大きな傷や擦ってしまったことによって車の塗装が剥がれたり、長年乗っていることで細かい傷が気になってきたりすると、塗装による修理を検討したくなるかもしれません。

車の全塗装をするかどうか決める前に、そのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。また、どんな塗装方法があるのかも紹介します。

車の修理で全塗装を検討するシチュエーション

車の修理で全塗装を検討するシチュエーション
車の修理で塗装が必要になるのはどんな時なのでしょう?

車に乗っていると車体を擦ったり、大きな傷がついて塗装が剥がれたりする場合があります。そういった時は、大きく塗装が剥がれているところだけ修理して綺麗にすることができます。

しかし、長年乗っているうちに細かな傷で塗装が剥がれているような場合には、全塗装を検討する方もいるでしょう。

そこでまずは、全塗装をする場合のメリットとデメリットについて見ていきましょう。

車を全塗装するメリットとデメリットは何ですか?
車を全塗装する場合のメリットは、傷など劣化部分が修復されて綺麗になる、自分好みの色に変えられる、より長く乗り続けられるようになることが挙げられます。
一方、デメリットは、コストと時間がかかる、選ぶ業者がよくないと塗装の質が落ちる、色や塗装の種類によっては車を売却する際に査定額が下がることなどが考えられます。

全塗装するメリット

全塗装するメリット
全塗装を行うかどうか検討するために、まずはどんなメリットがあるのか具体的に考えてみましょう。

傷など劣化部分が修復されて綺麗になる

車の塗装は時間の経過とともにくすんだり、色落ちしたり、剥がれたりします。目立つ部分だけ塗りなおした場合、周囲の細かな傷や塗装の剥がれとの差が目立ってしまうかもしれません。そこで、全塗装を行うことで新車当時と同様の見た目に戻すことができます。

自分好みの色に変えられる

元々それほど好きではない色の車を購入した、または長年同じ色なのでどうせならイメージチェンジしたいという場合には全塗装が有効的です。色だけではなく、光沢を出すのか出さないのかなど細かく選択ができます。

より長く乗り続けられるようになる

塗装の劣化部分が修理されたことにより、適切な管理をすれば車はさらに長持ちするでしょう。また、外見が綺麗になるとさらに愛着も湧き、大切に乗り続けようという気持ちになるかもしれません。

全塗装するデメリット

全塗装するデメリット
全塗装にはメリットだけでなく、デメリットもあるので確認していきましょう。

コストが高い、かなり時間がかかる

車体に傷やへこみがある車を全塗装する場合、まず修理をしなければなりません。そして、一部の部品は取り外してから塗装を行い、必要な場合には部品の交換も行います。

さらに、選んだ塗装の種類によっても費用が追加されるため、コストが高く、時間もかかります。毎日の足として車を使っている場合は、代車を用意する必要もあります。

選ぶ業者がよくないと塗装の質が落ちる場合がある

安さにこだわると、塗装の質が低く劣化が早まってしまい、かえって高くつくことになるかもしれません。

色などによっては買取査定で下がることがある

自分好みを追求して変わった色や光沢が目立つような塗装にしてしまうと、買取査定の際、元の色よりもマイナスの評価になることがあります。ただし、純正色での全塗装であれば、買取査定の際に修理のための塗装とみなされ全塗装が原因での減点はないでしょう。

愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら

車の全塗装を行う工程

車の全塗装は、業者に依頼するか自分で行うこともできます。しかし、ただ単に塗料を塗れば良いというわけではありません。

ここからは、それぞれの場合で、どのような作業工程が必要になるのか見ていきましょう。

車の全塗装にかかる期間はどれくらいですか?
車の全塗装にかかる期間は、塗り替える色や塗装の範囲、車種による作業工程の違いなどによって変わってきます。
最短で1週間、通常は3週間~1ヶ月程度かかります。長い場合には2ヶ月かかることもあるでしょう。
業者に依頼して全塗装する場合

業者に依頼して全塗装する場合
全塗装の手順は、依頼する業者によっても変わりますが、大まかには以下の通りです。

  1. 車体の状態を確認し、傷やへこみがある場合は修理をする
  2. ドア、ミラー、バンパー、レンズ、ヘッドライト、フード、トランクなど外せる部品を外す
  3. 骨格部分やパネルの汚れを落とした上で足付けする
    ※足付けとは、表面を少々ざらつかせることです。これにより塗料が密着し剥がれにくくなります。
  4. マスキング(車内に塗料が入り込まないようにする)
  5. 骨格部分を塗装する(ドアなどを開けたりした時に見える部分)
  6. 車体の表側部分の下地処理、足付け
  7. 車体の表側部分のマスキング
  8. 車体の表側部分の塗装
  9. ドア、ミラー、バンパーなど取り外した部品の下地処理
  10. ドア、ミラー、バンパーなど取り外した部品の塗装
  11. 取り外した部品の取り付け
  12. 塗装を磨く
  13. 塗装のムラや磨き残しがないか確認

