車の点検はディーラーや整備工場などの業者に任せっきりで、自分ではやったことはないという人もいるかもしれません。車を点検してもらっても、車が急に故障したりトラブルが発生して交通事故につながったりというリスクをゼロにするのは難しいです。
しかし、ドライバーが日常点検を行えば少しでも早く異常に気づくことができます。日常点検の中でも難しいと思われがちなボンネット内、エンジンルームの点検の仕方を覚えましょう。
さらに、車周りや運転席での点検の方法も見ていきます。
車の点検の種類
車の点検は法律で決められており、3ヶ月点検、6ヶ月点検と12ヶ月、24ヶ月の法定点検があります。
自家用乗用車は12ヶ月と24ヶ月点検が義務付けられていますが、3ヶ月や6ヶ月点検は任意となっています。法定点検を受けなくても罰則などが特に科せられません。
一方で、事業用のバスやトラック、タクシーなどは3ヶ月、6ヶ月点検も義務付けられています。法定点検を受けないと罰則が科せられます。
車の日常点検は運転者の義務
法定点検以外に日常点検も運転者の義務だとされています。道路運送車両法には、車の使用者は適度な時期に灯火装置の点灯や制動装置の作動、その他の装置についても目視などによって車の点検をする必要があると定められています。
車の点検、整備は業者に任せっきりにしないで、自分でできる範囲で定期的に点検したほうがより安心できるからです。
車の日常点検は、車の構造や整備などの知識がないという人でも比較的簡単にできる内容となっています。まずは正しい点検の手順ややり方を把握することが必要です。
日常点検は、主にボンネット内のエンジンルーム、タイヤや灯火類などの車周り、運転席周りや走行時の点検に分けられ、全部で約15項目あります。順番に見ていきましょう。
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ボンネットの中、エンジンルーム内の車の日常点検
エンジンルーム内の点検は5項目あります。フロントガラスの雨水や埃などを洗い流すためのウォッシャー液の量や、ブレーキを動かすために必要なブレーキフルード液の量や劣化具合などを見ます。
さらに、ライトなどの電気系統を動かすためのバッテリー液の量や劣化具合、エンジンを冷ますクーラント液(冷却水)の残量なども点検しなければなりません。
エンジンルーム内を点検するためには、ボンネットを開ける必要があります。ボンネットを開けたことがないので開閉方法を知らないという人も、知っておくべきです。
運転席の足元辺りに、車のボンネットのイラストがついた、ボンネットオープナーというレバーがあるので確認してみましょう。ボンネットオープナーを手前に引くとボンと音がして、ボンネットが浮き上がるはずです。
車の前方に回り、ボンネットと車体の間に手を入れて、ボンネットの内側にあるレバーを押し上げながら持ち上げます。ボンネットの裏側にある、車体を支えるためのバー、ステーをフックから外してください。
車体の端についている穴にステーを差し込めば、ボンネットが開いた状態が保てます。
まずはボンネットを裏側から片手で支え、ステーを穴から外してフックに戻します。両手でボンネットを支えゆっくりと下ろし、車体から20㎝くらいの所まで下ろしたら、両手を離してください。
ボンネットが浮いてしまった場合はきちんと閉まっていないので、再度ボンネットを開けて閉め直す必要があります。
この時、手でボンネットをグッと押して閉めたくなりますが、押してしまうとボンネットがへこんでしまう恐れがあります。面倒に感じてもボンネットは押さずに上から落として閉めるようにしましょう。
ボンネットを正しい方法で開けようとしても、固くて開けられない場合があります。これは、ロックが錆びついてしまったことが原因です。
ロック部に油を吹きかけ、ボンネットオープナーを強く引っ張り続けると開くこともあります。逆に何度やってもボンネットがなかなか閉じない場合もあるでしょう。
同じようにロック部分が錆びている可能性があるので、専用の油を吹きかけます。それでも開閉できない場合は、ロック部分が劣化していることが考えられるので、専門業者でロックを交換してもらってください。
ウォッシャー液はフロントガラスに噴射させてワイパーを動かし、汚れをふき取るのに欠かせないものです。エンジンルーム内の半透明のタンクに入っており、そこから電動ポンプにより専用ノズルから噴射します。
タンクのキャップには扇形のイラストが描かれているため、分かりやすいはずです。キャップを開けて、タンクの中を確認してウォッシャー液が半分以下にまで減っていたら補充します。
カー用品店などで市販のウォッシャー液を購入し、タンク内に注ぐだけなので簡単です。ただし、面倒だからと水を入れると冬に凍ってしまいウォッシャー液が出なくなるので注意しましょう。
車には油圧式ブレーキが採用されており、ブレーキフルードはブレーキを作動させるために必要な液体です。ブレーキペダルはシリンダー、ブレーキパッド、車輪へとつながっており、シリンダー内にブレーキフルードが入っています。
