車の維持や管理にかかるコストの中でも、大きなウェイトを占めるのが車検にかかる費用です。
車検の時期がやってくると、継続車検を受けてこのまま乗り続けるか、思い切って乗り換えるべきか悩んでしまうかもしれません。
しかし、継続車検を受けるにしろ乗り換えるにしろ、それぞれ長所・短所があります。また、乗り換えるにしても、それが新車なのか中古車なのかによって状況は変わってきます。
そこで今回は、継続車検と乗り換えでは、どっちがお得になるのかを詳しく解説していきます。
カーライフの分岐点!車検を受けるか乗り換えるか
継続車検を受けるか乗り換えるかはもちろん、どんな車に乗り換えるのかによってもその後のカーライフはガラリと変わってきます。
便利で快適なカーライフを安心して送るためには、車検と乗り換えのそれぞれのメリットとデメリットをよく知った上で、どちらにするか決めましょう。
継続車検を受けて車を乗り続けるメリットとデメリット
自家用乗用車の場合、2年に1度やってくる継続車検を受けないと、引き続き車を利用することができなくなってしまいます。
裏を返すと、継続車検にさえパスすれば、車はずっと利用することができるということです。
ここからは、継続車検を受けて車を乗り続けるメリットとデメリットには、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
乗り換えではなく継続車検を受けて今の車を乗り続ける最大のメリットは、車を引き続き利用するためにかかる費用を大幅に節約できることです。
車検を受けず乗り換えるとなれば、それが新車にしろ中古車にしろ、決して安くない購入費用がかかります。
継続車検にかかる費用は車種や年式、状態によって追加整備・部品交換代は変わってきますが、軽自動車で5~9万円、普通車で7~12万円程度です。
一方、乗り換えで車を新たに購入するとなれば、リーズナブルな中古車を探すにしても数十万円はかかります。
今の車を買取に出すこともできるため、乗り換える車のランクを落として売却益を全て購入費に回せば、かかる費用を抑えることも可能です。しかし、今乗っている車からランクを落としたくないのであれば、費用的には乗り換えより継続車検のほうがおすすめと言えます。
継続車検を受けると、数年にわたり使ってきて扱い慣れている車を、あと2年間は使い続けることができるというのも大きなメリットです。
車は車種や年式、モデルなどが変わるとサイズ感や性能なども変わります。しかし、サイズが小さくなったり、性能がよくなったからといって、必ずしも自分にとって扱いやすくなるとは限りません。
例えば、乗り換えで車のサイズ感が変わったせいで駐車がうまくいかなくなった、いつも使っている空調やオーディオのボタン位置や設定方法が変わって不便になった、といったこともあります。
そのため、乗り換える場合は次の車の車種だけではなく、サイズ感や性能についても試乗などで事前に確認しておきましょう。
また、車を乗り換えると車庫証明や任意保険の車両切替手続きをする必要があり、手間がかかります。一方、継続車検を受けて今の車を乗り続ける場合は、当然これらの切替手続きが必要ない点もメリットだと言えるでしょう。
前述したとおり、継続車検を受ければ新たに車を購入する費用がかからないという経済的なメリットを得られます。
ただしその反面、車が年数を重ねると、新しい車より維持コストがかさんでくるというデメリットがあります。
例えば、車を所有していると毎年1回自動車税を納めなければなりません。この自動車税はガソリン車の場合13年目、ディーゼル車の場合は11年目に約15%増税されます。
さらに、車検時に支払う自動車重量税も、13年目と18年目のタイミングでそれぞれ増税されるため、継続車検を受け続けるとどんどん制度的に維持コストが増えていくことになります。
また、継続車検を受け2年乗り続けているうちに家族が増えて、もう一台軽自動車を買い足したというケースでは、当然維持コストもかさんでいくでしょう。
ライフスタイルの変化を正確に予想することは難しいですが、このようなケースでは継続車検を機にワンボックスなど乗車定員の多い車に乗り換えておくという選択も、検討すべきだったかもしれません。
継続車検を受けて車を使い続けると、不具合や故障が増えるため、メンテナンスや修理費用が思っていた以上にかかることがあります。
特に、車に使われているパーツや消耗品の多くが寿命を迎える、10年・10万kmを超えている車は、不具合や故障の発生リスクが上がってきます。
車が古くなるほど増えてくるのは、以下の事柄です。
