マイカーをいつまでも安全に運転するためには、定期的な点検が必要です。点検と言われると、整備工場やディーラーに持っていかないといけないと思ってしまうかもしれません。
実は、日常的な点検であれば「DIY」すなわち自分で行うことも十分可能です。
ここではDIYで点検できる箇所はどこか、具体的にどのようにチェックすればいいかについてまとめてみました。
自動車は日常点検と定期点検が必要
自動車のオーナーには「定期点検」と「日常点検」をして、国の定める保安基準に適合した状態にしなければならないという義務があります。これは道路運送車両法に明記されていることです。
まずは、この定期点検と日常点検について詳しく見ていきましょう。
定期点検は、国によって定められている検査のことです。
家庭用乗用車の場合は「12ヶ月点検」と「24ヶ月点検」の2種類があります。ちなみに24ヶ月点検とは、いわゆる車検のことです。車検を通さないと公道を運転できないので、2年おきに車検を通しているはずです。
12ヶ月点検と24ヶ月点検とでは、検査項目が異なります。12ヶ月点検では26項目、24ヶ月点検は56項目が実施されるため、後者の方がより詳しい検査ということです。
点検を実施するとステッカーが発行されます。このステッカーをフロントガラスに貼り付けることで、定期点検をきちんと受けた車両であることの証明になります。
日常点検とは文字通り、日常的に行う車の点検のことです。
道路運送車両法の中に定められていることで、抜粋すると「車の所有者は適切に国土交通省の定める点検事項について点検しなければならない」という内容が記載されています。
少し難しい文言で書かれていますが、「車のオーナーは、常に安全に運転できるように車両のコンディションを整えておいてください」ということです。日常点検は定期点検のように、特定のタイミングで行わないといけないというルールはありません。
日常点検の場合、車の状態を目視などで確認すればいいとなっています。車検のように部品を分解して詳しくチェックする必要はなく、素人でも点検できるような内容です。
車の点検・整備のDIYはどこまでできるか?
日常点検は自分で行っても構わない点検ですが、中には車の専門知識のない自分がきちんとチェックできるだろうか、と不安に感じる方もいるかもしれません。
そこで、ここでは自分自身でどの範囲まで点検できるかについてみていきます。もちろん自分には無理という場合は、整備工場などに持っていって専門家に点検してもらいましょう。
マイカーの点検・整備であれば、法律上成約はありません。
道路運送車両法では、車のオーナーは日常的に車の点検や整備が義務付けられています。ただし、商売として他人から車を預かって点検・整備するためには資格が必要です。
また、タクシー、バス、トラックなどの商用の車両については検査基準が厳しいので自分で点検をするのは難しいです。商用車両については、頻度や検査項目についても、マイカーとは大きく異なります。
マイカーの場合、そこまで厳しい制約はないので気が付いたときにこまめに点検すると、不具合や故障などを事前に把握できます。
定期点検の場合、家庭用乗用車だと1年毎と時期が決められています。
しかし、日常点検については、別に行うべきタイミングは定められていません。そのため、自分が「点検しよう」と思ったときや、車を運転したときにいつもと違うと感じたときに行ってもいいでしょう。
また不定期だと、つい点検するのを忘れてしまうこともあります。そこで走行距離や期間などで決めて、定期的に点検する習慣をつけるといいかもしれません。
日常点検することなくそのままの状態で長期間放置してしまうと、いろいろな部品が劣化してしまいます。できるだけ頻繁に日常点検をするように心がけましょう。
点検をした結果、何らかの不具合や異変に気付くこともあるでしょう。その場合、自分で整備できる問題であれば自分で整備しても問題ありません。
しかし、中には素人では対処できないような箇所で問題が起きる場合も考えられます。特に「走る・曲がる・止まる」といった走行性能に直接かかわる部分は、慎重に対処する必要があります。
もし異変を感じて、どうすればいいか分からなければ、「自己流で何とかしよう」とは考えないでください。何か気になる異変があれば、ディーラーや整備工場などプロに相談するのが賢明です。
また、近所のガソリンスタンドに車両を持ち込んでみるのもひとつの手です。ガソリンスタンドの中には整備士の国家資格を取得しているメカニックが在籍していることもあります。安全点検などは無料でお願いできる店舗もあるので、気になることがあれば、気軽に相談してみましょう。
自家用車の場合は1年毎に定期点検を行わないといけません。定期点検を自分でDIYできるかどうか気になるところです。
定期点検は日常点検と比較して、難易度は高いです。中にはDIYではなかなか点検の難しい項目も含まれているので、十分内容を理解したうえで行いましょう。
