車を買取業者に売却する場合、様々な手続きや書類の準備で手数料がかかります。しかし、その内容が意識されることはあまりないかもしれません。
ここでは、車を買取に出した場合、どのような費用が発生するのか、その内訳について解説します。
その他にも、ローンの残債や未納の自動車税など、車の売却時に注意が必要な支出も確認していきましょう。
車の買取費用は見積書からほぼ確認することができる
車を買取に出すと、その車がいくらで売れるか、その売却益に目がいきがちです。しかし、車を手放す際は様々な費用がかかるので、その点を意識しないと、思いがけない出費に慌ててしまうかもしれません。
例えば、印紙代やレッカー輸送代など、買取の手続きでかかる費用は見積書から確認することができます。そこには記載されない車の売主が払うべき費用として、売却手続きに必要な印鑑証明書や住民票の発行手数料なども見逃せません。
一方、売買手続きで必要になる名義変更手数料は、通常だと業者持ちなので、売主が意識することはあまりないでしょう。
買取査定の見積もりには「雑費」という費用の項目が設けられることもあります。その内訳は業者によって異なるので、気になるようであれば確認しておきましょう。
また、カーローンの残債や未納の自動車税があれば、やはり売却前に支払いが必要です。
車の売却にかかる費用としてどんなものがあるのかを知っておいて、実際に売却する際に予想外の出費に慌てることのないよう準備しておくことが大切です。
車買取に関する費用の種類について
最初に、車の買取手続きの中で発生する費用にはどんなものがあるのかを見ていきましょう。
以下で紹介する費用は、実際には無料となるものや買取業者が払うもの、そして車の売主が払わなければならないものがあります。
車の買取査定時にかかる費用として、まず査定料が挙げられます。これは、買取査定そのものの手数料ですが、一般的な中古車買取店や買取業者の場合は無料となることがほとんどです。
車の買取査定には持ち込みや出張査定などの方法があります。複数の業者から見積もりを出してもらい、それを比較して最も高値で買い取ってくれるところを選ぶのが一般的です。そのため、査定を受けるたびに査定料を支払っていては、査定の手続きだけでかなりの出費となってしまうでしょう。
このように、査定料が無料だからこそ車を売る側も安心して複数の業者に買取査定を依頼できます。
ただし、出張査定の場合は有料となる業者もあるので、事前に確認しておきましょう。
また、ディーラーで車の乗り換えの際に行われる「下取り」では、査定料がかかることもあります。同じ「車の買取」といっても、中古車買取店とディーラーとではこのような違いがあるので注意しましょう。
車の買取査定では、レッカー代などの運搬費用がかかる場合があります。
持ち込み査定の場合は、買取店の店舗まで車を自分で運転して査定してもらいますが、不動車を出張査定してもらい、そのまま買い取ることになった場合はレッカー移動が必要になるでしょう。
不動車というのは動かなくなった車を指します。無車検車や無保険車なども公道で走らせることはできないので、引き取りにあたってはレッカー費用がかかることがあります。
買取店によっては、こうした運搬費用を無料で提供している場合もあるため、利用する前に確認しておきましょう。
車の買取でかかる費用として、名義変更の手数料も挙げられます。これは、車の名義を前の持ち主から買取店などへ変更する手続きです。
この分の手数料が、車の買取にあたって請求されることは普通はありません。
手続きは、その車の新しい所有者の地域を管轄する運輸(支)局で行われます。名義変更の手続きは正式には「移転登録」と言い、基本的に車の新しい所有者が行うことになっています。そのため、売主が気にする必要はないでしょう。
車を買い取ってもらう場合、売主が準備しなければならないものもいくつかあります。
特に費用がかかるものとして、印鑑証明書が挙げられます。普通自動車を売却する際に必要になるので、折を見て入手しておきましょう。
軽自動車の場合は、動産として国土交通省へ登録しなくてもよいので、印鑑証明書ではなく住民票が必要です。
これらの書類でもって、買取店は車の買取後に運輸(支)局、あるいは軽自動車検査協会で手続きを行うことになります。
車を買い取ってもらう際は、印紙税の支払いにかかる印紙代も必要になります。
印紙税は公文書や契約書などの文書に貼付される税金です。
車の売買時に交付される譲渡証明書は法的な効力を持つ公文書にあたることから、印紙税が課せられています。
車の買取手続きの中で、買取業者から請求されることがある費用として、雑費が挙げられます。
雑費の内訳は業者によって異なっており、業者側の人件費、各種手続きの代行手数料、または必要書類の再発行手数料なども含まれることがあります。
上記の手数料は別項目として設けられることもあり、内訳の構成は業者によってまちまちです。
「内容が気になる」あるいは「金額に納得がいかない」などの疑問点があれば、見積もり提示の段階で確認しておきましょう。
車の買取価格は売値の何割が基本なの?
