ワイパーゴムは、紫外線や凍結などで自然劣化しやすい部品です。劣化するとゴムが裂けるなどして機能しなくなります。
車検では保安基準を満たしているか項目ごとに検査していきます。ワイパーやゴムに関する保安基準があるので、クリアしなければ車検を通せません。
カー用品店などでも交換してもらえますが、部品代の他に工賃がかかります。比較的簡単に行えるワイパーのセルフ交換の方法や、ワイパーやゴムの種類も紹介していくので参考にしてみてください。
ワイパーの仕組み
ワイパーが構成されているのは、主に3つの部品です。まずモーターの回転力を往復運動に変えるワイパーリンクという部品に接続され、人間の腕に似ているアーム、アームに接続している弓のような形をしたブレード、ブレードに接続しているゴムからできています。
運転席のハンドル近くにあるワイパースイッチをオンにすると、ワイパーモーターが回転し、その動きがワイパーアームに伝わります。その力によりワイパーアームが左右に動き、その先のブレードが動いてワイパーゴムがガラスに付着した汚れや水滴をふき取るという仕組みです。
車検におけるワイパーの保安基準
車検は新車購入から3年後の初回、以降2年ごとに受けなければならないとされています。車検の有効期限が切れた状態の車を公道で走行させると法律違反となり、罰則が科されます。
国が定めた保安基準に沿って検査を行うのが、車検です。保安基準にワイパーによる取り決めもあります。
車のフロントガラスにはワイパーが搭載されていなければならず、左右にある場合は同時に動かなければなりません。また、ワイパーが劣化、損傷してその機能を十分に果たさない場合は、搭載されていても保安基準を満たさないと判断されて車検に通らなくなります。
さらに、ワイパーゴムに関しても著しい破損、劣化が見られるために機能を果たさない場合は保安基準適合外とみなされてしまいます。
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ワイパーゴムの役割や寿命
ワイパーゴムは、フロントガラスやリアガラスについた雨などの水滴や埃、黄砂や花粉などの汚れをふき取るために搭載されています。素材がゴムでできているので紫外線や雨、雪などに絶えずさらされた状態となり自然に劣化していきます。
春は黄砂や花粉などがガラスに付着して、汚れをふき取る際にゴムに傷がつくこともあるでしょう。夏は強い直射日光に、冬は凍ることもあるなど大きな気温差があり、季節ごとにゴムに大きな負担がかかります。
ゴムが劣化するとボロボロになったり、ひび割れたりするので見た目でわかります。ワイパーゴムの平均寿命は約1年とされていますが、環境によっては半年とかなり短いスパンで劣化することもあるので気を付けましょう。
ワイパーゴムが劣化しているかどうかを確認する方法の一つが、ガラスの水滴がしっかりふき取れているかのチェックです。ウォッシャー液を噴射させてワイパーを作動させてみてください。
1、2回動いて水滴をふき取った後、ガラスに水のスジが入っていたらふき取りが不十分だと言えます。ガラスに水が残っている、縦線が入って綺麗にふき取れていない場合もワイパーゴムが劣化している証拠です。
また、ふき取れたとしても、ガラスに一部分に水滴が残っているなどふき方にムラができている場合も、ゴムが消耗しているので交換時だと言えます。
直接ワイパーゴムの状態を見る、手で触って確認してみてください。新品のゴムは表面がツルツルしていますが、紫外線などにあたり続けて劣化すると表面がザラザラし、ひび割れしてきます。
劣化が進むとゴムが裂け、端から取れてビラビラした状態になります。また、長期間紫外線などにさらされると、ゴムが変形するので見た目にもわかるでしょう。
ワイパーゴムは劣化すると硬くなって縮みます。手で触ると柔らかさや弾力性がなく、曲げても元の形に戻らなくなったら寿命のサインです。
ゴムは外気が低いと硬くなり、そのままワイパーを作動させると摩擦を受けてより裂けやすくなります。見た目ではゴムの表面の様子や変形具合がわからないこともあるので、実際に触ってみて硬さを確認してみてください。
ワイパーを作動させたときの音でも劣化具合をチェックすることができます。ワイパーがガーガーと音を立てて動く、時折ギュギュっという摩擦音がするのは寿命のサインです。
これらの摩擦音は固くなったゴムがガラスにこすれている音です。さらに、異音が一定のリズムを刻むのではなく不規則なタイミングで聞こえる場合は、ゴムが変形し、正しい角度でガラスに当たっていないサインなので、よく聞いてみましょう。
