車のホイールはデザインのバリエーションも豊富にあるので、見栄えをかっこよくするためにカスタマイズしたいという方も多いです。
車検で検査の基準となる保安基準には、ホイールにも規定があります。市販のホイールは大きさや素材なども色々ありますが、特に輸入品の場合は保安基準を満たさないものがあるので注意しなければなりません。
車検を通すためにも、車の安全性を確保するためにもホイールの保安基準の内容を知っておくことが大事です。
ホイールやナットをカスタマイズしても車検に通る
車を購入した際、純正のホイールが装着されている場合がほとんどです。しかし、「見た目をかっこよくしたい」「スポーティーな感じに見せたいので社外品のホイールを購入して付け替えたい」という方もいます。
ホイールを元から装着してあった純正品から社外品に付け替える、ドレスアップを図ること自体は違法ではないので、やっても何ら問題はありません。自分で好きなものを購入し、自由に付け替えることは可能です。
ただし、一つ気を付けなければならないことがあります。それは、車検の保安基準を満たしたホイールであるかという点です。
車検は、自動車の装備が国が定めた保安基準という技術基準に適合しているかをチェックするための検査です。ホイールに関する基準も規定されています。
カー用品店などで販売されているホイールには、保安基準を適さないものもあります。きちんと調べて基準を満たすものを選ばないと、車検で不合格となるので注意しましょう。
ホイールの種類
ホイールには基本となるデザインの種類が4つあります。この4つのデザインを組み合わせる形で、さらに様々なタイプのホイールが販売されているのです。
では、4つのデザインを見ていきましょう。
ホイールの中心から外径に向かって、細長い棒状のスポークが放射線にようにかけられているデザインです。軽くて熱に強く、熱を冷やす性質があるのが特徴です。
スポークタイプのホイールよりもスポークが細く、本数がたくさんあるタイプのデザインです。スタイリッシュな見た目が特徴です。
ホイールの中央と外径の間にスポークは網目状に配置されているデザインです。スポークが太く、目が粗いデザインは重厚感が出ます。逆にスポークが細く、目が細かいデザインはエレガントな印象を与えます。
ホイールの中央と外径が1枚のお皿のような面状になっているデザインです。とは言っても、面には隙間や穴が空いているのが一般的です。空気抵抗は少ないですが、重量が重いという特徴があります。
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ホイールのサイズの見方
自分の車のタイヤにあったホイールを選ぶためにも、ホイールのサイズの見方を知っておきましょう。純正のホイールは車の取扱説明書にサイズが記載してある場合が多いので、確認してください。
ホイール本体にも、例えば「15 × 6 1/2JJ 5 114.3 50」というようなサイズ表記があります。この表記の見方を解説します。
最初の「15」は、リム径と言って、ホイールの直径の大きさです。
次の「6 1/2」は、ホイールの幅をインチサイズで表してもので6.5と表記される場合もあります。
次の「JJ」は、ホイールにタイヤがはまる部分、フランジのサイズを示します。
次の「5」は、穴の数です。
次の「114.3」は、ボルト穴の中心線を結んだ時にできる円の直径です。
最後の「50」は、ホイールの幅の中心線から車体側の取り付け面までの長さを示しており、インセット(またはオフセット)と呼ばれています。取り付け面がホイールの外の場合はインセット、取り付け面がホイールの内側に来る場合はアウトセットと呼びます。
ホイールの規格
ホイールには国土交通省が定める安全基準を満たしたものに刻印される「JWL」という規格があります。衝撃試験や半径方向負荷耐久試験など各種ホイールの強度確認試験を行い、安全とされる耐久性や強度のあるホイールに認められている規格です。
純正のホイールはもちろん、社外品でも刻印がなされているはずです。「JWL」は主に普通車用のホイールの国産規格となります。
総重量3.5tより重い、最大積載量500㎏より重い貨物車は「JWL‐T」という規格です。総重量4.54t以下で定員が11人以下の乗用車は「SAE」の規格となります。
そして、メーカー表記の規格もあります。いずれかの規格がホイールに刻印されているはずなので、一度確認してみましょう。
車検にはタイヤやホイールの保安基準がある
車検において検査の基準となるのが「保安基準」です。保安基準は、国土交通省が定める自動車に関する安全技術基準のことです。