その他の支出について
ここまでで、車を売買する手続きの中でどのような費用が発生するのかを説明してきました。
次に、同じく車を売買する際、場合によっては支払いが必要となる特殊な費用について見ていきましょう。
カーローンの支払いが残っている車を売却することは可能ですが、基本的にはローンの残債を全て支払うことが必須となります。
なぜならローンを完済しない限り、その車の名義人はローン会社などに設定されているからです。そして、名義人の許可なしには車の売却はできません。
そのため、ローンの支払いが残っている車を売却するのであれば、残債を一括で返済する必要があります。あるいは、車の買取代金でローンの残債を埋めて、足りない分は自腹で払うというパターンもあります。
名義変更が必要になるのは、お金を貸しているローン会社にとってその車は「借金のカタ」でもあるからです。もしも車の持ち主がローンを返せなくなったら、名義人であるローン会社はいつでもその車を売却して残債を埋めることができます。
これはいわゆるカーローンに限らず、近年よく利用されている「残価設定ローン」でも同様です。残価設定ローンは、将来的な車の下取額をあらかじめ決めておき、それを差し引いた本体価格の残りを分割して毎月支払っていくものです。
ややシステムは違うもののローンとしての性質は同じになります。
売却しようとしている車に自動車税の未納分がある場合は、それを支払ってから買取査定に出したほうがよいでしょう。そのため、未納の自動車税は車の売却時に必要な費用の一種だと言えます。
なぜ未納の自動車税を納めておくべきかというと、たとえ未納の状態で車を売却したとしても、車の持ち主に科された自動車税の納税義務はなくならないからです。
未納の状態で車を売却すると、新しい持ち主に督促状などが届くことになるでしょう。買取店や買取業者側でも、自動車税の未納分があると判明した時点で買取を断ることが多いです。
仮に買い取ってもらえたとしても、買取査定を受けて見積もりが提示される段階で、見積額から自動車税の分が差し引かれることになるでしょう。
なお、自動車税の未納分の有無については、査定時に納税証明書を確認するのですぐに分かります。最近は証明書なしでもオンラインで確認可能な自治体も増えてきています。
厳密に言えば売却に伴う費用とは言えませんが、ごく稀なケースとして、車を売却することで所得税が発生することがあります。
ポイントとしては、その車が「日常生活で使わないもの」であることと、売却益が50万円以上だった場合の2つです。
まず、業務用で使っていた車は「日常生活で使わないもの」にあたるので、売却して利益が出れば譲渡所得と見なされます。
ただ、譲渡所得には特別控除枠として50万円の金額が設定されていますし、その車の使用期間が5年を超過していれば課税対象額は2分の1となります。
同様に、通勤・通学や買い物などで使用しない、趣味や遊び専用のレジャー向けの車も「日常生活で使わないもの」に該当します。特にレジャー用となるとプレミアがつく珍しい車も多いことから、売却益が発生する可能性はあるでしょう。
このように、車の売却によって所得税が課されるケースは非常に稀です。
考え方としては、売却額が購入額を上回り、さらにその上回った分が50万円以上の場合に限るので、一般的な乗用車ではほとんどないでしょう。
車の売り手と買い手の住所が異なる場合、地域を管轄する運輸(支)局も変更になることがあります。すると、ナンバープレートの記載内容も変わるため新しいものと交換しなければならず、この手続きでも費用がかかります。
ナンパープレートの変更手続きは運輸(支)局で行い、手数料として印紙代が必要です。
基本的に車を買い取った側が行う手続きなので、売り手側が手数料を支払うことはありません。
ディーラーの下取りに出した場合にかかる費用について
ここまでで、中古車買取店に車を売却する場合、どのような費用がかかるのかを解説してきました。
次に、ディーラーで車を乗り換える際に、それまで乗っていた車をいわゆる「下取り」に出した場合はどうなるのかを見ていきましょう。
ディーラーに車を下取りに出すのは、中古車販売店に買い取ってもらう買取と似ていますが相違点も多いです。
下取りの場合は、買取のように売却額が支払われず、そのまま新しく乗り換える車の購入費に充てられます。
この下取りという売却方式では「査定料」や「下取費用」などがかかる場合があります。
下取りによって得られた売却益とあわせて、これらの費用も新しい車を購入する際の見積書に記載されます。しかし、詳細な内容は不明なことが多いので気になる場合は確認しましょう。
車の下取りは、それまで乗っていた車の売却益がそのまま新しく乗る車の購入費用に充てられます。新車の購入と旧車の処分をまとめてできるため、車を中古車買取店に売却する時のような手間がかからないのは大きなメリットです。
