自賠責保険は法律で加入が規定されており、車を購入した時に加入し、車検の時に更新をします。つまり、次の車検までの保険料を先払いしていることになります。
車を売却する時、支払い済みの保険料は返還されるのか気になるという方も多いでしょう。
ここでは、車売却時の自賠責保険料の返還の有無について詳しく説明していきます。また、自賠責保険の有効期限が切れている車の売却についても解説します。
自賠責保険とは?
自賠責保険は、車の所有者に加入が義務付けられている強制保険です。
事故の被害者が、亡くなった、けがをした、後遺障害を負った場合、つまり対人事故のみが補償対象となっています。また、補償額も上限が決まっており、被害者救済を目的とした保険となっています。
加害者の身体に対する損害や車や建物などの物に対する損害については、補償されません。
自賠責保険は、法律で加入が規定されています。未加入であったり保険の有効期限が切れていたりする車を公道で走行させると、法律違反となります。1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金を科せられ、違反点数6点で免許停止処分を受けることになるのです。
自賠責保険の保険料について
自賠責保険は通常、車を購入する時に加入して、初回車検までの3年分の保険料を前払いします。その後は車検ごとに更新となります。
自賠責保険は1ヶ月ごとにも加入、更新することができます。ただ、毎月のように保険料を支払うのは効率的ではないでしょう。支払いを忘れる場合もあるので、車検時に業者が保険料を徴収するような形で支払うことになっているのです。
自賠責保険料は毎年見直しが行われ、金額が上がることもあれば引き下げられることもあります。また、普通車と軽自動車では保険料も異なります。
自賠責保険は、車の所有者ではなく、車に対する保険です。そのため、車を売却して所有者が変わったからといって解約はされません。
車買取業者は、保険ごと車を買い取っているとも言えます。買い取られた車は、自賠責保険に加入した状態で次の所有者へと引き継がれていくことになるのです。
そして、保険の有効期限がきたら、次の車の所有者が引き続き更新という形で保険料を支払っていきます。
自分が車を手放しても、新しく購入する車に自賠責保険を引き継ぐことはできないので、その車に対する自賠責保険にまた加入することになります。
車の売却で自賠責保険は解約とならないので、保険料も返還されません。
自賠責保険の保険料は、車を購入する際の加入時に次の車検までの期間分を前払いしています。その後は車検ごとに次の車検までの期間分を保険期間として、順次先に支払う形をとっているのが一般的です。
車を売却しても自賠責保険は引き続きその車について回るので、保険料は車の売主に還付されません。
しかし、それでは売主が前払いした保険料分損することになってしまいます。そのため、車買取業者は未経過分の自賠責保険料を計算し、車の買取額に上乗せして還元するという形をとっているところが多いです。
買取業者が自賠責保険の未経過分を計算し、買取額に上乗せする金額を決める際は、日本自動車査定協会(JAAI)が定めた基準を参考にして計算されることが多いです。
普通車と軽自動車で返還金額が異なりますが、残り3ヶ月~24ヶ月までの期間で、1,000円~15,000円まで上乗せされることになっています。
ただし、車買取業者によっては対応が違う場合もあります。返還額については一概に言えないので、注意しましょう。
基本的に自賠責保険の残りの保険期間が3ヶ月以上あれば、プラス査定となり査定額にいくらか上乗せされます。
日本自動車査定協会(JAAI)が定めた基準を元に計算すると、上乗せされる金額は以下の通りです。
3カ月もしくは4ヶ月 | +1000円 |
---|---|
5ヶ月 | +2,000円 |
6ヶ月もしくは7ヶ月 | +3,000円 |
8ヶ月 | +4,000円 |
9ヶ月もしくは10ヶ月 | +5,000円 |
11ヶ月 | +6,000円 |
12ヶ月もしくは13ヶ月 | +7,000円 |
