何かしらの理由で車を手放す場合、乗らなくなった車は可能な限り高値で処分したい人は少なくないでしょう。もし、処分したいと考えたとき、廃車予定の車のパーツを売却しても良いのでしょうか。
これから車の処分を検討している人に向けて、この記事では廃車にする車のパーツは個人で取り外しても問題ないのか、法律の観点や廃車にせず買取に出す場合のメリットについて解説します。
この記事を読めば、車を手放す際にお得に処分できる方法がわかるでしょう。
廃車にする車のパーツを個人で取り外すのは法律で制限されている
引っ越しをはじめ、生活スタイルの変化によって車に乗らなくなることは良くあります。その場合、車を手放す際にできる限り高値で処分したいと考えている人は多いのではないでしょうか。
そのため、処分方法の一つとして車を廃車にしてしまい、取り外したパーツを売却してしまえば下取り費用よりも高値で取引できるのではないかと考えることも少なくないでしょう。
しかし、廃車からの部品取りを個人で行う場合、注意が必要です。なぜなら、個人で廃車からパーツを取り外すことは法律で制限されているためです。
車は法律に則って処理しなければならないため、注意すべきポイントをおさえておきましょう。
廃車にする車のパーツについて
廃車にする車のパーツについて、処分時に注意すべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
守るべき法律は「自動車リサイクル法」です。平成17年に施行された法律ですが、車を処分する際に守るべき事項が定められています。違反してしまうと罰則を科されてしまうリスクもあるため注意しましょう。
ここからは、廃車にする車のパーツについて取り扱い上のポイントを紹介します。
廃車のパーツを個人で取り外すことは法律で禁止されています。そのため、個人で処理しないように注意しましょう。
この根拠は、自動車リサイクル法によって定められています。1990年代後半から問題視されてきた自動車の不法投棄を抑制するために、車に使用されている資源を適正にリサイクルすることが目的の法律です。
廃車やスクラップなど、車を処分する際の手順が厳格に定められており、仕事として車の処分に携わっている人だけではなく、個人も遵守が求められています。
廃車のパーツ取りをして売却してしまうと、個人であっても不法投棄の罪に問われるリスクがあるため、注意しなければなりません。
個人で廃車から部品を取り出すことが禁止されています。そのため、車の解体は業者に任せなければなりません。しかし、依頼できる業者も法律で定められた基準を満たしていなければ解体できない点に注意しましょう。
具体的な基準は、以下の通りです。
- 車を解体するまでの間、外部から侵入されないような囲いを設けた施設を所有していること
- 廃油を適正に処理できること
- 取り外した部品を適切に管理できる体制が整っていること
解体業者は上記のような基準を満たしたうえで、解体の工程を通して騒音の対策を講じたり、安全基準に配慮したりしなければなりません。これらの基準を満たして初めて車の解体は許可されます。
廃車からパーツを取り出す場合、前述した自動車リサイクル法の他に廃棄物処理法も守らなければなりません。廃棄物の処理に関する法律で、環境被害の低減を目的にしています。
これらの法律では個人での部品取りが禁止されており、守れていなければ罰金または懲役が科されます。各法律の罰則は次の通りです。
- 自動車リサイクル法:1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 廃棄物処理法:5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
法律を遵守できなければ重い罰則が科されるため、個人での部品取りは避けましょう。
パーツを取り出すと言っても、個人で取り外しても問題のないものもあります。いわゆる後付けの付属品です。また、個人で取り付けたオプションパーツも付属品として取り扱われており、廃車から取り外して売却しても問題はありません。
これらのパーツの取り外しは、廃車前の修理の一環として使える部品の取り外しに該当します。そのため、取り外したとしても車としての走行に問題がなく、原状復帰できるような項目であれば個人で処理しても構いません。
とはいえ、取り外し可能な具体的なパーツについては、廃車を依頼する工場や解体業者に聞いてみると良いでしょう。素人判断を避けて専門家の意見を確かめておくことをおすすめします。
そして、取り外し可能なパーツは「取り外したとしても、整備の一環として走行性能に問題ない範囲で原状回復できるかどうか」が判断の根拠になりえます。許容される具体的なパーツは専門業者へ事前に問い合わせておくと良いでしょう。
取り外しできないパーツの具体例
