作業用のライトを装着して公道を走っている車を見かけたことがあるという方もいるかもしれません。それでは、車の屋根にルーフマーカーを装着した状態で車検には通るのでしょうか?
ルーフマーカーは法令上「その他の灯火等」に分類され、装着自体は自由にできますが、装着部位ごとのルールには従わなければなりません。
そのため、事前に車の屋根(ルーフ)に装着する場合のルールを確認しておく必要がありますので、詳しく見ていきましょう。
ルーフマーカーは車検に通る?通らない?
ルーフマーカーとは、車のルーフ(屋根)につける灯火のことです。
法令上の明確な定義はありませんが、屋根に設置できる灯火の種類としては、「作業灯」か「ファッション性の強い灯火」のいずれかになり、ルーフマーカーと呼ぶ場合は後者にあたることが多いです。
ルーフマーカーの法令上の具体的な位置づけや取り扱いなどを踏まえた上で、車検に通るかどうかを説明していきます。
車の灯火・ライト・ランプ・マーカーの違い
車の「灯り」には、灯火・ライト・ランプ・マーカーという名称があります。
これらは用途やニュアンスによって細かく使い分けられています。
それぞれの違いについて詳しく説明します。
まず「灯火」という言葉があります。これは国土交通省が定める「道路運送車両の保安基準」で使われており、以下の21種類があります。
- 前照灯(ヘッドライト)
- 前部霧灯(フォグランプ)
- 側方照射灯
- 低速走行時側方照射灯
- 車幅灯(スモールランプ)
- 前部上側端灯
- 昼間走行灯
- 側方灯
- 番号灯
- 尾灯(テールランプ)
- 後部霧灯
- 駐車灯
- 後部上側端灯
- 制動灯(ブレーキランプ)
- 後退灯(バックランプ)
- 方向指示器(ウインカー)
- 補助方向指示器
- 非常点滅表示灯
- 緊急制動表示灯
- 後面衝突警告表示灯
- その他の灯火等
後述するライト・ランプ・マーカーも全てこれに含ます。そして、どの灯火もそれぞれ設置時の位置、色、数などが決まっています。
「ライト」には特に定義はありませんが、ニュアンスとしては「前方を照らす」照明器具を指すことが多いです。
また、次項で挙げるランプと同じ意味で使われることもあります。
「ランプ」の定義も曖昧ですが、ライトのように前方を照らすものではなく、発光することによってドライバーに注意を促す「警告灯」を指すことが多いです。
「マーカー」は、「マーカーランプ」とも呼ばれています。ランプと同じ意味で発光によってドライバーに注意を促すものが多いです。
調べてみると「マーカー」という言葉を、より狭い意味で「トラックの側方灯」として用いていることもありますが、これは保安基準上の正式な用法ではありません。なぜなら、ルーフマーカーはルーフ(屋根)に取り付けるもので側方につけるものではありません。しかし、一般的には側方灯もマーカーの一種とされています。
屋根を含み、マーカーはトラックの装飾のために使われることも多いです。そのため、「自由に着脱可能なランプ」という意味も含んでいると言えます。
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マーカーの設置基準について
ライト・ランプ・マーカーを含む「灯火類」は全て、設置場所・色・明るさなどが定められています。
ただし、マーカーだけは「その他の灯火等」に分類されます。
ルーフマーカーは、保安基準上の「その他の灯火等」に分類されるため、「その他の灯火等」の設置基準に基づいた形で設置しなければなりません。
しかし、この設置基準が独特なので、注意する必要があります。
「その他灯火等」の装着については明確なルールがありません。しかし、道路運送車両の保安基準第42条には「ヘッドライト、ウインカー、ブレーキランプ、テールランプなどと類似したものをつけてはいけない」という禁止事項だけはあります。
つまり、具体的な設置場所・色・明るさ・数などの設置基準が具体的に示されていないということです。
一見すると自由に取り付けて良さそうですが、実際にはそれ以外のルールにも合わせる必要があります。
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〈第二節〉第140条を見ると、「その他の灯火等」が最低限どのようなものでなければいけないかが分かります。その条件を整理すると以下の通りになります。
- 赤色以外である
- 青紫、黄緑色はフロントガラス以下の高さに設置する
- 点滅しない
- 明るさが変化しない
- 眩しすぎない
- 明るさは「300カンデラ」以下である
車のルーフ(屋根)への設置が認められている「灯火」について
ルーフマーカーが車検に通るかどうかは、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示〈第二節〉第140条の基準の中で車の屋根(ルーフ)に「その他灯火等」を装着することが認められているかどうかです。
