車を所有する際は自賠責保険への加入が義務付けられています。また、自賠責保険では補償されない部分をカバーするために任意保険に加入する人も多くいます。
しかし、これらの保険は車の廃車と同時に解約が必要です。保険の解約を忘れていると、翌年に再び支払いが発生する可能性が高いでしょう。
この記事では、自分で廃車手続きを行う場合に知っておきたい保険の解約方法や注意点について解説します。
廃車時は自賠責保険と任意保険の手続きが必要
今後、車に乗らない場合は廃車か売却をして手放す必要があります。
まだ状態がいい車の場合は買取査定に出すのがおすすめですが、故障がある場合や年式が古い車の場合は廃車手続きをしましょう。
廃車手続きは、ディーラーや中古車販売店、廃車専門業者で依頼して済ませられますが、加入している保険の手続きはサポートを受けながらも自分で行わなければいけません。
特に、任意保険は各業者がサポートしてくれない範囲のため、事前に手続きの流れを理解しておくと安心です。
保険を解約すると還付金や返戻金がもらえる可能性もあるため、忘れずに手続きを行いましょう。
保険の手続きは複雑に感じるかもしれませんが、目的や補償内容を把握すると解約の流れが分かりやすくなります。
車の保険には何がある?
車の保険は大きく分けて「自賠責保険」と「任意保険」の2種類があります。
ここからは、車を所有する人が必ず知っておきたい保険について紹介します。
廃車手続きを行う場合、両保険の特性を把握すると手続きがスムーズです。加入の手続き方法や補償内容への理解を深めましょう。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づき全ての自動車が加入を義務付けられています。交通事故における被害者の救済と、加害者が負う経済的負担を助ける目的で制定されています。
自賠責保険は人を救済する目的の保険であることから対物事故には対応していません。そのため、縁石に乗り上げたり電柱にぶつかったり物損事故を起こした場合は補償の対象外です。
なお、自賠責保険は加入義務があるため事故を起こしていなくとも、未加入で運転した場合は1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。
また、運転中に自賠責保険証明書を所持していない場合も30万円以下の罰金が科せられるため、必ず車検証とともに社内に保管しましょう。
廃車時に自賠責保険を解約する場合は、自分で保険会社に連絡して手続きを行います。
任意保険は車を運転する人が必要に応じて加入する保険で、「自動車保険」とも呼ばれます。
自賠責保険において対人補償はされますが、対物補償はされないため、万が一の時に多額の支払いが発生する可能性があります。
自賠責保険では補えない部分を任意保険で補償することで安心して車に乗れたり、事故が発生した際に高額な支払いの発生を防げたりするでしょう。
補償内容や金額は保険会社ごとに異なるため、加入時は内容の確認が欠かせません。
なお、廃車時に任意保険を解約する場合は、自分で手続きする必要があります。
各保険の解約方法を解説
ここからは、自賠責保険と任意保険、それぞれの解約方法を紹介します。
いずれも運転時に車と人を守る保険ですが、解約方法やタイミングは異なります。
自賠責保険の場合、車の解体が済んでから解約手続きを進めます。
自賠責保険は義務付けられた保険という特性上、車が残存している限り解約できません。そのため、解体せずに売却される場合は名義変更して受け継がれる形を取ります。
解約したい場合は解体を済ませ、証明書を持って保険会社に問い合わせましょう。
任意保険の加入は強制ではないため、自分の好きなタイミングで解約可能です。しかし、タイミングを誤るとトラブルになる可能性があるため、廃車の引き渡しが終わってから解約するのがおすすめです。
引き渡しの場所に車を運転していく場合、任意保険が切れており、かつ物損事故を起こしてしまったら保険がきかないため多額の支払いが発生します。
事故やトラブルの可能性は低いですが、万が一を想定して任意保険の解約日はゆとりを持ちましょう。
なお、解約を忘れそうという人は「先付け解約」がおすすめです。保険会社に解約予定日を告げて手続きだけ済ませ、決めた日に保険が切れる仕組みです。
任意保険の解約は保険会社のサポートデスクに連絡したり、担当者に伝えたりしましょう。必要書類を準備してくれたり、こちらが提出する書類を教えてくれたりするため、流れに沿って進めます。
