車を使わなくなった時の選択肢として廃車が挙げられます。
今後一切車を使わない場合は解体業者に依頼してスクラップし、永久抹消登録を行いますが、まだ使えるパーツがある場合「取り外して売ったり再利用したりできないものか」と考えるでしょう。
しかし、パーツの取り外しは注意が必要なため事前に確認しましょう。
この記事では、廃車時に知っておきたい「取り外し」「解体」の違いを紹介します。
パーツの取り外しは種類ごとに注意が必要
結論として、まだ使えるパーツを取り外す場合は、解体に当てはまらないかを確認した上での作業が欠かせません。
自動車リサイクル法の制定以来、車の解体は登録を受けた業者しか行えない仕組みが整っています。
解体に関する様々な条件をクリアした業者だけが作業を行えるため、廃車に関して悪徳な業者を見かける機会は減りつつあります。
しかし、自分で部品を取り外す場合は自身の管理が欠かせません。外してはいけないパーツを把握して解体に抵触しない作業に努めましょう。
取外し可能なパーツは?
解体は自治体から認められた業者のみ作業することができるため、個人では行えません。しかし、パーツの中には自分で取り外せるものもあるため、把握しておきましょう。
経済産業省製造産業局の資料によると下記の付属品取り外しは解体に当たらないとされています。
- カーナビ
- カーステレオやラジオ
- 車内定着式テレビ
- ETC車載器
- 時計
- サンバイザーやサイドバイザー、ブラインド
- 泥除け
- 消火器
- 運賃メーター
- 防犯灯
- 防犯警報装置や防犯ガラス
- タコグラフ
- 自重計
- 運賃料金箱(両替機含む)
ここからは、自家用車で取り外し可能なパーツを具体的に紹介します。
カーナビは解体にあたらないため、自分で取り外し可能なパーツ(アイテム)です。
とくに、ボータブルタイプの場合は自分で購入して両面テープや吸盤で取り付けているため脱着は容易です。工賃をかけずに取り外せるため、次の車でも引き続き使ったり、オークションで販売が可能だったりします。
ただし、カーナビを取り外した後に車を買取りに出す場合はきれいに外しましょう。ダッシュボード部分に傷がつくと査定金額に影響します。
ETCも付属品のため自分で取り外し可能です。車を購入した後に取り付けた場合も該当します。
ただし、車種によってはETC専用の収納箇所があり、そこに取り付けられている場合は工賃が発生する可能性もあります。
どうしても取り外したい場合は業者に工賃を確認し、納得してから取り外しを行いましょう。
近年はあおり運転対策からドライブレコーダーを取り付ける方が多く見られます。
ドライブレコーダーも自分で着脱可能ですが、査定時にプラスに働くことも考えられます。業者によっては使用できるドライブレコーダーがついている場合に金額がアップするケースもあるでしょう。
ドライブレコーダーがついていて、かつ買取を目指す場合はまず業者に相談してから取り外しを検討しましょう。
取り外し不可能なパーツは?
ここからは、自分で取り外してはいけないパーツを紹介します。
勝手に外すと車が使えなくなったり、法にふれたりする可能性があるため理解しておきましょう。
外すことで車検に通らないパーツは取り外せません。
廃車にする場合はあまり関係ありませんが、もし車を買取に出す場合は車検基準を満たした状態での引き渡しが大切です。
車検に通らない車の場合は業者にとって手がかかる車のため、査定金額にマイナス反映されるでしょう。
マフラーが純正でない場合やエアバックを取り外して警告灯が消えない車の場合、買取において不利になります。
下記が取り外し不可能なパーツです。
- エアバック
- ハンドル
- バッテリー
- エンジン
- ドア
- ライト
- ミラー
他にも細かなパーツが挙げられますが、どれも安全な走行には欠かせないものです。
例えば、ライトを取り外してしまうと夜道の走行が危険かつ罰せられます。また、ほとんどないケースではありますがドアを外すと走行できないでしょう。
取り外し不可能なパーツは購入時からついているもので、安全な走行に必要なものになります。
【参考】パーツを取り外した車の解体は個人ではできない
ここからは、参考として車の解体が個人でできない理由を紹介していきます。
解体が禁止される根拠としては2005年に施工された自動車リサイクル法があります。
かつて、車の処分と言えば埋め立てが当たり前でした。しかし、近年は年間で350万台程度の車が廃車されていることからだんだんと埋立地が少なくなり、不法投棄を行う業者も見られました。