14ヶ月 | +8,000円 |
15ヶ月もしくは16ヶ月 | +9,000円 |
自分の車の自賠責保険の残り期間はいつまでか確認して、いくらプラスになるのか調べてみましょう。
自賠責保険の残りの保険期間が2ヶ月以下の場合、買取額に保険料分は上乗せされないことがほとんどです。
その理由は、車買取業者が車を買い取ってから点検や整備をして販売するまで、約2ヶ月はかかるとされているからです。
そのため、保険の残りの期間が2ヶ月を切っていると、次の車の買い手に車を引き渡す頃には、既に自賠責保険が切れてしまい、加入し直さなければならない可能性が出てきます。
そうなると買取店側の負担が大きくなり、中古車として販売価格が安くなってしまう場合もあるため、2ヶ月以下は上乗せされないことになっています。
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廃車時における自賠責保険の解約について
車の登録を抹消し廃車にするということは、車がなくなるので付随している自賠責保険も消滅するということになります。
車を廃車にする場合、売却では返還されなかった自賠責保険料が残りの保険期間に応じて返還される可能性があります。
それには、保険の解約手続きが必要となりますので忘れないようにしましょう。また、全てのケースにおいて戻ってくるというわけではありません。保険の残り期間が短いと返金がない場合もあるので、注意しましょう。
廃車にした場合は、自賠責保険も不要となるので解約します。そのため、自賠責保険料は残りの保険期間に応じて還付されます。
廃車買取専門業者などに売却した車をまずは業者が自分たちの名義に変更し、その後に抹消登録をした場合、還付金は業者に返還されることになります。
手続きの進め方によっては、車の売主、つまり保険料を支払った元の所有者に還付されないこともあるので注意が必要です。
抹消登録が済んでいるかをまずは業者に確認しましょう。
自賠責保険の解約手続きは、車の買取業者ではなく自賠責保険加入先の保険会社に対して行います。
保険会社がどこなのか分からない場合は、自賠責保険証明書に会社名が記載されているので、確認しておきましょう。
まずは、保険会社に問い合わせて解約することを伝えます。すると、解約に必要な書類を教えてくれるので準備してください。直接出向かなくても、郵送などでやり取りをできる場合が多いです。
ディーラーを通して代理店の保険に加入していた場合は、ディーラーに連絡して代理店を介せばより手続きがスムーズに進みやすいでしょう。
自賠責保険の解約には、以下の書類が必要です。
- 自賠責保険証明書
- 本人確認書類
- 廃車を証明できる書類
自賠責保険証明書は、車検証と一緒にファイルに収納されているはずなので確認しましょう。
本人確認書類は、運転免許証のコピーなどです。
廃車を証明できる書類は、 永久抹消登録した場合は「登録事項等証明書」、一時抹消登録した場合は「登録識別情報等通知書」になります。
軽自動車は、自動車検査証を返納をした場合は「自動車検査証返納証明書」、軽自動車を解体返納した場合は「検査記録事項等証明書」などになります。
これらは廃車手続きをした際に「運輸支局」や「軽自動車検査協会」で取得できる書類なので、確認しておきましょう。
解約時に自賠責保険料の返戻金は、計算方法が決まっているので自分がいくら受け取ることができるか確認しておきましょう。
まず、支払った保険料を自賠責保険加入期間の月数で割り、1ヶ月分の保険料を求めます。
そして、廃車手続きが完了し、自賠責保険を解約した翌月から保険の有効期間までの月数分を1ヶ月分の保険料にかければ、返戻金の金額を求めることができます。
具体的な金額は保険会社で計算してくれますが、自分でも計算方法を理解しておくと安心です。
自賠責保険が切れている車の売却について
車を売ろうとして、自賠責保険の有効期限が切れてしまっていることに気づく場合もあります。
自賠責保険が切れている車は、運転することができません。では、自賠責保険が切れている場合は、どうやって車を売却すればいいのでしょう?
