マフラーを変えたりエアロパーツをつけたりすると、車を改造すると車検に通らないのではないかと心配になるかもしれません。しかし、車を改造しても保安基準をクリアすれば車検に合格することができます。
また保安基準を満たさなくても、構造変更という手続きを行い検査に通れば公道を走行することもできます。車を改造するなら、保安基準の内容やよくある改造例などを知っておくことが大事です。
構造変更についても説明するので見ていきましょう。
車検は保安基準に適合すれば通る
そもそも車検は、車が公道を走行する上で安全性が保たれているか、損なわれていないかを確認するための検査です。安全性を判断する際に国が定める保安基準と照らし合わせてチェックをしていきます。
保安基準は道路運送車両法という法律内で定められています。自動車の構造や装置について、安全性を確保して環境を保全するための基準です。
具体的には車の大きさや排気ガス基準などについても定められています。自動車メーカーは、車検に合格するためにも保安基準に則って自社の車の設計や製造を行っています。
車検の指針となる保安基準には、車の大きさも規定されています。規定されたサイズを超えた大きさの車は、車検に合格しないので注意が必要です。
保安基準の普通車のサイズは、全長は規定の±3㎝以内となっています。全幅は規定の±2㎝以内、高さは規定の±4㎝以内です。
また、最低地上高は9㎝以上であること、重さについても±100㎏以下であるとされています。
保安基準には車体からのタイヤやホイールのはみ出しに関する規定があります。2017年の6月に保安基準が改正となりました。
以前はタイヤがフェンダーから少しでもはみ出したら即NGでした。しかし、地面へタイヤの中心を通した垂直な直線を延ばし、その直線とフェンダーの一番外側の部分から前方に30度、後方に30度の角度で測定を行います。
その角度の範囲内ならタイヤがフェンダーから突出しても問題ないという内容に改正されています。事実上は10㎜のはみ出しが認定されたということです。
ただし、これはタイヤ本体にのみ適合される条件で、ホイールやナットはタイヤからはみ出すことは許されません。また、タイヤの商品ラベルの凸凹部分などは10㎜に含まれないとしています。
タイヤのサイズを変更すると、スピードメーターが正しく表示されない可能性があります。車検では、スピードメーターの表示と実際に速度があっているかの検査を行います。
その際にタイヤの大きさがあっていないと、メーターと実際の速度にズレが生じるので交換する際は注意しましょう。
ヘッドライトの関する規定も保安基準で定められています。2015年から規定が改訂となり、それまでよりも検査基準が厳しくなりました。
まずライトの色は白色ですが、2005年12月31日以前に登録された車は黄色でも可能です。車検での測定条件はロービームでの測定となります。
光軸の位置は、前方に10mライトを照らしてエルボー点が規定の位置になくてはなりません。ロービームにするとライトの光の上部をカットしてあり、その分がカットオフラインと言います。
このカットオフライン上にあるのが、エルボー点という部分です。また、光量を示すカンデラが1灯で6,400以上と決まっています。
車のガラスの透過率も安全性を保つ上で重要なポイントであり、保安基準にも規定があります。まずフロントガラスと運転席、助手席の側面ガラスは可視光線透過率が70%以上でなければなりません。
着色フィルムを貼っている場合、ガラスとフィルムを合わせた透過率となります。フィルムを購入する場合は、後部座席はいいですが、運転席や助手席側は保安基準に適合した透過率の物を選ぶことが大事です。
マフラーの騒音規制は厳しくなっています。マフラーの排気音量は2010年4月1日以降に生産された車は普通車なら96㏈、軽自動車なら97㏈です。
それ以前の車は96~103㏈までとなっています。2018年11月以降はマフラー交換後の排気音量が車検証に記載の近接排気騒音に5㏈プラスした音量以下でなければならないとの条件がついています。
マフラーの取り付け位置に関しても最低地上高が9㎝以上で、フロアラインからは10㎜はみ出ないことと規定されています。
改造しても車検に通る場合
車を改造しても、保安基準に適合していれば車検は通ります。改造するにあたり、どのような部品を使えば車検を通せるのか知っておく必要があります。
保安基準には指定部品が定めてあり、指定部品を使った改造なら保安基準クリアとなるので車検を通すことが可能です。指定部品には色々な種類があります。
例えば、車体回りではエアロパーツ、排気系ではマフラーやパイプ、走行装備に関する部品ではタイヤやホイール、スプリングやショックアブソーバーなどです。
