自動車のオーナーは定期的に車検を通すことが義務付けられています。この車検ですが、ディーラーや整備工場などいろいろな選択肢が考えられます。
その中でも近年注目されているのが「ユーザー車検」です。自分で検査を行う方法で費用が安く、代車の必要もありません。
このユーザー車検を実施しているのが、陸運局と言われるところです。陸運局とはどのようなところか、ユーザー車検を受けるメリットとデメリットについて、以下にまとめました。
車検の受けられる陸運局とはどんなところか?
ユーザー車検を受け付けているのは、陸運局というところです。陸運局は、一般の方からはあまりなじみのある場所ではないかもしれません。
陸運局とはどのような場所なのかについて、まずは詳しく見ていきます。また、ユーザー車検以外にもいろいろな手続きを行っているので、そのことも説明しましょう。
陸運局は正式名称を「地方運輸局」といいます。
国土交通省が管轄している行政機関で、北海道・東北・関東・北陸信越・中部・近畿・神戸・中国・四国・九州の10機関によって構成されています。
ちなみに神戸だけ名称が異なり、正式名称は神戸運輸管理部です。地方運輸局には、地方運輸支局や自動車検査登録事務所の下部組織がくっついています。
陸運局は自動車に関する手続きのほかにも、海運や鉄道などほかの乗り物にかかわる業務にも対応しています。先に紹介した自動車検査登録事務所は、車検に関連する業務に特化した機関です。
陸運局は陸運支局や自動車検査登録事務所も含めて、そう呼ばれることが多いです。全て合わせると2020年2月時点で日本全国に93カ所展開しています。
陸運局では車検以外にも自動車に関する各種手続きを受け付けています。
例えば登録手続きです。新車をはじめ、まだ登録していない車を新規登録することでナンバーがもらえます。また、車の所有者や使用者の名義に関する変更(移転)登録も受け付けている機関です。車を廃車や輸出する際には、登録を抹消する必要がありますが、抹消登録も運輸局で受け付けています。
車検を通すときや車の売買時の名称変更では、車検証が必要です。もし車検証を紛失してしまった場合、再発行手続きをしなければなりません。この再発行手続きを受け付けているのも、運輸局です。
このように、運輸局ではさまざまな業務を担当していることがわかります。
車検の方法はいくつかあり、その中の一つにユーザー車検があります。
ディーラーや整備工場に検査を依頼することが多いですが、ユーザー車検は所有者自ら検査を行うのが大きな違いです。ディーラーや整備工場と比較して、かかる費用が圧倒的に安いのが魅力です。整備不良など車検に引っかからない限り1日で検査は完了するので、代車の必要もありません。
このユーザー車検を実施しているのが、陸運局です。
ほかの場所で車検をする場合、ディーラーや整備工場のメカニックが検査を担当します。しかし、ユーザー車検の場合、文字通り車のユーザーつまり所有者本人が検査を行わないといけません。そのため、検査の流れなども事前に把握しておくといいでしょう。
陸運局の窓口は、土日祝日と12月29日から1月3日を除く平日に空いています。検査申請の受付時間は午前8時45分~11時45分、午後12時45分~17時45分となっています。
平日時間の取れる人であれば、ユーザー車検も一つの選択肢になるでしょう。ただし、陸運局によっては若干開庁時間にばらつきがあるかもしれません。ユーザー車検を受けようと思っているのであれば、前もってホームページで確認することをおすすめします。
陸運局で車検が受けられるのは普通自動車です。軽自動車の場合、日本各地にある「軽自動車検査協会」が受付窓口になっているので注意してください。
陸運局で車検を受けるメリットデメリットとは?