ブレーキペダルを踏むとシリンダー内のブレーキフルードに力がかかり、油圧となって押し出される形でブレーキパッド、車輪へと制動力が伝わってブレーキがかかるという仕組みです。ブレーキフルードは運転席の前方にある半透明のリザーバータンク内に入っています。
上限のMAXラインと下限のMINラインがあるので、その間に液があれば問題ありません。半分以下の場合は補充しなければならないでしょう。
またブレーキフルードは劣化すると、茶色に変色するのでキャップを開けて中の色も確認してください。ブレーキフルードの交換は難しいので、業者に依頼することをおすすめします。
バッテリーは車のライトやカーナビ、エアコンなどの電子機器に電力を供給しています。走行しながら充電されるので減ることはないと思われがちですが、そうではありません。
充電が一杯になると電力が保有しきれず、バッテリー液の水分を電気分解するので液量が少しずつ減ってしまいます。バッテリー液が減るとエンジンがかからなくなるなどのトラブルが発生するので、定期的な点検が必要です。
バッテリーは長方形の箱形で、+と-の端子があるので比較的見つけやすいでしょう。上限、下限のラインが側面に表示してあるため、2つのライン間に液面があれば問題ありません。
下限ラインまで減っていたら交換が必要となります。バッテリー交換も手間がかかりますし、専用のコンピューターにつないでリセットする作業が必要となる車もあるため、業者に頼むのが無難です。
冷却水(クーラント液)は、走行中に熱くなったエンジンを冷やして負荷を軽減させるための液体です。走行時にリザーバータンクに風があたることで中の冷却水が冷やされ、ホース内を冷却水が通り、エンジン内を循環して冷やし、またタンクへと戻るという仕組みです。
冷却水が減るとエンジンがオーバーヒートを起こし、エンジンが故障するリスクがあります。リザーバータンクは車の前部、ナンバープレートの裏側付近に備わっています。
半透明の樹脂製で側面にはFULL、LOWのラインが表示されており外から見て液量が確認できます。2つのラインの間に液面があれば問題ありません。
LOWに近い場合は冷却水が不足しているので、補充が必要です。
エンジンオイルはエンジン内の部品を円滑に動かす、汚れを分散させてきれいにする、被膜を作って錆を防止する、エンジンを冷却するといった役割を担っています。
酸化などにより汚れると黒色に変色し、劣化によりエンジンにトラブルが生じる可能性があるので定期的な点検、交換が必要です。
エンジンルーム内のオイルタンクには英単語で「ENGINE」という表示、もしくはオイルポットの絵がついているので確認してみてください。
オイルタンクには丸い輪のような「オイルレベルゲージ」が差し込んであります。オイルレベルゲージは白色もしくはオレンジ色、黄色など車種によって色は様々です。
このオイルレベルゲージを引き抜き、一度布などでふき取った後、再度差し込みます。ゆっくり引き抜いて先端部に表示された上限、下限のラインの間にオイルが付着していれば液量は問題ありません。下限に近ければ液量が減っているので交換の必要があります。また、オイルの色が黒色の場合も劣化しているので交換が必要です。
エンジンオイル交換も慣れていない人は業者に依頼しましょう。
車周りの点検
車周りの点検は、主に車の外側から行う点検になります。
ヘッドライトやブレーキランプ、フォグランプなどのライト類が点灯するか、カバーに傷がないかをチェックします。
タイヤの溝の減り具合や空気圧、ホールの傷なども確認していきましょう。
ライトには車の前方を照らすヘッドライトをはじめ、車の四隅にある補助灯のスモールライト、濃霧の際の補助灯のフォグランプ、車の後方を照らすテールライトがあります。さらに、ウインカーやハザードランプ、ブレーキランプやナンバー灯、バックする際に後方を照らすバックライトなども挙げられます。
順番に操作して点灯させてください。ブレーキランプなどは操作しながら自分では確認できないので、他の人に見てもらうか壁に反射させて点灯しているか、光が弱くないかをチェックします。
カバーの損傷や傷の有無も併せて見ておきます。ライトの電球が切れていると整備不良となるので、早めに交換を依頼したほうがよいでしょう。
タイヤの点検は、まず目視で溝の減り具合を確認しましょう。
タイヤには「スリップサイン」という摩耗限界を表示するサインが表示されています。タイヤが限界まで摩耗すると、溝の奥から少し盛り上がった目印のようなものが見えてきますが、これがスリップサインです。
スリップサインが出たらタイヤの寿命なので早めに交換したほうがよいでしょう。
また、タイヤの表面に亀裂や損傷などがないか、小石などが挟まっている場合は取り除いてください。ただし釘などが刺さっていた場合、抜き取ると穴が開いて空気が抜けるので修理の準備をしてから抜きます。
タイヤ片側のみ極端にすり減っている場合はアライメントの不具合の可能性があるので、足回りの点検を業者にやってもらったほうがよいでしょう。
