人制度を利用して売却する方法が考えられます。
成年後見人の手続きは親の住んでいる場所を管轄する家庭裁判所にて行います。申立てをするためには申立事情説明書や財産目録、収支状況報告書などの書類が必要です。
申立てが受理されると後見人の候補者や親との面接などを実施して、誰かが後見人となるべきか審理が行われます。成年後見人に選任されると、子どもの実印や印鑑証明書を用意します。親の印鑑登録は抹消されるからです。
成年後見人が選任されるまでには、申立てから1~2か月程度かかるのが一般的です。速やかに親名義の車を売却するためには、成年後見人の手続きも早めに始めると良いでしょう。
親が海外で暮らしていて、日本国内で保有している車を売却する場合も親名義のままで手続きを進められます。この場合、ネックになるのが印鑑証明書です。
印鑑証明書を発行してもらうためには、印鑑登録が必要です。しかし、印鑑登録は日本国内に住民登録がなければ手続きできません。
もし親が海外に滞在しているのであれば、署名証明と呼ばれる書類を取得しましょう。印鑑証明書に代わる書類で、在外公館で取得可能です。
後は別項で紹介した代理人となって車売却する際と手続きは基本的に一緒です。親に署名証明と委任状を作成してもらい送付してもらって、子どもが代理人となって売買契約の手続きを進めましょう。
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親名義の車を名義変更してから売却するケースについて
親名義のままで車を売却できる場合もあれば、親から子どもに名義変更した上で売却手続きを進めないといけない場合もあります。
ここからは、名義変更の伴う売却手続きとして、どのような事例が考えられるか紹介していきます。
亡くなった親の車を売却する場合、相続人に名義変更してから、車を売却する必要があります。
もし複数相続人がいる場合には、誰かがどの遺産を相続するか遺産分割協議を行いましょう。そしてその内容を記録するために、遺産分割協議書と呼ばれる書類を作成してください。
遺産分割協議書は、相続人に名義変更するために必要な書類です。その他にも相続人全員の印鑑証明と戸籍謄本、被相続人である親の戸籍謄本が必要です。また、相続人の住民票と車庫証明も必要になります。
戸籍謄本は従来、本籍地でしか取得できず遠方に本籍がある場合に取得に手間がかかりました。しかし、現在は広域交付制度ができたため、現住所の市区町村役場でも取得できるようになり便利になっています。
親が行方不明で音信不通になっているが、手元に親名義の車がある場合、名義変更の手続きができないので売却したくてもできない状況が続きます。
もし親と音信不通になっていて、どこにいるかも分からなければ、失踪宣告の手続きを進めましょう。
失踪宣告の手続きは、親の住んでいた場所を管轄する家庭裁判所にて行います。申立手続きをして、7年間生死不明の状況が続けば失踪宣告が認められます。
失踪宣告されれば、親が生きているか亡くなっているか関係なく、死亡したのと同じ扱いです。すなわち相続して、自分に名義変更したら売却は可能です。
連絡がつかないからといって勝手に売却すると、後で親が発見されたときにトラブルになる可能性があるので注意しましょう。
親が保有している車でも、ローンで購入して完済できていない場合、車の所有権は販売したディーラーもしくはローン会社になっている可能性があります。
車の所有権がディーラーやローン会社のままでは勝手に売却できないため、所有権解除の手続きをして、名義変更をしてから売却します。
所有権解除するためには、残債を一括返済する必要があります。もし車を売却して、残債を超える買取価格になれば、売却代金で一括返済するので名義変更できます。
一方、売却代金が残債よりも下回った場合、不足分を自分で用意しなければなりません。もしくは新たにローンを組んで、残債を借り入れて所有権解除する方法もあります。
まずは親の車を査定に出して、いくら程度で買取可能か情報収集しましょう。
車の名義変更の手続きについて
親が亡くなって自分が車を相続することになった、親が行方不明で失踪宣告が認められた場合には、名義変更をして車を売却します。
では、親名義の車を自分の名義へ変更するためにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、名義変更の手続きの一般的な流れについて紹介します。実際に手続きする際は参考にしてください。
名義変更のために必要書類をすべて準備しましょう。必要書類は、普通車と軽自動車によって内容が異なります。
普通車と軽自動車共通で必要な書類は、「車検証」「ナンバープレート」です。
普通車の場合、これらに加えて「実印」と「印鑑証明書」が必要になります。
軽自動車の場合は新しい所有者の住所を証明できる書類が必要です。具体的には「住民票のコピー」「印鑑証明書」などが考えられます。住民票の場合、マイナンバーの記載されていないものを用意しましょう。
もし親と別居している場合は「車庫証明書」を提出しなければならないため、忘れずに取得しておきましょう。
必要書類をすべて準備できたところで、必要書類を持参して名義変更の手続きを実際に行います。
普通車の場合、自宅の最寄りの運輸支局もしくは検査登録事務所が受付窓口です。
軽自動車の場合は軽自動車検査協会やその支所、分室が受付窓口になるので最寄りの場所で手続きしましょう。
