車のブレーキオイルは年月が経つと徐々に劣化し、交換しないとブレーキの効きが悪くなり交通事故につながるのでとても危険です。定期的に点検し、できれば劣化する前に交換するのが望ましいと言えるでしょう。
ブレーキフルードには色や液量などの交換のサインがあるので、覚えておくと便利です。さらに、ブレーキフルードの交換にかかる費用、種類や規格なども詳しく紹介していきます。
点検や交換の参考にしてください。
車のブレーキの仕組みとブレーキオイルの役割
車のブレーキは油圧式を採用している場合が多いです。
運転席に足元にあるブレーキペダルは、ピストンとつながっており、さらにその先にはタイヤと一緒に回転する回転体と接続しています。ピストンの中にはブレーキオイルが入っており、ブレーキペダルを踏むとピストン内のブレーキオイルが押し出されて圧力が生じます。この油圧が回転体に伝わり、タイヤの回転を止めることで車を減速、停止させるというのが油圧式ブレーキの仕組みです。
ブレーキオイルは油圧を生じさせるために欠かせない物です。
ブレーキオイルという名称ですが、成分に油分は含まれない物が主として使われています。そのため、ブレーキフルードやブレ-キ液と呼ばれるのが一般的です。
ブレーキフルードの種類
ブレーキフルードには3つの種類があります。
1つ目は非鉱物油のグリコールエーテル系です。ポリエチレングリコールモノエーテルが主成分で、酸化防止剤・防錆剤等が添加されています。吸湿性が高いのが特徴で水分を含むと沸点が下がりやすくなります。
2つ目はシリコーン油系です。ジメチルポリシロキサンを主成分としており、吸湿性が低くさびにくいのが特徴となっています。
3つ目は鉱物油系です。石油から生成された鉱物油が主成分となっています。
ブレーキフルードを知る上で、沸点や吸湿率というワードがポイントとなります。
ブレーキフルードは種類によって沸点が異なります。沸点とは液体が沸騰する温度のことです。
ブレーキを作動させた際に熱が発生し、ブレーキ内がそれなりに高温になればフルードが沸騰、液化するので気泡が生じます。フルードに気泡が生じると、油圧の妨げとなるので力が弱まります。すると、ブレーキの効きが悪くなってしまうことにつながります。つまり沸点の低いブレーキフルードは、少し温度が上がるだけですぐに気泡ができてしまうので、良い状態とは言えません。
また、吸湿率は空気中の水分をどの位の割合で取り込むのかということを示します。
吸湿率の高いフルードは多くの水を取り込むことになります。水の沸点は100℃と低いので、水分が多いフルードは水に薄まって気泡が発生しやすくなるので、結果的にブレーキの効きを悪くすることにつながるのです。
沸点は新品の状態から時間が経過すると、自然に下がっていきます。使用するうちに空気中の水分を吸湿してしまうので、新品の状態で沸点が高い方が長持ちするとされています。つまり沸点が高く、吸湿率が高いブレーキフルードは高品質だと言えるでしょう。
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ブレーキフルードの規格
ブレーキフルードはDOT3,DOT4、DOT5の主に3つの規格に分けられます。
DOT(ドット)というのはアメリカ自動車安全基準に基づき、ブレーキフルードを分類していることを示しています。
国内に流通しているブレーキフルードは、アメリカの規格です。ブレーキフルードの規格ではウェット沸点、ドライ沸点などで示されています。ウェット沸点は新車から2年経過後の沸点、ドライ沸点は新車時の沸点のことです。
- DOT3はドライ沸点205℃以上、ウェット沸点140℃以上
- DOT4はドライ沸点230℃以上、ウェット沸点155℃以上
- DOT5はドライ沸点260℃以上、ウェット沸点180℃以下
沸点をみるとDOT5、4、3の順で高価なオイルということになります。
それぞれ規格で用途が大体決まっていて、DOT3は主に排気量が小さく、重量の軽いので一般車両向けです。DOT4は排気量の大きく、重量が重い一般車両とスポーツ走行用となります。
DOT5は2種類あり、DOT5.1は排気量の大きく、重量が重い一般車で特に寒冷地仕様です。DOT5は低温での粘度性も高く、ハマーやハーレーダビッドソンなどの特殊車両に用いられています。
ブレーキフルードが劣化するとどうなる?
