車を持っている方ならフロントガラスに貼ってあるステッカーが運転するたびに目に入ってくるはずです。しかし、きちんとステッカーの持つ意味を理解している方は、少ないかもしれません。
ステッカーが貼ってある意義を把握することは、実は安全・快適に車を走らせることにもつながります。ステッカーから次の点検時期を確認できるなどのメリットもあるため、愛車を長持ちさせたいならステッカーの持つ意味を覚えておきましょう。
この記事では、車検ステッカー・点検ステッカーのそれぞれの意味や、点検の基礎知識を解説します。
自動車に貼ってある丸いステッカーと四角いステッカーの違いは?
フロントガラスに貼るステッカーには、「中央に貼ってある四角いステッカー」と「フロントガラスの左部の丸いステッカー」があります。どちらも期限が書いてありますが、この2つのステッカーが証明することは全く違います。
四角いステッカーは「検査標章」と言って、車検が通ったタイミングで貼り付けられるものです。車検が通ったことを証明しています。
それに対して丸いステッカーは、法定点検を受けたタイミングで発行されます。法定点検を受けていない車には、この丸いステッカーがありません。
車検と法定点検は似ているようで内容も受ける目的も全く違うため、混同しないように気を付けましょう。2枚それぞれのステッカーには、次回の車検時期・点検時期が記載されています。
車検ステッカー(四角いシール)について
四角い車検ステッカー(検査標章)は、車検が通ったタイミングで車検証と一緒に発行されます。通常は、車検が完了した時点で、すぐに車検を受けた工場で貼り付けを行ってくれることが多いです。
車検は、定期的に必ず受けなければなりません。車検を受けることは義務であり、「車検証明道路運送車両法」の第62条で定められています。
そのため、車検を通過していない車で公道を走れば違反になってしまいます。車検ステッカーを貼っていない車は取り締まりの対象となります。
そのくらい車検は重要なのです。
車検ステッカーには、前回受けた車検の有効期限が切れる年月日が明記されています。車の中から「自動車検査証の有効期限が満了する日」と書いてあるところを見ると、自分ですぐに確認できます。
万が一、車検の有効期限が切れてしまった場合は、公道を走ってはいけません。車検切れの車で公道を走ってしまうと、罰則・罰金が発生し、少なくとも6ヶ月の免許停止処分が課せられることになります。
車検が切れている場合、仮ナンバーを取得するといった方法で、車を最寄りの工場やディーラーまで運ぶ必要が出てきます。車検が切れると本来はかからない車を移動させるための費用や手間が発生してしまいますので、車検はくれぐれも期限内に受けましょう。
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左上の丸いシールは法定点検のステッカーです
フロントガラスには、もう一つ丸いシールが貼ってあることがあります。車の中から見て左上に貼ってあるこの丸いシールは、車の12ヶ月・または24ヶ月の法定点検が完了したことを表すステッカーで、車検とは関係がありません。
その丸い見た目から「ダイヤルステッカー」と呼ばれることもあります。この法定点検のステッカーは、点検が終わった時に発行されます。
しかし、車検標章の四角いステッカーとは違い、貼らなくても違反や取り締まりの対象にはなりません。そのため、丸いステッカーを持っていても貼らずに保管しておく方もいます。
法定点検は義務です。車を所有している方は、法定点検を受ける必要があります。
しかし、フロントガラスに「点検・整備済みステッカー(丸いシール)」が貼られていなくても取り締まりで罰則を受けることはありません。そのため「法定点検は受けなくても特に問題がないだろう」と考えている方が多いのも事実です。
ここで覚えておきたいのが、「道路運送車両法」の「第48条(点検整備)」に、法定点検を受けなければならないことが明記されているということです。自家用普通乗用車は1年、普通商用車は6ヶ月と期間が設定されています。
つまり、個人が所有している車は1年に一度の法定点検の義務が課せられているということです。ちなみに、バスやタクシーなどの緑ナンバーが付いた事業用車については3ヶ月に1度の点検が定められています。
左上の丸い点検ステッカーは、貼らなくても違反にはなりませんが、できれば貼っておいた方が安心です。点検ステッカーの表(外)側には、次回点検を受ける年と月が表示されています。
裏に書いてある内容は、次回の点検時期に加え、前回点検を受けた年月日と整備工場の名前、認証番号です。「いつ・どこで」点検を受けたのか、そして次はいつ点検を受けなければならないのかがひと目でわかるようになっています。
次回の点検時期をすぐに確認できるようにするため、はがさずにきちんと貼っておくようにしましょう。