ここからは、車のルーフ(屋根)への設置が認められている「灯火」について説明していきます。
ルーフ(屋根)につけられるのは「作業灯」のみ
車のルーフ(屋根)に設置可能な灯火は、「作業灯」のみと決められています。よって、ルーフマーカーを設置して車検に通るかどうかは、ルーフマーカーが作業灯の条件に該当するかどうかによるでしょう。
法令上、作業灯として認められる条件はいくつかあります。それは以下の3つです。
- 運転中に操作ができないこと
- 走行中に点灯してはいけないこと
- 作業灯を設置しても車の高さが大きく変わらないこと
それぞれの条件について詳しく説明します。
道路運送車両の保安基準では、作業灯の条件として以下のいずれかが挙げられています。
- 灯火スイッチが運転者席から離れた位置に独立して設置されているもの
(作業灯本体にスイッチがついているタイプや外部電源と接続するタイプ) - 運転者席において点灯状態を確認できる装置を備えたもの
(パイロットランプ等がついていて点灯状態を確認できる)
つまり、運転席の周辺にスイッチを置いてはいけませんし、点灯しているかどうかを運転席から確認できなくてはいけないということです。
作業灯は、運転中完全にノータッチとなる形で取り付ける必要があり、前照灯のように運転の補助に使ってはいけません。
では実際にはどう取り付けるかというと、ポータブル電源など外部電源との接続が必要です。電源を車のバッテリーに直接つないでいると、車検の際に不適合と見なされて取り外されることになるでしょう。
保安基準には、「作業灯は走行中に使用しない灯火でなければならない」旨が記されていますが、実際には誤作動で点灯することも考えられるので、走行中はカバーをかけるなどの措置をとるのがベストでしょう。
作業灯など後付けの灯火類は、基本的に「ドライバーの視界確保」「対向車に眩しく感じさせない」「歩行者の保護」の観点から規定されています。そのため、走行中の点灯の禁止は対向車や歩行者を守るためのものと言えます。
作業灯は、取り付ける位置については特に要件はありません。しかし、車体からあまりに突出した形で取り付けると車検に通らない可能性があります。
では、どのくらいなら突出しても許されるのかというと「高さ4センチ」が基準です。
もっとも、ルーフマーカーによっては高さ4センチをオーバーしてしまうものもあり、その場合は「構造変更」の手続きが必要になります。
構造変更とは、通常では車検に通らないような改造車を車検に通すための手続きです。
改造車と聞くとルール違反のようなイメージがあるかもしれませんが、実際には保安基準に合致している指定部品を使えば改造(カスタマイズ)しても良いことになっています。その上で構造変更手続きを行えば、車検にも通るでしょう。
指定部品の取り付けによって構造変更が必要になる条件は、「保安基準に抵触する場合」「部品を溶接などで固定した場合」などです。高さ4センチを超えるルーフマーカーは、これに該当します。
ルーフ(屋根)に「補助灯」はつけられない
「作業灯」と同じような意味合いのものとして、フォグランプなどのようにヘッドライトを補助する「補助灯」がありますが、これはルーフ(屋根)につけられません。
その理由について「補助灯」の設置条件を確認しながら説明していきます。
保安基準上は「補助灯」という言葉についての規定はありません。
Webサイトなので補助灯の設置基準を説明している文章を見てみると、「前部霧灯」つまりフォグランプについての規定を解釈していることが多いです。そのため、ここでも「前部霧灯=補助灯」という形で説明します。
規定によると、補助灯を取り付けられる位置の条件は以下になります。
- 地上から800ミリ以下であること
- 補助灯の上縁がヘッドライト上縁部を含んだ水平面以下であること
- 補助灯の下縁は地上から250ミリ以上の位置にすること
- 補助灯本体は車両の最も外側から400ミリ以内に収めなければならない
この位置関係でいくと、ルーフ(屋根)に補助灯をつけられないのは明らかです。
補助灯は保安基準上、灯火の色、数、明るさについいてもルールが決まっています。
「色」については、白色か黄色(淡黄色)となっており、その上白と黄色を混在させてはならず、必ずどちらか一方に統一する必要があります。
「数」については、取り付けるだけなら何個でも問題ありませんが、同時に点灯させられるのは2個までと決まっており、補助灯を同時に3個点灯させられるような構造で設置すると違反になります。
「明るさ」については、点滅する仕組みのものは補助灯としては使えません。また点灯した際も、他の車の交通を妨げないことが条件です。
補助灯は操作・調節を行う「装置」についても制限があり、照らす方向が左右に調節できないようにしなければなりません。
