所有する車の廃車を決めた時、所有者名義が自分であれば手続きはスムーズに進みます。

しかし、他の人が所有する車の場合は名義変更を行ってから廃車手続きをすることが求められます。

特に所有者が亡くなられた場合は手続きに時間がかかるため、関係者に声をかけて早めの対応を行いましょう。

この記事では、廃車手続きに名義変更が必要なケースを具体例をもとに紹介します。後半では名義変更できない場合の対処法も紹介するため、廃車についてお悩みの際はぜひご活用ください。

廃車の時に行う名義変更とは?

廃車の際に名義変更を行う目的は、自動車の所有者を明らかにした上で手続きを進めるためです。

所有者が曖昧なまま廃車手続きを進めると、後々のトラブルに対応できず、事態が悪化する可能性もあるでしょう。

なお、廃車における名義変更は現在の所有者から名義を移転することから「移転抹消」と呼ばれます。

ここからは、廃車時に知っておきたい名義変更について概要を解説します。

移転抹消とは?

移転抹消とは?
移転抹消は、車検証における所有者の名義を変えた上で、車の抹消登録を行う手続きを指します。

例えば、所有者がCさんである車を親族のBさんが貰う場合に、CさんからBさんに名義変更を行い、それと同時にナンバーを返却して公道を走れない状態にする、抹消登録を行うケースが挙げられます。

なお、移転抹消は個人間のケースだけでなく、業者間でも行われる手続きです。

例えば、中古車販売の会社が県外ナンバーの車を仕入れる場合は、管轄である地域にて名義変更を行って登録抹消を行う際も移転抹消の扱いになります。

所有者しか廃車手続きができない理由

廃車手続きの権利を持っているのは、あくまで所有者です。使用者であっても勝手に廃車手続きはできません。

その理由は、所有者以外が廃車手続きをできてしまうと犯罪やトラブルが多発するため、厳しく取り決められています。

廃車手続き時に名義変更が必要なケース

廃車手続き時に名義変更が必要なケース
ここからは、廃車手続き時に名義変更が求められる具体的なケースを紹介します。

名義変更は所有者が家族であっても必要です。当てはまるケースを参考に手続きを進めましょう。

ケース①車の名義が家族や知人の場合

どれだけ親しい間柄であっても、車の名義が自分以外である場合は名義変更が必要です。

管轄の運輸局にて、移転登録(名義変更手続き)を行いましょう。
移転登録の際に必要な書類は、主に下記のとおりです。

  • 委任状(旧所有者の実印を押印したもの)
  • 旧所有者の印鑑証明書
  • 新しい所有者の印鑑証明書
  • 新しい所有者の実印

手続きによっては他の書類提出を求められる場合もあるため、業者や運輸局で確認の上、書類を揃えましょう。

なお、名義変更が難しい場合は委任状を使って家族が廃車手続きを行えます。委任状は国土交通省のホームページからダウンロードできるほか、廃車手続きを業者で行う場合はもらうことができるでしょう。

ケース②所有者がいない場合

廃車予定の車において、所有者がすでに亡くなっている場合にも名義変更が求められます。

なお、所有者が亡くなった場合は相続の扱いになるため、相続人の決定の後に書類を準備して手続きの流れに進みます。

参考までに下記は必要書類の一例です。

  • 車検証
  • 戸籍謄本または戸籍の全部事項証明書
  • 印鑑証明書(相続人)
  • 実印(相続人)
  • 委任状(相続人以外が手続きを行う場合)

相続人以外の親族が廃車手続きを行う場合にも委任状が必要です。

また、廃車手続きの種類が永久抹消登録ではなく、一時抹消登録の場合は「遺産分割協議書または遺産分割協議成立申立書」の提出が求められます。※車の価値が100万円以下の場合のみ