タイヤやホイールに関する保安基準も定められています。例えば、タイヤの外径や規定値内であることや、ホイールがフェンダーに接触しないことなどが決まっています。
検査で保安基準を満たさないタイヤやホイールを装着している場合、車検は不合格です。再整備して再度検査に出さなければ、公道を走行することはできません。
保安基準外のタイヤやホイールを外し、保安基準を満たすものに付け替える必要があります。お金も時間もかかってしまうので気を付けましょう。
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タイヤの外径が規定から外れるのはNG
タイヤの大きさも保安基準で決まっています。タイヤの大きさは、車の走行性能に深く関係しており、タイヤが大きいとスピードに乗りやすいので速く走れます。
逆にタイヤが小さい場合回転数を増やさないとスピードが出ないので、一般的に速度は遅くなるのです。タイヤの大きさが違いすぎると、運転席で確認するスピードメーターと実際の車の速度が違ってくるという問題が起こります。
車検ではスピードメーターが正確かどうかチェックされます。実際の速度とスピードメーターに表示される速度の誤差は決められた範囲内に収まっていなければなりません。
その誤差の範囲は車の製造年で分けられているので、注意しましょう。スピードメーターが40km/hを表示している時、2007年1月1日以降の製造の車は、実際の速度が30.9km/h〜42.55km/hに収まっている必要があります。
また、2006年12月31日以前に製造の車は、実際の速度は30.9km/h〜44.4km/hでなければなりません。純正品を社外品に交換する場合は、タイヤの外径が大きく違わないように注意してください。
タイヤの周りを囲うように取り付けられたパーツがフェンダーです。フェンダーからはみ出すようなサイズ、デザインのタイヤホイールは車検では不合格となります。
タイヤやホイールがはみ出していると、車とすれ違う際にフェンダーは触れなくてもタイヤやホイールが他の車に当たると接触事故になってしまうからです。保安基準では、ホイールの中心からフェンダーに向かって直線を引きます。
この直線は地面に対して直角でなけければなりません。直線から前へ30度、後ろへ50度の角度の範囲でホイールがフェンダーからはみ出しているとNGとなります。
車を運転中、右左折する際などハンドルを切るとタイヤも動きます。この時、フェンダーにタイヤやホイールが触れると車検では不合格となります。
ハンドルが真っすぐな状態でタイヤやホイールがフェンダーからはみ出していなくても、ハンドルを切った際にはみ出してしまえば結局NGとなるので注意しましょう。タイヤが回転中にフェンダーに触れてしまうと回転に対する抵抗となり、タイヤがバランスを崩し、車はコントロールを失うことにもなりかねません。
また、ホイールが触れた場合も結局タイヤの回転、ハンドル操作の妨げとなります。結果的に車が進行方向に進むのを阻害することになり、交通事故のリスクが高まります。
タイヤの表面が傷つき、亀裂などが生じてバーストする可能性もあるので危険です。
車好きな方にとって、タイヤやホイールをカスタマイズする際、「ツライチ」にしたいという方も多いかもしれません。
通常は、タイヤやホイールはフェンダーの内側に収まっています。しかし、ドレスアップによりタイヤやホイールをフェンダーのギリギリのラインまで出すと、車のボディと足回りに一体感が生まれるのです。スタイリッシュな印象となり、スポーツカー仕様のようにかっこよく見えます。
しかし、ツライチにすることでタイヤやホイールが傷つきやすく、カスタマイズの仕方によっては外側に飛び出してしまい、車検に通らなくなる可能性があるので注意が必要です。
ホイールに傷がついている場合は、一部に凹みが見られる場合、軽微なものなら車検でも特に問題にならず合格するでしょう。しかし、大きな傷や深い凹みがあって車の走行の妨げになる場合は、車検に通らない可能性もあります。
凹みが大きく深いとタイヤの回転面に凹みが触れることもあります。そうなると、タイヤが回転して進行方向に進む際の妨げになり、ハンドル操作が効かず交通事故発生のリスクが高くなるからです。
また、ホイールが大きくゆがんでいる場合や割れている、大きなひび割れがある場合なども注意が必要となります。車検では、安全に走行できないと判断される可能性が高いです。
国土交通省が定めるホイールの品質基準に合格したホイールは、「JWL」という規格が与えられます。国産のホイールのほとんど全てに、「JWL」の刻印がなされています。