なお、塗装は1回で終わるわけではありません。通常は下地処理の後、中塗り塗装、上塗り塗装を行います。

全塗装の工程での手の抜かれ方

全塗装なのに激安という場合、よく話を聞いてみると中塗りなどの料金が含まれていないという可能性があります。

中塗り塗装には、以下のような重要な役割があります。

  • 下塗り塗膜のデコボコや欠陥部分をならす
  • 上塗り塗料の吸い込みを防止する
  • 上塗り塗膜を均質にすることにより仕上がりをよくする
  • 石が当たるなどの衝撃を吸収し、下地にダメージが及ばないよう防ぐ

中塗りを省くのは長期的に考えてもおすすめできないので、注意しましょう。

また、その他にも格安の場合に手を抜かれやすい工程は下記になります。

部品を取り外さずにマスキング処理で塗装する

技術があればマスキング処理だけでも綺麗に仕上げることは可能ですが、技術が不十分な場合、マスキングの甘さから塗装が浮いてきたり、境目がきちんと塗装されなかったりする可能性があります。

事前の汚れの処理や磨きが甘い

塗装前に十分にホコリや汚れを取り除かずに下地処理がきちんとできていないと、塗装にムラができたり、汚れの部分がボコボコしてしまったりすることがあります。

金額が安いのは、それだけの理由があります。綺麗に全塗装してもらうためには、高い技術、手を抜かない工程、塗料の質が大切です。

全塗装の依頼先

車の全塗装を業者に依頼する場合、候補としてはディーラー、整備工場、カー用品店、自動車修理業者、板金塗装業者があります。

業者に依頼するメリットは、専門技術があるため塗装の完成度が高いことです。特に車に大きな傷やへこみがある場合には自力で直すのは困難であるため、全塗装も含めて業者に依頼することがおすすめです。

ただし、業者を選ぶ際には激安価格に惑わされることなく、しっかり見積もりを取り、どのような作業工程かも確認しましょう。

自分で全塗装する場合

自分で全塗装する場合
車の全塗装は、やる気と技術があれば自力で行うことも可能です。必要なものと工程は、以下の通りです。

準備するもの
  • マスキングテープ
  • マスキングシート
  • 耐水ペーパー(320番、600番、1000番、1500番、2000番)
  • シリコンオフ(車の表面についている汚れを除去する有機溶剤)
  • スポンジ
  • 新聞紙
  • サーフェイサー(下地塗料)
  • 缶スプレー(カラー塗料)20本~
  • 缶スプレー(クリアカラー)20本~
事前準備の手順(できれば風のない曇りの日にしましょう)
  1. ガラス、ヘッドライト、テールランプなど、傷をつけたくないところにマスキング処理を行う
  2. 車体の表面を320番の耐水ペーパーで磨き、表面を粗くすることで塗装を入りやすくする
  3. 600番の耐水ペーパーで磨く
  4. 車を水洗いした後、汚れをシリコンオフで取る
  5. 車体にサーフェイサーを薄く吹き付け、乾燥させる
  6. 乾燥後、1000番の耐水ペーパーで表面を滑らかにし、色ムラを防ぐ
塗装の手順
  1. 車体にカラーの缶スプレーで薄く色をつけ、塗料が乾燥したら再度薄く塗装し、この工程を数回行う
  2. 1.を十分に乾燥させた後、1500番の耐水ペーパーで磨く
  3. クリアカラーの缶スプレーでコーティング、薄く吹きかける工程を何度も行う
  4. 3.が乾燥し、硬化したら2000番の耐水ペーパーで磨く(コンパウンドの極細目などでも代用可能)
  5. 4.の工程により光沢が出たら完成

