ディーゼル車は、排気ガス検査がない点がガソリン車と大きく異なるので、車検を受ける際は注意しましょう。
この記事では、最初にディーゼル車の検査の手順や検査方法、車検に関する注意点を説明します。もし車検が不合格だった場合は高額な部品交換が必要になります。そうした内容も踏まえて、日常的なエンジンの扱いやメンテナンスはどうしたらいいのかについても解説します。
また、クリーンディーゼル車についても説明するので参考にしてください。
ディーゼル車を車検に出すときのポイントは?
ディーゼル車に搭載されているディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりも走りがパワフルなことから、トラックなどでよく使われています。
ただ、ディーゼル車はエンジンや燃料が独特なため、以前から環境への配慮が課題になっていました。そのため、車検でも排気ガスが問題になることがあり、これが原因で不合格になるケースも多いので注意が必要です。
そもそもディーゼル車とは?
車の燃料と言えばガソリンが一般的ですが、軽油で動くのがディーゼル車になります。
燃料を燃やすときにガソリンエンジンは点火プラグによって着火するのに対し、ディーゼルエンジンは圧縮されて高温になった空気へ燃料を噴射します。
この方法だとガソリンよりも燃料の消費量が少なく済みます。その上、低回転域のトルクの太さからパワフルに走行が可能なのもディーゼル車の魅力と言えるでしょう。
また、ひと昔前はディーゼル車と言えば「排気ガスが有害」というイメージが一般的でしたが、現在は技術の向上により、有害な排気ガスの排出を抑制する「クリーンディーゼルエンジン」も登場したことから、そうしたイメージも払拭されつつあります。
地域にもよりますが、軽油は、1リットルあたりの価格がガソリンより10~20円安いです。これによる燃費の良さもディーゼル車の大きな特徴です。
ディーゼル車にはいくつかのメリットがありますが、特筆すべき点は燃費を含む維持費が安く済むことです。ディーゼル車で使用する軽油はガソリンよりも安価です。
パワフルな加速感も大きな魅力となっています。排気量を大きくできないガソリンエンジンと異なり、ディーゼルエンジンは燃料を燃焼させる際の仕組みの違いからいくらでも排気量を大きくできます。そのため、トラックやバスなどの大型車にディーゼルエンジンはうってつけです。
また、以前のディーゼル車は走行中の振動やカラカラという音を不快に思うドライバーも多かったのですが、今はクリーンディーゼル車の登場によってそれも改善されました。ディーゼル車の乗り心地は格段にアップしています。
クリーンディーゼル車については、エコカー減税による優遇措置を受けることが可能です。環境性能割、自動車重量税、自動車税が免税される措置が2023年4月まで続くことになっています。
メリットがある一方で、ディーゼル車にはデメリットもあります。
まずは、新車で購入した際の価格の高さです。ガソリン車と比べると、高圧縮比に耐えうるだけの強度などが必要なことからディーゼル車の製造コストは高額です。
ディーゼル車は燃料・車検の費用は安いですが、メンテナンス費用は高めとなっています。
特にエンジンオイルの交換時期となる走行距離が、ガソリン車はおおよそ5,000km〜10,000kmなのに対し、ディーゼル車は3,000km~5,000kmが目安となっています。また、エンジンオイル自体がガソリン車より高額です。
それに加えて、排出ガスを浄化するためのアドブルーと呼ばれる液の定期的な補充も必須になります。さらに、軽油はガソリンと比べて凍結しやすいため、寒冷地では管理に注意する必要があります。
そして、ディーゼル車は、新車登録してから10年が経つと自動車税が1割プラスとなります。ガソリン車の重課のタイミングは登録後13年なので、ディーゼル車は長く保有すると維持費がかさむと言えるでしょう。
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ディーゼル車とガソリン車の違い
ディーゼル車とガソリン車の大きな違いは、エンジンと燃料です。他にも車検時のチェック項目や、燃料の点火方式などの違いもありますが、それらは全てエンジンと燃料の違いに起因します。
車検に関連する最も大きな違いは、排ガス検査の内容です。厳密には、ディーゼル車にはガソリン車のような排ガス検査の項目は存在しておらず、ガソリン車よりもさらに厳しい基準で、入念な方法で検査を行うことになっています。
以下では、「黒煙検査」ならびに「オパシメーター検査」という、ディーゼル車独特の検査の内容を説明します。
多少専門的な内容になりますが、ディーゼル車が車検に落ちる原因の大半なので、覚えておきましょう。
ディーゼル車とガソリン車の大きな違いのひとつに、車検の際の「排気ガス検査」がディーゼル車にはないことが挙げられます。
ガソリン車の場合は、排気ガステスターという機器を使ってマフラーから出る一酸化炭素と炭化水素の濃度を測定します。
