車を廃車にすると、金属やプラスチックなどの車の製造に使われている素材を細かくしたり、環境を守るためにフロンガスを無害化したりするといった処理が必要となります。
廃車処理には専門技術や専用の施設が必要なので、費用がかかります。この費用が「リサイクル預託金」と呼ばれるものです。
車の所有者はリサイクル預託金を支払うことになりますが、いついくらぐらい支払うのかなど細かな点がよく分からない方も多いかもしれません。
この記事では、リサイクル預託金の支払い時期や内訳、返金について説明しますので、参考にしてください。
自動車リサイクル法の施行
車の寿命は長いと言われていますが、年間約350万台もの車が廃車として処理されています。
車のエアコンには環境に影響を及ぼすフロンガスなどが使われているため、廃車処理にすることで環境汚染が問題となってきています。
また、エアバッグなどの解体にも費用がかかり、処分場が少ないという理由から廃車費用も年々高くなっています。
そんな中、自動車を環境に影響を及ぼさないように適正に解体し、リサイクルすることを目的として「自動車リサイクル法」という法律が制定され、2005年から施行されました。
車の廃棄・リサイクル費用を負担する義務
廃車として処理しなければならない車が年々増え続けており、適正に処理するためには費用がかかります。
費用を支払うことができない業者も増えているのが現状です。そうなると中にはそのまま車を放置したり、海中に沈めたりするといった環境に悪影響を及ぼす方法で処理しようとする業者も出てくる可能性があります。
環境汚染にもつながるので、廃車業者は適正に廃車処理しなければなりません。そのための費用を工面するために、車の所有者には車の廃棄、リサイクルにかかる費用を負担する義務が課せられることになりました。
その負担金が「リサイクル預託金」と呼ばれる費用です。車の所有者は支払わなければならないと法律で定められています。
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リサイクル預託金の内訳
一般的にリサイクル預託金は、5つの項目に分けられます。
1つ目は、シュレッダーダスト料金です。金属やプラスチック、ゴムなどの使われている素材を粉々の破片にし、リサイクルに用いるための料金になります。
2つ目は、エアコンに使われているフロンガスを無害化させるための費用で、フロン類料金です。
3つ目は、シートベルトを巻き取るシートベルトプリテンショナーとエアバッグを適正に処理するためにかかる費用として、エアバッグ類料金が項目化されています。
4つ目は、使用済み自動車のリサイクル状況を把握するための電子システム運用費用としての情報管理料金となります。
5つ目は、リサイクル預託金を集めて管理し、運用していくための資金管理料金です。
この5つの料金について詳しく説明します。
ほぼ金属からできている車を解体すると、金属などが分解されて無数の細かな破片となります。この破片などをリサイクルに回して再利用するためにかかる費用が、シュレッダーダスト料金です。
車には窓ガラスやタイヤなどの部品も備わっているので、シュレッダーダストにはガラスやゴム、プラスチックなどの素材も含まれます。こういった素材は、一度分解して再び別の物として生まれ変わることが可能です。
使われている素材の量は、車の重量などによって違ってきます。大きくて重量のある車はその分シュレッダーダストが多く出るので、リサイクル料金も高くなるのです。
車にはエアコンが備え付けられています。空気を冷やして冷気を出すためにはフロンガスが必要であり、内部に蓄積されています。
車を廃車にすると、フロンガスは大気中に放出されることになります。ただ、このフロンガスはオゾン層を破壊し、地球温暖化を招くため環境破壊をもたらす可能性があります。
大気中の放出を防ぐためには、高温で分解して無害化させる必要があります。専門技術を使って高温処理をするための費用が、フロン類料金です。
車の各座席には、シートベルトやエアバッグが備え付けられています。
シートベルトは乗車した方の身体を固定し、エアバッグは衝突時に身体にもたらされる衝撃を吸収するクッションのような役割を果たしています。万一の際の交通事故に備え、乗員の身体を危険から保護するための安全装置です。
シートベルトには、危険時にベルトの緩みを巻き取るシートベルトプリテンショナーという装置が備わっています。このシートベルトプルテンショナーとエアバッグを総称して、エアバッグ類と呼びます。
エアバッグ類は車を解体する際に爆発する恐れがあるため、安全かつ適正に処理するには専門技術が必要です。そのためにかかる費用が、エアバッグ類料金として徴収されています。