点検ステッカーをはがしても違法にはなりませんが、点検の期限が切れていないなら、わざわざはがす必要もないと言えます。はがすことのメリットは、デメリットに比べると少ないです。
見栄えを気にしてはがしたくなったとしても、このステッカーはそう簡単にははがないようになっていますので、はがすのに時間がかかります。また、ステッカーをはがす時にうっかりフロントガラスを傷つけてしまう可能性もあるため、そのままにしておくのが無難でしょう。
前回の法定点検からステッカーをはがしていない場合は、車の中からすぐに自分が受けた点検の概要が確認できます。点検ステッカーの裏側(車内から見る側)には、一番上から「法定点検を実施した日」、「点検を実施した工場の認証番号」、そして「次回の点検を受ける時期」が記載されています。
中でも一番大きく表示されているのが日付です。「次回の定期点検は、次の期日までに行ってください。」とはっきり書いてあるため、次回の点検がひと目でわかる、というものです。
点検ステッカーは、期限が切れていたらすぐにはがさなければなりません。ステッカーの裏側にも「期日を過ぎたステッカーは必ずはがしてください」と明記されています。
しかし、次の法定点検を受ける前に期限が切れてしまった場合は要注意です。期限切れのステッカーをはがすということは、次回の点検時期がわからなくなってしまう可能性が生じるということです。
期限切れステッカーをはがす際は、次回点検時期をしっかりと覚えておくようにしましょう。ステッカーはとてもはがにくくなっているため、はがす際はステッカーに市販のシールはがしやエタノールなどを染み込ませ、先端がゴムやプラスチック製のヘラを使ってそぎ落とすのが一般的です。
カッターや剃刀はガラスを傷つけてしまうことがあるため、使用は避けてください。はがす前にドライヤーでシールをあたためるとはがしやすくなります。
車の定期点検を行うには、専門的な知識と技術が必要なため、整備工場などに持ち込むことになります。車に関しての知識が豊富だった場合でも、一般の方が自分でメンテナンスを行っただけでは点検ステッカーを発行してもらうことはできません。
点検ステッカーは、運輸局の認証を受けた「認証工場」以外では発行されないので注意です。そのため、工場の中でも、地方運輸局長の認証を受けた「認証工場」を選ぶようにしましょう。
「認証工場」の条件は、自動車の点検を行うための設備と一定の規模の作業場があり、かつ、自動車分解整備事業を担当することができる整備士がいることです。
車検が完了したら四角い「検査標章」が発行され、法定点検が済んだら「点検・整備済みステッカー」の丸いシールが発行されることがわかりました。
車検を受けるタイミングで、同時に点検を受けることもできますので、その場合は2枚のステッカーが発行されることになります。
車を安心安全に使うためにも、法定点検(車検)は必ず受けましょう。車検ではチェックしない項目を点検することで、車検にも合格しやすくなるというメリットがあります。
法定点検には、車検と違って「○月○日までに受けなければ違反になる」というようなはっきりとした期限が設定されているわけではありません。しかし、点検ステッカーの裏側に書いてある日付を見れば、点検を受ける時期の目安がわかります。
点検は、ステッカーの日付の1ヶ月以内を目安に受けるのが良いとされています。期限よりも極端に早い時期に受けることは、本来の点検の目的から逸れるのでおすすめしません。
また、期限から1ヶ月を過ぎてしまえば、故障のリスクが上がっていきます。部品が摩耗していたり運転の安全性が低下していたりしていても、それを見逃すことになりかねません。
期限が切れる「1ヶ月以内」を目安に点検を受けましょう。
点検は車検と違って「受けないと車に乗れなくなる」というものではないため、中には12ヶ月点検を最後にいつ受けたのか忘れている、次回いつ受けたら良いのかもわからない、という方も多いのが事実です。点検ステッカーがなく、忘れてしまって確認する方法もないという方は、前回の点検からかなりの期間が空いているということになるでしょう。
安全性を確保するために、ディーラーや整備工場へなるべく早く持っていくべき、と言えます。
車検と法定点検の違い
法定点検と車検は目的も内容も全く異なります。混同されがちですが、車検は点検ではありません。
車検は「道路運送車両法」の規定にもとづいて、車が「保安基準」に適合しているかを確認するための制度です。つまり、自動車の構造・装置、乗車定員等が保安上問題なければ車検は通ります。
それに対して法定点検は、「車に故障している箇所がない」「快適な走行が可能か」「交換が必要な部品がないか」などを細かく確認するものです。車を安全に運転するためだけではなく、ドライバーが快適で満足な運転ができることも点検を受ける目的のひとつです。
法定点検には、普通自動車の場合だと、12ヶ月・24ヶ月ごとに受けるものがあります。それぞれの期間によって検査項目が細かく別れています。