廃車時は保険のお金が返ってくる
ここからは、廃車時に戻ってくる保険のお金について解説します。
自賠責保険の場合は「還付金」、任意保険は「返戻金」です。返ってくるタイミングや注意点を把握しておきましょう。
自賠責保険は、車の登録時や車検時にまとまった年数の保険料を支払います。一般的に車検にあわせて支払うため2年分の先払いが多いでしょう。
保険期間内に廃車を行った場合、残りの保険期間が1ヶ月以上あると還付金を受け取れます。
なお、還付金は月単位で計算されます。
任意保険のお金が返ってくる場合は、返戻金(へんれいきん)と呼びます。
返戻金は全員が受け取れるのではなく、保険料を年払いで支払っていたり、半年分を払っていたりする場合に受け取れます。
返ってくる金額は保険会社ごとに異なるため、解約時に確認しましょう。
なお、今後また車に乗る可能性がある場合は、解約ではなく「中断証明書」の発行依頼がおすすめです。
中断証明書であれば現在の等級を10年間維持できるため、次に車を購入した際に保険料を現状と同じ条件で再開できます。「転勤でしばらくは車に乗らないけれど、3年後に返ってきたら乗るかもしれない」という場合に適しています。
廃車時に気をつけたい保険絡みのトラブルを解説
ここからは、廃車に伴う保険解約で起こりうるトラブルを想定し、対策法を紹介していきます。
廃車を決めた際、保険解約の手続きを忘れないようにと早めに連絡し、車の引き渡しが8月25日だったため、8月末で任意保険を解約した場合を想定しましょう。
任意保険を解約したものの、その後廃車手続きが滞り日程が9月中旬になってしまった場合、引き渡し日の時点では任意保険に加入していません。
もしも引渡し前に事故を起こした場合、自賠責保険で対人の補償はありますが、対物の補償はないため費用が発生します。
任意保険は廃車の日程が確定してから解約するか、あらかじめ近日中に解約したいという旨を担当者に伝えておきましょう。
廃車手続きを自分で行った場合、自賠責保険の解約も一人で行います。保険会社に連絡して手続きを進めましょう。
なお、申請書は保険会社から送られてきますが、他にも書類の準備が必要です。
下記は主な必要書類の一覧ですが、保険会社によって多少変わるため事前に確認しておきましょう。
- 自賠責保険証明証
- 廃車証明書
- 本人確認ができるもの
- 自動車損害賠償責任保険承認請求書(保険会社が準備する)
手続きは郵送か営業店で行います。 廃車証明書は、車の種別や廃車手続きの違いによって異なるため注意しましょう。
廃車手続きには、車体をスクラップしてしまう場合に行う「永久抹消登録」と、車を保管するが公道を走れない状態にする「一時抹消登録」があります。さらに、それぞれ普通自動車なのか軽自動車なのかによって、廃車証明書の名称が異なります。
自動車保険のサポートまで考えると廃車は業者に依頼するのがおすすめ
廃車手続きは個人でも行えますが、自動車保険の解約サポートまで考えると業者への依頼が望ましいでしょう。
ここからは、廃車手続きを代行してくれる3つの業者について解説します。
現在所有する車を手放して新たに中古車を購入する場合、中古車販売店で廃車も依頼しましょう。
中古車販売店では、中古車の取り扱いだけでなく廃車手続きも可能です。費用は無料の場合と有料の場合があるため、あらかじめ確認しておきましょう。
なお、中古車販売店で廃車手続きを行う場合、担当者が新しい車の納車タイミングと廃車のタイミングを調整してくれます。初期費用を抑えたい、かつ車を持たない状態を作りたくない場合におすすめの選択肢です。
ただし、中古車は現物を見てから購入を決めましょう。ネット上で見た情報だけでは細かな傷や車全体の雰囲気が掴みきれません。購入して後悔しないためにも現物確認や試乗が大切です。
今後車に乗る予定がない場合、廃車専門業者に依頼すると手続きがスムーズです。
免許を返納したり海外転勤で10年以上帰ってこなかったりする場合は廃車が望ましいでしょう。
廃車専門業者であれば無料で作業をしてくれるため費用を抑えたい場合に適しています。
ただし、自走できない車の場合はレッカーの手配で費用がかかる可能性があります。廃車専門業者に依頼する場合は事前にレッカー代や追加費用の発生について確認しておくと予想外の出費を減らせるでしょう。
廃車手続き後、ディーラーで車の購入を検討している場合は一貫して任せると効率的に進められます。
