車を所有する人にとって車検は欠かせない手続きです。安全な走行と環境保護のためにも車検は大切な役割を担っています。
この記事では、車検の基本や必要なチェック項目について解説します。
車検基準に合格しないと公道を走行できない
車を所有するすべての人にとって、車検は避けては通れない重要な手続きです。車検基準を満たさない場合、その車両は公道を走行できず、法律によって罰則が科せられることになります。
この基準は、安全運転や環境保護を目的としており、私たちの生活に密接に関わっています。適切な車検を受けることで、安心して運転を楽しめるでしょう。
車検とは
車検は「自動車検査登録制度」の略で、車両が道路運送車両法に基づく保安基準を満たしているかを確認するための制度です。これにより、自動車が安全に使用できる状態にあるかどうかがチェックされます。
車検は単なる手続きではなく、車両の適正な使用と運転者の安全を確保するための重要な点検です。
車検の主な目的は、自動車の安全性を確保することにあります。これは、単に車両の構造や性能をチェックするだけでなく、排気ガスの排出基準や公害防止に関する規制も含まれています。
このように、車検は車両の運行が環境に及ぼす影響を低減し、持続可能な社会を実現するための重要な手段です。
さらに、車検は一度の合格で終わるものではなく、各車両にはそれぞれ有効期限が設けられています。例えば、自家用車の場合、通常は2年ごとに車検を受ける必要があります。
期限を過ぎたまま公道を運転すると、法律に基づく厳しい罰則が科せられ、違反点数が6点加算され、免許停止や懲役刑、さらには罰金も発生する可能性があるでしょう。そのため、定期的な車検が欠かせません。
車検は、道路運送車両法第62条に基づき、自動車検査証の有効期限が切れた車両が公道を走るためには、所定の検査を受けることが義務付けられています。
車検では、国が定めた保安基準をクリアする必要があります。
- 灯火類の動作確認
- 制動装置(ブレーキ)の性能チェック
- タイヤの残溝と状態確認
- 水漏れや油漏れの有無
これらの基準を満たさない場合、車両は車検に合格しません。特にカスタマイズ車や古い車両では、これらの項目が厳しくチェックされるため、注意が必要です。
車検合格のために必要なポイントをしっかり理解し、対策を講じることが重要です。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
車検基準の主要項目
車検は、車両が道路で安全に運行できるかを確認するための大切な点検です。そのため、車検基準にはさまざまな項目が設けられています。
これらの基準は、車の安全性や環境性能を確保するために必要不可欠であり、特にブレーキやライト、タイヤなどの重要な機能が適切に作動しているかが厳しくチェックされます。
ここでは、車検でチェックされる主な項目を見ていきましょう。
車検では、ブレーキの性能が適切かどうかを確認するために、ブレーキテスターを用いて前後ブレーキとパーキングブレーキの2つの検査が行われます。
前後ブレーキ検査では、車両をブレーキテスターの上に置き、テスターでタイヤを回転させた状態でフットブレーキを踏み、制動力を測定。この検査により、ブレーキが十分に機能しているかが評価されます。
次に、パーキングブレーキ検査では、同様にテスターでタイヤを回転させ、パーキングブレーキをかけたときの後輪の制動力がチェックされます。
通常、パーキングブレーキは後輪にのみ作用するため、この検査は後輪で行われますが、一部の車両では前輪にパーキングブレーキがかかることもあるため、特に注意が必要です。
これらの検査を通じて、ブレーキの効果や信頼性が確保され、安全な運行が可能となります。
2024年8月から、ヘッドライトの検査方法がロービーム検査に全面移行する変更に伴い、従来の検査方法から一新され、ヘッドライトの明るさや照射角度などがより厳密にチェックされるようになります。
しかし、一部地域ではこの新基準の適用が最長2年延期されることも発表されています。
ロービーム検査で不合格となる主な原因は、まずレンズ面のくもりです。雨や雪、洗車後に残った水滴や汚れによって発生します。
