車の所有者は、定期的に車検を通すことが義務付けられています。車検は国の定める保安基準を満たしているかどうかの検査です。
もちろん、基準を満たしていなければ車検は通りません。しかし、この基準の中には微妙なものも見られるため、グレーゾーンのような項目も出てきます。
ここでは車検におけるグレーゾーンについて詳しく紹介しましょう。
車検でグレーゾーン判定が存在する理由
車検の世界にグレーゾーンがあることは、あまり広く知られていないかもしれません。そもそも車検にグレーゾーンがあるのかどうか、まずは検証していきましょう。
グレーゾーンになった場合、業者によっては不合格と判定する可能性もあります。なぜそうなってしまうのかについても併せてここで見ていきましょう。
車検は、国の定めた保安基準に基づき検査が実施されます。検査の基準は法律で定められていますが、はっきりと数値で線引きされていない項目が見られます。
このような抽象的な基準の場合、解釈が難しいです。そのため、同じ車両でも検査をする人によって合格になったり不合格になったりしてしまうことがあります。
明確に誰もが同じ判定のできないものをイレギュラーパターンと言います。ただし、そのような判断の分かれる項目でも、自分の担当する検査員が「クロ」と判定すれば、それは絶対です。
また、逆のパターンもあります。ほとんどの検査員がクロと判定するであろう車両でも、自分の車を担当した検査員が「OK」と判断すれば、それで車検は合格となるわけです。
自分の車がいわゆるグレーゾーンになった場合、一般的にクロ判定をされる傾向が見られるようです。
「判定に困ったらNG」とする検査員は少なくありません。これは「もしも合格判定にした車両が事故を起こしてしまったら…」という懸念があるからです。
検査院は保安基準適合検査に基づき、適正な販連をすることが義務付けられています。もし違法車両を合格させてのちに問題が発覚してしまうと、検査員としての資格をはく奪される可能性もあります。
そこまではいかなくても、自分が所属している会社が責任を取らされるかもしれません。会社が車検を実施する権利がなくなる恐れも出てきます。
また何らかの事故を起こした場合、被害者側から賠償請求されることもあるので、微妙なものはクロ判定にしがちです。
カスタムカーは、車検に引っかかってしまうことが多いようです。アフターパーツを取り付けることで、保安基準をクリアしているかどうかグレーゾーンになりがちだからです。
社外パーツを取り付けるにあたって、商品のパッケージなどに「車検対応品」と記載されているものも見られます。
一般的に車検対応していると言われれば、車検通過できると思うでしょう。しかし、車検対応品とかかれているパーツでも、車検で引っかかってしまうこともあります。
車検対応品は文字通り、車検に対応しているという意味です。ただし、正しく取り付けていることが前提です。
もし誤って取り付けられていると、グレーゾーン判定となってしまい検査員によってはクロ判定にされる恐れがあります。
場所別車検の審査基準について
車検の受けられる場所はいろいろとあります。ディーラーや整備工場、カー用品店、ガソリンスタンドなどです。また、最近ではユーザー車検といって、自分で検査を行う手法も注目を集めています。
実はどこで検査を受けるかによって、同じ車両でも結果が分かれることがあります。そこで、ここでは検査する場所と合格率についてみていきます。
車検の受けられる場所はいくつか選択肢があります。しかし、大きく分けて国で検査をお願いする場合と民間で検査を受ける2パターンに分類できます。
国の検査とは、国の用意する検査場で車検を受ける方式です。国の検査官が車両をチェックし、基準を満たしているかどうかをチェックします。
民間の検査とは、ディーラーや整備工場に車検をお願いするパターンです。ディーラーや整備工場の中には国からの認可(指定)を受けて、検査することが許されているところも少なくありません。
工場には、自動車検査員の資格を保有する整備士がチェックします。もし基準を満たしていなければ、整備をしてくれるのが国の検査場との違いです。
国と民間を比較すると、車検の判定に違いの生じることもあります。
一般的に民間の方が国と比較して、検査に通りにくい傾向があると言われています。なぜなら、民間にはプレッシャーがかけられているからです。
民間の工場が車検のできるのは、国から指定工場の認可を受けています。もし適合していない車両を誤って合格させてしまうと、指定工場の資格を取り上げられるなど厳しいペナルティを課せられる恐れがあります。
そこで、基準に適合しているかどうかグレーゾーンな場合、慎重にクロ判定にしてしまいがちなのです。
実際工場で「これでは車検に受からない」と言われていた車両を国の検査場に持ち込んだところ、何も言われなかったという話も聞かれます。
車検の結果について不満を抱いている方も少なくありません。ネットなどでは以下のような話が見受けられました。
「前回は合格だったものが今回は不合格になると言われてしまった」
