軽自動車を含め、車を第三者に譲渡したり、親から子供に譲ったりする時または夫から妻に名義を変更したりする時に贈与税がかかる可能性があります。
車は財産として位置づけされているので、車を買ってあげて渡すことや譲ってあげることは「贈与」になるためです。
この記事では、軽自動車を含む車を譲渡する際に贈与税がかかるケースや計算方法、節税方法などについて詳しく解説していきます。
軽自動車の譲渡をした場合その車の評価額によっては贈与税がかかる
贈与税とは「個人から贈与により財産を取得した」際にかかる税金です。軽自動車を含め自動車は「贈与財産」に含まれるため、譲渡された場合には課税対象になります。
贈与税は年間110万円まで控除を受けることができるため、軽自動車を含めた自動車の評価額が超えている時に、超過分が課税されます。
ちなみに、法人から贈与によって財産を取得した場合は所得税、死亡した人がご自身を被保険者として保険料を支払い生命保険を受け取った際は相続税です。
また、財産評価のルールとして、財産評価基本通達で決められており、全国一律に運用されています。
車による贈与税がかかる具体例について
軽自動車を含めた自動車に贈与税がかかる時は、具体的にどのようなケースでしょうか。
ここからは、車にかかる贈与税の具体例について詳しく解説していきます。
まず、110万円を超える車を個人から贈与してもらった場合、贈与税がかかります。
贈与税は1年間で110万円以上の財産を受け取った場合にかかる税金です。この課税方法を「暦年課税」といいます。
例を挙げると、親が子供に対して160万円の軽自動車を購入してあげたケースは、基礎控除額110万円を超えているので贈与税の課税対象です。
また、車だけでなく現金を贈与した時には、その分も合算して贈与税がかかります。したがって、車だけでは110万円を超えていなくても、その他の贈与によって超えているケースでは課税対象になりますので注意が必要です。
次に評価額より安い金額で中古車を譲渡された場合、贈与税がかかる可能性があります。
例えば、親が何年か自分で使用していた車を子供に譲る時です。贈与税は110万円まで基礎控除が受けられるため、子供が110万円以下で支払い、親の車を手に入れたとすれば問題ないようにみえます。
しかし、贈与税の課税の有無については「贈与された時点の車の査定額」で判断されます。したがって、高級車であれば査定額が高額になることもあり、基礎控除を超えることも考えられますので注意しましょう。
次に車の名義変更を行った場合も注意が必要です。
基本的に対価を支払わない状態で譲渡された車を自分名義に変更した場合は、贈与です。例えば、父母や兄弟姉妹、祖父母・友人など、どんな間柄だとしても贈与としてみなされるので、受け取った自動車の価格に応じて税率が決定し、贈与税額が決定します。
しかし、日常生活で車を使うケースであれば、贈与税がかからないこともあります。具体的には子供が大学に進学してから名義変更した車で通学をする時です。一般的に扶養義務者の教育費や生活費に関わる財産については、贈与税がかからないことになっています。
その理由として、教育費や生活費に税金がかかると、扶養義務を果たすことができなくなることが挙げられます。もちろん、名義変更後すぐに車を売却して個人資産に充てれば、贈与税が発生する可能性は高くなりますので気をつけましょう。
自動車の贈与に関しては、申告漏れや無申告だと税務署に発見される可能性が高いでしょう。その理由として、自動車の名義変更手続きがあるからです。
したがって、特に高額な自動車は贈与税の対象になりやすいため、税務署も目を光らせているといえます。
また、支払うべき贈与税を申告漏れや無申告で支払わなかった時には、ペナルティーとして加算税が課せられます。これは、本来納める贈与税以外に、5%~40%の税金が追加されますので忘れずに申告しましょう。
贈与税を納税する対象者は「贈与された人」になります。
具体的には親から子供に対して車を贈与した時は、子供が贈与税を納めることになります。したがって、贈与された場合は申告して納税することを知っておきましょう。
そして、贈与税は現金のみでの納税になります。
軽自動車の売買をする際の必要書類とは?