長期間使い続けると、ブレーキフルードは自然劣化します。空気中の水分を少しずつ取り込み、変色してきます。
さらに、ブレーキ内に発生する熱で徐々に温められると沸騰します。沸騰によりピストン内に気泡がどんどん増えていくでしょう。
すると、ブレーキペダルを踏んでも無数の気泡がブレ-キフルードを押し出す力を大きく妨げることになります。油圧が不十分となり、結果的にブレーキが効きにくい状態になっていき、最終的にはブレーキが効かなくなる、ペーパーロック現象が起こります。
そうなると、重大な交通事故の発生にもつながるので、非常に危険です。
ブレーキフルードはボンネット内のエンジンルームにある、リザーバータンクという半透明の容器に入っています。タンクの外側にはMIN、MAXという文字とラインが表示されているので見てみましょう。
容器が半透明なので、中のブレーキフルードの液量が透けて見えます。蓋を開けなくても、外から現在の液量どの位なのか確認できます。
MINは下限で、液量がこれ以下になってはいけないという意味です。MAXは上限で、液量がこれ以上は多すぎるということです。
液量がMINより下の場合は、ブレーキフルードが液漏れしているか、ブレーキパッドが摩耗した関係で液面が下がっている可能性が考えられます。通常ブレーキフルードはエンジンオイルなどとは違って、著しく量が減ることはありません。
仮に減るにしても微量です。減ったからといって安易な補給は厳禁となっているので気を付けましょう。
ブレーキフルードの交換時期と目安
ブレーキフルードの交換目安は、車の使用頻度により差があるので一概には言えません。ただし、一般的には1年~1年半位だとされています。
車の走行距離が考えると、約1万~1万5,000㎞ごとの交換が望ましいです。前回の交換から2年以上もしくは走行距離が2万㎞を超えてしまった場合は危険です。
ブレーキの性能にも関係してくるので、すぐにでも交換すべきでしょう。また走行距離に関しては、頻繁に車を使う、長距離運転が多いなど平均よりも多い場合は、寿命に関係なく早めの点検、整備が必要となってきます。
他にも、ブレーキフルードの色や量なども交換の目安となります。運転中にブレーキに違和感がある、ブレーキが効きにくくなったという症状も交換のサインとなるので見逃さないでください。
新品のブレーキフルードの色は、透明かもしくは淡い、薄黄色をしているのが一般的です。その状態から空気中の水分や汚れなどを取り込むことで劣化し、茶色やこげ茶色に変色します。
こげ茶色になったら交換のサインだと覚えておきましょう。
赤茶色くなっている場合は、ピストンなどがさびているかもしれません。
白く濁っている場合はブレーキフルードに水分が多く含まれているサインであり、リザーバータンクの蓋などの不良が考えられます。
さらに、ブレーキフルードの劣化が進むと黒色へと変色してしまいます。黒色になるともうかなり汚れており末期状態だと言えるので、早急に交換してください。
リザーバータンクのブレーキフルード量も交換の目安となるので、知っておきましょう。タンクの外側に表示されたMINとMAXラインのちょうど真ん中よりも下のラインに液面が来ている、もしくはさらに液面がMINに近づいていたら交換のサインとなります。
ただし、ブレーキフルードが減ってしまった、規定量に足らないからといってつぎ足すのはNGです。ブレーキフルードはエンジンオイルのように使い続ければ液量が減るというタイプのオイルではないからです。
ブレーキフルードの液量が減っているのは、液漏れの可能性があります。また、ブレーキパッドが摩耗し、油圧が十分にかからない状態になって液面が下がっていることも考えられます。
ブレーキの性能に関わる事態なのですぐに整備工場などに持っていき、詳しく点検してもらうことをおすすめします。
運転中にブレーキペダルを踏んだり、ブレーキの制動力をチェックしたりすることによって、ブレーキフルードの劣化を確認できます。運転中にブレーキパッドを踏んだ際に、しっかりとした踏みごたえがなく、フワフワした感じでしっかり踏めない場合も危険です。
また、ブレーキペダルを深く踏みこんでもなかなか停止しない、減速までに時間がかかるという症状もあります。こうなると、フルードの劣化がかなり進んでいる可能性がありますので、すぐにでも整備工場などで点検してもらった方が良いです。
また、ブレーキペダルを踏むと、シャリシャリという金属がこすれるような音がする場合は、ブレーキパッドが摩耗しているかもしれません。これもブレーキが効かなくなるリスクが高いので早めの点検、交換が必要でしょう。
普段からブレーキをかける際にいつもと踏み心地が同じか、異音はしないかなどを気を付けておくと安心です。
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ブレーキフルードは定期点検が大事