新車を購入する場合や特定のディーラーでいつも車を買っている場合、すでにメーカーや担当者と関係を築けているため話が通りやすかったり、質問をしやすかったりします。
ただし、ディーラーに廃車手続きを依頼した場合、数万円程度の費用が発生します。さらに廃車は下取りよりも価格が下がるため金額面で注意しましょう。
なお、メーカーによっては下取りキャンペーンとして、廃車費用を実質無料にしているケースも見られます。ディーラーで車を購入する場合はキャンペーン情報やキャッシュバックなどがないか確認してみましょう。
今回紹介した3つの業者は、いずれも安心して廃車手続きが可能です。
しかし、それぞれメリットとデメリットがあるため自分が求めるメリットに合わせた選択がおすすめです。
例えば、次の車は中古車販売店で購入するにも関わらず、廃車専門業者に依頼すると、手続きを両方で行うため労力がかかります。一方、中古車販売店を選択すれば廃車から購入まで一貫してスムーズに対応可能です。
また、今後車に乗らない人が中古車販売店で廃車手続きを依頼すると車のセールストークを煩わしく感じる可能性もあります。
廃車を依頼する場合は「何を優先するか」を考えて業者を決定しましょう。
【廃車前にトライ!】車の買取りを依頼する方法を解説
ここからは、廃車を決める前に一度試してほしい買取について解説します。
廃車の場合、手続きに費用がかかりませんが車の価値もゼロのためプラスにもなりません。車の状態にもよりますが、買取の場合はお金が手に入る可能性があります。
まだ車の状態がよい場合は買取も選択肢に含めましょう。
あまり時間が取れない人や自分の車の相場を知りたい場合、買取サイトの一括査定を活用しましょう。
一括査定では、車種や年式、グレードなど車の情報入力を済ませると複数社でおおよその査定額を把握できます。何社かの金額を見て買取価格の目安をつけましょう。
ただし、一括査定の場合は複数の業者から連絡がくるため、煩わしさを感じる点がデメリットです。サイトを選ぶ際は営業電話をしないと明言しているところを選ぶとよいでしょう。 なお、ここで出る金額はあくまでも目安です。金額の確定は現物査定や詳しく話をした後に行います。
なお、中古車の買取相場は一般財団法人日本自動車査定協会により、おおよその値段が決まっています。決まっている値段を基準に傷や市場での需要を加味して決定します。
一括査定で相場を確認したあとに現地で具体的な査定を受けます。 査定は現地査定と出張査定があります。出張査定の場合、エリアによっては対応していない可能性があるため事前確認が欠かせません。
なお、現地査定の場合、ほとんどの中古車業者ではアポイント無しで査定してもらえます。 しかし、小規模な店舗や一部の業者では新型コロナウイルスによる業務形態変化により予約制の可能性もあります。確実に査定して貰うためにも事前に公式サイトで確認したり電話したりしてから行きましょう。
査定に行く際は、一括査定で高値を提示してくれた店舗2〜3社に絞りましょう。3社程度に絞ったうえで、当日の対応や金額を確認して納得できたら売却手続きを行います。
査定結果に納得したら売買契約を結びます。なお、契約時は書類の提出が求められるため事前に準備を進めましょう。
参考までに、普通自動車の売買で必要な書類は下記のとおりです。
- 車検証
- 実印
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 自賠責保険証明書
- 自動車納税証明書
- 振込先口座の情報
- リサイクル券
なお、車検証における所有者の氏名や住所が現状と異なる場合は、戸籍謄本や住民票が必要です。 また、自治体や業者によって求められる書類が違う可能性もあるため、確認しておいたほうが確実です。
車を手放す場合、売却を試してみた上で金額がつかない時に廃車を検討しましょう。
自分では価値がないと思っている車でも状態が良い場合、パーツだけでも再利用可能で買取してもらえる可能性があります。
そのため、車を手放そうと思った場合は、まずオンラインで一括査定するのがおすすめです。一括査定であれば多くの業者の査定額を一覧できるため、まとめて情報収集ができます。
また、近くの中古車販売店や買取専門業者にて現地で査定して貰う方法もおすすめです。現地査定であれば車体を確認しながらより正確な金額を出してもらえます。
車は高い出費を伴う大切な資産です。できるかぎり売却で資金を確保して手放せるよう査定に出してみましょう。