また、操作する装置の位置についても、運転席で簡単に操作できることや、検査の時にどう操作すればいいのか分かりやすいことが必須条件です。
ルーフ(屋根)にファッションとしてはつけられる
前項までの内容から、車のルーフ(屋根)に灯火を設置する場合は、補助灯としてではなく、あくまでも作業用という建前が必要だと分かります。
見方を変えれば、実際にはファッションのためだとしても、作業用としての条件に合えばいいのです。実際、ファッションやアクセサリーとして取り付ける灯火類は「その他灯火等」に分類されます。
ただし、いずれにせよ装着によって車の高さが4センチを超える場合は構造変更の申請が必要です。
ルーフマーカーは車検に通らない可能性もある
結論として、ルーフマーカーは、設置の仕方によっては車検に通らないこともあります。
車の屋根に灯火を設置するなら「作業灯」としてでなければならず、その設置要件を満たさなければいけません。
ただし、設置によって車高が4センチ以上高くなる点については、構造変更を申請する方法があります。申請が認められれば車検も通るでしょう。
とはいえ、ここまで書いた内容は、保安基準について一般的に流布している断片的な解釈を繋ぎ合わせたものです。「ルーフマーカーは車検に通る・通らない」「どうすれば車検に通るか」について明確な定説や定義はありません。
ルーフマーカーを設置した車両自体が多くないこともあり、車検時は検査員によってケースバイケースで判断されることもあるようです。
そのため、保安基準を満たしているか否かについては事前に自分でしっかり確認し、検査員に質問されても答えられるよう理論武装する必要があるでしょう。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
ルーフマーカーを車検で通す方法とは?
ここまでで、ルーフマーカーつきの車が車検に通るかどうかについて、保安基準と照らし合わせてどのように考えたらいいのかを説明しました。
ここからは、ルーフマーカーつきの車を車検に通すにはどうすればいいのか、その方法について説明します。
ルーフマーカーは、運転中に操作できない構造で設置するのが原則です。乗員に操作する意図がなくても、運転中にオン・オフが切り替えられる形でスイッチが運転席周辺に設置されていてはいけません。
同時に、運転中に点灯しないように設置することが必要です。
運転中の操作ができない構造になっていても、例えば、車のバッテリーに接続しており走行中に自動的に点灯するようになっていると、車検には通らないでしょう。
さらに、前述の内容をクリアしていても、走行中に誤作動で点灯する可能性もあるので、走行中はカバーをかけるようにするのがベストです。
この点は車検と直接関係ありませんが、走行中に点灯していると取り締まりの対象になるためです。
作業用の灯火の「作業」とは、走行時のものではなく、駐車している際の車外での作業のことを指すと考えていいでしょう。この条件に合致しないと、車検に通らない可能性があります。
作業灯は「運転中に使えない」ことが大前提ですが、少し条件が曖昧なのが「高さ」です。
まず原則的に、車の屋根に灯火を装着する場合は、装着しても車高が4センチを超えないものでなければなりません。
では4センチを超えると絶対に無理なのかというと、構造変更の申請をすれば大丈夫です。
ただし、構造変更が認められるには「指定部品」を使っていなければならず、手続きも時間がかかるので注意しましょう。
また、無事に構造変更が認められても、車検時に検査員による解釈の違いや、その会社の社内規定などにより車検が通らないこともあるようです。そうした場合に備えて、きちんと説明できるように内容を把握しておく必要があるでしょう。
ルーフマーカーが原因で警察に取り締まりを受けるケース
最後に、ルーフマーカーが原因で警察の取り締まりの対象となるパターンとしてどのようなものがあるのか確認しておきましょう。
「明るさ」と「走行時の点灯」の観点から説明していきます。
「その他灯火等」は、明るさについて「光度300カンデラ以下」と規定されています。これは灯火ひとつあたりの光度で、例えば300カンデラ以下のルーフマーカーを複数個つけるのは問題ありません。
しかし、保安基準の別項の規定で、こうした灯火類は、他の車にとって眩しくないものでなければならないとも定められています。この「眩しさ」については明確な基準がありません。
ルーフマーカーは走行中の点灯が禁止されているので、この決まりを守っていれば、走行中に「眩しさ」が原因で取り締まられることはないでしょう。
しかし、うっかり点灯したまま走った上に、明るさも極端に眩しいものだと、違反の上塗りとなるので要注意です。
前項の内容とも重なりますが、公道を走行中にルーフマーカーを点灯させていると捕まります。
これはホイールマーカーや、いわゆるデコトラの電飾なども当てはまります。