贈与税の計算方法について
車を贈与された場合に贈与税はどのぐらいかかるのでしょうか。
ここからは、贈与税の計算方法について詳しく解説していきます。
車に関する贈与税のポイントは、車の価値評価です。国税庁が定める贈与財産の評価方法で行います。
車は一般動産として位置づけられ、原則「売買実例価格」または「精通者意見価格」の評価が適用されます。
売買実例価格とは、一般市場で売買されている価格のことです。したがって、販売店で購入した車を贈与する場合、売買実例価格で評価されることになります。
精通者意見価格とは、各種の専門家による査定や鑑定結果を使った価格です。特に使用していた車を贈与する時は、財産評価が難しく、専門的な知見がないと判断できないことがあります。そのため、中古車買取業者などの査定額を利用しましょう。
つまり、中古車買取業者は、専門的知見を有している位置づけになるため、買取の査定額が基準になるといえます。
一般的に販売店やオークションなどの実例価格に比べて、車買取業者の査定額の方が金額が安くなる傾向があります。それは、買取業者の査定額は、転売や再販売することを踏まえた利益確保できるよう低く設定されることが多いためです。
贈与税の税率については2種類あり「特例贈与財産」「一般贈与財産」に分けられます。
特例贈与財産とは、直系尊属(祖父母や親)から18歳以上の直系卑属(子や孫など)に贈与される財産です。
一般贈与財産とは、特例贈与財産にならない贈与の時に用いられます。
税率については、以下の通りです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0円 |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超え | 55% | 640万円 |
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超え | 55% | 400万円 |
※国税庁「贈与税の計算と税率」から引用
こちらを利用して贈与税の納税額を算出します。
それでは、軽自動車を譲り受けた時、贈与税はどのように計算すれば良いのでしょうか。自動車の贈与税額を求める計算式は次の通りです。
課税価格×税率-控除額=贈与税額
これを用いて具体的に計算していきましょう。
例:父が250万円で新車販売されている軽自動車を購入し、子供(20歳)に贈与した場合
このケースでは、贈与税の評価額は「売買実例価格」になり、税率は「特例贈与財産」です。計算式に当てはめると以下の通りです。
140万円×0.1-0円=14万円(贈与税)
軽自動車の価格帯は、一般的に100万円から300万円程度といわれています。したがって、それほど多くの贈与税はかからないかもしれません。
しかし、普通自動車で高級車の場合、贈与税の課税価格が高くなる可能性があるので、納税金額を確認しておくことが大切です。
贈与税の申告方法と必要書類について
贈与税の計算方法はご理解頂けたと思います。さらに、贈与税の申告方法や必要書類を知っておく必要があるでしょう。
ここからは、贈与税の申告方法と必要書類について詳しく解説していきます。
贈与税を申告する際には「贈与税申告書」が必要になります。しかし、e-Taxを使って申告する時は、書面の申告書は不要です。
e-Taxは国税に関する手続きをインターネット上で行えるサービスです。具体的には贈与税だけではなく所得税や法人税、地方法人税、消費税などの申告、納税、開業届の申請を行うことができます。
さらに税務署に行かずに、自宅で申告納税できる点がメリットです。
贈与税申告書は、書面またはe-Taxで作成します。
書面の入手は「贈与税申告書」を税務署の窓口や国税庁のホームページで行い、手書きで記載することになります。ご自身で算出して必要項目を記入することになりますので、記載ミスや漏れがないように気をつけましょう。
e-Taxはスマホを使うかパソコンを使うかで、手順が変わりますので、詳細を確認して行います。また、e-Taxを使用する際は事前にマイナンバーの登録が必要になります。
e-Taxを利用する流れは以下の通りです。
- 利用者認識番号の取得(半角16桁の番号)
- 電子証明書の取得