手続きをする場所は、新しく所有者になる人が住んでいる場所を管轄している運輸支局や軽自動車検査協会です。どこでも手続きできるわけではないので、注意しましょう。
どこに受付窓口があるのかは、普通車の場合は国土交通省のホームページ、軽自動車の場合は軽自動車検査協会のホームページで確認できます。あらかじめ場所をチェックして、手続きしましょう。
窓口に到着したら、申請に必要な書類を作成して提出しましょう。
申請のために必要な書類は「申請書」「手数料納付書」「税申告書」「自動車検査登録印紙」です。いずれも、受付窓口のところで入手できるので名義変更の手続きがしたい旨を伝えましょう。また、ホームページで書類はダウンロードできるので、前もってプリントアウトして必要事項を記入することも可能です。
普通車の場合、名義変更手続きの際に手数料がかかる点はあらかじめ理解しておきましょう。料金は500円です。自動車検査登録印紙を購入して納付します。
軽自動車の場合、名義変更で手数料はかかりません。
もし別居している親名義の車の名義変更をする場合、車庫証明書を取得しなければなりません。
同居している場合は原則、車庫証明を取得する必要はありませんが、いくつか例外があるので、次に紹介するケースに該当する場合には車庫証明の取得申請を進めておきましょう。
同じマンションでも部屋番号が異なる、同居していても車検証に記載の住所と現住所が一致していない場合です。
車庫証明を取得するためには「自動車保管場所証明申請書」や「保管場所標章交付申請書」を作成します。いずれもWebサイトからダウンロードできますが、元は複写式の書類なので2枚づつ用意する必要がある点に注意してください。
「保管場所の所在図と配置図」も必要書類になります。もし保管場所が自分の保有しているものであれば「自認書」、借りているものなら「保管場所使用承諾証明書」や「賃貸契約書」の写しが必要です。
車庫証明を取得する際は手数料も必要です。自治体によって違いがあるものの、おおよそ2,500~2,600円程度かかると思ってください。
親から子どもに車を譲渡した場合、贈与税が発生する可能性がある点に注意しましょう。贈与税が発生するかどうかは、高級車に該当するかどうかで判断されます。
もし日常生活や教育のために必要不可欠な車であると判断されれば、贈与税の課税対象外です。しかし、日常生活の範疇を超えるような高級車だと判断されると、贈与税が課税されるかもしれません。
譲渡した車種によっては、環境性能割が発生する可能性もあります。排出ガスや燃費性能の優れた、いわゆるエコカーを対象にした税負担が軽減されるものです。
環境性能割は、名義変更手続きを行う際に合わせて申告の上納税しましょう。運輸支局の敷地内にある自動車税事務所、軽自動車であれば全国軽自動車協会で手続きしてください。
親名義の車を売却する際の注意点
親名義の車を売却する際に注意すべきポイントについて、ここでいくつかピックアップしてみました。
すぐに売却しないのであれば、任意保険を引き継ぐのも一考です。
親が売買交渉の場に立ち会えない場合には、委任状を作成してもらう必要があるでしょう。委任状を作成する際は法的に有効な条件を満たすように注意してください。
親名義の車で任意保険に加入しているケースも多いでしょう。名義変更する際にはこちらの任意保険の手続きも必要なので、忘れないようにしましょう。
任意保険は等級があって、等級ごとに保険料は異なります。等級は同居家族であれば、引き継ぎが可能です。等級引き継ぎは6親等まで対象なので、孫やいとこまで引き継ぎできます。
等級が高ければ保険料の割引率も高いので、保険料負担を軽くするために引き継ぐと良いでしょう。
もし親が亡くなっている場合でも同居家族であれば、生前の親の等級は有効で引き継ぎも可能です。
親名義のまま車を売却する方法として、子どもが代理人になって売る方法があります。この場合、代理人は委任状をもって手続きしなければなりません。
委任状を作成する際には、法的に認められるためにいくつか条件があるので注意してください。
まず実印が必要なので、印鑑証明書もあわせて取得しておきましょう。
また、委任状は本人が必ず作成します。代理人が勝手に作成して、署名・捺印しても法的に有効であるとは認められません。
委任状の有効期限はとくに法的に定められているわけではありませんが、添付する印鑑証明書は一般的に発行から3か月以内のものが有効です。そのため、委任状も3か月以内ものが有効であると一般的に考えられています。
親名義の車を売却しようと思っても、売却できない場合もあるでしょう。そのため、どうしても処分したい場合は廃車にする方法もあります。
廃車手続きの方法は、車を売却する方法と基本的には一緒です。しかし、親と連絡がつかない場合には、若干手続き方法に違いがあります。
もし親が保有している自動車を放置したまま行方不明になった場合、車検を通さないでそのままにするでしょう。すると車検切れの状態になってしまいます。
車検切れの場合で5年以上経過すると、陸運局から登録抹消に関する連絡が来ます。この際に廃車手続きを進めてしまえば、売却の時のように失踪宣告が認められるまで待ち続ける必要もありません。
古い年式の車だったり、壊れていたりすると売却できないでしょう。その場合には廃車で処分を進めてください。
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