12ヶ月の定期点検の内容は国によって定められています。26項目に関する検査を行うというルールです。
パワステの状態などのかじ取り装置やブレーキ・ペダルにかかわる制動装置、タイヤやホイールの状態についてチェックする走行装置、クラッチやトランスミッションなどの動力伝達装置などの点検が含まれます。走行性能にかかわる部分の検査が中心です。
12ヶ月定期点検は整備士が必ず行わなければならないという決まりにはなっていません。そのため、車の所有者本人で行うことも可能です。
しかし、点検項目の中には、専門知識がないと難しいものもあります。車の仕組みについて理解できているかどうか自信のない人は、整備工場に出した方が安全です。
定期点検ですが、ほとんどの部分はあまり専門知識のない素人の方でもできる項目が多いです。
例えば、タイヤやホイールの状態をチェックする項目は、目視で確認できます。また、エンジンルームの状態についても本体からの水漏れや油漏れがないか、ベルトにゆるみやひび割れなどがないかなども見て確認可能です。エンジンの点火装置の確認も、最近の車種はメンテナンスフリーのものが多くなっています。
しかし、下回りの点検項目の9つ関しては自分で行うのは大変です。フラットなところで4輪すべてをジャッキアップした状態で、車の下に入ってチェックしなければなりません。ガレージジャッキなどで車体を持ち上げ、リジットラック(通称ウマ)で支えないと危ないのでDIYで行うのは難しいでしょう。
車の点検をセルフで行う際のポイント
もし、自分で車の点検をやってみようと思っているのであれば、特に押さえておくべきポイントがいくつかあります。そこで、ここでは日常点検で見落としてほしくないポイントについていくつかピックアップしてみました。
いずれもそれほど難しいものではありません。しかし、日常的にチェックしておけば、劣化などの異常を早期発見できます。
ポイント①車の点検でライトのチェックは行うべし
日常点検でだれもが行えるものとして、ライトのチェックが挙げられます。スイッチを入れて、きちんとライトが点灯するか目視で確かめるだけなので、だれでも行えるでしょう。
ただし、複数の人で行った方がいい項目もあります。例えば、ブレーキランプについてはブレーキペダルを踏み込まなければ反応しませんし、バックランプもギアをバックに入れないと確認できないので、一人では難しいです。
そういった箇所については家族もしくは友人と一緒にチェックしてください。一方にブレーキペダルを踏んでもらったりギアをバックに入れてもらったりして、ランプが付つくかどうか確認します。
どのライトも安全に運転するために欠かせない機能です。ライトがつかないと車検を通すこともできなくなりますし事故のきっかけになるかもしれないので、日常点検でしっかりチェックしておいてください。
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ポイント②タイヤの状態を確認する
タイヤの状態を確認するのも目視がメインなので、日常点検でチェックしておきたい項目です。
まずは、溝を確認することでタイヤの摩耗状態が分かります。タイヤの溝は1.6mm以上なければなりません。溝が薄くなるとタイヤのグリップ能力が低下し、スリップする危険が増します。
また、タイヤはゴム製なので、同じものを長期間使い続けるとどうしても劣化します。そこで、ひび割れなどが起きていないかどうかチェックしましょう。
ひび割れが起きたまま走行すると、タイヤが破裂する「バースト」が発生する可能性が高まります。高速道路を走行中にバーストが起きると車両をコントロールできなくなり重大な結果を招くので、常日頃からチェックする習慣をつけてください。
ポイント③車の日常点検とエンジンルーム
日常点検でできることなら、エンジンルームの状態も確認した方がいいでしょう。エンジンルームは比較的簡単に開けられますし、素人でもチェックできる項目はあります。
エンジンは私たちの体でいうところの心臓です。もし心臓が満足に動かなければ、重大な疾患になりかねません。
エンジンが不調でそのまま運転し続けると、道端で車が止まって動かなくなることもあり得ます。普段から点検して、不具合を早期発見することが大事です。
エンジンを日常点検するのであれば、エンジンオイルの状態をまずは確認することです。エンジンが心臓であれば、エンジンオイルは血液に例えられることが多いです。
エンジンオイルは同じものを使い続けるといずれ劣化します。劣化したオイルを使っているとエンジンにかかる負担が大きくなり、不具合を起こすきっかけにもなりかねません。
オイルレベルゲージがあるので、これを抜いて汚れをふき取ります。挿し込む場所があるはずなので、そこに挿し込んでください。