個人で取り外せないパーツにはどのようなものがあるのでしょうか。
具体的なパーツは次の通りです。
- マフラー
- バッテリー
- タイヤ
- ホイール
- シャフト
- ABS
- メーター
- エアコンパネル
- ドア
- ガラス
- ミラー
- ライト
- エアバッグ
- シート
- ハンドル
これらのパーツは主に車が動く際に必要なものばかりです。そのため、エンジン系統や走行性能に関係する部品については個人で取り外してはいけない、取り外した状態では放置できないと覚えておきましょう。
ただし、シートなどカスタム目的で部品交換し、純正に戻せるように取り付ける場合においては取り外しできます。
取り外しできる付属品の具体例
取り外しできる部品は、主に後付けできるような付属品が該当します。具体的なパーツは以下の通りです。
- 音楽、映像機器(カーオーディオ、カーナビ)
- ETC車載器
- ドライブレコーダー
- エンジンスターター
- カーセキュリティ機器
- 日除け部材
基本的に車を動かす機能を持ち合わせていないことといったような、車の走行に直接影響しないパーツが対象に含まれています。また、これらのパーツ以外にも純正品をカスタムパーツに取り換えるような場合は、取り外しできます。
廃車パーツの取り外しに関連する法律
廃車のパーツを取り外す場合、該当する法律は2種類あります。少し前述しましたが、「自動車リサイクル法」と「廃棄物処理法」に注意しましょう。
これらの法律の目的や違反した場合の罰則規定について知っておけば、廃車からの部品取りに関するリスクを正しく理解できます。
ここでは、これらの法律について詳細な内容を説明します。
自動車リサイクル法は、2005年1月から施行された法律です。資源の有効活用や適切な処理のために、適切にリサイクルできるよう車の所有者や業者のすべきこと、意識すべき役割を定めています。
また、車のリサイクルを促進するとともに、社会問題になりつつあった車の不法投棄を是正する目的もあります。そのため、廃車の解体から自動車として再生するまでの工程が厳格に規定されました。許可を受けていない個人が勝手に解体することを違法と位置付けています。
解体するためには、都道府県に申請し、許可を受けて登録している業者のみしかパーツを取り外せません。前述の取り外し可能なパーツの定義は、自動車リサイクル法にて定められています。
もし、この法律に違反してしまえば1年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処されるため注意しましょう。
廃棄物処理法は、廃棄物の処理および清掃に関する法律です。事業を営んでいるうえで発生した廃棄物が増えることで、環境破壊が起きないように配慮することを目的としています。
廃棄物の処理について、分別方法から運搬方法に至るまで細かな手順を定めており、個人の部品取りはこの法律にも抵触する行為です。例えば、取り外したエアバッグなどは廃棄物としてみなされます。そのため、個人で処理してしまうと違法とされる可能性があるため注意しましょう。
もし、違法と認められた場合は5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科されてしまいます。
しかし、再利用目的として取り外しても、取り外した状態のまま放置してはいけません。法律に抵触するかもしれないためです。取り外し後は必ず別のパーツを取り付けるようにしましょう。
車の廃車と解体を依頼できる業者
個人での部品取りは法律に抵触するため、基本的には専用業者に依頼する以外の方法はありません。では、どのような業者であれば対応してもらえるのでしょうか。
例えば、中古車業者やディーラー、廃車専門買取業者が依頼できる業者として考えられます。それぞれの業者で特色は異なるため、依頼する前に自分の希望が叶うような依頼先はどこになるか知っておくことが重要です。
ここでは各業者の特徴について紹介します。
中古車買取業者は、廃車と解体を同時に依頼できます。あわせて中古車を販売しているケースも多いため、買い替え時の依頼が一般的でしょう。同時に手続きできる点が効率的でおすすめです。
また、買い替え時に利用すれば納車から逆算して廃車手続きを進めてもらえます。車がなければ生活できないようなエリアに住まわれている方にとっては、乗り換え時に車がないような状況は避けなければいけません。そのような状況を回避できる点は利用する際のメリットでしょう。
買取の場合はパーツの取り外しも柔軟に対応してもらえます。
中古車買取業者と同様に、車の買取から廃車手続きまでをトータルで依頼する場合にはディーラーも有効です。乗らなくなった車は廃車にしてもらえたり、新車購入時の下取りとして取り扱ってくれたりと、柔軟に対応してもらえる点がおすすめポイントです。
