車のボディに発生した傷やへこみを修理する際、修理費用がどの程度かかるか不安を抱く方は少なくありません。部位や損傷の規模によって金額が異なることもあり、思いがけない出費につながる可能性があります。

この記事では、車の板金修理に関する相場や依頼先について解説します。

板金修理の要点を押さえると、修理費用を抑えるうえで役立つ考え方が身につくでしょう。部位別の金額や業者の特徴を把握し、修理を選ぶ準備を進めましょう。

ポイント
  • 板金修理の費用は部位やへこみの程度で変わります。
  • 傷の状態により、パテや塗装の工程が異なります。
  • 業者によって作業時間や料金設定が異なる場合があるのです。
  • 保険を適用できるケースを確認すると、自己負担額の軽減につながります。
  • 修理費の比較や見積もりのとり方を知ると、納得のいく選択がしやすくなります。
  • ボディの材質や塗料の種類によって仕上がりや費用が左右される場合があるでしょう。

車の板金修理の相場は部位によって異なる

車の板金修理費用は、ドアやフェンダーなどの部位や傷の深さによって金額が変動します。外装が広範囲で損傷している場合、塗装作業も拡大するため費用が大きくなることが特徴です。

ここからは、板金と呼ばれる作業の概要と部位別の相場を把握しやすいように解説します。車両保険を利用して修理したい場合でも、自己負担額の設定や保険の適用条件によって最終的な出費が変わる点にも注意が必要です。

板金と呼ばれる作業とは?

板金と呼ばれる作業とは?
板金とは、車体のへこみや傷を金属加工によって整えたうえで、塗装を行う一連の修理方法です。車体の表面を滑らかに整える作業と塗装が組み合わさるため、単なる塗り替えとは異なる段取りが必要です。

へこみを引き出し、表面を研磨して平らにし、必要に応じてパテを塗り込む方法がとられます。具体的には、損傷部分の表面を削り、歪みを金属ハンマーなどで整え、必要に応じてパテを塗り込む方法です。

表面が滑らかになった後、下地処理を行い、塗膜を均一に仕上げる工程が重なるため、部位によって作業時間や費用に差が生じやすい傾向があります。塗装工程は湿度を管理しながら色むらを抑えるため、慎重な手順が求められます。

板金のもともとの意味

板金のもともとの意味は、金属の板を切断や曲げなどで加工し、特定の形状を作り出す技術全般を指します。建築分野や家電製品の外装にも利用され、薄い金属板を操作して各部位の形を整える作業が大きな特徴です。

自動車修理の世界では、外装パネルのへこみを直す際に活用され、外板を再生するための基礎工程として重視されています。

自動車以外にも、金属製の看板やキッチン用品など、あらゆる分野で板金は活用されています。薄い材料を自在に曲げる技術がポイントとなり、強度と仕上がりの美観を両立させるために欠かせない要素として発展してきました。

自動車の板金修理は、車体の機能を十分考慮しながら形状を復元する作業として扱われています。

車のドアにできた小さな傷の修理方法は?
ドアに生じたごく小さな傷であれば、塗装作業のみで対処できる場面が多いでしょう。傷が浅い状態であれば表面を磨き、目立たなくしたうえで部分的な塗装を施す方法が考えられます。傷の深さが増して金属部分にまで達している場合は、パテによる成形が必要となり、下地処理の手間や塗料の使用量も増える点が特徴です。

部位別の板金の修理相場

板金修理の費用は、依頼する業者や素材、傷の規模によって上下します。

ここで挙げる金額はあくまで相場であり、実際には塗装範囲や下地処理の内容によって変動します。

予算や希望する仕上がりに合わせ、複数の見積もりを比較するのがおすすめです。

ドア

ドア
ドア部分の修理費用は、へこみや傷の度合いによって「20,000円~100,000円」と幅が生じます。

浅い傷であれば軽度のパテ埋めと塗装だけで済むため、金額は抑えられる傾向があるのです。

一方で、金属が大きく歪んでいる場合や複数の箇所に損傷が及んでいるケースでは、修理と塗装の工程が増えるため費用が跳ね上がることがあります。

ドアの開閉性能に影響がおよぶほど損傷が進んでいる場合、単なる表面修復ではなく、内部構造も含めた確認が推奨されます。周辺部品の交換が必要になると、部品代が別途加算され、最終的な修理費が高額になる場合があるのです。