「車検対応品とかかれている商品を使ってカスタマイズしているのに合格できないと指摘された」
もし車検が不合格になると、必要な整備や修正をしなければなりません。工場に整備をお願いするとなると、別途でこちらの費用もかかってしまいます。
そうなると、不満を抱く車のオーナーも出てくるのは無理もありません。もし不合格だと言われた場合、なぜいけないのか説明を求めましょう。
不合格になるのは明確な理由があるはずです。グレーゾーンで不合格にされているのであれば、別のところで車検を受ければ合格する可能性も出てきます。
カスタムカーでも車検の基準に適合しているパーツを使っているのであれば、車検に合格します。しかし、細かくチェックすれば合格でも不合格にされるかもしれません。
特にディーラーの場合、純正ではないパーツが付けられているカスタムカーの車検を嫌がる傾向が見られます。
細かく見れば合格ということは、それだけ調べるのに「手間をかけない」ということです。それだけコストもかかりかねませんし、時間がかかるので作業効率もダウンしてしまいます。
ディーラーによっては、カスタムされた車の車検を断るケースもあるようです。その場合にはカスタマイズに強い整備工場で検査を受けるか、ユーザー車検で自分で検査するなど、別の方法を検討した方がいいでしょう。
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車検グレーゾーンで注意したいポイント
ここまで紹介してきたように、車検の検査項目の中にはグレーゾーンのところもあります。では、具体的にどのような項目がグレーゾーンになるか気になる方もいるでしょう。
そこで、ここではグレーゾーンになって判断の分かれがちな項目について、いくつかピックアップしてみました。
これから車検を通そうと思っているのであれば、以下の項目に注意してください。
ルーフキャリアの保安基準について
キャリアやルーフボックスを取り付けている場合、車検の基準に引っかかる可能性があるので注意が必要です。
保安基準によると、車検証に記載されたサイズの全長3㎝、全幅2㎝、全高4㎝の誤差なら容認範囲です。
またキャリアやルーフボックスを取り付けると、その分車両重量もアップします。重量も車検の対象で軽自動車や小型自動車なら50㎏、普通自動車は100㎏の範囲であれば、車検通過可能です。
ただし、上で紹介した基準をオーバーしていても、ボルトで取り付けられている場合、検査をクリアできます。それは簡単に取り外しができるからです。
一方、リベットや溶接で止めてしまって、上の基準をクリアできていないと車検で引っかかります。検査前に取り外すか、構造変更申請の手続きをしておかないといけません。
車検の重量の誤差の範囲について
1995年に自動車部品の規制緩和が実施されました。その結果、カスタムカーの容認範囲がかなり広がったと言われています。
ただし、車検で一定のサイズに収まっていないと、クロ判定にされてしまいます。カスタムパーツをいろいろと付けた結果、重量オーバーにならないように注意が必要です。
重量の基準ですが、車検証に記載されている重量からプラスマイナスどのくらいになっているかで決まります。また、ナンバーによって許容範囲が変わってくるので注意しましょう。
軽自動車や5ナンバーであれば50㎏までです。3ナンバーの車両であれば100㎏のプラスマイナスまでなら認められます。
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車検基準と窓ガラスの関係
窓ガラスにスモークガラスなどを貼っている車両を所有している方もいるでしょう。窓ガラスが黒っぽくなるので、車内を見られる心配もなくなるため人気です。
このスモークガラスは、車検に引っかかる恐れがあります。ただリアガラスに貼っている分には問題ありません。
フロントガラスとフロントドアガラスについては基準が設けられています。透過率70%以上を確保することが必要となりますが、この透過率70%というのもグレーゾーンになりがちです。
70%以上の透過率をクリアするためには、ほとんど透明のようなフィルムでなければなりません。スモークガラスのような色付きのフィルムは、まず車検通過させるのは難しいでしょう。
フロントには何もフィルムを貼らないのが賢明です。
バンパーの車検基準
カスタムカーの中にはバンパーの部分を改造している車両も少なくありません。しかし、どんなバンパーを取り付けているかで、車検通過できるかどうか変わってきます。
バンパーの場合、車の全長の基準をクリアしているかどうかがポイントになります。車検証に記載されている車長から3㎝の誤差であれば問題ありません。
マフラーを改造している車両もあるでしょう。こちらも同じ車長の基準をクリアする必要があります。
これに加えて、マフラーの形状も検査の中ではチェックされます。もしマフラーの先端がとがっていると突起物扱いにされ、長さや音量に関係なく車検に引っかかるかもしれないので注意してください。