その方法について、以下で詳しく解説していきます。
自賠責保険は、車を購入する時に加入し、車検時に更新します。有効期限が切れないよう、車検の有効期間よりもやや長く設定されていることが多いです。
自賠責保険の有効期限が切れている場合、当然車検も切れていることになるでしょう。車検と自賠責保険の有効期限が切れた車を運転することは、法律で禁じられています。「無車検無保険」運行となり、罰則が科せられます。
自賠責保険や車検が切れている車を買取に出す時は、公道を走行できないので店舗に持ち込んで査定してもらうのは難しいです。そのため、買取業者に自宅まで来てもらう出張査定を依頼しなければならないでしょう。
車を売却すると、買取業者に車を引き渡すことになります。しかし、自賠責保険が切れている車は、そのままでは運転できません。
そんな時は、仮ナンバーを取得すれば一時的に公道を走行することができるようになります。
仮ナンバーとは、「自動車臨時運行許可番号票」といって、特別に許可された時に限り貸し出される臨時のナンバープレートです。
仮ナンバーの取得には、まず自賠責保険への加入が必要となります。車検証と自賠責保険証、運転免許証と手数料を持参し、市区町村の役所で手続きを行いましょう。
仮ナンバーは、発行から最大で5日までと有効期限が決まっています。また、事前に申請した使用目的や所要時間、運行経路の通りに車を走行させなければならないので注意が必要です。
また、使用後は仮ナンバーを役所に返還しなければなりません。
自賠責保険が切れた状態で車を売却することはできますが、当然そのままでは公道を走行できません。
車買取業者に車を引き渡す際は、仮ナンバーを取得しないなら車の運搬を依頼することになるでしょう。
レッカー車だと走行時に車輪が道路に接地するので、公道を走行したと判断されてしまうので法律違反になります。そのため、車全体を荷台に乗せる積載車などを利用することになり、運搬費用や手数料などが高くなる可能性もあります。
任意保険について
任意保険は自賠責保険とは異なり、加入義務はありません。自分で加入するかどうか自由に決めることができます。
自賠責保険の場合は、対人事故のみの補償であり、補償の上限額も決まっています。
交通事故の損害賠償額は多額になるケースも多く、自賠責保険の補償だけでは不十分であり、カバーしきれない部分は自己負担をしなければなりません。
任意保険は、そんな自賠責保険では補償されない部分を補償してくれます。また、対人賠償額は無制限となっています。
万一の場合に備えて、ほとんどのドライバーが任意保険に加入しているのが現状です。
今乗っている車を売却し、新しい車に乗り換える場合は、任意保険では「車両入替」の手続きが必要となります。
車両入替は、これまで登録していた車から新しく購入した車に登録を変更する手続きのことです。車種や色、登録番号などの車両情報を変えるので、名義変更は行いません。
任意保険は車種などによって保険料を決める利率が異なるので、車両入替により保険料が増減することもあるので注意しましょう。
車を売却した後、すぐに新しい車に乗り換えず、しばらくたってから車に乗る場合は「中断」の手続きをしておくと良いでしょう。
任意保険は一度解約してしまうと、それまで積み上げてきた保険料の割引きを受けられる「等級」がリセットされてしまいます。
等級は、6等級からのスタートして、事故で保険を使わなければ1年で1等級ずつ上がり、保険料が徐々に割引されていくシステムになっています。
そのため、一度解約して再加入すると、また6等級になってしまうので保険料が高くなってしまいます。そこで、保険会社に中断証明書を発行してもらえば、10年間は中断時の等級を維持できるので、再加入時にお得です。
ただし、中断証明書を発行してもらうには、以下の条件があるので注意しましょう。
- 中断時に7等級以上あること
- 中断日から13ヶ月以内に申請すること
- 中断日よりも前に車を廃車、譲渡、返還していること
任意保険は車を廃車にして解約手続きを行うと、残りの保険期間に応じて保険料が還付される場合もあります。
この解約返戻金は、支払った分の保険料が全額返金となるわけではないので注意しましょう。また、中には解約返戻金なし、つまり返還しないという保険会社もあるので確認したほうが良いでしょう。
基本的に解約返戻金は、残った保険期間を月割りにするか、短期率という保険会社独自で定めた利率で計算する方法になります。
どちらの計算方法を選ぶかは保険会社によって異なります。ただし、短期率を使うと、例えば残りの保険期間が9ヶ月あっても9ヶ月分の保険料が返還されるということはまずありません。
9ヶ月分の保険料よりは少ない額しか戻ってこないので、注意しましょう。
車の売り時はいつ?タイミングを誤ると損することも!
自賠責保険と任意保険では手続きが異なるので要注意!
同じ自動車に関する保険であっても、自賠責保険と任意保険では内容が大きく異なります。
車を売却した際、自賠責保険は車ごと引き継がれ、新たな車を購入する際は加入し直すという形をとります。
一方で、任意保険は加入者について回る保険なので、車を売却し乗り換えた場合は車両を新しく登録し直すことで引き続き同じ保険を使うことができます。
車の売却時に必要な手続きも異なるので、間違えないように理解しておきましょう。