タイヤの両側、真ん中のみが極端にすり減っている場合、空気圧の過不足が原因となります。タイヤの空気圧は、タイヤと地面が接した部分が極端につぶれている状態だと空気圧が減っている可能性があるので、まずは確認してみてください。
ガソリンスタンドなどで給油のついでに依頼すると無料で空気圧点検をしてもらえるので、聞いてみるといいかもしれません。
運転席の点検
運転席からは、ブレーキやアクセルの点検を行います。ブレーキペダルの踏みごたえ、エンジンを実際にかけてみてスムーズにかかるかなどを確認していきましょう。
ワイパーの動きやウォッシャー液の噴射状態もチェックしてください。
エンジンを始動させ、スムーズにかかるか、異音がしないかを確認しましょう。しばらくしたらアクセルペダルを踏んでエンジンを回転させ、アイドリングがスムーズにいくか、異音がしないかをチェックします。
エンジンのかかり具合が悪い場合はバッテリー上がりの前触れの可能性もあるので、バッテリーの液量にも注意が必要です。
パーキングブレーキペダルを踏んで、しっかりとした踏みごたえがあれば問題ありません。またはブレーキレバー(サイドブレーキ)を引き、引き終わるまでにカチッという音が5回くらいするかを確認しましょう。
引きしろや踏みしろが長くなると効きが甘くなってきている証拠です。またフットブレーキを踏んだ際に、ガチっという踏みごたえがあるかも見てください。
ふわっとした感じがしたり、数回踏んでやっと踏みごたえが出たりする場合は問題があります。フットブレーキをいっぱいまで踏んだ際に床板の隙間がかなり少ないのもブレーキにトラブルが生じるリスクが高いので、細かな点検が必要です。
ウォッシャー液を噴射させて、勢いよく液が出るかを確認しましょう。逆に飛びすぎてガラスの下まで広がるようなら調整の必要があります。
さらに、ワイパーを動かしてみてスムーズに動くか、ウォッシャー液を全てふき取れるか、切り替えて低速と高速両方の動きを見ます。拭き残しがある、作動時にガーガーと音がする場合は、ワイパーゴムが劣化している可能性があるので交換しなければなりません。
ワイパーゴムの交換は割と簡単にできるので、市販のものを購入して取り換えてみましょう。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
走行させての点検
実際に車を走行させての点検も大事です。特にブレーキがしっかり効くかは命に係わることなので、きちんと点検しておきましょう。
アクセルを踏んだり緩めたりしてのエンジンの加速や低速状態、スピードメーターが正確かどうかをチェックします。
車を軽く走らせて、ブレーキペダルを踏んでブレーキをかけてみます。しっかりとブレーキが効けば問題ありません。
しっかり止まれない、ブレーキペダルを踏んだ時に異音がする場合は要注意です。また、ブレーキをかけるとハンドル操作をしていないのに車が左右どちらかに勝手に曲がってしまう場合は、ブレーキの片効きの可能性があります。
車のブレーキは右前と左後ろ、左前と右後ろというようにX字型に配管されています。ブレーキの片効きというのは、どちらかのブレーキの効きがバランス悪いと、片方だけブレーキがかかった状態、もう一方がかかりにくい状態となってしまう症状のことです。
また、アクセルを踏んでいるのに絶えずブレーキがかかっているかのように走り出しが重い、ブレ-キを踏んでいないのに減速しただけで車が止まってしまう状態になる場合もあります。これは、ブレーキの引きずりという症状です。
放置するとブレーキパッドなどが焼け焦げて最悪、発火する恐れもあります。このようにブレーキに異常が見られたら、早めに業者に点検を依頼しましょう。
アクセルペダルを踏んで加速する際に、滑らかにスピードアップするかを確認します。また、アクセルペダルを緩めると徐々に減速するかも見てください。
加速と減速の際にスピードメーターの針が正常に動いているか、表示が間違っていないかもチェックします。信号などで停車した場合にエンジンの回転が一定か、エンジンを切っていないのに車が停止してしまっていないかも重要なポイントです。
少しでも異常があれば業者に詳しい点検をしてもらいましょう。
日常点検での注意点
日常点検は、車に乗る前にやっておきましょう。車に乗った後はエンジンなどが熱を帯びているので、ボンネットを開けてエンジンオイルや冷却水などを点検しようとすると火傷などのケガをすることもあるので危険です。
車を使い終わった後に行うなら、エンジンが冷めるまで待ちましょう。日常点検は、毎日必ずやらなければならないわけではありません。
1~2週間に1回位やっておくのがベストですが、最低でも1ヶ月に1回は点検しておくと車の状態を把握しやすいと言えます。そして点検中に異常がみられる場合は、そのままにしておくと故障や事故につながるリスクが高くなります。
早めにディーラーや整備工場などの専門業者にきちんと細かな部分まで点検、整備をしてもらってください。