また、ワイパーゴムの端を見ると製造年が表示されています。左右のワイパーがある場合は、左右どちらかに表示している場合があるので確認してみてください。
いくつか数字が並んでいますが、末尾の2桁が西暦の製造年です。「21」とあれば2021年製造のワイパーゴムだとわかります。
あまりに前の製造年のゴムだと劣化しやすいので注意が必要です。
車検時の交換部品、ワイパーゴムの交換は業者に依頼できる
車検時にワイパーゴムも検査対象となるので、劣化したワイパーゴムはきちんと新品に交換しておきたいものです。ワイパーゴムの交換は、業者に依頼すればやってもらえます。
ディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドや整備工場などに依頼可能です。ただし、それぞれで使われるゴムの種類や工賃などが異なるので注意しましょう。
車を購入したディーラーの最寄りの販売店に車を持っていけば、ワイパーゴムの交換をしてもらえます。メーカーの純正品を使うので素材や機能面での質は高く、技術力の高い整備士が作業を担当するので安心して任せられます。
しかし、純正品は優れている反面どうしても部品代が高くつきます。ディーラーは工賃が高いので結果的に他の業者と比べると費用が高くなるという面もあります。
工賃は1,200円ほどかかるのが一般的です。
タイヤやカーナビなどのカー用品を販売しているお店では、ピットという作業場を併設し、整備士が在中していて車の整備を請け負っています。ワイパーゴムの品ぞろえも豊富で、リーズナブルな部品も取り揃えています。
お店の商品を自由に選べるので、費用を抑えたい人には好都合だと言えるでしょう。工賃も安くディーラーの半額以下、200円~300円位でやってもらえるお店もあります。
カー用品店の中には、お店の会員登録をすれば工賃が無料となり、部品代の実費だけで済むこともあるのでお得です。
ガソリンスタンドは給油や洗車で寄ることが多く、ついでに交換してもらえば効率的です。ガソリンスタンドは夜遅くや早朝、土日祝日関係なく営業している所が多いので、忙しく時間のない人でワイパーゴム交換のために行きやすいと言えるでしょう。
ただし、ガソリンスタンドは工賃がカー用品店よりもやや高めの500円位です。ワイパーゴムの種類や在庫も少ない場合が多いので、選択肢があまりなく、部品代は高くついてしまうこともあるので注意してください。
街中にある整備工場でもワイパーゴムの交換は可能です。いつも整備を任せているなじみの整備工場なら、工賃をサービスしてもらえる場合もあるでしょう。
一般的に工賃相場は約600円で左右あるワイパーのどちらか1本だけの交換でも対応してもらえます。一方で、規模の小さい整備工場だとワイパーゴムの種類が少ないので、希望のものを取り付けたいなら取り寄せになるかもしれません。
ワイパーゴム交換は自分でできる車の部品交換
ワイパーゴムの交換は車の整備の中でもさほど難しくありません。そのため、さほど車に詳しくない人でも交換方法を知り、部品を買いに行けば自分で交換することは可能です。
交換には2つの方法があります。ワイパーごと交換する場合と、ワイパーゴムだけ交換する場合です。
また、ワイパーやワイパーゴムには種類があり、それぞれ値段も違うの知っておくと購入する際の参考になるでしょう。
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ワイパーの種類と費用
ワイパーは形状や硬度によって大きく3つのタイプに分けることができます。それぞれの特徴や値段などを見ていきます。
大きなフレームにコの字型の小さな部品が複数組み合わさった形状のワイパーです。車に使われるワイパーの中でも、メジャーなタイプだと言われています。
ちょうど形がスポーツ試合のトーナメント戦のような形をしているので、この名称で呼ばれています。ワイパーを作動させたときの強度が強く、安定しており豪雨や雪の日でも破損しにくい構造です。
価格はリーズナブルですが、密着性が弱いので完全には綺麗にふき取れないという難点があります。
ワイパーとゴムが一体化したタイプのワイパーです。骨格の強度はトーナメントワイパーよりは弱いですが、コンパクトな作りなので視界を遮りにくいというメリットがあります。
水がさっと切れて、高速走行をしてもワイパーがガタつきにくくなっています。価格はやや高めです。
トーナメントワイパーにカバー被せた形のワイパーで、錆に強い利点があります。凸凹した部分がないので空気抵抗を受けにくく、デザイン性が高い点がメリットです。