ブレーキフルードは、交換のサインがわかりにくいのでつい点検するのを忘れがちな人もいるかもしれません。しかし、ブレーキパッドの踏みごたえが悪いなど、わかりやすい交換サインが出る頃には、かなり劣化が進んでいて危険な状態である可能性が高いです。
そのため、交換サインが出ていなくてもブレーキフルードは定期的に点検することをおすすめします。劣化したまま気づかずに交換しないと、次第にブレーキの効きが悪くなります。
ある時急にブレーキが効かなくなって、事故を起こすことにもなりかねません。点検方法はさほど難しくないので、安心してください。
車の詳しくない人でも自分でできるのでやってみましょう。
ブレーキフルードの点検方法
ブレーキフルードの点検方法は、まずボンネットを開けてエンジンルーム内のリザーバータンクを見つけます。ボンネットの開け方やリザーバータンクの位置は、車の取扱説明書に記載されているので、一度目を通しておいてください。
ではボンネットの開け方を説明しましょう。
まず運転席の下にあるボンネットのイラストのレバーを手前に引くと、ボンという音がしてロックが外れます。ボンネットの裏側に手を差し込んでフックを押しながらゆっくり上にあげ、エンジンルーム内端に備わっているポールを立てて本ネットを固定します。
リザーバータンクは、一般的に運転席の奥の方に設置されていることが多いので確認してください。タンクの外側のMINとMAXラインの間に液面があるかを目視します。
蓋を開けて色がこげ茶色に変色していないかもチェックします。蓋を閉めて、ボンネットを片手で支えながらポーズを外し、ゆっくりとボンネットを下ろします。
残り20㎝位まで下ろしたら、手を離すと、勢いでしっかりボンネットが閉まるはずです。いきなり上から下ろすとロックが破損するリスクがあるので気を付けましょう。
業者に依頼した際のブレーキオイルの交換費用
ブレーキフルードの交換を依頼する場合は、ディーラーやカー用品店、ガソリンスタンドや整備工場などでできます。それぞれの業者でかかる費用も違うので比較してみましょう。
ディーラーは純正部品を使い、技術力が確かな整備士が作業を担当するのでクオリティーは高いですが、部品代と工賃も高くつきます。工賃込みで10,000円程かかるとされています。
カー用品店ではアイテムが豊富なので、安い物を選べば工賃込みで5,000円前後で交換可能です。
ガソリンスタンドは給油や洗車のついでによれば作業してもらえるので、効率的でもあります。ブレーキフルードの品ぞろえは少ないので選択肢はあまりないですが、工賃込みでも5,000円~7,000円位が一般的です。
なじみのある整備工場だと工賃を少し安くしてもらえる可能性もありますが、カー用品店と同じく工賃込みで5,000円位になるでしょう。交換を依頼する前に、どの位費用がかかるのかを聞いてみると安心です。
ブレーキフルードの交換は、車の整備に慣れた人なら自分で交換することもできます。ただし、ジャッキアップしてタイヤを外さなければならないなど、少し大掛かりな作業です。
ブレーキフルードの交換は、まずタイヤを4本とも外すところから始まります。ジャッキアップしてリジットラック(ウマ)という器具をセットし、4本のタイヤを持ち上げた状態で固定して外します。
次に、タンク内に入っている古いブレーキフルードを抜き取る作業です。スポイトなどを使って古いフルードを抜き取り、新品のフルードをゆっくり注ぎ入れます。
そして、各タイヤのピストン内にある古いブレーキフルードを抜き取ることが必要です。右前輪から4本のタイヤのブレーキキャリパーを交換していきます。
タンクに新しいブレーキフルードを入れるだけならまだ簡単ですが、4本のタイヤを外して作業するというのは車の整備に慣れない人にとってはかなり難しいでしょう。タイヤの脱着は結構な重労働で工具の必要となってきます。
また、ブレーキフルードが他の部品に付着すると錆が出てしまうので要注意です。セルフ点検は簡単ですが、フルードの交換は無理しないでプロの手に任せた方が無難です。
基本的に、ブレーキフルードの交換は1年~1年半位ごとの交換が望ましいとされています。交換だけを整備工場やカー用品店などに依頼すると、工賃が加算されます。
例えば12ヶ月や24ヶ月の法定点検や車検前の整備を依頼する際に、他の部品の点検や整備と一緒にやってもらえると工賃がサービスとなる可能性もあるのでお得です。ブレーキフルードの交換のためだけに、整備の予約をとって日時に車を業者まで持っていくのは面倒に感じるかもしれません。
点検などの際に一緒に交換してもらえば効率的でしょう。ブレーキフルードの寿命を知っておくことで、法定点検などで交換を打診されても本当に交換のタイミングかどうかわかるので役立ちます。
ブレーキフルードはブレーキ機能に関係する重要な液体なので、点検や交換を面倒がらずに定期的に点検し、寿命が来る前に必ず交換するようにしてください。