目盛りを確認し、オイルに問題ないかどうか確認します。使用頻度や使用状況によって前後しますが、オイル交換から半年経過もしくは5,000km走行がエンジンオイルの交換のタイミングです。
エンジンオイルはカー用品店で購入でき、交換もお願いできます。いつまでも安全に運転できるように、定期的にエンジンオイルを交換しましょう。
オートマチック車を保有しているのであれば、トランスミッションオイルの確認も定期的に行うといいです。
オイルの確認をする際にはエンジンをかけて、ある程度暖めてからチェックしてください。エンジンの温まったところで、ニュートラルに入れてサイドブレーキをかけておきます。
レベルゲージの汚れをふき取ってから、再度挿し込んでその量を確認します。レベルゲージには「HOT」と「COLD」の2種類のラインがあるはずです。両方にオイルがついていれば問題ありません。
「COLD」の方しかオイルがついていなければ、オイルが少なくなっている恐れがあります。オイルを追加して対処しましょう。
アイドリングをしてチェックするのもいいですが、ドライブして30分くらい運転したときについでにチェックするのがおすすめです。
冷却水はエンジンのオーバーヒートを防ぐためにも必要なものです。冷却水が十分ないと、エンジンに大きな負担がかかってしまいます。
冷却水も日常点検でチェック可能な項目のひとつとなります。リザーバータンクの量が十分かチェックすればいいからです。
目盛り内にあれば、問題ありませんが、目盛りを下回るくらいの量しかなければ、補充する必要があります。
冷却水には「青色」「緑色」「赤色」の物もあるので自分の車はどのような色をしているか確認してから補充用の冷却水を購入しましょう。
ちなみに冷却水は水と混ぜた方がその効果を発揮すると言われていて、だいたい60%くらいの濃度が好ましいと言われています。補充する際には適度に水で薄めてからサブタンクに入れてください。
エンジンルームには、エンジンの内部に組み込まれているタイミングベルト、エンジンの動力を他の装置に伝えるためのファンベルトなど数種類のベルトが使われています。
ベルトはゴム製なので、長く使い続けているとどうしても劣化します。日常点検の際に、ゴムにひび割れや溝が浅くなっているなどの異変が起きていないかチェックしましょう。
ゴムが劣化しているのに使い続けると、いずれ切れてしまう恐れがあります。ベルトが切れてもエンジンそのものはかかります。しかし、ほかの装置にそのパワーを伝えることができません。
車を思い通りに運転できなくなる可能性があるので、定期的なチェックが必要です。
ワイパーのチェックをする
ワイパーは雨の日に運転するときに、周囲の交通状況を確認するために欠かせないパーツです。ワイパーもゴム製なので、長年使い続けるとどうしても劣化してしまいます。
ワイパーの交換の目安は年に1回と言われています。もしワイパーを使ったときに雨水を十分払えなくなった、拭き残しで見えにくくなってきたら交換のタイミングです。
ワイパーのゴム部分を日常点検時にも確認しておきましょう。硬くなっていたり、ひび割れを起こしていたりするのであればゴムがかなり劣化します。
またワイパーブレードにゆがみが起きていないかどうかも確認するといいです。もしブレードがゆがんでいれば、ブレードごと交換した方がいいです。
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エアコンフィルターの交換
夏や冬になったときに久しぶりにエアコンをつけてみたところ、「なんだか臭う…」という経験のある人も多いかもしれません。この臭いはフィルター内にカビやホコリが溜まっているのが原因です。
もし臭いが気になったのであれば、エアコンフィルターを交換するといいでしょう。エアコンフィルターはメーカーや車種で使用できるものが違ってきますから、自分の車に使えるか、パッケージで確認してください。
フィルターの汚れがまだ軽度の状態であれば、掃除して改善することも可能です。しかしフィルターにも寿命があるため、走行距離1万kmを過ぎているようであれば交換することをおすすめします。
エアコンの位置は車種によって異なるので、自分で交換する際には取扱説明書を見ながら作業してください。
洗車をしたときに日常点検をする
日常点検やメンテナンスの基本として、洗車があります。車が汚れているときに気付かなかった損傷や破損に初めて気付くというパターンもあるからです。
自分で洗車しても構いませんが、自信がなければ自分でやらずにガソリンスタンドやカー用品店などで洗車のサービスを利用するのがおすすめです。
洗車のときにワイパーのゴムを確認する方法もあります。先ほど紹介したようにひび割れなどの劣化があれば、これを機に交換するといいでしょう。ワイパーのゴムの交換についても自分で行う自信がなければ、ガソリンスタンドやカー用品店のスタッフに相談してみてください。
日常点検にある程度慣れれば、自分で交換してみてもいいかもしれません。