車の塗装の種類

車の塗装の種類
車の塗料の違いは色だけではなく、様々な種類があります。光沢なども考えてこだわりたい場合には、それぞれの特徴を知っておくと良いでしょう。

ここからは、車の塗装の種類について紹介していきます。

ソリッド

まず基本の塗装として挙げられるのはソリッドです。ソリッドは「単色」を意味しており白、黒、青など単一の色で、特殊な材料などを混ぜない塗装となります。

塗料自体の価格が安く、クリア塗装の必要がなく工程がシンプルであることから、その他の種類と比べて一番費用が安く済みます。

ただし、白や黒の場合は仕上げるために他の色よりも技術が必要になるため、技術料の分が多少費用にかかってくるでしょう。

クリア

クリア塗装は、色を塗った後にトップコートとして塗料を保護するもので、塗装が剥がれるのを防ぐことができます。さらに、塗料に含まれている金属が酸化し錆びることも防止できます。

ソリッド塗装以外の塗装では、クリア塗装が必須です。しかし、耐久性や見た目のよさを重視する傾向もあり、最近ではソリッド塗装であってもクリア塗装を行うことがほとんどです。

メタリック

ソリッド塗装がベースですが、ソリッドの塗料にアルミニウム粉末を混ぜるとメタリック塗装になります。きらきらと反射し、角度によって色の見え方が変わるのがポイントです。

1色であってもグラデーションのように見えるため、見た目をアップさせたい時には魅力的でしょう。

なお、塗料に含まれるアルミニウムは雨に触れると酸化し、色落ちの原因となります。それを防ぐために、クリア塗装でコーティングすることが必要です。

マイカ

マイカ塗装はメタリック塗装の一種ですが、雲母という鉱物を使用して柔らかなきらめきを表現する塗装となります。雲母の英語表記がmica(マイカ)です。

メタリック塗装よりも控え目ながらも深みのある、真珠のような光沢を特徴としています。

パール

パール塗装は、含まれている雲母がマイカ塗装よりも細かい塗装です。こちらも真珠のような輝きと色合いを持っており、マイカ塗装と同じように扱われていることがあります。

マジョーラ

マジョーラ塗装は、5層構造によるメタリックな質感と、オーロラのような虹色の輝きが特徴となっており、見る角度によって色が変わるのでとても目立つ塗装です。派手なのが好みの方にはおすすめと言えます。

マジョーラは、ラテン語で魔法を意味する「MAGIA」(マギア)と、「AURORA」(オーロラ)の組み合わせでできた造語で、日本ペイント登録商標の日本生まれのカラーです。

キャンディ

キャンディ塗装はその名の通り、飴玉を思わせる透き通った色が特徴です。色の入ったクリア塗料をシルバーの上から重ねることで、クリア塗装からシルバーが透けて見えるようになっています。

車の全塗装にかかる費用

車の全塗装にかかる費用
車を全塗装する場合、工程と塗装の種類によって費用に差が出てきます。

どんな差が出るのか知っておけば、どんな業者にどんな塗装を頼むのが良いのか判断する助けになるでしょう。以下で詳しく見ていきましょう。

車の全塗装の費用はどれくらいですか?
車の全塗装の費用は、依頼する業者、車種、塗料、作業工程によって変わってきます。大まかな目安としては、軽自動車や小型自動車の場合は15万~20万円ほど、中型や大型自動車の場合は20万~25万円ほどです。この金額はあくまでも目安であり、場合によっては30万円以上かかることもあります。
工程による値段の差

全塗装の際、どこまで丁寧な作業をするかによって値段は変わります。ただし、作業内容だけでなく業者によっても費用は様々なので、業者に確認することが大切です。

全塗装の費用が安いのは、マスキング処理のみで部品を取り外さないことが考えられます。この場合、塗装しにくい場所に塗装ができなかったり、マスキングとの境目に塗料の盛り上がりができたりすることがあります。

取り外せる部品を全て取り外す工程が含まれているとマスキング処理のみより格段に仕上がりはよくなります。しかし、部品の脱着がある分、費用は高額になります。また、エンジンまで取り外すとなると依頼できる業者は限られてきます。

塗装種類による値段の差

塗装は種類によって、塗り重ねの回数が変わってきます。多ければ多いほど、費用は高くなります。

例えば、クリア塗装をしないソリッド塗装であれば、下地塗料+カラーベース塗料だけで済みます。

しかし、メタリック塗装の場合は、下地塗料+メタリックベース塗料+クリア塗装と、塗り重ねる回数は増えます。

また、パール塗装になると、下地塗料+カラーベース塗料+パールマイカ塗料+クリア塗装となります。

マジョーラは塗装が5層であり、キャンディも何度も塗り重ねることで色合いを出しますので、塗料代はさらに高くなるでしょう。

全塗装以外の方法はある?