- タイミングベルトの断裂や破損
- オルタネーターの故障
- 各種オイル漏れ
- ミッションの不具合 など
車が古くなるほど、修理や部品交換に費用がかかる不具合や故障が増えてきます。そのため、境界となる9年目(4回目の車検満了時)に差しかかった車の継続車検を受けるのであれば、それにかかる費用をある程度計算しておいたほうがよいでしょう。
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車検を受けずに新車へ乗り換えるメリットとデメリット
継続車検を受けて今の車に乗り続けることで起こりうるデメリットは、全て今の車が年式を重ねた古い車だから起こることです。そのため、新しい車に乗り換えれば、これらのデメリットは回避することができるということになります。
しかし、継続車検を受けず、不具合や故障の発生リスクの低い新車に乗り換えたとしても、メリットだけではなくデメリットが発生することもあるので、詳しく説明していきます。
自動車に関する技術革新・進歩のスピードは目覚ましく、その多くは燃費の向上をはじめとする「環境性能」や、命を守る「安全性能」の向上に注がれています。そのため、今の車は昔の車よりも走行性能や快適性はもちろん、特に環境性能や安全性能の面で数段優れています。
継続車検を受けずに新車に乗り換えれば、燃料の消費が少なく経済的で、自動ブレーキや衝突被害軽減機能などといった安全装備の充実した車に乗れるという点は、大きなメリットです。
また、今の車はシートアレンジを豊富にしたり、グレードやカラーリング・オプションのラインナップを増やしたりしているなど、多様化してきたユーザーのライフスタイルに対応できるよう様々な工夫が凝らされています。
予測しにくいこともあるライフスタイルの変化などに合わせ、最適で快適なタイプ・グレード・オプションなどを選ぶことができるのも、新車に乗り換えるメリットでしょう。
車検を受けずに新車に乗り換えるのであれば、車検の費用を浮かせることができます。また、必然的に今の車が必要なくなるため、下取りや買取に出して売却益を得ることも可能です。
下取りや買取で得たお金をそのまま次の車の購入費に充てれば、より幅広い候補から好きな車をチョイスできます。これも、乗り換えをするメリットです。
この時、一つの業者に下取り・買取を任せるのではなく複数の業者に見積もりを取り、査定額を競合させたほうが、高値で売却できる可能性も高まります。
また、最近では購入した新車の3〜5年後の買取保証額を設定し、それを差し引いた分だけをローン返済する、「残価設定型ローン」の利用を検討しているユーザーも多くなっています。
残価設定型ローンを利用すれば毎月の負担を軽減でき、3〜5年ごと新車へ乗り換えてくことも可能です。ただし、通常のカーローンよりもやや金利負担が高く、カスタマイズが禁止されていたり、走行距離に制限があったりするので注意が必要です。
継続車検を受けず、新車に乗り換えるデメリットは、高額な車両購入費用がかかり、その後の経済的負担が格段に増してくることです。
中には、ローンを組むから大丈夫と思う方もいるかもしれませんが、ローンを組むにしても、頭金やその他の初期費用は必要です。頭金を準備していないと、毎月の返済負担がどうしても増えてしまうでしょう。
また、前に乗っていた車のローンの支払いが残っていたとしても、新たにローンを組んで新車を購入すること自体は、審査に問題なければ可能です。
ただし、ローンが残っている車を下取りや買取に出すためには、ローンの残りを完済する必要があります。
次の車のローンにローンの残りを上乗せして返済していくという方法もありますが、必然的に毎月の返済額は大きくなり、次の車への乗り換えに支障が出てくる可能性があります。
そのため、ローンが残っている時の新車への乗り換えは、より慎重に検討したほうがよいでしょう。
新車、つまり現行モデルとして流通している車は、性能的に昔の車より優れています。しかし、安全装備や快適装備も多数追加されているため、その分操作がやや複雑になっていることがあります。
車を乗り換えると、新しい車の操作手順やサイズ感の違いなどに慣れるまで、ある程度時間がかかってしまうかもしれません。
そのため、慣れるまでに追加装備の操作ミスをしてしまったり、サイズ感を誤って細かい接触事故を起こしてしまったりするといったリスクがあることはデメリットになります。
また、車庫証明や任意保険の車両切替(入替)手続きを行うのも、手間と時間がかかります。