次に、内部リフレクタの劣化です。長年の使用により、リフレクタが劣化し光を正しく反射できなくなります。
また、前照灯ユニットとの相性が悪いバルブの使用も問題です。バルブの種類やワット数が不適切だと、正しい光度が得られず不合格となる可能性があります。
加えて、ヘッドライトの黄ばみもチェックされます。紫外線や熱、表面の傷が原因で劣化が進行するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。ヘッドライトの表面にコーティング剤を塗布することで、汚れや傷を防げます。
検査基準が厳しくなったため、ヘッドライトに関する不具合が原因で車検に通らないケースが増えると予想されます。そのため、ロービームの光度や向きが基準に適合するように、事前に適切な整備と調整を行うことが大切です。
車検時の排気ガス検査は、車両が排出する有害物質をチェックする点検です。具体的には、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の濃度を測定します。
この検査は、道路運送車両の保安基準第31条に基づいており、基準を超えた場合は車検に通らないため、公道を走行できません。ガソリン車の場合、COの基準値は1.0%、HCは300ppmです。
検査は、専用のプローブを使用してマフラー内の排気ガスを抽出し、濃度を測定します。これにより、車両が排ガス規制を遵守しているかどうかが確認されます。
この検査は専門機器を用いて行われるため、個人で事前に調査することは困難です。排気ガスの基準を心配する方は、専門業者に車両を持ち込んでチェックしてもらう必要があります。
車検では、タイヤが車体のフェンダーからどれだけはみ出しているかが重要なチェックポイントです。具体的には、車軸中心から前方30度および後方50度の平面上でタイヤの側面の突出量を確認します。
乗用車の場合、タイヤの側面がフェンダーからはみ出している許容範囲は10mm未満と定められています。この基準を超えるとはみ出しと判断され、車検が通りません。一方、貨物車や定員10名以上の乗用車については、わずかでもはみ出していると車検に通らないため、注意が必要です。
また、タイヤ以外の回転部分に関しては、ほんの少しのはみ出しでも車検に不合格となります。ホイールやホイールキャップ、ナットがタイヤより外側に出ている場合、許容範囲はありません。タイヤやホイールの形状や装着方法に細心の注意を払い、適切な状態を保つことが大切です。
定期的に点検を行い、車検をスムーズに通過できるようにしましょう。
車検では、車体の外観に関する損傷が重要なチェック項目として挙げられます。ボディにへこみや傷がある場合、車検に通らない可能性があります。
ボディのチェックは、車両が安全に運行できる状態であるかどうかを確認することが目的です。具体的に注目すべきパーツについて説明します。
ボンネットはエンジンを保護する重要な部分であり、飛び石などによる傷が付きやすい箇所です。軽微なへこみや傷は通常、車検に不合格になることはありませんが、ボンネットが開かないほどの損傷があると、車検に通らなくなる可能性があります。
ドアに小さな傷がある場合、通常は問題ありません。しかし、ドアの開閉に支障をきたすほどの損傷があると、車検で不合格になる可能性があります。特にドアが外れそうな場合は、ただちに修理が必要です。
ヘッドライトに傷がある場合、十分な明るさが確保できず、車検に通らないことがあります。さらに、ゆがみがあると光の照射方向にも影響を与え、これも不合格の原因となるです。
バンパーの軽微なへこみや傷は、車検には影響しないことが多いですが、衝突時の衝撃吸収役としての重要性を考えると、早めの修理が推奨されます。
車両の安全性を保つためには、外観チェックを怠らないようにしましょう。
車検で気を付けたい箇所と交換時期
車検を受ける際には、いくつかの部分が正常に機能しているか確認することで、安全運転を維持し、車検を通過する確率を高められます。