ドアミラー

ドアミラーの修理費用は「1,500円~15,000円」が目安です。

傷や塗装剥がれであれば、部分的な補修用塗料を用いた簡易修理でカバーできる場面があります。

破損が大きい場合やミラー内部の機械部分にダメージが及んでいると、部品交換が必要となり費用が上がる点が特徴です。

ドアミラーは見た目だけでなく、安全運転のための視界確保にも関わる重要な装備です。調整機能やウインカー内蔵タイプなど、車種によって構造が異なるため、純正パーツと互換品の価格差も意識しながら修理方法を検討する必要があります。

フロント・リアフェンダー

フロント・リアフェンダー
フロントフェンダーの修理相場は50,000円程度です。損傷が軽度な場合は、外板を引き出して整えたあとに塗装を施す作業で完了するのが見込まれます。

リアフェンダーは構造が複雑な車種も多く、大幅に変形している場合は交換対応となり、100,000円前後の費用がかかる可能性があります。

フェンダーは車体の横や後ろからの衝撃を受けやすい部位です。走行中に飛び石や側壁との接触による損傷が起きた際、内部の骨格部分にも影響が及んでいないか確認すると安心です。

長期的に見て車体全体の寿命を左右しかねない箇所でもあるため、適切な板金作業が推奨されます。

ボンネット

ボンネットの修理費用は、表面のへこみや傷の広範囲化に左右されます。軽度のへこみだけなら50,000円程度で修理できる場合はありますが、大きく変形している際は部品交換が検討され、さらに費用がかかる傾向があります。

エンジンルームの上部に位置するボンネットは、車全体の外観イメージに大きく影響するでしょう。塗装のムラが生じると目立ちやすいため、修理後の仕上がりにこだわる方は、塗装技術に定評がある業者を選ぶと安心です。

高速走行時には風圧を受けやすい部位のため、固定や構造面のチェックも欠かせません。

バンパー

バンパー
バンパーは軽度の傷やへこみであれば30,000円~40,000円ほどで修理できるとされます。

ただし、大きく変形している、あるいは割れが生じているケースでは加工が難しく、交換対応となると50,000円~80,000円ほどの出費が生じやすいでしょう。

バンパーは車の前後に取り付けられ、衝撃を和らげる役割を果たします。小規模な接触でも傷が目立つ反面、樹脂製のため板金作業での修復が可能です。

再塗装の際は色合わせが重要であり、車種ごとに採用している塗料やカラーコードを基準に工程を進める点がポイントです。

バックドア

バックドアの修理相場は、軽度のへこみなら80,000円程度が目安です。大きくへこんで閉まりが悪くなるほどの損傷がある際は、交換が必要となり、100,000円を超える見積もりが提示されるケースもあります。

バックドアは荷物の出し入れで頻繁に開閉されるため、わずかな歪みでも実用性に響く可能性があります。雨水が浸入しやすくなるなどのリスクも伴うため、早めの補修が求められるのです。

交換対応する際は、車種やグレードごとに異なる純正パーツの在庫や納期を確かめると計画が立てやすいでしょう。

ルーフ

ルーフ部分の修理は、軽度の損傷で30,000円~50,000円ほどで済むとされますが、広範囲にへこみが及んでいる場合や骨格への影響が疑われる場合は100,000円以上かかることがあります。

天井部分は目線に入りづらい位置ですが、降ひょうや落下物によるへこみが発生すると、放置しているうちにサビにつながる可能性もあります。

ルーフが損傷するとボディ全体の剛性に影響を及ぼす場合もあるため、早期発見と修理が重要です。専用工具で裏側から押し出す方法やパテ埋めなど、傷の程度に応じた対処が求められます。

バンパーの擦り傷を板金業者に依頼する際の流れは?
最初に、傷の程度や素材を確認し、表面の研磨や再塗装だけで対処できるかを判断します。浅い傷であれば塗装を均一にのせる作業で完了しますが、深い擦り傷やへこみが伴うと、パテで形成し直してから塗装する段取りが必要です。バンパーは外観だけでなく車体保護の役割もあるため、リペア後の耐久性にも注目しましょう。
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板金で修理できる車のダメージ

板金で修理できる車のダメージ
板金作業は、線傷やボディの軽いへこみなどから、骨格の歪みまで様々な損傷に対応可能です。塗装剥がれやサビの進行具合によっては大がかりな工程を伴う場合もあります。

ここからは、板金で修理できる車のダメージについて紹介します。

線傷・ガリ傷

線傷やガリ傷は、金属部分まで達していない浅い場合であれば塗装による補修のみで対応できます。見栄えを整えるうえで、傷部分を研磨しながら表面を滑らかにし、色合わせを丁寧に進める工程が一般的です。