一方ディーゼル車で行われるのは「黒煙検査」あるいは「オパシメーター検査」のいずれかです。これによって、排気ガス内のPM(粒子状物質)や軽油の未燃焼成分にあたる可溶有機成分の値を測定します。
ディーゼル車は、ガソリン車よりも排気ガスの測定基準が細かく、測定も入念に行われます。
かつてのディーゼル車では黒煙を測定する黒煙検査のみが行われていましたが、排ガス規制の強化を受けて、新しく使われるようになったのがオパシメーターと呼ばれる機器です。
現在は黒煙検査ではなく、オパシメーターで青煙を測定する方法が主流です。もちろん普通の車検では検査官が検査を行いますが、ユーザー車検を行う場合などは覚えておくといいでしょう。
ディーゼル車は排気ガスが原因で車検に落ちやすい
ディーゼル車は、ガソリン車よりも長距離運転で使われることが多いことから、排気ガスが原因で車検に落ちることがよくあります。特に、購入してから時間が経った、いわゆる低年式車は注意が必要です。
車検に落ちた場合は、燃料噴射ポンプ(インジェクションポンプ、インジェクター)を交換するなど根本的な改善が求められます。この場合、高額の修理となるので車検費用のこともあわせて考えると、買い替えも選択肢のひとつに入ってくるでしょう。
排気ガスが原因でディーゼル車が車検に落ちた場合、燃料噴射ポンプ(インジェクションポンプ、インジェクター)の交換が必要になることがあります。
では、燃料噴射ポンプとは何なのか、交換費用はどのくらいかかるのかを説明します。
ディーゼル車の燃料噴射ポンプ(インジェクションポンプ、インジェクター)は、圧力をかけて燃料を噴射する機器です。これが劣化していたり、壊れたりしているとエンジンの作動に影響を及ぼします。
仕組みとしては、燃料ポンプから圧力をかけてインジェクターを開いてやり、燃料を噴射するというものです。動かす時に、故障などが原因でポンプからの圧力が弱くなると、噴射がうまくいかなくなり、車検にも落ちることになります。
ただし、これは今までの一般的なディーゼル車の話で、現在はクリーンディーゼル車の普及によってディーゼルとインジェクターがワンセットになっているコモンディーゼルというシステムが主流になりつつあります。
燃料噴射ポンプを交換するとなると費用もかなり高額になります。
1本2万円以上ということも多く、これが4気筒エンジンの場合は4本必要です。6気筒なら6本となるので、合計10万円超えもありうるでしょう。
これが電子制御初期のエンジンの場合だと、シングルポジションインジェクションといい、交換するのは1本だけで済むこともあります。しかし、現在はほとんどがマルチポイントインジェクションという複数本使用する仕組みになっています。
ディーゼル車はメンテナンス費用がかかる
自動車税や任意保険の掛け金、そして車検費用は、ディーゼル車とガソリン車で大きな違いはありません。燃料も軽油のほうが安くていいのですが、ディーゼル車はメンテナンス費用が高くつくことを覚えておきましょう。
まず、ディーゼル車はエンジンオイルが高額で、交換サイクルがガソリン車よりも少し早めです。さらに車種によってはアドブルー(尿素水溶液)を定期的に補充する必要があり、お金がかかります。
また、ディーゼル車は10年経過すると自動車税が約15%がプラスされます。
しかし、こうした面をあわせてトータルで考えても、全体的な維持費の安さはガソリン車よりもディーゼル車のほうが勝っていると言えるでしょう。
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ディーゼル車の車検前にできるセルフチェック
ディーゼル車を車検前にセルフチェックする場合は、まず排気ガスに注意しましょう。
空ぶかしをして黒煙が出るならエアクリーナーを点検してみましょう。また、アンチスモーク系の商品を使う場合は効き目が遅いので、チェックは早めにしましょう。
ディーゼル車のその他の注意点
車検前にできるセルフチェック以外にもディーゼル車ならではの注意点は複数あります。
以下の説明を参考にしながら事前にセルフチェックしておくと役立つでしょう。
ディーゼル車は、新車登録してから11年目になると自動車税や自動車重量税に加えて車検代も高くなります。
ディーゼル車がこのような扱いになっているのは、年式の古い車の排気ガスは環境に与える影響が大きいからです。
さらに2003年以降に製造販売されたディーゼル車の中には、排ガスをクリーンにするフィルターが装着されています。これも交換となると1回で最低20万円以上かかることが見込まれるので、注意する必要があります。
ディーゼル車の扱いでもう一つ気を付けたいのが、「自動車NOx・PM法」との関わりです。
自動車NOx・PM法とは、1992年に制定された特別措置法で、ディーゼル車から排出される窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の基準値が定められています。
