車を売却する際、少しでも高く売りたいと考えている方は多いでしょう。
しかし、車は大金ですので、中古車買取業者とのやり取りでトラブルに発展することもあります。また、ネットでの口コミや被害相談などで取り上げられていることも多いです。
今回は、中古車の売却時におけるトラブルについてとその対処法や相談する窓口について詳しく解説していきます。
事前に知っておけば、トラブルを防止することができるかもしれません。
中古車売却時に頻出するトラブルとは?
中古車を売却する時、誰もができるだけ高い査定額で買い取ってもらえる業者を選びたいと思うでしょう。ただ、査定額を重要視するあまり、思わぬトラブルになることもあります。
どのようなトラブルが多いか、事前に知っておくことでリスクを回避できるかもしれません。ここでは、中古車売却でよく起こる5つのトラブルについて詳しく解説していきます。
契約後に査定額が減額されてしまう
トラブルとして挙げられる1点目は、売却契約をした後に査定額を減額されてしまうことです。
通常、契約が成立している状態で減額されることはありません。しかし、契約後に「傷やへこみがあったため…」「修復歴がある車だった…」などと買取業者から後になって連絡がきて、査定額を減額要求される被害が報告されています。
このような場合、業者側に落ち度があったと考えることができ、減額に応じる必要はありません。買取業者はプロの査定士が行うので、修復歴や傷などはしっかり見なければならないからです。
ネット上では、各買取業者の情報が多く掲載されるようになり、契約後の再査定に関する悪質な手口は減少傾向にあります。しかし、減額査定の被害がなくなった訳ではないので、引き続き注意が必要です。
実際、売却した車が修復歴のあるものであったなら、その時点で見抜いていなければなりません。それができずに契約してしまったのであれば、買取業者側の問題です。
このようなことを事前に防ぐ方法は、買取業者側の話を鵜呑みにせずに契約書の内容に問題がないか確認することです。
実際のところ、業界で定まった契約書がある訳ではなく、業者独自で用意しています。そのため、「再査定をする場合がある」ということを契約書に取り込んでいる場合もあります。
必ず契約書の内容を確認するようにしましょう。
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強引な売却を強要される
2点目は、査定だけを依頼したのに強引に売却を迫られるということです。
車を仕入れてそれより高い値段で販売するのが、買取業者です。買取業者の営業担当者にもノルマがあるため、契約すれば特典があると言って執拗に契約を迫る業者もいます。
例えば、査定を依頼した時に買取業者から「他社の査定依頼を断って先に契約をしてもらえれば、特典が付きますよ」と言わることがあります。
また、出張査定実施後に買取業者から「店舗に持ち帰って詳しく調べたい」と言われ、強引に契約されられたということもあります。
それ以外にも、「クーリングオフも可能だから契約して欲しい」と言ってくる業者もあるようです。因みに中古車売却においてクーリングオフは適用されないので注意してください。
対策方法は、強引に売却依頼をされたとしても、その場ですぐに契約は取り交わさず、しっかり考えてから売却するようにすることです。
買取業者はできれば即決で決めたいので、「今すぐ契約すると買取額をアップできます」と言ってくることもあります。納得できる査定金額でなければ、「今回は査定だけで」と言って断ることが必要です。
契約後のキャンセルができない、高額な解約料を請求されてしまう
3点目は、契約後にキャンセルができないことと高額な解約料を支払わせようとしてくることです。
基本的に契約後の変更はできない場合が多いです。買取業者側としても、売却された車がすでに次の買い手が付いていることもあるので、契約後の変更は複数の人に迷惑をかけることになってしまいます。そのため、基本的に契約後のキャンセルは難しく、解約料を支払うことは必要です。
ただし、解約金を支払う際は買取業者から「内訳」と「根拠」を提示してもらうようにしましょう。それは高額な金額を支払わなくするためです。
消費者契約法では、契約解除による違約金の定義として、事業者に生ずる「平均的な損害額」を超える部分については無効とされています。したがって、解約金では損害額以上の支払いは強要されないということです。
キャンセルする時の理由として多いのが、車を売ることに対して家族に合意が取れていないというものです。契約後に「売らないで」と言われることがあるかもしれません。
確実に売却して良いか家庭で話し合い、事前に車を売却してよいか確認した上で、慎重に契約を行うことが大切です。
車を引き渡したのに売却代金が振り込まれない