車内では、ステアリングホイールやシフトノブなどの操縦装置があります。また、空気清浄機やオーディオ、無線機、ミラーやフォグランプなども挙げられます。
ディーラーの高額な純正品を購入しなくても、保安基準を満たせば価格の安い社外のパーツを使うことも可能です。
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改造すると車検に通らない場合
指定部品を使って改造しても、車検に通らない場合があるので注意が必要です。
例えば、指定部品のタイヤやホイールを使ったのに、車のサイズや重量が変わり保安基準を満たさなくなる場合もあるかもしれません。タイヤやホイールは車種によってサイズが決まっており、例えばサイズオーバーのホイールを装着すると、保安基準に適合しないので車検は不合格になってしまいます。
また指定部品のエアロパーツをつける際に、付け方を間違えたり、車幅から大きくはみ出してしまったりした場合も車検では不合格です。
車検に出す際に改造車だと車検を受け付けないというところもあります。資格のある整備士であっても保安基準に適しているかはっきりしない、グレーな車があるためです。
この場合、車検に合格させるために改造部品を元に戻すことになるでしょう。保安基準不適合部品は全て整備し直すということで、業者とお客さんが納得していれば問題ありません。
車検に通すために整備し、費用を請求したのにお客さんから苦情が来るといったトラブルを回避するために、敢えて車検を引き受けないという業者もいます。
よくある改造例の注意点
車を購入後、従来のデザインよりももっと外観をカッコよくしたい、性能を上げたいなどの理由で自分好みにカスタマイズする人も少なくありません。しかし、カスタマイズしても車検に通らず元通りにしなければならないということもあります。
そうなるとせっかくのカスタマイズの意味がなくなり、元に戻せば費用もかかります。どの程度の改造なら車検を通せるのか知っておくことが大事です。
車検に合格できる範囲内でカスタマイズを楽しめるように、改造時はよくある改造例を参考にしてみましょう。
車の外装をカッコよく、見栄え良くするためにエアロパーツをつけてオリジナルの車を作り上げたいという人もいます。エアロパーツをつけても車検には問題ありません。
しかし、エアロパーツの取り付けでよくある失敗が保安基準にある車の大きさの規定をオーバーしてしまうという点です。大きさの規定は車検証に記載されているので、まず確認するようにしてください。
その大きさから全長や全幅、全高などが保安基準を超える場合は車検を通すことができません。また、規定に収まる範囲のエアロパーツを購入しても、取り付け方法や位置によっては規定を超えてしまう可能性もあります。
エアロパーツといっても2009年1月1日以降に製造された車に関しては、鋭い突起となる物は装着してはならないことになっています。車体から出ている部分が5㎜以上はNGなど規定があるので確認が必要です。
他にもエンブレムやマスコットなど車の外装に取り付ける場合も既定の大きさからはみ出ないか気を付けましょう。
ライトに関する保安基準は時折改正されることがあるくらい、厳しい規定となっています。
例えば、ライトの色についてです。前方を明るく照らすヘッドライトに関しては2006年1月1日以上製造の車は白色と規定されていますが、フォグランプは黄色を用いることができます。黄色のランプは徐々に基準から排除されていますが、全てのランプで黄色がNGとはならないので注意が必要です。
反射板の取り付けも、後方のみに指定されています。色は赤色と規定されており、車の左右対称に取り付けなければなりません。白色の反射板も販売されているため、知らずに購入して装着すると車検に通らないので要注意です。
フロントガラスの内側に吸盤でお守りやマスコット、ステッカーなどを貼り装飾している人もいるでしょう。また、ダッシュボードの上にフィギュアやぬいぐるみなどが並べて置いてある車も見かけます。
フロントガラスに貼っても良い物には規定があります。
- 整備命令標章
- 臨時検査合格標章
- 検査標章
- 保安基準適合標章
- 保険標章
- ルームミラー
- ドライブレコーダー
- 赤外線センサー
- カメラ
- オートライトセンサー など
つまり、車検などの検査の合格や保険加入などを示すステッカー、安全性能のための装備や走行に必要な電子機器に関する装備以外は全て違法になります。
フロントガラス横の三角窓も同様に決められたステッカー以外の物は貼ることはできません。
ダッシュボード上の物に関しては明確な規定はないですが、運転者の視界を遮る物は交通事故を誘発するので危険です。また、衝突した際にエアバッグが作動する際の妨げになったり、衝撃でダッシュボードから物が落下したりする場合もありえます。できればあまり置かないようにした方が安全です。