一時抹消登録の場合は車が手元に残るため、相続人間でトラブルが起こらないように追加で書類提出が必要です。

ケース③所有者がローン会社やディーラーの場合

車を購入する場合、ローンを組むケースが多いでしょう。

ローンを組んで車を購入する場合、支払いが済むまでは、所有者がローン会社やディーラーに設定されています。そのため、ローンを完済してから名義変更を行います。

基本的にローンが残っている車を廃車にはできないと理解しておきましょう。

なお、ローンを完済した後に廃車手続きを行う場合は下記の書類を準備します。

  • 車検証
  • 新所有者の印鑑証明
  • 新所有者の実印
  • 完済証明

完済証明はローンを組んでいる金融機関にて発行されます。ローンを全て支払い終わったら手元に残しておきましょう。

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名義変更時に必要な書類

名義変更時に必要な書類
ここからは、名義変更に必要な書類について、旧所有者と新所有者にわけて詳しく解説します。

書類を揃える場合、双方ともに各種証明書の期限に注意しましょう。

旧所有者が用意する書類

旧所有者が用意する必要書類の一例は、下記のとおりです。

  • 申請書(OCRシート1号)
  • 手数料納付書(自動車検査登録印紙を添付)
  • 自動車検査証(車検の有効期間のあるもの)
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
  • 譲渡証明書(新旧所有者を記入して旧所有者の実印を押印)
  • 印鑑(本人が直接申請する場合は印鑑証明書の印鑑、代理人が申請する場合は記名)
  • 委任状(代理人による申請を行う場合は実印を押印したもの、本人が直接申請する場合は不要)

印鑑証明書については発行から3ヶ月以内の物を提出します。また、印鑑については実印が必要なため、早めの準備が必要です。

申請書は国土交通省のホームページのほか、業者に手続きを依頼する場合は準備してもらえるでしょう。

新所有者が用意する書類

新所有者が用意する必要書類の一例は、下記のとおりです。

  • 新所有者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
  • 新所有者の印鑑(本人が直接申請する場合は印鑑証明書の印鑑、代理人が申請する場合は記名で)
  • 新所有者の委任状(代理人による申請を行う場合は実印を押印。本人が直接申請する場合は不要)
  • 新所有者の自動車保管場所証明書(管轄する警察署から証明を受けている。また発行後、概ね1ヶ月以内)

新所有者の必要書類として特徴的なものは、自動車の保管場所証明書(車庫証明)です。

軽自動車の場合は地域によって車庫証明が不要なケースもあります。最寄りの警察署で確認しましょう。

なお、書類のテンプレートについては警視庁のホームページからも取得可能です。

追加で必要になる場合がある書類

なお、これまで解説した書類以外にも下記の提出を求められるケースがあります。

  • 新使用者の住所がわかる書類
    (個人においては住民票や印鑑証明書の提出。法人契約の場合は登記簿謄本等でかつ発行後3ヶ月以内の書類)
  • 新使用者の印鑑
    (本人が直接申請するときは認印可。代理人が申請する場合は記名)
  • 新使用者の委任状
    (代理人による申請を行う場合は認印を押印したもの)
未成年者に車を譲る場合、名義変更に必要な書類は何か変わりますか?
未成年者に車を譲渡する場合でも、基本的な必要書類は同じです。なお、未成年者の場合は以下の書類も追加で提出します。
・両親の実印を押した同意書
・戸籍謄本
・両親のうち1名の印鑑証明書

廃車の名義変更を行う流れ

廃車の名義変更を行う流れ
廃車の名義変更を行う場合、下記のステップで進めます。

  1. 必要書類を準備する
  2. 運輸支局で申請書と登録印紙を購入して記入する
  3. 必要書類を運輸支局に提出し新たな車検証を交付してもらう
  4. 税申告窓口で書類を提出する
  5. ナンバープレートを返却する

なお、ナンバープレートは廃車の際に返却処分されますが、持ち帰りたい場合は別途穴あけ処理をしたものを受け取れます。

名義変更と廃車手続きは同時に行えますか?
「移転抹消」の手続きにより、廃車手続きと名義変更を同時に行えます。

車の所有者が死亡した場合の名義変更方法

車の所有者が死亡した場合の名義変更方法
ここからは、車の所有者が亡くなった場合に取る手続きを紹介します。

親しい間柄にある方が亡くなると、通夜や葬儀以外にも様々な手続きが求められます。

多くの申請がある中で車の手続きに戸惑わないよう事前に知識を深めましょう。

特定の相続人に名義変更する場合

家族や親族など、特定の相続人で名義変更を行う場合の必要書類は、下記のとおりです。

  • 車検証
  • 戸籍謄本(戸籍の全部事項証明書)

相続人複数人によって手続きを行う場合は、下記の書類が必要です。

  • 印鑑証明書
  • 相続人全員の実印
  • 新所有者以外の相続人全員の譲渡証明書

やむを得ない事情があり、これない方がいる場合は委任状が別途必要です。

また、遺産分割協議において譲渡を行う場合は別途書類が求められます。法務局や金融機関、税務署など分割協議相談を行う際にあわせて確認を行いましょう。

第三者に車を譲渡する場合

親族でない第三者に車を譲渡する場合における必要書類を紹介します。

まず相続人が一度相続を行った上で手続きを進めます。相続人の必要書類は下記のとおりです。

  • 車検証
  • 戸籍謄本

名義変更後に車を所有する人(新所有者)の必要書類は下記のとおりです。

  • 印鑑証明書
  • 実印
  • 車庫証明書(別途管轄の警察署にて手続き)