ただし、ディーラーで手続きする場合は、数万円のコストが発生する点に注意しましょう。もし部品取りに費用をかけたくない場合は、他の選択肢を選ぶことをおすすめします。
廃車専門買取業者は他の業者と異なり、廃車後に車が不要になる場合に依頼すると良いでしょう。他の業者は乗り換えが前提ですが、廃車専門買取業者は廃車から解体までを担います。そのため、免許を返納したり、海外転勤などで車に乗る必要がなくなったりした場合におすすめです。
また、買取業者であれば手続きに要する費用もおさえられます。例えば、依頼費用は無料から高くても2万円前後で済むようです。他の業者であればさらに高額であるため、無料で依頼できる会社探しをしてみるのもおすすめです。
廃車手続きは主に2種類
廃車手続きを進めてパーツの部品取りを業者に依頼する場合、手続き方法は2種類あります。それぞれの手続きは目的やコスト面でメリット・デメリットが分かれるため、手続きを進める前に自分に合った状況を把握しておくと良いでしょう。
大きく分けて「一時抹消登録」と「永久抹消登録」があります。ここではそれらの登録内容について紹介します。
一時抹消登録とは、長期にわたって車を使わない場合に登録を休止する方法です。休止期間中は税金や保険料を支払わなくて済むため、ランニングコストをおさえられるメリットがあります。
そして、再び必要になったタイミングで再登録すれば、再び車を使えます。これらのメリット以外にも、自賠責保険の契約期間中に抹消登録しておけば、期間に該当する保険料を還付してもらえる点もメリットの一つです。
しかし、一度抹消登録した車は公道に出られません。そのため、保管しておく間の駐車スペースを確保しなければならず、自宅の敷地内に置けなければ駐車費用が発生します。また、自動車重量税は還付されない点がデメリットと言えるでしょう。
とはいえ、手続きも比較的スムーズに進められるため、再び乗るかもしれないけれど今は不要、といった状況であれば一時抹消登録の利用をおすすめします。
永久抹消登録とは、車を中古車として売却したり、廃車にしてしまったりする場合に必要な手続きです。そのため、廃車からの部品取りを検討しているのであれば、こちらの手続きを進めなければなりません。
永久抹消登録と一時抹消登録の違いは、登録後に車を再利用できるかどうかです。永久抹消登録は一時抹消登録と違って再利用できない点に注意しましょう。
この手続きのメリットは自動車税や自賠責保険の還付が受けられる他、自動車重量税の還付も受けられる点です。車格の大きな重い車を利用している人にとっては大きなメリットといえるでしょう。
また、廃車にしてしまうため自分で保管する必要もありません。そのため、保管用の駐車スペースも必要ない点は管理コストもおさえられます。
ただし、永久抹消登録する場合は車を完全に解体しなければなりません。そのため、解体業者に依頼する手間や費用がかかります。この点はデメリットと言えるでしょう。
廃車にせずパーツを付けたまま買取に出すメリット
廃車時に取り外したパーツを有効活用したいと考える人は少なくありません。しかし、廃車せずにパーツを付けたまま買取に出すことで得られるメリットもあります。
例えば、高価買取が期待できたり、取り外し費用をおさえられたり、といったようなことが考えられます。これらのメリットも踏まえたうえで検討してみると良いでしょう。
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく説明します。
廃車として手放すことを考えていたとしても、実際に買取業者に査定してもらうと中古車として売却した方が良いケースがあります。そのような場合においては、オプションパーツがついていることで査定額がアップするケースも多く、無理に部品取りしておくと、お得に処分できないかもしれません。
特に、パーツ単体で売却しにくい純正オプション、例えば、純正カーナビなどのようなメーカーオプションは取り外さないままの方が評価が高くなります。
パーツの取り外しが個人でできない以上、専門業者に依頼しなければなりません。そのため、工賃などの費用が必要であり、売却によって得られたであろう金額より高くつくケースも少なくありません。
一般的に取り外し工賃は3,000円~10,000円が目安とされています。配線が複雑なカーナビやカーオーディオであれば、10,000円以上かかる場合もあるようです。
お得に車を手放したいのであれば、必要な費用と売却によって得られるであろう金額を比較し、検討しましょう。
後付けできるようなパーツは各メーカーが新商品の開発に力を入れています。そのため、発売サイクルが短く、すぐに価格が落ちてしまう傾向にあります。
たとえ購入時の金額が高かったとしても、数年経てば価値がなくなっているケースが大半です。前述の通り配線が複雑なパーツもあるため、取り外しに費用がかかるにも関わらず、売値がつかないような状況に陥らないように注意しましょう。