使用済自動車が廃車処理され、リサイクル工程に回っている状況を把握するために電子システムを使用しています。
車の所有者は膨大な数なので、きちんと管理していなければ誰の車が今どのような処理を行っているか分かりません。
この電子システムの運用に必要な費用が、情報管理料金としてリサイクル預託金に含まれています。
また他にも、外部からの問い合わせに対応するためにコンタクトセンターが設置されています。ここにはスタッフが常勤しており、電話などでの問い合わせに対応してくれています。そのスタッフの人件費にも情報管理料金は充てられているのです。
金額としては130円が負担金となっています。
資金管理料金というのは、リサイクル料金を集め、管理してリサイクル処理に運用するという一連の資金管理のために必要な費用のことです。
自動車リサイクル法には、ユーザーが負担しなければならないことが規定されています。
新車購入時に1台につき290円、廃車処理する際に1台につき410円の負担です。
この金額は2017年4月に改定されており、今後も必要に応じて改定される可能性があります。
リサイクル預託金の金額の決め方
リサイクル預託金はどの車でも一律同じというわけではなく、車種によって金額が異なるので注意しましょう。
金額には差があり、7,000円~18,000円位はかかるとされています。
車が大きいとより多くの金属などが使われているので、廃棄処理することでより多くの廃棄物が出ることになります。量が多いとその分処理に費用が発生するため、廃棄物の量によって金額が決められています。
各自動車メーカーでは、リサイクル預託金の金額をWebサイトで公開しています。検索すれば、自分の所有する車のリサイクル預託金がいくらになるか確認することが可能です。
リサイクル預託金は、自動車メーカーや車種によって金額が違ってきます。車の大きさによって使われている金属やプラスチック、ガラスなどの量が異なり、処理にかかる費用にも差が生じるからです。
どの位の金額になるか、予め把握しておくと安心でしょう。
エアバッグが4つ、エアコン付きで、リサイクル預託金は7,000円~16,000円程です。
エアバッグが4つ、エアコン付きで、リサイクル預託金は10,000円~18,000円程になります。
エアバッグが2つ、エアコン付きで、リサイクル預託金は10,000円~16,000円程です。
さらに高くなり、エアバッグ2つ、エアコン付きで、リサイクル預託金は40,000円~65,000円程になるとされています。
全ての車両にリサイクル預託金が発生するというわけではなく、リサイクル預託金の負担義務がない車両もあります。
- 被けん引車(トレーラー)
- 二輪車(原動機付自転車や側車付き車も含む)
- 大型特殊自動車
- 小型特殊自動車
- 農業機械
- 林業機械
- 雪の上を走るスノーモービル など
これらは、廃車の際にリサイクル預託金が不要です。
リサイクル預託金を支払うタイミング
リサイクル預託金を支払うのは廃車として処理する時だと思われがちですが、実はそうではありません。リサイクル預託金は、車を購入する際に必要な諸経費の1つとして支払うことになっています。
支払いは購入時の1回のみなので、税金のように定期的に支払う必要はありません。基本的に1台の車に1回の支払いというように、車ごとに付随する費用です。
車購入時にリサイクル預託金を支払うと、「リサイクル券」という支払いを証明する書類が発行されます。
車を売却すると、元の所有者はリサイクル預託金が返金されて、新しく中古車を購入した所有者が新たにリサイクル預託金を負担する義務が生じます。リサイクル預託金は、車が廃車処理するまで所有者間で引き継がれていくということです。
リサイクル預託金を支払うと、リサイクル券という書面が発行されます。
リサイクル券は1枚の書類ですが、中を見るとABCDという4つの券で構成されています。それぞれの券は違った書面なので、どのような内容か知っておきましょう。
リサイクル券はリサイクル預託金を支払ったという証明になるので、紛失しないようにきちんと保管しておきましょう。
A券は預託証明書(リサイクル券)となります-。
リサイクル券番号、車台番号、車名が載っています。
シュレッダーダスト料金、フロン類料金、エアバッグ類料金、情報管理料金といったリサイクル預託金の内訳と預託金合計が記載されているので確認しておきましょう。
B券は使用済み自動車引き取り証明書となります。
車を廃車として処理するために、業者に依頼した際に渡す証明書です。