陸運局でユーザー車検を受けるのも車検の一つの方法です。ユーザー車検を受ける場合、メリットとデメリットが両方あります。
そこで、ここでは主なユーザー車検のメリットとデメリットについてまとめました。自分にとって、プラスマイナスどちらが大きいかまずは検討しましょう。
ユーザー車検のメリットとして大きいのは、ほかの選択肢よりも費用を安くあげられる点です。印紙代に自動車重量税、自賠責保険料と法定費用だけで検査を受けられます。
代行業者にお願いした際に発生する手数料が、一切かかりません。高いところと比較すると、30,000円~100,000円程度コスト減できる場合もあるほどです。
整備工場やディーラーに車検をお願いした場合、どうしても数日間車を預けないといけません。その間、運転する必要があれば、代車を用意する必要があります。
ユーザー車検の場合、車に問題なければそのまま車を持ち帰ることが可能です。つまり代車は必要ないですし、そのための費用も捻出しなくて済みます。
ディーラーや整備工場で車検をお願いした場合、問題の起きている箇所はプロが整備してくれます。一方、ユーザー車検は検査を実施しているだけで、整備は対応していません。
もし愛車に何かしらの不具合があれば、不合格になってしまいます。この場合、必要な整備を行って改めて検査を受けなければならず、手間がかかるかもしれません。
車検とは、国の定める保安基準を満たしているかどうか検査する工程です。ユーザー車検のように自分で検査しなければならないので、ある程度の車両に関する知識が必要です。
ユーザー車検は全て検査を自分で行わないといけないため、慣れない間は手間取る可能性があるでしょう。
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ユーザー車検を受ける流れを解説
これから初めてユーザー車検を受けようと思っている方もいるかもしれません。その場合、どのような流れで車検を受けるのか気になるでしょう。
そこでここでは、ユーザー車検を受ける際の大まかな流れについて紹介します。車検を受ける前にどんな準備をすればいいのか、どう検査を受けるのかについて見ていくので参考にしてください。
ユーザー車検の場合、検査通過できるかどうかは車の状態次第です。
一発で検査に合格したければ、整備を万全にやっておかないといけません。もし車に関する専門知識があれば、自分で陸運局に持ち込む前にチェックしてみましょう。
しかし、中にはそこまで車に関して精通しているわけではないという方もいるかもしれません。自分で車検に通過できる状態かどうか確認が持てなければ、テスター屋さんに車を持ち込むのがおすすめです。
もしテスターで不適合だった場合、その箇所についてその場でできる場合は処置を施してくれます。車検に合格する確率も高まるので、不安であれば利用も検討してみてください。
数千円で利用できるところが多いです。
ユーザー車検の場合、車検の手続きに関する必要書類も自分で手配しなければなりません。書類の不備で検査を通せなかったというケースも見られます。
必要書類は以下になります。
- 車検証
- 自賠責保険の証明書
- 自動車税納税証明書
- 定期点検整備記録簿
自動車税納税証明書は、普通自動車の場合、滞納していなくて納付から3週間以上経過している場合、提出する必要はありません。
定期点検整備記録簿は、法定点検を行った際にどこにどんな整備をしたか記録されているカルテのようなものです。新車を購入したときに付属品として渡されることが多いです。もし紛失してしまったのであれば、整備振興会の窓口で購入することもできます。
陸運局でユーザー車検を受けることができるのは白ナンバーの自動車のみで、軽自動車の場合は軽自動車検査協会が窓口となります。
ここでは、白ナンバーの普通自動車のユーザー車検の流れを解説します。
ユーザー車検を受けるためには、事前予約が必要なのでこちらの手続きを済ませておきましょう。陸運局の車検予約は、原則インターネットのみです。
国土交通省のホームページにアクセスすると、自動車検査インターネット予約システムがあり、こちらで手続きを進めます。新規予約をする際には、システムを利用する際に必要なアカウント登録をしなければなりません。
アカウント登録するとIDとパスワードが発行されます。IDとパスワードは予約システムを利用する際に必要です。忘れないようにしておきましょう。
アカウント登録したら、どの陸運局で何時にユーザー車検を受けるか入力して、予約手続きは完了です。
あらかじめ予約した日時に陸運局に行き、ユーザー車検を受けましょう。当日は検査以外にも事務手続きが必要です。
まず、陸運局の窓口で「自動車検査表」「自動車重量税納付書」「継続検査申請書」を受け取り、必要事項を記入してください。
そして、自動車重量税と検査手数料を最初に支払います。現金払いではなく、印紙を購入して申請書に貼る形で支払います。
次に自賠責保険の継続加入手続きを済ませましょう。こちらは陸運局の近くに代書屋があるはずなので、こちらで行います。
受付窓口で必要書類の一式を提出し、問題がなければ、検査コースに案内されるので検査を実施する流れとなります。
ユーザー車検の費用について
ユーザー車検のメリットとして、費用がほかで受けるのと比較して安く済むということはすでに紹介しました。では、どの程度の費用がかかるのでしょう。
ここでは、ユーザー車検の費用について詳しく見ていきます。基本的には法定費用のみですが、人によっては追加費用が発生するかもしれません。
ユーザー車検でかかる費用は、基本的に法定費用だけです。
法定費用は自動車重量税と自賠責保険料、検査手数料によって構成されています。