- 手続きを行うソフト、コーナーを選ぶ
- 申告・申請データを作成、送信
- 送信結果を確認
贈与税の申告は、財産を贈与された年の翌年になります。2月1日~3月15日までが申告期間です。
期間を過ぎると申告できなくなりますので、早めに準備しておきましょう。また、納税も同様に2月1日~3月15日までです。
車の贈与税を節税するための方法
車にも、価格に応じて贈与税がかかることが分かったかと思います。それでは、贈与税を節約する方法はあるのでしょうか。
ここからは、車に関する贈与税を節約する方法について、4点お伝えしていきます。
節税方法の1つ目は「名義変更を行わずに車を使用する」ことです。車を贈与する人に名義変更することで、贈与税がかかってしまうので、車を貸すなら名義変更されないため贈与税はかかりません。
親が購入した車を子供に無料で使用させることを、法的には「使用貸借」といいます。車は使用貸借しても贈与税がかからず、自由に車を使用することが可能です。
しかし、実際に車を使用する際は、任意保険に注意が必要です。親から子供に車を貸している状態で、保険の適用範囲が所有者や配偶者限定になっていたり、年齢条件が子供の年齢を超えていたりすると任意保険の対象外になってしまいます。そのため、もし子供が事故を起こしてしまうと保険金が支払われない場合があります。
したがって、車を貸す時には、保険の適用範囲を確認した上で、適切な変更を行うことが大切です。
2つ目は「複数の業者に査定依頼を行う」ことです。車の査定額は、車買取業者によって異なります。その理由として、車買取業者は中古車市場のニーズや業者ごとの車種やメーカーの強みに基づいて査定額を算出しているケースが多いからです。
査定額は、JAAI(一般財団法人日本自動車検査協会)が定めている査定額を基準にしていますが、ニーズが高い車は高価査定される可能性が高くなります。
贈与税のことを考えると、なるべく低い査定額を算出してくれる業者が好ましいといえます。したがって、1社だけではなく複数の業者に依頼するようにしましょう。
3つ目は「購入費を控除額以下にして贈与する」ことです。新車を購入して贈与する時には、110万円を超える可能性が高いですが、110万円以下の中古車を購入して贈与すれば、税金はかかりません。
親が子供に車を買って譲渡するのであれば、中古車も視野に入れておくと良いでしょう。
また、車を購入して贈与する際は、何年かに分けて贈与することはできません。しかし、車の購入資金であれば、複数年に分けることは可能です。何年かに分けて購入資金の一部をサポートしていくことは、節税対策になります。
ただし、はじめから車の購入資金として定期的に現金を贈与すると分割して渡しているように判断されるケースがあります。このような贈与は「定期贈与」とみなされ、車を購入した初年度に、購入資金全額が課税対象になるので注意が必要です。
4つ目は「中古車にしてから贈与する」ことです。新車よりも中古車になることで車の価値が下がります。
新車の場合、売買実例価格が適用され、一般販売されている価格が基準になります。一般的に車の価値が一番高いのは、希少価値の高い車を除き、新車の時です。
わずかな走行距離であったとしても、使用した車は「中古車」として扱われ、新車と比べて評価額に差が出ます。1年程度使った車でも車種によって評価額が大幅に下がることもあり、節税効果が高いでしょう。
新車購入後は年数に応じて価値は下がっていきます。そのため、最初は親名義で新車を購入し親が使用する、あるいは子供に貸し出すようにしましょう。
その後、一定期間を過ぎてから子供に贈与する際は、精通者意見価格が適用され新車よりも低い価値に変わり、贈与税を抑えることが可能になります。
基本的に車の名義変更を行うと贈与税の対象になりますが、夫婦間の場合は、贈与税がかからないケースもあります。
夫婦はお互いを扶養する義務があります。そのため「生活必需品として車を譲渡する」場合であれば、贈与税はかかりません。
しかし、高級車に関しては嗜好品として判断されることもあり、贈与税の対象になることがあります。このようなケースが当てはまる時は、名義変更を行う前に専門家に相談することをおすすめします。
軽自動車の売買をする際の必要書類とは?