また、新しい所有者と使用者が異なる場合は、使用者の住民票や委任状が必要です。

死亡した所有者の車のローンが残っている場合はローン残高も相続することになりますか?
ローンが残っている車を相続する場合、ローンの支払いもあわせて相続します。なお、ローン残高が高額で支払えない場合は相続放棄も可能です。ただし、ローンが残った車だけ放棄することはできないため、あわせて全財産を放棄する可能性が高いでしょう。

廃車手続きは2種類ある

廃車手続きは2種類ある
ここからは廃車手続きについて解説します。

廃車手続きは冒頭で説明した「移転抹消」と呼ばれるもの以外に、大きく分けて「一時抹消登録」と「永久抹消登録」があります。

各手続きによって意味合いが大きく異なるため理解を深めましょう。

一時抹消登録

一時抹消登録は車を手元に残したまま、登録を解除してナンバープレートを返還する手続きを指します。

一般的に、自動車は運輸局で登録を受けてナンバープレートをつけた状態でしか走行できません。登録が済んでいない車を走らせた場合は罰則が課せられます。

なお、一時抹消登録をした後、車は公道を走れない代わりに各種税金が発生しない状態になります。そのため、所有者から車を譲り受けたものの、しばらく使う予定がない場合や、思い入れが強く走行できないものの車を保有したい場合に適した手続きです。

なお、一時抹消登録した車に再び乗る場合は別途手続きが必要です。その際は、一時抹消登録した際に発行された書類が必要なので、全て手元に残しておきましょう。

永久抹消登録

永久抹消登録は車を完全に廃車してしまう状態を指します。

譲り受けた車に乗る人がいない場合や、車の状態が悪くて使用する見込みがない場合に手続きを行います。

手続きは一時抹消同様に運輸局で行い、完了すると一切その車に乗れません。

なお、永久抹消登録の場合は、車の車検が切れた状態であったり、すでに解体の手続きを進めていたりする段階で、同時に進行します。

廃車手続き前に名義変更ができないケースと対策

廃車手続き前に名義変更ができないケースと対策
ここからは、名義変更ができないケースを紹介していきます。

ローンが残っている場合や所有者に判断能力がない場合は別途手続きが求められます。必要な対処法を知り、不安を解消しましょう。

車のローンが残っている場合

ローン組んで車を購入した場合は、所有者がローン会社やディーラーに設定されていることが多いでしょう。

そのため、廃車にしたくとも自身は使用者の扱いになるため手続きを進められません。その場合、まずはローンの完済を行いましょう。

なお、銀行のローンの中には車を担保としない商品もあり、その場合は所有者が自身の名前になっていることがあります。車の所有者は車検証で確認できます。

名義が自身の名前になっている場合は廃車手続きを行えますが、名義がローン会社やディーラーの場合は、ローンの完済を最初に行いましょう。

所有者が認知症で名義変更手続きが進められない場合

高齢化が進み、年配の車保有で課題となるのが認知症発症時の対応です。

所有者が認知症の場合、契約に対する責任能力がないと判断されます。そのため、どれだけ本人のその他の健康状態が良かったり、同居していたりしていても手続きができない可能性があります。

認知症で名義変更ができない場合は、別途「成年後見人」を立てる手続きが必要です。

成年後見人は、対象者が認知症や精神障害、知的障害などが原因で判断能力が不十分となった場合にサポートします。

具体的には、日々のお金や不動産の管理を、様々な契約やサービスなどの締結・取消を代行可能です。そのため、車の名義変更や廃車手続きにおいても成年後見人が本人に代わって名義変更手続きを進められます。

なお、成年後見人は家庭裁判所に申し立てて手続きを進めます。

所有者の所在が不明な場合

所有者の所在が不明で連絡がつかない場合も名義変更ができません。

所在不明の場合は車籍(車の登録のこと)が自然消滅するのを待ちます。

自然消滅は車が車検切れのまま3年または5年経過すると運輸支局から強制的に登録を抹消するという通知が届くタイミングが該当します。

知らせを待って所有者不在のまま登録を抹消すると、名義変更無しで廃車手続きが可能です。

基本的には所有者を明らかにした状態で名義変更を行い、廃車手続きを進めますが、難しい場合は不法投棄を行わずに運輸支局や買取・廃車業者からアドバイスを受けながら手続きを進めましょう。