全塗装以外の方法はある?
車の全塗装をするのは気が引ける…という場合、フルラッピングという方法もあります。これは、特殊な樹脂フィルムに色や模様をつけたシールを、車体に貼り付ける方法です。

バスや電車などに宣伝広告の装飾を施す際に使用されていますので、目にしたことがあるかもしれません。

フルラッピングのメリットとデメリットは下記の通りです。

フルラッピングのメリット
  • 塗料の重ね塗りが不要
  • 色ムラの心配がない
  • 手軽で時間も節約できる
  • 元の状態に戻しやすい
フルラッピングのデメリット
  • 全塗装よりも費用が高い傾向がある
  • 耐用年数が2、3年ほどと短い
  • 紫外線により色褪せが目立つ場合がある
  • 車体の劣化具合によっては対応できない場合もある

塗装のダメージの原因

塗装のダメージの原因
全塗装により新車同様にピカピカにしても、その後の管理が杜撰であるなら元も子もありません。

まずは、塗装のダメージの原因となるものには何があるのか見ていきましょう。

紫外線

紫外線は色褪せの原因となるだけでなく塗装表面を劣化させ、白いチョークの粉が吹いたようになるチョーキング現象を生じさせます。

紫外線や赤外線を吸収しやすい黒色は、塗装面の温度が上がりやすいため、チョーキング現象だけでなく塗装面についた汚れが焼きついてしまうこともあるでしょう。

水アカ

塗装が色褪せる他の原因は、ミネラル分です。これは雨や水道水に含まれています。また、水分が塗装面についたままだと水玉状のシミ(イオンデポジット)ができ、放置しておくと塗装のへこみを招くことになります。

その他にも、鳥のフンは塗装を溶かしてしまいますし、花粉も雨に濡れてペクチンが染み出すとシミの原因になります。

塗装のダメージを防ぐためにできること

塗装のダメージを防ぐためにできること
塗装の状態を長持ちさせるためにできることは何があるのでしょう?

以下で詳しく説明していきます。

コーティング

塗装を綺麗に保つためなら少々費用がかかってもいいと思えるならば、車のコーティングを検討しましょう。

クリア塗装で塗料を保護できるのでは?と思うかもしれませんが、クリア塗装は擦り傷や紫外線により破壊されてしまうのです。

コーティング被膜があれば、紫外線による色褪せを防ぐだけでなく、汚れや細かい傷からも塗装面を保護してくれます。さらに、塗装の発色や光沢を向上させるという利点もあります。

コーティングにも種類があり、5万円程度で済むものもあれば、高いものだと20万円かかるものもあります。種類によってコーティングの効果や寿命も変わってきますので、よく比較検討することが大切です。

車の保管方法

車の塗装を長持ちさせるためには、車の保管方法を考える必要があります。車の塗装が劣化する主な原因は紫外線と水アカであるため、これらを避けられる屋内や屋根つきのガレージに保管するのがおすすめです。

駐車場が屋外にある場合は、ボディカバーをかけることで対策できます。ボディカバーを使用する際に注意したいのが、車のサイズに合ったものを選ぶということです。サイズが合っていないと、車にカバーをかぶせる時に摩擦により塗装に傷がつく可能性があります。

洗車

車の塗装を維持する上で、定期的な洗車も有効です。水の付着によって生じるイオンデポジットを防いだり、劣化の原因となる鳥のフンや花粉を取り除いたりすることができます。

洗車の方法については、以下の手順を参考にしてみてください。

  1. 車に大量の水をかけて汚れを洗い流します。いきなりクロスなどで擦ると汚れによって塗装面が傷つくことがあるので注意しましょう。
  2. 目の細かいクロスに、きめ細かい泡をつけて車体を上から下へやさしく擦ります。
  3. 上から下へ、泡が残らないように水で洗い流しましょう。
  4. 水によるシミができないように、乾いたクロスで水滴を拭いていきます。

取れない汚れがある時は、力を入れて擦ると塗装に傷がつく可能性があるため、業者に依頼するのがおすすめです。

まとめ

①車の表面の傷や塗装の剥がれが気になる場合、全塗装で修理することは有効な手段
②全塗装のメリットとデメリットを天秤にかけてから実行することが大切
③全塗装は業者に依頼することがおすすめだが自力で行うことも可能
④全塗装の費用は塗装の種類や作業工程によって変わる

※本記事は公開時点の情報になります。
記事内容について現在の情報と異なる可能性がございます。
車の査定は何社に依頼するべき?
愛車の買取相場を知ることで高く売ることができます 愛車のかんたん査定はこちら