それぞれの部品に対する注意点や交換のタイミングについて詳しく見ていきましょう。
ワイパーのチェックは、低速と高速の両方で行い、作動状態を確認することが大切です。
ウィンドウォッシャー液が正常に噴射されているか、拭き残しがないかも合わせて確認しましょう。ワイパーによる空拭きはフロントガラスを傷つける恐れがあるため、ウィンドウォッシャー液を使ってから点検を行うのがおすすめです。
車検では、ワイパーゴムの劣化が直接確認されるため、明らかなひび割れや脱落が見られると不合格となる可能性があります。一般的に、ワイパーゴムは1年に1回の交換が推奨されています。
バッテリーについては、通常2〜3年ごとに交換が推奨されていますが、車検の際に必ず交換する必要はありません。
バッテリーの交換は、保証期間が終了したり、弱っている兆候に気づいたときに行うのが理想的です。自分で交換するのも可能ですが、購入した店舗での交換が安心です。
エンジンオイルの交換は、車検のタイミングだけでなく、より頻繁に行う必要があります。エンジンオイルが適切に管理されていないと、パーツに過度な負荷がかかり故障の原因となることがあります。
車を良好な状態に保つためには、適切なタイミングでの交換が重要です。車検とエンジンオイルの交換を同時に行うことも検討してみてください。
ウィンカーやハザードランプなどの灯火類が正常に機能しないまま運転することは、整備不良とみなされ、保安基準に適合しなくなります。
具体的には、ランプが切れた状態で公道を走行すると、交通違反として警察に摘発される恐れがあるため、注意が必要です。
ブレーキランプやテールランプの交換時期は、白熱電球の場合、通常「新車から3〜5年後」が目安とされています。LEDランプの場合は、「新車から10〜15年ほど」使用可能ですが、最近の車両は多くが新車時からLEDを採用しているため、交換の必要性は比較的低い傾向です。
しかし、LEDにも寿命があるため、定期的なチェックを行いましょう。
タイミングベルトは、ボンネット内にエンジンルームがある車でも、側面のカバーで隠れているため、目視での点検が難しく、劣化の兆候を見逃しやすい傾向です。
タイミングベルトはゴム製で、内部にはナイロンやグラスファイバーなどの強化繊維が組み込まれていますが、経年劣化によって硬化し、亀裂が生じることがあるため注意が必要です。
このような劣化が進行すると、エンジンの性能に重大な影響を与えることがあります。
一般的には、タイミングベルトの交換は10万キロメートルごとが目安とされていますが、車の使用状況や運転スタイルによっては、この目安が変わることも。特に、欧州車やスーパーカーなどの高性能車両では、厳しい条件下で運転されることが多いため、交換のタイミングが2万キロメートルや3年ごとに設定されることもあります。
このような車両は、運転負荷が大きく、部品にかかるストレスが異なるため、定期的な点検が欠かせません。
エアコンやブッシュといった他の消耗部品も重要です。エアコンは快適なドライブを支えるために必要不可欠な要素ですが、ガスの漏れやコンプレッサーの故障が発生すると、機能不全に陥る可能性があります。
ブッシュは足回り部品などの接合部に使用されており、走行中の振動を吸収する役割を果たしていますが、これも劣化が進むと走行安定性に影響を与えることがあります。10万kmほどを目安に交換するとよいでしょう。
車検で不合格になりやすい原因
車検は車の安全性を確認する重要な制度ですが、いくつかの理由から不合格となることがあります。特に、日常的なメンテナンスを怠ることで不合格のリスクが高まるため注意が必要です。
ここでは、車検で不合格になる主な原因をいくつか挙げ、それぞれのチェックポイントや対策を詳しく解説します。これらを把握することで、安心して車検を通過できるようにしましょう。
タイヤの状態は車両の安全性に直結しており、定期的な点検と交換が欠かせません。
タイヤの摩耗や劣化が進むと、スリップやブレーキ性能の低下を招く危険性があります。そのため、車検ではタイヤの溝の深さや亀裂の有無が厳しくチェックされます。