4点目は、車の引き渡しを終えても、売却した代金が支払われないということです。
手違いによって入金がされていないこともありますが、「買取業者の資金繰りが悪化」していたり、「契約後に会社が倒産」していたりしたといった場合も考えられます。
指定日を超えて入金がされない時は、まず車買取業者に連絡をしましょう。そして、振込口座を間違えていないか、振り込み日はいつになるのかを確認しておいてください。
振込日に担当者に連絡すると、数時間~数日後には支払えてもらえることがほとんどです。よくあるトラブルですが、代金に対する支払いはしっかり行ってくれます。
一方、最初から振り込む意思がない場合は、連絡しても電話に出ない可能性もあります。もし自分に過失がない状態で支払いが完了しない場合は、相談機関に連絡を取りましょう。
買取業者に連絡が取れても、支払いが遅れた理由を明確にしないのであれば、同様の動きを早期にすることが大切です。
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勧誘電話がしつこくかかってくる
5点目は、勧誘電話が頻繁にかかってくることです。
これは一括査定を行った時に多いトラブルです。多数の買取業者から時間を問わずに連絡がきてしまい、その対応に困ってしまうということがあります。
一括査定の良さは複数の業者に一斉に査定を出せるため、査定額が比較できる点です。しかしその反面、その複数の業者とやり取りを行う必要があります。
様々な業者から多数連絡がきてしまうことが嫌なのであれば、一括査定を行わないようにすると良いでしょう。
中古車売却の際に注意して行うべきこと
中古車売却をする際、買取業者と所有者でやり取りすることになります。そのため、事前に評判のいい買取業者を探して信頼できる中古車取扱店に依頼したほうがいいでしょう。
次からは、中古車売却時のトラブルを回避するために注意して行うべきことを4つ紹介します。
大手買取業者に車を売却すれば、安心感はあるでしょう。しかし、均一に良いかどうかは、査定士のキャリアや営業担当者によって異なります。そのため、店舗の評判を調べておくことは重要です。
全国展開している大規模な買取業者であっても、地域に根ざした小規模の買取業者の場合でも、口コミや評判を確認しておきましょう。あまり良い評判がない業者は、トラブルになる場合がありますので、避けることが無難です。
複数業者に依頼することで査定額の比較もできるため、事前に評判の良い2〜3社をピックアップしておくことをおすすめします。
査定の際に車の状態を確認するために、査定士から事故や修復歴を聞かれる場合があります。その時は、正確に伝えることが大切です。
事故や修復歴があると査定に影響すると思って隠してしまうと、後々のトラブルに発展してしまうこともあります。査定士との信頼関係も崩れてしまうかもしれません。
そのため、事故歴や修復歴、エンジンやブレーキ、装飾品についても何か不具合がある場合には、正直に査定士に伝えておくようにしましょう。
査定を依頼して、強引に契約させられたというケースもあります。
査定士や営業マンの押しが強く、依頼者が対処できずに納得しないまま契約を交わしてしまうことは、避けなければいけません。
納得いかない査定額であれば、契約を行う必要はありません。車の査定を依頼しても、断ることは問題ありません。
それでも執拗に契約を迫ってくる業者だとすれば、トラブルに発生する可能性が高いので売らない方がいいです。複数業者と交渉して、納得のいく業者を選んでください。
自分だけだと断れないと感じるのであれば、家族や友人に同席してもらったり、同時査定を行い、できる限り個人で接する時間を減らしたりすることも大切です。特に押しに弱い方は、第三者にいてもらうことで安心して取り引きができるでしょう。
車を売却する時に、信頼性の高い中古車取扱店に依頼するのも良いでしょう。
前述しましたが、一括査定サイトの利用は複数業者に同時査定を行うことが可能なため、査定額の引き上げには便利です。
しかし、買取業者によっては自社の買い取りを有利に進めるために、概算の査定額を大きく見積もって実際に車を見て査定額を下げることもあるようです。売買契約をしなければ問題ありませんが、査定依頼をしてから数日間の時間が無駄になる可能性もあります。
一方、信頼性の高い中古車取扱店に依頼をすれば、時間と手間をかけずに行うことができます。信頼できる中古車取扱店のポイントは、高額査定になる理由を明確にしている点です。
例えば、自社販売を行っている業者であれば、車の価値が下がる前に販売するので、査定額を高く設定しても利益を生み出すことができます。
このように、高額査定の根拠を提示している業者に依頼することで、リスクの回避に繋がるでしょう。
瑕疵担保責任とは?