車の不法投棄は犯罪の温床になったり、獣害のきっかけになったりするため避けたい問題です。また、自動車部品の処分が適切になされなければ使える資源を処分してしまうことにもつながります。
今ある資源をできる限り活用し、さらに環境に配慮するために解体のルールを設けることは不可欠です。
繰り返しになりますが、車の解体は個人では行えません。自動車の解体には自動車リサイクル法で定められた基準をクリアした業者への依頼が必要です。
具体的な基準は、解体までに外部から侵入されないような囲いを設けた施設があることや廃油に配慮していること、取り外した部品を適切に管理できる施設であることなどです。
解体の際は騒音や廃油による汚れ、安全性への配慮が欠かせません。登録がある業者はそれらをクリアしているため、安全かつ適切に解体作業が行えます。
万が一、許可のない人が車を解体をすると3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されるため避けましょう。
車の解体が必要な場合はお住まいのエリアにある解体業者に依頼が必要です。自分で探すことはもちろん、心当たりがない場合は自治体に相談してアドバイスを受けることもできます。
廃車可能な業者について
後付したパーツは廃車時に自分で取り外せるものの、解体自体は業者への依頼が欠かせません。また、解体後は必要書類を持って廃車手続きも必要です。
ここからは、廃車と解体ができる業者を3つ紹介します。ぞれぞれの特徴を掴み、適切なところに依頼しましょう。
廃車と同時に車を購入する場合、ディーラーで一貫した手続きが可能です。乗らない車を廃車手続きしてもらえたり、下取りとして扱ってもらえたりします。
ただし、ディーラーの場合は数万円の費用が発生するためコストを抑えたい場合は他の選択肢がおすすめです。
次に中古車を購入する場合は買取業者で廃車手続きがおすすめです。中古車の購入と廃車が一度に行えるため効率的でしょう。
また、納車から逆算して廃車手続きを取ってもらえる点もメリットです。常時車が必要なエリアにお住まいの方は、車がない期間をなくすためにも廃車から購入まで一貫して対応してもらえる業者選びがよいでしょう。
なお、買取の場合はパーツの取り外しにおいて比較的柔軟に対応してもらえます。
廃車後に車が不要な場合、廃車専門業者がおすすめです。廃車専門業者は廃車手続きから解体までを担うため、免許を返納する場合や海外転勤で今後一切車を使わない場合に適しています。
また、買取業者は廃車にかかる費用も抑えられます。依頼費用は無料のところから有料でも2万円程度で済む業者が多いでしょう。
ディーラーや買取業者の場合は最大8万円程度と高額な金額が発生するため、まずは無料で依頼できる廃車専門業者を探しましょう。
なお、廃車専門業者を探す場合はお住まいのエリア近くにある業者をネットで調べたり、電話帳や広報誌に載っている情報を確認したりしましょう。
廃車には2種類ある
一口に廃車と言っても「永久抹消登録」と「一時抹消登録」の2種類があり、その特徴は異なります。
永久抹消登録は、車を解体してしまう手続きを指し、解体業者にスクラップしてもらってから運輸局で廃車手続きを行います。
永久抹消登録の場合は車が物理的に無くなるため、免許返納した高齢者の方や今後車に乗る機会がない場合(転勤や病気など)に必要です。
一方、今後少しでも車に乗る可能性がある場合は、一時抹消登録を選択しましょう。
一時抹消登録は車を保管したまま、公道を走れなくする手続きを指します。陸運局に所定の書類を提出し、ナンバープレートを返すと公道を走れない代わりに自動車税や自賠責保険の支払いがストップします。そのため、数年の海外転勤や一時的にお気に入りのセカンドカーを保管する場合におすすめです。
なお、一時抹消登録から車を復活させたい場合は新規中古車登録を行うと再び走行可能です。それまでは車にカバーをかけたり屋根のある場所で保管したり、こまめに様子を見ておきましょう。
廃車を決める前に検討したい買取のメリット
廃車・解体は車が不要になった際に適した手段ですが、買取の選択肢もおすすめです。まだ車の状態がよく、使えるパーツがある場合は買取を試してから廃車でも遅くありません。
ここからは、買取のメリットを4つ紹介します。
廃車の場合は手続きのコストを抑えられる反面、お金が返ってくるケースは少ないです。買取の場合は車の状態によるものの、傷や故障が見られなければ数万円〜数十万円の金額を提示されることも考えられます。