この法律は適用地域がそれぞれ異なります。そのため、別の地域に引っ越してディーゼル車を車検に出したところ不合格になってしまった、ということもあるので注意が必要です。
さらに車検時のみならず、引っ越しに伴う車検証の住所変更などを行った際にNOx・PMの値が不適合だと判明すれば、その時点で車に乗れなくなります。
ディーゼル車の引っ越しの際は、環境省ホームページで適用地域などを確認しましょう。
ディーゼル車は、ディーゼルエンジン専用のオイルを使わなければなりません。
軽油は燃焼するとエンジン内部が腐食しやすいという特徴がありますが、その原因になる硫黄酸化物を中和するため、オイルにアルカリ分が添加物として多く含まれています。
さらに、ディーゼル車の中でも使えるオイルが異なるものがあります。それは乗用ディーゼル車用のDL(ディーゼルライト)と大型ディーゼル車用のDH(ディーゼルヘビー)の2種類です。
特に乗用ディーゼル車用のDL(ディーゼルライト)は、環境に優しいクリーンディーゼル車で使われます。
また、少し専門的な話になりますが、BMWブルーパフォーマンスカーのエンジンオイルは、通常のものを使うとDPF浄化フィルターが目詰まりを起こす恐れがあるため、専用のものを用意しなければなりません。
こうした理由からディーゼル車のオイルの管理は、オイル交換を業者に依頼する場合でも、きちんとした知識を持っているところに頼む必要があります。
ディーゼル車に限った話ではありませんが、日常的に車を運転する中で、エンジンの摩耗にも注意が必要です。
具体的にどのような点に注意すればいいのか、また摩耗を防ぐにはどうすればいいのかを以下で解説します。
エンジンの摩耗を防ぐためにも、極端な低回転・高回転のどちらも避けましょう。
一見、低回転のほうがエンジンを激しく使わないので摩耗を抑えられて良いように見えますが、低回転での長期間の使用は油圧系のトラブルの一因になります。
また、低回転で使い続けるとスラッジ(オイルの燃えカスとカーボンが混ざったもの)が溜まるので、エンジンに悪影響を及ぼします。
だからと言って、高回転だけで使い続けるとエンジンの摩耗は免れません。
最も正しい使い方は「普段は低燃費で使いつつ、ときどきエンジンを高回転させる」ということです。エンジンは低回転で摩耗を防ぎつつ、たまに高回転させることでスラッジを燃やし切ることができます。
エンジンは適度に回転させるようにしましょう。
車の構造上、ディーゼルエンジンは、燃料の燃焼時に粒子状物質(PM)というススが生じます。これは、最終的に黒煙除去フィルタなどによって処理されるものの、エンジン内部のものはそのまま蓄積されるので注意が必要です。
粒子状物質(PM)が溜まると、エンジン内部のインジェクターに悪影響を及ぼし、燃料を霧状に噴霧するための効率が下がります。
その上、このパフォーマンス低下によってますますススが発生するという悪循環に陥ってしまいます。すると、排気バルブの動作不良につながり、最悪の場合はエンジンストップに至ります。
そのため、ディーゼル車は月に一度くらいの頻度でいいのでエンジンを高回転させ、ススを吹き飛ばすことを心がけましょう。吹き飛ばされたススは再び燃やされて処理されます。
こうした理由から、特にディーゼル車は低回転のみの運転をせず、ときどきはギアを上げないで引っぱり、アクセルを踏んでエンジンを高回転させるようにしてください。
クリーンディーゼル車とは?
最後に「クリーンディーゼル車」について説明します。
クリーンディーゼル車とは、次世代のディーゼル車として開発されたもので、環境保護に配慮して、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出量を抑えられる仕組みの車です。
開発された背景には、ディーゼル車による排ガス汚染問題があります。この問題を受けて2003年に地方公共団体による「ディーゼル車規制条例」が制定され、環境に配慮した改良が施されたディーゼル車が誕生したのです。
もともとディーゼルエンジンはパワフルな瞬発力が売りですが、一方で、燃料の不完全燃焼により先述の有害物質が発生しやすいというデメリットがあります。そのため、東京や大阪などの都市部を中心に、基準を満たさないディーゼル車は走行禁止とされました。
クリーンディーゼル車は国や地方自体から補助金が与えられ、免税措置なども取られました。しかし、近年はカーボンニュートラルが推進されていることもあり、こうした優遇措置はなくなりつつあります。
2009年の税制改正から、いわゆる「エコカー減税」が始まり、クリーンディーゼル車もこの対象になりました。そのため、2回目までの車検にかかる自動車重量税が、一律免税という措置が取られてきました。
しかし、2023年度以降はこの対象から外れます。EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド自動車)などが普及し、自動車の電動化が進む中での除外措置です。
今後は、ガソリン車やディーゼル車のように、化石燃料を使う車そのものが少なくなっていくかもしれませんね。