車両総重量によっては「JWL‐T」の刻印のホイールもありますので、確認してみましょう。輸入品だと「JWL」の刻印がなされていないホイールがあります。
「JWL」は日本独自の保安基準です。基準を満たさない外国産のホイールが輸入されて、カー用品店などで販売されていると気付かない場合もあります。
それをドライバーが購入し、装着するということもありえます。しかし「JWL」の刻印のないホイールは、保安基準適合外と判断されるので車検には通りません。
輸入品のホイールは製造国では保安基準を満たしているかもしれませんが、最終的に国内で「JWL」の認定を受けなければ保安基準外として扱われるので、注意が必要です。ただし、輸入車の場合は保安基準を満たしているので、問題ありません。
タイヤの最大負荷能力、ロードインデックスというのは、1本あたりに耐えられる最大の負荷を数値化したものです。車検では、ホイールのロードインデックスが車に適した値であるかどうかも検査していきます。
タイヤのロードインデックスが低いということは、タイヤがあまり大きな負荷に耐えられないということです。ロードインデックスはタイヤによって異なり、タイヤの側面に記載されています。
例えばロードインデックスが80の場合、最大負荷能力は450㎏です。450㎏以上の重さとなったら、タイヤが負荷に耐えきれず、損傷やバーストを起こすリスクが高まります。
車検でも、タイヤのロードインデックスが基準を満たさないと不合格です。また、タイヤの空気圧もロードインデックスと関係しています。
空気圧が適正でないと最大負荷能力は十分発揮されないので、空気圧の管理が大切です。タイヤを社外品に付け替える場合は、純正タイヤのロードインデックスの値にも注意が必要となります。
ホイールやナットをカスタマイズする際の注意点
ホイールは車種やタイヤのサイズによって、大きさがある程度決まっています。そのため、自分が付けたいタイプのホイールがあっても、どんなものでも装着できるというわけではないので気を付けてください。
ホイールはスタイリッシュデザイン、重厚感があって力強いデザイン、スポーティーでかっこいいデザインなど様々なタイプのものが販売されています。しかし、サイズも様々なので見た目のかっこよさだけで選んでしまうと、タイヤにはまらないというケースも出てきます。
ナットもホイールのタイプによって違うため、ホイールに合ったナットを選ばないと結局装着できなくなり無駄になってしまうので、気を付けましょう。
ホイールを純正品から社外品へと交換する際は、必ずサイズが合っているかを確認することが大事です。ホイールの外寸の直径であるホイール径をまず見ます。
さらに、ボルトを通すための穴の数、ホール数が4穴もしくは5穴のものがあるので、どちらなのかも確認しておく必要があります。また、ボルトの穴同士を線で結んで円を作った場合の直径となるP.C.Dの値も純正品と違っていると、装着できないので確認してください。
特に、ドレスアップのためにホイールのサイズをやや大きくする、インチアップを行う場合は気を付けましょう。インチアップをしても、外径が純正と変わらないようにすれば車検でも問題ありません。
そして、忘れがちなのがナットです。純正ホイールに使っているナットは、純正品に合わせて作られているので形状などが社外品と合わない場合もあります。
ホイールを社外品に変える場合は、ナットも一緒に購入するのが一般的です。ナットの色はシルバーが多いですが、ゴールドやレッド、ブルーなどの色もあり、ホイールの色と組み合わせて購入するという方もいます。
ホイールの中心にはめるセンターキャップも必要なので、忘れないようにしましょう。
社外品のホイールにカスタマイズする際は、車検での判断基準となる保安基準を満たしたホイールであることがポイントとなります。せっかく付け替えても、保安基準適合外のホイールだとそのままでは車検に通りません。
車検を通すためには、車検前にまた正規のものに交換する必要があります。ただし、車検にさえ通ればよいというわけでもありません。
特に、輸入品で国の独自の品質基準を満たしたJWLの強度規格の刻印がないものは要注意です。製造国の安全基準を満たしている輸入品でも、日本国内での基準を満たしていないと安全性が低い可能性もあります。
耐久性が低く、衝撃に弱いものなら破損するリスクがあります。事故のないように安心して車を運転するには、見栄えよりも走行性能を重視しなければなりません。
安全強度規格を満たす、保安基準に合ったホイールを装着しましょう。