この種の傷は、駐車場の車止めや縁石などに接触したり、ドアを開けた際に壁にこすってしまったりしたときに生じます。

傷が長く深い場合は、パテで埋める作業を含めた板金工程を検討し、下地処理の正確さが最終的な仕上がりを左右します。

軽いボディの凹み

軽度のへこみは、板金用の専用工具を使い、裏側から押し出す方法などで原状回復が期待できます。

再塗装を施す際は、元のボディカラーとの境目が目立たないように調整を行うことが一般的です。軽いへこみほど元の形に近づきやすく、費用面も抑えられやすいといえます。

ただし、へこみが集中している箇所や形状が複雑な部分では、金属疲労が進行している可能性があるのです。長期使用を見据えて、単に表面を平らにするだけではなく、周囲の状態も点検しておくと安心です。

修理を怠ると、歪みが徐々に広がるリスクがあるため注意が求められます。

塗装の剥がれ

塗装剥がれは経年変化や紫外線の影響で進行しやすく、下地の金属面が露出するとサビが発生するきっかけになることがあります。

へこみがない場合は、古い塗膜を研磨して新たに塗装する作業が中心です。下地処理を入念に行うと、色ムラや塗膜の浮きが抑えられ、仕上がりの耐久性が高まります。

部分的に剥がれている程度なら、限定的な範囲の再塗装で済む場合もありますが、広範囲に及んでいる際はボディ全体の塗り直しを検討するケースもあります。

使用する塗料のグレードや工法によって費用が変わるため、希望するクオリティに合わせた選択が重要です。

ボディの錆

ボディにサビが発生すると、表面だけでなく内部へと腐食が進行しやすい傾向にあります。塗装剥がれや傷から入り込んだ水分が原因となることが多く、長期間放置すると車体強度にも影響を及ぼします。

サビを取り除き、必要に応じて防錆処理を行い、再塗装まで実施するのが一般的です。サビの範囲が広がった状態では、板金工程で金属の穴埋めや交換を迫られる可能性があります。

下地の処理を甘くすると再びサビが発生するリスクが高まるため、確実に酸化部分を除去し、適切な防錆剤を使用する手順が重視されています。そのため、早期のケアが大切です。

フレーム修正

フレーム修正は、事故などで車体の骨格が歪んだ場合に行う専門的な作業です。専用の修正機を用いて車体を引っ張り、元の位置に近づける工程が実施されます。

骨格がずれるとドアやボンネットの建付けに支障をきたすほか、走行時の安定性や安全性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

フレーム修正は高い技術力と精密な測定が求められるため、作業費用が高額になる傾向があるのです。

修理後はアライメント調整や各部品の検証も必要であり、工程全体を通じて車両の安全性を確保します。構造に深刻なダメージがある場合には、走行性能に関わるため慎重な判断が必要です。

バンパーの傷

バンパーは樹脂製が多いですが、板金業者で修理できるケースがあります。小さな傷であれば塗装工程のみで仕上げられますが、深い割れが生じている際は樹脂の溶接やパテ成形など、金属パネルの板金とは異なる方法がとられることもあるのです。

バンパーは車体全体の印象を左右するうえ、吸収材としての機能も担っています。衝撃を受けて内部に亀裂が入っている場合は、見た目以上に修理工程が増える可能性があります。

ディーラーや整備工場に相談するときは、純正パーツの手配や再塗装の技術力を確認しておくと安心です。

車の修理を行う前に確認すべきことは何ですか?
修理を依頼する前には、依頼先の修理工場や板金塗装工場の評判、修理内容、使用予定の部品について十分に下調べしておくことがおすすめです。
技術力や設備は各業者で異なり、見積もりの内訳も変わります。純正パーツを使うかリサイクルパーツを用いるかでも、仕上がりや費用に変化が生じやすい傾向があります。保険利用の際は保険適用範囲や自己負担額を確認しておくと安心です。

板金修理を依頼できる業者

板金修理を依頼できる業者
板金修理は、ディーラーや自動車整備工場、板金塗装工場など、複数の業者に依頼できます。業者ごとに作業範囲や費用が異なるため、見積もり内容を比較して車の状態や予算に合った選択が大切です。

ここからは、板金修理を依頼できる業者を紹介します。

ディーラー

ディーラーはメーカー直営または代理店として新車・中古車の販売を行うだけでなく、アフターサービスも担っています。自社で整備工場を併設している場合、板金修理から定期点検までワンストップで対応しやすい体制です。

純正パーツの手配がスムーズであり、保証対応も含めて安心感を得られるメリットがあります。一方、ディーラーによっては整備内容が標準化されているため、修理費用が割高に感じられるケースもあります。

こだわりのカスタム塗装や特殊な修理方法を希望する場合、対応が難しい場面もあるため、事前に相談して方針を明確にしておくことが重要です。

自動車整備工場

自動車整備工場では一般的な修理や車検整備に加えて、板金作業を請け負うところもあります。整備士が常駐しているため、機械的な不具合と合わせて点検を進めやすい点が特徴です。