車検基準とタイヤの摩耗について
タイヤの状態についてもグレーゾーンなところがあるので、注意が必要です。タイヤが劣化してひび割れや傷ができているかどうか、目視でチェックされます。
ひび割れや傷がどの程度かによって、判断が分かれる場合もあります。軽微な傷やひび割れでもクロ判定にされる恐れもあるので、注意しましょう。
タイヤの摩耗の程度も検査項目です。こちらはスリップサインができているかどうかで判断されます。スリップサインは溝の深さが1.6㎜を切ると現れるようになっています。
タイヤが劣化していないかどうか、車検に出す前に自分の目でチェックしておくといいでしょう。
車検基準とライトの関係
ライトの状態も車検ではグレーゾーンになりがちで、検査員によって判断が分かれるかもしれません。ライトの場合、光量だけでなく色に関する規定もあるので注意してください。
まず、前方10メートルを照らすにあたって、カットオフされるエルボー点(カットオフの祈れ曲がっている点)が規定の位置にあるかどうか確認されます。
さらに1灯当たり6,400カンデラ以上の光量が確保されていることも条件です。
ライトそのものに問題がなくても、カバーが汚れていることでクロ判定にされてしまうこともあり得ます。
黄ばみがあって光量不足と判断されるケースもあるため、注意が必要です。カバーの黄ばみを改善するために、ヘッドライトを研磨して黄ばみを除去して光量を回復させる手法なども有効です。
そのほかにも、カバーにひび割れがあるとクロ判定される恐れもあります。
ライトの状態についても車検に出す前にチェックしておきましょう。
車検基準と車高
改造車の中には、車高を低くカスタマイズしている車両もあるでしょう。あまり車高を低くしすぎてしまうと、車検に引っかかる可能性が高まります。
車高とは、地面から車体までの高さのことです。車体については、前輪と後輪の中間地点を基準点にします。
もしこの車高が9㎝未満であれば、車検では不合格扱いにされてしまいます。この条件を満たしていないのであれば、既定の高さに戻しておきましょう。
ただし、こちらの条件もすべての車両に適用されるわけではありません。アンダーカバーが下回りについていると判断が変わってくるので、心配であればディーラーの担当者などに確認しておくようにしてください。
車の全高が変わるようなカスタマイズをしている場合、車検に引っかかる恐れがありますので注意してください。
基本的に車検証の記載されている全高よりも4㎝以内の誤差であれば、そのまま車検を通せます。
小型自動車の場合、全高は2.0メートルを上限としています。もし2.0メートルを超えるようなカスタマイズをしていると、小型自動車として車検を通せなくなるので注意が必要です。
全高が変わってしまうのは、リフトアップやローダウンのカスタマイズをしたときが考えられます。
また、意外に注意しなければならないのは、タイヤ交換をしたときです。従来と異なるサイズのタイヤを装着すると、全高も変わってしまいます。車検に引っかかりたくなければ、同じサイズのタイヤに交換するのがおすすめです。
マフラーをカスタマイズすると、車検に引っかかる恐れが高まります。マフラーはチェック項目がほかのパーツと比較していろいろとあります。
排気音が普通車100デシベル・軽自動車97デシベル以下が基準です。また、取り付けるのは地面から9㎝以上の高さが確保されていなければなりません。
排ガス濃度についても基準が設けられています。炭化水素300ppm以下で一酸化炭素1%以下が基準です。
ほかにもマフラーに穴が開いているなど問題が見られれば、車検に引っかかります。
このように細かな基準が設けられているので、事前にチェックしておきましょう。
ナンバープレートにカバーする車両が増加したことがありました。ドレスアップ目的のほかにも、文字が読み取りにくくなるのでスピード違反の摘発を免れるなど社会問題化しました。
そこで何度か変更されたのが、ナンバープレート表示に関する基準です。ちなみに、2021年10月1日以降に新規登録される車に対して、規定が変更される予定です。
まず、2016年の改正によってナンバープレートカバーの装着は禁止となりました。たとえ色付きではない透明のカバーでもNGです。
さらに2021年の変更で、前後のナンバープレートの装着する位置や角度についても細かな規定が付きました。カバーを付けてなくても誤った装着で引っかかる可能性があるので、注意しましょう。
クラクションも保安基準が設けられています。クラクションがただ鳴れば問題なしというものではないので、注意しておきたいところです。
一定の音量で出ているかどうか、音量が十分か確認されます。前方7メートルから93~112デシベルの音量がなければ、車検を通過できません。
もしエアホーンなど、音が変化するものを取り付けていると引っかかる可能性があります。また、ヒューズが切れているなどで音が鳴らなくなっている可能性もあるので、クラクションがきちんとなるかどうかあらかじめ確認しておくといいでしょう。