ただし、車を下取りに出しても高値売却は期待できません。少し手間暇をかけてでもできるだけ高く買い取ってもらいたいのであれば、中古車販売店に買取を依頼したほうがよいでしょう。
ディーラーの下取りが安くなりがちな理由はいくつかあります。
まず、ディーラーはあくまでも新車購入の販売促進を目的としているので、中古車の売買には重きを置いていません。競合相手もいないので、あえて高く買い取る必要がないことが挙げられます。
また、ディーラーも下取りした車を再販売しますが、純正パーツが揃っていないと買取時に評価されないという点も大きいでしょう。
ディーラーにとって、車の下取りというのは「おまけ」のサービスのようなものだと考えてください。
廃車にする場合にかかる費用について
ここまでで、車を中古車買取店やディーラーに売却した場合、どのような費用が発生するのかを見てきました。
次に、もう乗らない車を業者に買い取ってもらうのではなく、「廃車」にするとしたらどのような費用が発生するのかを解説します。
廃車の解体費用の一般的な相場は、1~2万円程度です。
廃車買取業者によっては解体工場を自社で持っていることがあります。そうした業者に依頼すれば仲介業者を通さずに済むため、中間マージン分を節約できるでしょう。また、処分のための手続きがスムーズに進みますし、費用面でもお得になることが期待できます。
ただし、業者選びは慎重に行い、信頼性の高い業者を厳選するようにしましょう。
車を廃車にする場合、特に故障などで動かせない不動車や無車検車などは公道を走れないことから、運搬費用が別途発生することがあります。
遠距離を運ぶとなると高額になることも考えられるので、事前に見積もりを出してもらうことをおすすめします。
こうした場合は、レッカー車で運ぶことになり、金額としては5千~1万円程度が必要になるでしょう。
これは廃車する場合に限らず、不動車を買取店に売却する場合でも同じことが言えます。
車を廃車する際にかかる費用として、リサイクル料金も挙げられます。これは、車の解体時に発生する廃棄物の処理費用を賄うためのものです。
基本的には車が新車として販売された段階で所有者が支払っており、中古車として持ち主が変わるたびにリサイクル券として引き継がれています。そのため、廃車する際に改めてリサイクル料金を払う必要はなく、リサイクル券さえあれば問題ありません。
ただし、リサイクル法が制定された2005年よりも前に新車登録された車は、廃車時に改めてリサイクル料を支払うことになります。
車を廃車にする場合は「永久抹消登録」の手続きが必要ですが、運輸(支)局で実際に手続きを行う際には手数料がかかりません。
ただし、廃車買取業者などに手続きを委託するとその代行手数料だけはかかります。手数料の金額は業者によってまちまちなので、一概には言えません。
自分で手続きを行えば無料で済みますが、運輸(支)局は平日の日中しか営業していないなどの制限があるので、手数料はかかりますが業者に任せるのも一つの手です。
車の買取価格は売値の何割が基本なの?
車の売却時に余計な費用をかけないための注意点
ここまでで、車を中古車買取店に売却する場合とディーラーに下取りに出す場合、そして廃車にする場合にそれぞれどのような費用がかかるのかを見てきました。
最後に、車の売却時に余計な費用をかけないための注意点を2つ紹介します。
車を売却する際、故障があると査定でもマイナスになります。しかし、だからといって査定に出す前に修理しても、その分の費用が回収できるとは限りません。
修理には部品交換や工賃などの費用がかかり、高額になってしまうこともあります。修理することで車の価値は上がるものの、支出が生じていることに違いはありません。
いずれにしても総合的に見てマイナスが生じるなら、修理に出す手間を省いて、そのままの状態で査定に出したほうがよいでしょう。
買取査定を経て売買契約書を締結した後で、契約をキャンセルすることは基本的にはできません。
その時の状況や業者によって異なりますが、仮にキャンセルできたとしても、キャンセル料を請求されるなど一定のリスクが伴います。
法的に正式な契約書を交わすと、その時点から拘束力が発生するので、売買契約をキャンセルできるかどうかを決める権限は基本的に業者側に移ることになります。
そして、車を買い取った業者は、名義変更やオークションへの出品などを行っているため、キャンセルが難しいことが多いです。
本当にキャンセルできないかどうか、その判断基準は契約書内の「キャンセルポリシー」の内容に記載されています。多くの場合、その中で「業者側に具体的な損害が生じていたらもうキャンセルはできない」という旨の文言が盛り込まれています。
キャンセルできる状況だとしても、キャンセル料がどのくらいかかるのかが問題です。金額の相場は法的には決まっていませんが、販売店側に生じた損害分の金額を上限に、車の代金の約10%というのが一般的です。