板金工場と提携している場合も事例も多くあります。外注費が加算されることによって料金がやや上乗せされる場合があります。

しかし、自動車の総合的なメンテナンスを考えるなら、ワンストップで依頼できる利便性は魅力の一つといえるでしょう。過去の修理履歴や交換パーツの管理も一括して行えるため、将来的な整備計画を立てやすいメリットがあります。

板金内容とメカニカル部分の両面でアドバイスを受けながら修理方針を決定できます。

カー用品店

カー用品店は、部品やアクセサリーの販売だけでなく、軽整備やドレスアップ作業などを受け付けている場合があります。板金修理まで対応可能な店舗もあり、入りやすい雰囲気を好む方にとって選択肢の一つとなるでしょう。

ただし、店舗ごとに専門スタッフの在籍状況や取り扱う業務範囲が異なります。

大きな傷やへこみを伴う本格的な板金修理に対応できず、提携先の板金工場に依頼する場合もあります。その際は仲介手数料が発生する可能性があり、結果的に費用が高くなるケースもあるため、修理範囲や見積もりをしっかり確認しておくことが重要です。

板金塗装工場

板金塗装工場は車体の外装修理に特化しており、ディーラーや整備工場からの外注を受けることも少なくありません。車種を問わず多彩な修理実績を抱えているケースが多く、塗料の選定や塗装技術など、専門的なノウハウが蓄積されています。

熟練した職人が在籍している工場では、色合わせや仕上がりの質を重視する依頼にもしっかり応えてくれる可能性が高いと考えられます。

ただし、設備や技術力は工場ごとにバラつきがあるため、事前に施工事例や口コミをチェックすると安心です。ディーラーより費用が抑えられる場合はありますが、保証内容やアフターサポートの範囲を確認しておくとより安全です。

ガソリンスタンド

ガソリンスタンドでは給油や洗車に加えて、車検や軽整備に対応している店舗も多く見られます。中には板金修理を受け付けているスタンドも存在し、提携している板金工場へ修理を依頼する形でサービスを提供します。

ガソリンスタンドは立ち寄りやすさが魅力ですが、板金の専門知識を持つスタッフが常駐しているとは限らず、依頼内容によっては確認や見積もりに時間がかかる場合があるのです。

応急処置や小さな擦り傷の補修程度なら便利な選択肢ですが、大規模な損傷修理では他の業者も含めて総合的に検討すると安心です。

板金修理を依頼する際の注意点

板金修理は外観だけでなく、車の機能や安全性にも影響を及ぼす行程です。修理後の価値やパーツの品質を考慮すると、業者選びは慎重に行いましょう。

ここでは、依頼前に押さえておきたい注意点について解説します。

ドア修理・交換が車の価値に影響を与える

ドア修理・交換が車の価値に影響を与える
ドアを修理または交換した形跡が残ると、事故歴を疑われる要素となり、売却時の査定にマイナス影響が及ぶ場合があります。

交換した部品がもともとの塗装色と微妙に異なると、外観上の違和感が評価に影響する場合もあるため、修理履歴を隠さずに正直に伝えることが重要です。仮に修理箇所を隠したまま売却手続きが進むと、後々トラブルに発展する可能性があります。

大きな損傷を修理した事実は必ず記録を残し、必要に応じて修理時の写真や明細を提示できるようにしておくとスムーズです。車の価値を守るためにも、透明性の高い取引を意識するのが大切です。

リサイクルパーツの品質にばらつきがある

リサイクルパーツは新品に比べて費用を抑えられるほか、資源を有効活用できる点でも注目されています。

一方で、使用状況や前オーナーの整備履歴によって部品の状態は様々です。外観に問題がなくとも、内部構造が劣化している可能性もゼロではありません。

品質保証が付帯しているリサイクルパーツも存在しますが、全体的に新品ほどの精度を期待できない場面がある点に注意しましょう。安全に直結する部位や、機能面で不具合が起きやすい部品を選ぶときは、慎重に考える必要があります。

業者と十分に打ち合わせを行い、品質や保証範囲を確認しておくと安心です。

まとめ

①板金修理の費用は部位や傷の大きさで変動する
②塗装やパテ埋めなどの工程を踏むため、専門的な知識が求められる
③ドアやバンパーなどの交換は査定価値に影響する可能性がある
④リサイクルパーツは費用を抑えられるが、品質確認が不可欠である
⑤業者選びは修理費用だけでなく、技術力や保証内容も重視すべきである

※本記事は公開時点の情報になります。
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