たとえ大きな金額にならなくとも、次の車の購入資金が手に入ると嬉しさを感じるでしょう。もしも資金を用意していたとしても、予算にゆとりができたことからオプションを検討したり、スタッドレスの購入に活用したりすることができます。
自分で解体業者に依頼する場合、業者の選定から廃車手続き(永久抹消登録)が必要ですが、買取業者にあわせて依頼すると書類の準備のみで済むため、解体と廃車にかかる手続きをスムーズに進められます。
仕事の合間をぬって平日に運輸局や支局に行く時間を短縮できます。廃車手続きを行う機関はいずれも平日しか開いていないため買取業者の選択はメリットが大きいでしょう。
車を廃車する場合、寂しさを感じる方もいるでしょう。家族の思い出がたくさん詰まった車や、パートナーとデートしたことなど、車にはたくさんの素敵な思い出が残っています。
そのため、スクラップするとなると心苦しさを感じる可能性がありますが、買取であれば思い出の車をまた他の誰かに乗ってもらえます。車の状態がよく、大切な車の場合に買取はおすすめです。
また、車を廃車する場合は家族の意見を聞いた上で手続きを進めるとよいでしょう。自分では廃車しかないと考えていても、社会人になるお子さんが乗りたいと思っていたり、パートナーが買い取りに出して予算を確保したいと考えていたりする可能性もあります。家族がいる方は関係者で話し合った上で結論を出しましょう。
買取はパーツの取り外しにおいてもメリットがあります。カーナビやETCを取り外そうか悩んでいる場合は、まず買取査定に出してみましょう。パーツやアイテムが付いている分、金額に反映される可能性もあります。
とくに、近年はカーナビやドライブレコーダーの需要が高まっています。無理に取り外して傷をつけたり、壊してしまったりする前に一度査定がおすすめです。
なお、車の状態が悪くても業者によってはパーツの買取を行っている場合があります。外観は廃車寸前でも内部で使えるパーツがある場合など、専門家にしか判断できないものもあります。
車を買取に出す際の注意点
ここからは、車を買取に出す際に知っておきたい注意点を紹介します。
パーツの取り外しについては査定前に行うか、査定時に相談して行う必要があります。また、査定の依頼数にも気をつけましょう。
特にパーツの取り外しが気になっている場合は自分の希望を伝えた上で、査定金額を出してもらうとトラブルを防げます。
車のパーツは査定額に反映されるため、買取の担当者と相談しながら決定しましょう。
例えば、自分ではカーナビが古いタイプだから取り外した方がいいと考えていても、買取業者側は別の考えを持っている可能性もあります。
また、シートをレーシング仕様のものに取り替えて乗っている場合、自分では価値があるシートだと思っていても、一般的なお客様からすると純正がいいと思われる可能性もあるでしょう。
買取の担当者から市場情報を聞き、もっとも高く売却できる方法を探りましょう。
車の査定金額はおおよそ決まっていて、どこかの業者が抜きん出て高い金額を提示することはありません。金額が変わる場合は市場での需要や付加価値などが関連しています。
しかし、まず買取の相場を把握するために複数社に見積もりを依頼しましょう。一社のみの依頼だと相場が分からず、後から損をして後悔する可能性もあります。
買取は大きな金額が動くため、少しでも高値の業者を選びたいものです。できれば3〜5社程度で見積もりをとり、納得できるところに相談がおすすめです。
場合によってはパーツを取り外した状態の方がよいと言われることもあります。その際、取り外しにかかる工賃や必要な依頼先もあわせて確認しましょう。
シートの場合は自分で入れ替えることができますが、マフラーを変えている場合は自分で純正に戻すよりも自動車整備の工場に依頼するほうが安全に行えます。
また、オーディオも依頼して取り付けた場合は再び外す際に工賃がかかります。工賃は数千円〜数万円と幅が広いため、買取金額に見合っているかを確認して損がないように進めましょう。
買取は査定額だけでなく、担当者の対応もチェックポイントです。
一括見積もりを行った際にしつこい電話をかけてくる担当者だったり、出張見積もりにおいて、その場で結論を出すように急かしたりする場合は断りましょう。
買取は自分が納得できる金額とタイミングで行うと後悔なく進められます。こちらの希望を聞き、適切な方法を説明してくれる業者を選ぶことが欠かせません。