特に、溝が1.6mm以下になると不合格となる可能性が高いため、タイヤの状態を常に確認し、適切なタイミングでの交換を心掛けることが大切です。
ヘッドライトの正常な機能は、夜間や悪天候時の走行において非常に重要です。
車検では、ライトの光量や光軸が測定されるため、ひび割れやくもり、黄ばみがある場合、光が適切に放射されず不合格になることがあります。
そのため、普段からライトの状態をチェックし、劣化が見られた場合は早めの対処が必要です。
車のフレームやマフラーに目立つ傷やサビがある場合、車検に不合格となるリスクが高まります。
特にマフラーに関しては、破損が排気量の異常や過度な騒音を引き起こす可能性があるため、早急な交換が求められます。
オイル漏れは、パッキンやシールの劣化が主な原因です。
若干のにじみであれば車検を通過できる場合もありますが、明らかに漏れが見られる場合は再検査を受けることになるため、注意しましょう。
定期的にエンジンオイルの状態を確認し、必要に応じて交換や修理を行うことが重要です。
車検を受ける際には、車検証の提示が必要です。この証明書には、車検の有効期限や所有者の情報、車体番号などが記載されており、前回の車検が合格したことを証明します。
車検証を紛失した場合、車検を受けられなくなるだけでなく、公道での走行も許可されません。もし紛失に気づいた場合は、すぐに運輸局や軽自動車検査協会で再発行の手続きを行いましょう。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
車検に通るためのポイント
車検を無事に通過させるためには、日常的な点検と整備が欠かせません。運転中に異常を感じられなくても、定期的な目視確認を行うことで、潜在的なトラブルを早期に発見できます。
車の状態を定期的に確認するための時間を設けることが大切です。特にタイヤやライト、オイルなどの重要な部品は、定期的にチェックし、問題がないかを確認しましょう。
また、車の大幅なカスタマイズは注意が必要です。保安基準に適合しないパーツを装着すると、不正改造とみなされ、罰則を受けることもあります。カスタマイズを行う際には、十分に情報を収集し、信頼できるパーツを選ぶことが大切です。
ほかにも、必要な書類を整えておくことも非常に重要で、車検証や自賠責保険証明書、自動車税納税証明書は、基本的な必要書類です。これらの書類が揃っていないと、車検そのものを受けられません。
書類を紛失した場合、再発行には時間がかかるため、事前にすべてが揃っているか確認しておくことが大切です。
さらに、過去に交通違反をした場合、未払いの反則金があると車検証が発行されないため、支払い状況についても事前に確認しておく必要があります。
これらのポイントをしっかり押さえ、スムーズに車検を通過できるよう準備を整えましょう。
車検に合格できなかった際の対処法
車検に不合格となった場合、冷静に対応することが重要です。車検に通らなかったとしても、適切な対処をすることで次のステップへ進めます。
車両の状態に応じて、再検査を受けられる場合や、場合によっては車を手放すことを検討することも一つの手段です。
それぞれの選択肢を把握し、最適な行動を選ぶための情報を集めましょう。
運輸局などに持ち込む「ユーザー車検」のメリットは、当日中であれば無料で2回まで再検査を受けられることです。この際、不合格の理由が明確であれば、再度同じ検査を受けることで合格できる可能性が高まります。
例えば、ブレーキの操作ミスなど簡単な理由で不合格となった場合、すぐに指示に従って運転操作を行うだけで再検査に通過することが可能です。
車検に不合格となった結果、再検査の項目が多く、修理費用が高額になる場合、車を売却することも一つの対策です。
特に使用年数が長い車は、新たな故障が発生するリスクが高まります。たとえ車検を通過しても、すぐに別の問題が発生し、修理費用がかさむことが少なくありません。
また、故障箇所が多く、売却しても期待できる価格が付かない場合、廃車を選択するのも一つの手です。廃車にかかる費用は発生しますが、廃車専門の業者の中には、車両に値段が付かなくても引き取ってくれるところも存在します。