車を譲渡する場合の注意点は3つ

車を譲渡する場合の注意点は3つ
ここからは、車を廃車するだけでなく第三者に買い取ってもらう場合の名義変更について解説します。

特に個人間で車の買取・引き渡しを行う場合は手続きに時間や手間がかかり、トラブルが起こる可能性もあります。事前に対処法を確認しましょう。

注意点①車の引き渡し後も売主側が税金を支払う可能性がある

車は毎年、自動車税が発生します。自動車税は所有者に支払い義務があるため、名義変更のタイミングによっては売主側が支払うケースもあるでしょう。

自動車税は4月1日時点の所有者に対して課されるため、引き渡し後に名義変更が行われないまま4月1日を過ぎた場合は、旧所有者に支払い義務が生じます。

車の譲渡のタイミングはもちろん、名義変更においても自動車税を考慮しながら計画的に手続きを進めましょう。

注意点②売主側に違反金が発生する可能性がある

名義変更が正しく行われていない場合、トラブルが起きた際に旧所有者が巻き込まれる可能性があります。

例えば、譲渡した新所有者が駐車違反した場合は、登録番号で対象者が割り出されるため、旧所有者に違反通知が届きます。

不要なトラブルを防ぐためにも名義変更は確実に済ませましょう。

注意点③事故や事件発生時に売主側が捜査対象になる可能性がある

名義変更を行っていない場合、車にまつわる事故や事件が発生した際も旧所有者が巻き込まれる恐れがあります。

事件や事故発生時も登録番号や車検証から所有者を特定されるため、旧所有者が事情聴取への協力を要請されたり、民事上損害賠償請求を受けたりする点が懸念材料です。

すでに手放した車にもかかわらず、名義変更していないばかりにトラブルに巻き込まれては、やるせない気持ちになるでしょう。

自分の身を守るためにも、名義変更は引渡し時に必ず済ませましょう。

車の個人売買で名義変更が円滑に進まない場合の対処法

車の個人売買で名義変更が円滑に進まない場合の対処法
ここからは、車の個人間のやりとりにおいて、名義変更が円滑に進まない場合の対処法を紹介します。

電話やメールで名義変更の催促を行う

知人に車を譲り渡す場合、お金のやりとりが終わったとしても、名義変更が済んでいないケースも想定されます。

その場合は、まず電話やメールで名義変更をするよう連絡しましょう。

相手が手続きを忘れていた場合や、忙しくて行く時間がなかった場合などは、連絡を受けてすぐに対応してくれるケースも多く、トラブルにはなりにくいでしょう。

ただし、必要な書類が不明だったり揃っていない場合は、定期的に連絡を入れて進捗を確認しましょう。なお、自賠責保険や任意保険の手続きもあわせて確認すると親切です。

内容証明を送付する

催促の連絡を何度か入れても手続きを行わない場合は、心苦しく感じますが内容証明郵便を送付します。

内容証明郵便は「いつ、どのような内容の文書を、誰に送付したのか」を証明する効果があります。

内容証明の文言に「法的措置も検討している」と記載すると買主に早く名義変更をする必要があると認識してもらえるでしょう。

ただし、送付後はコミュニケーションが取りづらくなるため、できる限り催促の段階で解決できるのが望ましいです。

弁護士に依頼する

連絡や内容証明を送付しても、返答が得られなかったり、手続きが行われなかったりする場合は弁護士に相談しましょう。

弁護士から名義変更を行うよう連絡してもらうことで、相手は手続きを進めなければいけない危機感に見舞われます。また、弁護士が介入すると当人同士でのトラブルを避け、正確なやり取りが行えます。

依頼するには費用がかかるため、できる限り避けたい事態ですが、やむを得ない場合は検討しましょう。後々、損害賠償でより高い金額を負担するよりも、はるかにリスクを減らせます。

トラブルを避けるためにも廃車買取業者への依頼がおすすめ

トラブルを避けるためにも廃車買取業者への依頼がおすすめ
個人間で車の売買を行うと、手続きの不明瞭さからトラブルが起こりやすいでしょう。そのため、車を廃車にしたり売却したりする場合は買取や廃車の専門業者を利用するのがおすすめです。

業者であれば豊富な実績を元に適切な手続きを踏めます。また、必要書類についても事前に準備してもらえ、かつ明確に指示してもらえるので安心して車の処分を行えるでしょう。

業者を選定する場合は、複数社に見積もりや相談をして、信頼できる業者を探しましょう。

まとめ

①車を廃車する場合は名義変更が必要
②ローンで車を購入した場合は、まず完済が必要
③廃車における名義変更は相手の状態によっては難しく別途手続きが必要な場合もある
④個人間で車の売買を行う場合はトラブルが起こりやすいため対策が大切
⑤トラブルをなくして車を処分したい場合は信頼できる業者への依頼がおすすめ

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