特に任意保険の車両入替手続きを怠った場合は、万が一の際に保証が下りない可能性があります。新車・中古車に関わらず、車を乗り換えた場合は速やかに手続きを行うようにしましょう。
車検を受けずに中古車へ乗り換えるメリットとデメリット
海外でも丈夫で長持ちだと評価の高い国産車は、きちんとメンテナンスや整備、修理を行っていれば、5年、10年経っても現役で活躍してくれます。
そのため、故障しやすくなった今の車を手放して、程度のよい中古車に乗り換えようと考える方も多いかもしれません。
ここからは、継続車検を受けずに中古車に乗り換えた時のメリットとデメリットを紹介していきます。
選ぶ車種や年式によりますが、同じランクや車格の車であれば、新車に乗り換えるより中古車に乗り換えたほうが購入にかかるコストを大幅に節約することができます。
また、中古車は製造されたばかりの新車と比べると、不具合や故障を起こすリスクが高いです。しかし、「車検つき」や「購入店の保証つき」の中古車を選べば、購入後の維持費や修理にかかるコストなどを減らすことができます。
さらに、新車に乗り換える場合は、あくまでも現行モデルのいずれかを購入することになります。一方、中古車の場合はこれまで販売されてきた歴代モデルの中から自分の用途や好み、ライフスタイルに合った1台を厳選できるのもメリットです。
ただし、中古車は一点物で、同じ車種・年式・グレード・価格でも、状態や程度には差があります。そのため、乗り換える車本体の選択は、新車の乗り換えよりも慎重に行いましょう。
中古車は一点物であるため、購入前にしっかり状態や程度をチェックしていたとしても、すぐに不具合が出て故障してしまう可能性があります。
しかし、購入先の車両管理の姿勢やアフターフォロー体制などを購入前にしっかりとチェックすれば、追加費用を払うリスクを下げることができるでしょう。
また、中古車販売店の中には、不具合や故障を起こすリスクが高いとされている修復歴のある車を販売しないところや、期間や走行距離を区切って保証をつけているところもあります。
中古車としての購入価格は割高になりますが、リスクを軽減するためにそういった販売店で車を購入するというのも一つの手です。
車検以外で乗り換えを検討するタイミングとは?
ここまで、車検を受ける時と乗り換える時のメリットとデメリットを挙げてきました。
実のところ、車の乗り換えを検討すべきなのは、車検更新のタイミングだけではありません。
そこで最後に、車検以外で乗り換えを検討するタイミングをいくつか挙げていきます。
リセールバリューとは、その車を再販売する際の市場価値を指します。そのため、リセールバリューが高いほど、車の下取りや買取価格は高くなります。
ただし、車の年式が古くなったり、走行距離が増えたり、新型モデルが発表・発売されたりするとそのたびにリセールバリューは下がっていきます。
つまり、今の車のリセールバリューが下がってしまう前に乗り換えをすれば、より多く売却益を購入費用に回せるため、その後の支払いが楽になるというわけです。
なお、大きくリセールバリューが下がるのは、新車から3年、5年、7年目と言われています。そして、これらは全て「車検更新のタイミング」と重なっています。
新車にしろ中古車にしろ、車を乗り換えるにはそれなりに大きな費用が必要で、それが乗り換えをするデメリットでもあります。
しかし、安全性・快適性の向上や、ライフスタイル・趣味趣向とのフィット感など、得られるメリットを加味し長期的に考えると、決して乗り換えることが車検よりお得ではないとは言い切れません。
継続車検を受けずに乗り換えをすることで起こりえるデメリットの多くは、経済的な問題です。そのため、頭金がたまった、ローンの支払いが終わったなど車に関することはもちろん、子供が独立したライフスタイルの変化で、購入費用の準備が整っている時も、乗り換えを検討するよい機会でしょう。
理由は何にせよ、車を購入する予算にある程度目星がついてから乗り換えをすれば、後々支払いに行き詰まる心配も少なくなります。
車は、今や単なる移動手段ではなく「嗜好品」でもあります。そのため、経済的な理由ばかりを重視しすぎて意に沿わない車に乗り換えてしまうと、なかなか愛着が湧かず、ぞんざいに扱ってしまうかもしれません。
すると、不具合や故障を起こす確率が上がってしまう上、カーライフが退屈で楽しくないものになることがあります。
タイミングばかりを気にするのではなく、乗りたい車がある時に、乗り換えを検討するのもタイミングの一つとして考えておきましょう。
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