エアロワイパーは、トーナメントワイパーとフラットワイパー両方のいい所を取ったワイパーだと言われています。価格もさほど高くありませんが、ゴムのみの交換ができない、ゴムの劣化が早いといった点がデメリットです。
ワイパーのゴムの種類
ワイパーゴムには3つの種類があり、特徴や値段などが異なります。
一般的によく使われているワイパーゴムです。値段がリーズナブルなのが魅力です。
特に素材の特徴などが表記されていなければ、全てこのノーマルタイプだとされています。
ゴムの表面をグラファイト(炭素の結晶)でコーティングしたワイパーゴムです。ワイパーを作動させた際に、ゴムの表面のグラファイト粒子がガラスとゴムとの接触をスムーズにするので、ゴムの動きが滑らかになります。
寒さなどでゴムが硬くなった場合、ガラス面に触れると生じる音を緩和する効果も期待できます。特に撥水加工してあるガラスに使えば、撥水加工が長持ちするとも言われています。
その分ノーマルタイプよりは値段が割高です。
ゴムの表面にシリコンでコーティングし、水をはじく効果が期待できるワイパーゴムです。ガラスに施す撥水加工と同様の効果をもたらすので、ガラスのメンテナンスの手間が省けます。
ただし、3つのタイプの中でも一番値段が高いです。
自分で車のワイパーゴムを部品交換した際の費用
自分でワイパーゴムを交換すれば、業者に支払う工賃が不要となるので費用を抑えることができます。自分で安い部品を選んで購入できるので、節約にもなるでしょう。
ワイパーフレームごと交換する場合は、部品によって費用は異なりますが1本あたり2,000円~3,000円程の費用がかかります。一方でワイパーゴムだけを交換すれば、1,000円前後で費用が収まる場合もあるのでお得です。
ワイパーフレームごと交換する場合の手順を見ていきましょう。
ワイパーアームの先がガラスに触れる面にタオルを挟みます。交換途中に誤って先端がガラスに当たると傷ついたり、割れたりするのでそれを予防するためです。
フレームを外しやすくするために、アームを手前に起こして立てます。
アームとフレームの接続部の裏にある突起のようなボタンを押しながら、フレームを手前にスライドさせてゆっくり取り外します。
新しいフレームを準備して、向きに気を付けながらスライドして取り付けます。
ゆっくりアームを倒してタオルを取り除きます。ガラスにきちんと密着しているか確認します。
さらに、ウォッシャー液を噴射させてからワイパーを動かし、きちんと作動するか最終チェックをしてください。
ワイパーゴムのみを交換する方法を見ていきましょう。
ワイパーアームの先がガラスに触れる面にタオルを挟みます。交換途中に誤って先端がガラスに当たると傷ついたり、割れたりするのでそれを予防するためです。
ゴムの取り外しをスムーズに行うために、ワイパーアームを手前に起こして立てます。
フレームを片手で抑えて動かないようにし、もう片方の手でゆっくりゴムを引き抜きます。
新品のゴムを袋からだして、溝を合わせて差し込みます。
フレームを少し揺らしてゴムが偏っていないかを調整し、真っすぐ入っているかを確認します。アームを倒してからタオルを取り除けば完了です。
ワイパーゴムを交換するときに、一番危ないのがアームの先端がガラスを傷つけてしまうことです。アームは構造上、ガラスに押し付けるように力が働きます。
そのため、交換中に立ててあったアームを手や肘などで倒してしまうと、勢いが強くガラスが破損する可能性があるので注意しましょう。また、ワイパーのフレームには向きがあるので、逆に取り付けるとスイッチをオンにしても作動しない場合があります。
取り付ける前に向きが間違っていないか確認してください。また、ワイパーフレームやゴムには種類があって、それぞれ耐久性やふき取り能力、長さなどが異なります。
ただし、車種によっては取り付けたくて購入したワイパーやゴムが構造上取り付けできない場合もあります。高価な部品を購入してから取り付けできなかったでは無駄になってしまうので、事前にきちんと確認が必要です。
ワイパーゴムの寿命を延ばす方法
少しでもワイパーゴムの劣化を遅らせることは、寿命を延ばして交換の頻度を下げることになるので、節約にもつながります。
そのためには、まずワイパーをこまめにふいて汚れを除去することが大事です。黄砂や花粉などがついたままワイパーを作動させると、ガラスとゴムが摩擦する際に柔らかいゴムが傷ついてしまうからです。
また、ガラスが乾いた状態でワイパーを動かすと、摩擦が大きくなってゴムの劣化につながります。そして、ガラスを撥水加工するとゴムとの摩擦が減り、ゴムが滑らかにガラス上を動くので劣化が防げます。