12ヶ月点検で点検する項目は、以下のように決まっています。
- 自家用車(軽自動車を含む)・・・26項目
- 中小型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車)・・・82項目
- バス・トラック・タクシー(事業用)、大型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車以外)・・・99項目
また、24ヶ月点検は、12ヶ月点検で行う項目を含んだ上で、より多くの点検項目が定められています。対象車種は自家用車(軽自動車を含む)のみで、点検項目は56項目です。
法定点検を受けないまま数年が経過した場合のデメリットについて、考えてみます。点検は、人間で言うと健康診断のようなものです。
点検を行えば、もし車に異常があった場合でもすぐに気付くことができます。しかし、点検自体を受けなければ、車が故障する前に必要なメンテナンス箇所に気付くことができません。
そのため、ある日突然故障してしまうリスクは当然上がります。また、快適に車を走らせるためにも点検は必要です。
例えば、12ヶ月点検では、車から出る有害な煙やガスの発散防止装置だけでも10箇所の点検項目が定められています。他にも、点検を受けていない車は万が一故障してしまった場合でも、メーカー保証の対象外となることがあるなどのデメリットがあります。
この場合は、自己負担の修理費用が高額となってしまうでしょう。
12ヶ月点検を受けるメリット
安全・快適なドライブのためには、車検だけでは不十分です。車検は点検ではないため、メンテナンスの役割がありません。
車が本来持つ快適な走行性能を維持するためにも、不調を感じたらすぐに工場やガソリンスタンドに持ち込んでプロに見てもらいましょう。また、そういった不調が出てくる前に法定点検を上手に利用して、車を健康な状態に保っておくことが大切です。
法定点検を受ければ、タイヤの残量やブレーキの効き具合などのメンテナンス項目を確認することができます。毎日車に乗らないと、性能の低下に気付かなかったり、また少し不調を感じても「たまにしか乗らないから」と放置してしまったりする方も多いかもしれません。
しかし、法定点検では細かい項目をしっかりと点検し記録簿に残すため、交換が必要な部品も一度に把握できます。また、安全に走るために必要な整備項目を確認することで、安心して走行できることにつながります。
もし整備不良が原因で事故を起こしてしまった場合、法定点検を受けていたかそうでないかで、ドライバーに問われる法的責任の度合いが変わる場合があります。「認証工場」と呼ばれる国の認定を受けた整備工場で法定12ヶ月点検を受けていたにもかかわらず、整備不良などに起因する事故が起こった場合は、ドライバーの責任が軽くなる可能性があります。
もしもの時のためにも、1年に1回は点検を受けた方が良いでしょう。
今は「愛車にできるだけ長く乗りたい」と考えている方でも、将来的は乗り換えや売却をする日がやってくるかもしれません。法定点検の義務を怠らずに「点検整備記録簿」に記載しておけば、過去のしっかりとした点検記録がわかります。
「点検整備記録簿」は点検が完了した時に点検・整備済みステッカーと一緒に渡されるメンテナンスの記録です。いつ点検を行ったのかをしっかりと記録に残しておくことで、下取りや売却での査定評価が上がることもあるでしょう。
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12ヶ月点検にかかる費用
点検にかかる費用は、軽自動車なら10,000円以内で済む場合もあります。普通乗用車の相場は、排気量にもよりますが、10,000円から高くても20,000円程度で済むことが多いです。
排気量が2,000ccの車でも30,000円を超すことはあまりないでしょう。車検にかかる大きな出費に比べれば、圧倒的に負担が少なく、メリットが大きいです。
「安全・快適に走行ができる」
「事故の時に法定責任が軽くなる場合がある」
「将来の下取り査定額が上がる可能性にもつながる」
法定点検にはたくさんのメリットがあります。きちんと点検を受けることはドライバーの義務であるだけではなく、ドライバーにとってもメリットがあります。
高額な費用がかかることなく愛車を万全の状態に保てるため、点検して損はありません。費用対効果を考えると、毎年必ず受けるようにしましょう。
法定点検を受けるのは、国から認証を受けたディーラーや、指定整備工場・認証整備工場など国が認証した場所で受けるのがおすすめです。
「認証工場」では、整備士2級以上の自動車のプロが整備主任者として運輸局に届け出されています。
認証工場で、自動車の整備のプロがしっかりと点検を行った証明として発行されるのが「点検整備済みステッカー」です。また、認証を受けた工場で点検を行うと、ステッカー以外にも「定期点検整備記録簿」が発行され、細かい点検記録が残ります。