車の改造というと、エアロパーツをつけたりと外装に手をかけたりするイメージがありますが、内装に凝る人もいます。
車は乗車定員が決まっておりシートやシートベルト、ヘッドレストなどを勝手に取り外すことはできません。ドアの内張には衝撃を吸収する素材が使われているので、剥がすことはNGです。
「燃費が良くなる」「スピードが出やすい」などの理由で内装を剥がし、車の軽量化を図りたいという人もいるはずです。しかし、保管基準に適合しなければ車検は通らないので注意が必要です。
ロールバーに関しては、クッション材で巻いてあれば乗車定員を変更しなくても装着できます。シフトノブもシフトパターンが目視できれば純正の物ではなくても問題ありません。また、ステアリングもメーターがきちんと確認できる形状なら車検でも指摘はされないでしょう。
改造しても構造変更申請すれば車検が通る場合もある
保安基準に規定された指定部品以外の部品を使っても、車の安全性が保たれるのであれば構造変更申請を行うことで、車検を通すことができます。
つまり、車を改造してサイズなどが保安基準の規定を超えてしまった場合でも安全だと判断されれば、あらかじめ構造変更申請を行うことにより法律に適した改造だと認められるということです。
構造変更申請が下りれば、保安基準を満たさない改造車でも公道を走行させることができるようになります。構造変更というのは、いわば車検を通すことと同じです。
安全性が確保された車に手を加え保安基準に適合しない改造をしているため、安全かどうかを厳しくチェックしなければなりません。そのため、構造変更は通常の車検よりも日数を要し、安全性が認められなければ車検が不合格になることもあります。
車検期間が残っていても、車を改造したら構造変更を行わなければならず、車検期間分損をすることになる場合もあります。構造変更を行わず公道を走行すれば、整備不良車として取り締まりを受け、罰せられるので必ず正規の手続きを行うようにしましょう!
構造変更の申請は、普通車は管轄の陸運支局もしくは自動車検査登録事務所、軽自動車は軽自動車検査協会で手続きができます。
- 車検証
- 自動車検査票
- 点検整備記録簿
- 自賠責証明書
- 自動車重量税納付書
- 手数料納付書
- 申請書 など
※業者に依頼する場合は認印を押印した使用者の委任状と所有者の委任状が必要となります。
その後、書類審査と実車検査が行われます。書類審査の期間は1週間~10日間ほどです。
通過したら改造自動車等審査結果通知書が送られてきますので、その後、予約日時に書類を持参し、検査場に車を持ち込んで実地検査を受けます。
通常の車検と同様に検査項目をクリアすれば、車検に合格すると、新しい車検証が発行されます。
- 小型車・・・2,000円
- 小型車以外・・・2,100円
書類の量も多く、手続きもやや複雑なので業者に依頼するという方もいるでしょう。業者に依頼すると代行手数料が10,000~30,000円程かかる場合もあるので事前に確認してください。
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軽微な改造なら記載変更で済む場合も
車の改造でも、車の外寸や重量などが規定の範囲内で大きく変化しないという軽微な改造の場合、構造変更申請をしなくても記載変更という手続きで済む場合があります。
記載変更というのは、検査を行わず車検証に記載に内容を変更するだけの手続きです。
構造変更となると、書類を準備し車を検査場までもっていって再び車検を行わなければなりません。しかし、記載変更なら書類上の手続きだけで済むので効率的です。
住所地を管轄する陸運局に出向いて手続きを行います。
必要書類は車検証と合格印のある自動車検査票などです。業者に依頼することも可能ですが、その場合は委任状など別途書類と代行手数料が必要となるので事前に確認しておきましょう。
改造車は車検を通すのに費用が高くつく可能性がある
改造車を車検に出す場合、まず保安基準を満たしているかを確認します。
保安基準不適合の場合、改造前の状態に戻さなければ車検を通すことができません。元に戻す部品の数が多いと、それだけでかなり大きな出費になってしまいます。また、年式が古い車の場合、部品自体が劣化しているので交換となるケースも少なくありません。
そもそも公道を合法に走行するには、車検に合格していることが必須です。しかし、保安基準外でも構造変更申請を行い、パスすれば問題ありません。
車検期間が残っていても再度車検を受けなければいけないので、時間的にも費用の面でも損する可能性は否めません。また、安全面で問題があれば、構造変更できない場合もあります。
オリジナル車に改造するなら車検時に余分な費用がかからないように、あらかじめ保安基準に適合する範囲内での改造が無難でしょう。