自動車重量税は、車両の重量によって課せられる税金のことです。普通自動車の場合、500kgごとに税額がアップします。また、新車登録から13年と18年経過すると税金が高くなります。古い年式の車両の場合、税金が多くかかるということです。
自賠責保険料は、自動車損害賠償責任保険審議会という金融庁傘下の組織で決められます。よってどの保険会社でも同じ保険料になるはずです。ただし、本土と離島など地域によって料金が変わりますので、その旨注意しておいてください。
検査手数料は、小型車が1700円、普通車は1800円となっています。
ユーザー車検をクリアできるか不安な場合、テスターを利用するという選択肢があります。予備検査業者のサービスのことで、どこに問題があるかあらかじめわかります。
テスターは民間業者の行うサービスです。テスターを利用するのであれば料金が発生するので、その点は頭に入れておいてください。
ユーザー車検の中には、24ヶ月点検という法定検査もあります。しかし中には車検はユーザー車検で自分で行う一方で、24ヶ月点検は業者にお願いするという方もいます。
業者に依頼した場合、24ヶ月点検の費用を負担しなければなりません。24ヶ月点検は受けなくても車検を通すことは可能です。しかし、より安全に走行したければ、24ヶ月点検も同様に行いましょう。
ユーザー車検を受ける際の注意点
ユーザー車検は陸運局にある検査場で、自分で検査を行っていきます。検査を行うにあたってどのようなところに気を付ければいいのでしょう。
そこでここでは、項目別で検査するにあたって注意すべきポイントについてまとめました。検査を行うときに思い出してみてください。
外回りの検査では、まずタイヤをチェックしましょう。
1本でも1.6mm以上の残り溝が確保されておらず、スリップサインが出ていると車検に合格しません。また、亀裂やひび割れなど、ゴムの劣化が進んでいないかも確認してください。
灯火類がきちんとつくかどうかも、外回りの検査の中で確認されます。きちんと点灯するかだけでなく、レンズに破損があると検査に引っかかります。ヒビが入った程度で光が漏れないレベルであれば、問題ありません。
エンジンをかけると、警告灯がチカチカするでしょう。しばらくして全て切れればいいですが、いつまでも点灯もしくは点滅している場合、その箇所に問題のあることを意味します。
こちらは専門知識のない人でも事前確認できるでしょう。何か問題点はないかチェックしておきましょう。
ブレーキ検査は、案内表示されるのでそれに従って作業を進めます。
車両はそのままの状態で、サイドブレーキを解除します。その上でブレーキを踏むのですが、このときあまり強く踏みすぎないように注意してください。不合格になりやすいです。
ブレーキパッドは長年同じものを使っていると、摩耗が進みます。もしパッドの残量が3mm以下になっていると交換の時期に差し掛かっていると思った方がいいでしょう。
パッドを新しいものに交換しておくと、車検に合格する可能性も高くなります。パッドだけでなく、ブレーキフルードの交換も一緒に行うのが望ましいと言われています。
排気ガス検査とは、排気ガスに含まれるCOとHCの濃度を検査する項目です。
所定の場所に行って、マフラーにプロープを挿入します。もし排気ガスの濃度に問題なければ「○」マークが表示されるはずです。
案内表示で「印字してください」というメッセージが出てきます。近くに印字する機械があるはずなので、自動車検査票を差し込みましょう。すると自動的に印字されます。
排気ガスの濃度は、素人にはなかなか手出しできない項目です。もし心配であれば、テスター屋さんで検査をあらかじめ行っておくと安心です。
ちなみにこちらはガソリンエンジン車のみが対象です。ディーゼルエンジンは対象外なので、この部分はパスしてかまいません。
下回り検査をする場所は、確認しやすいように中央部分に穴が開いています。車両が寄ると脱輪する恐れもあるので、注意して進んでください。
停止位置まで車両を持っていくと、表示板に「エンジンを切る」や「ギアをNにする」などの指示が出てきます。その通りに車を操作しましょう。
問題ないようであれば「○」マークが表示されます。そしたら次の停止線までゆっくり車を進めてください。自動車検査票に印字する機械があるはずです。ここに検査票を差し入れて、印字してもらいます。
下回りのチェックをする際には、ドライブシャフトブーツやステアリングラックブーツがチェックされます。ここが破れていると検査がクリアできないので、前もって確認しておいてください。
また、オイル漏れや排気漏れがあると合格しませんので、オイルパンやマフラーの部分もチェックしましょう。
ユーザー車検を受ける場合、検査コースに入ることができるのは原則1人だけです。助手席に誰か同乗した状態で検査は受けられません。
初めて検査を受けるので不安であれば、近くの検査官に「初めて検査をするのですが…」と声掛けしてみましょう。そんなに忙しくなければ、検査官がマンツーマンでついてくれる場合もあります。いろいろと検査官が何をすればいいかアドバイスしてくれるので、安心です。
検査に慣れていないと、操作ミスをすることもあるかもしれませんが、操作ミスの結果、不合格になってもその場で再検査をすぐ受けることは可能です。慌てずに再検査をお願いするといいでしょう。
検査を受ける際には、車の中に入っている荷物は下ろすように言われます。少量ならいいですが、いろいろな荷物が入っているようであればあらかじめ降ろしておくようにしてください。
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