リサイクル番号、車台番号、引渡者の住所や氏名、引受業者の事業者名などを記載する欄があります。
C券は資産管理料金受領書です。
リサイクル預託金は財団法人自動車リサイクル促進センターが預かり、管理してリサイクル事業に運用しています。その際の管理にかかる費用を受領したことを証明する書類になります。
D券は料金通知書券発行者控えです。こちらはリサイクル券を発行した事業者の控えになります。
リサイクル預託金の総額や内訳といった料金の明細や、リサイクル券番号などが記載されています。
車を購入した際に発行されたリサイクル券は、車検証などが収納されているファイルに一緒に納められていることが多いです。一般的に、車の助手席のダッシュボードなどに収納されているでしょう。
しかし、ふと気づくと紛失しているというケースもあるかもしれません。
リサイクル券は紛失しても再発行ができないことになっています。リサイクル券がないと、車を売却する際にリサイクル預託金を支払ったことを証明できないと思う方もいるかもしれません。
しかし、基本的にはリサイクル券がなくても自分の車のリサイクル料金を調べ、リサイクル料金預託状況という画面を印刷すれば、リサイクル券の代わりになります。
自動車リサイクルシステムというサイトにアクセスし、リサイクル料金検索をクリックすれば利用できます。車台番号などを入力しなければならないので、車検証を準備しておきましょう。
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リサイクル預託金は買取・下取りで返金される
リサイクル預託金は、車を売却する際に一般的に返金されます。
所有者が車を手放すと、リサイクル預託金はその所有者に返金されます。そして、中古車として購入した次の所有者がリサイクル預託金を新たに支払うということになります。
車を下取りに出す際も同様です。
ただ、車を廃車にする場合は、リサイクル預託金が使われるため返金はされません。
車を売却すると、自分が車を購入する際に支払ったリサイクル預託金は通常返金されます。返金の方法としては、車の買取額に含まれている場合が多いです。
例えば60万円で車が売却される際は、この60万円の内訳としてリサイクル預託金が含まれます。リサイクル預託金が返金されているかどうか、買取明細を確認しておきましょう。
一方で車の買取額とは別に、リサイクル預託金を返金してくれる業者もあります。
また、車をディーラーに下取りに出す際は、大体新車も同時に購入する場合が多いです。新車購入の場合、下取額を購入額から差し引くなどして値引き交渉が行われます。
新車購入時にも新しい車に対してリサイクル預託金を支払うことになるのでややこしいですが、下取りに出した車のリサイクル預託金は返金されます。
下取額に含まれるのかは、下取りの際の明細書の内訳などをしっかり確認しておいた方が良いでしょう。内訳に記載がないと、返金されたか曖昧なままになってしまうので注意が必要です。
リサイクル預託金は廃車にすると返金されない
愛車を乗り続けて部品などがかなり消耗している場合や、交通事故で大破してしまった場合などは車を廃車にすることになるでしょう。
リサイクル預託金は元々廃車処理するために必要な費用であり、自動車リサイクル法に基づき車の所有者が支払う義務のある費用です。そのため、廃車にするために手放した場合は、リサイクル預託金は返金されません。
通常廃車となると廃棄物になってしまうので、引き取ってもらうだけでも費用が発生しそうなものです。
廃車専用の買取業者や解体業者は、使えるパーツを取り外してリサイクルに回したり、鉄くずを換金したりするための独自のルートがあります。そのため、廃車専門の業者に任せた場合、廃車買取金としてお金が受け取れる場合もあります。
車を廃車にするために業者に出したのに、海外での需要がある場合、国内で廃車処理されずに海外に輸出される場合があります。
リサイクル預託金は、あくまで廃車処理に必要な経費です。廃車処理がされないとなると、以前の所有者は自分で支払ったリサイクル預託金の返還を求めることができます。
車を廃車にする際は抹消登録手続きを行いますが、海外に輸出される場合は輸出抹消登録という手続きをします。
車の輸出手続きが完了後、リサイクル預託金の管理を行う公益財団法人自動車リサイクル促進センターに自動車の輸出を証明する必要書類を提出して、リサイクル預託金の返還請求を行います。
返還請求には期限が設けられており、車の輸出日から2年以内となっているので注意しましょう。
返還されるのは、リサイクル預託金から事務手数料などが差し引かれた金額になります。