瑕疵担保責任とは、買取業者が車を買い取った後に売却した所有者から聞いていない不具合が発覚したとき、売却した所有者に対して損害賠償請求ができることです。
瑕疵担保責任は民法で定められているため、車を売却する時は注意が必要です。
この瑕疵担保責任を利用して、契約後に査定額の減額を求めてくる業者も稀にいます。再査定に関しては業者側の落ち度であるため問題ないですが、面倒なトラブルにならないようにするためにも、車の状態については査定してもらう段階で査定士に正直に伝えることが大切です。
もし事故車や修復歴がある場合などは、査定額を算出する上でも重要な点になりますので、しっかり業者に話をしておきましょう。
2020年4月から「瑕疵担保責任」に代わるものとして「契約不適合責任」が施行されています。
これまでの瑕疵担保責任では、買主が契約を有効と信頼したために失った利益に限定されていました。契約不適合責任では、それに加えて契約が有効だった時に得られた利益である「履行利益」も損害賠償の範囲で含まれることができるようになりました。
権利行使期間についても、変更されている点があります。
瑕疵担保責任では、引き渡しから1年以内に権利の行使を行わなければいけませんでしたが、改正により1年以内に通知を行っていればよいといことになりました。つまり、実際に権利を行使するのは「引き渡しから1年以上過ぎても可能になり、買主の権利行使期間が長くなった」と言えます。
中古車売却にクーリングオフは適用されるのか
中古車売却に関してはクーリングオフが適用されません。
理由として、クーリングオフが対象となる取り引きの形態は決められており、それに該当していないからです。クーリングオフは訪問販売や電話での販売のように普段通りに冷静な判断ができない状態で契約を交わした時など、主に店舗以外の場所での売買が対象です。
車の売買契約は訪問して契約したとしても、クーリングオフの適応対象外になりますので注意が必要です。他の業者でもっと査定額が高くなりそうな場合もあるかもしれませんが、すでに契約を済ませているのであれば、クーリングオフを利用して契約解除することはできません。
契約をする前に信頼できる買取業者を判断して、万が一契約解除する時にはどのような対応をすることになるか事前に業者に聞いておくことをおすすめします。
トラブルを解決できないときの相談窓口
先ほどまで、様々なトラブルの対処法についてお伝えしてきました。
中古車の売却でトラブルを解決できない時は相談窓口に連絡をして「どのように対処すればよいか」聞いてみることが大事です。
一人で悩んでいても対応に困ることもあるので、複数の専門相談窓口を知っておくと安心でしょう。
次からは、トラブルが起こってしまった際の相談窓口を3つ紹介します。
国民生活センターとは、消費者問題の中心となる機関で、消費者生活に影響する問題の調査や研究、クレーム処理、商品テストを行う独立行政法人です。
全国各地から苦情事案などの情報を収集しながら、トラブルの拡大防止・未然対策について、対応しています。また、中古車買取業者に売却する時のトラブルについても、Webサイトで事例を公開しています。
国民生活センターの相談窓口は平日11時~13時まで、電話で問い合わせが可能です。
土日祝日に相談したい場合は、消費者庁の「消費者ホットライン」に電話をすると、近隣の消費者生活相談窓口に案内してくれます。受付時間は10時~16時までになっており、「188」で繋がりますので知っておくと良いでしょう。
JPUC(一般社団法人日本自動車購入協会)とは、2014年に中古車買取を健全にするために設立されました。車買取に関わる消費者トラブル等の問題を解決するために、業界内の自主規制やルール作りを行っています。
JPUC車売却消費者相談室は、一括査定サイト運営事業者、車買取事業者のやり取りで困ったことや、悩み事の相談を受け付けています。中古車買取に詳しい相談員を配置しており、アドバイスをもらうことができます。
窓口は電話のみで受け付けており、平日9時~17時までになっています。
ただし、一括査定の申し込みキャンセル依頼や情報削除依頼は対応できないので、気を付けましょう。
国民生活センターやJPUCは電話の相談が主になっています。しかし、なかなか上手く話が伝わらない、電話したが内容が分からないという方もいるかもしれません。その際は、弁護士に相談することもできます。
弁護士は買取業者とのトラブル内容を直接確認するので、契約内容について法律に違反していないか、自分に過失があるかどうかなどを法律の見解から判断してくれます。
車を引き渡したのにも関わらず金額が入金されなかったり、契約解除料の高額請求をされたりした場合は、弁護士に依頼することも考えましょう。
ただし弁護士に依頼する場合は料金がかかりますので、その点は踏まえて検討することが必要です。