車には、車種ごとにそれぞれ「最高地上高」があります。
最高地上高とは、地上最低高(車高)に対する「車の全高の上限」のことです。
車高はカスタマイズによるリフトアップやタイヤの変更などで高くすることができます。しかし、その全高にも上限があり、それを超えるなら構造変更の手続きをしないと車検には通りません。
この記事では、車の全高の基準と上限、車高を高くして車検に通す方法、車検前の注意点を説明します。
車の地上最低高(車高)の基準について
車には「地上最低高」というものが存在します。これは車体の最も低い部分と、路面との垂直距離の下限を示す数値で、国が定める保安基準によると「9センチ」と決められています。
では反対に「9センチ」という数値よりも大きければ車の全高はいくらでも高くしていいのかというと、そうではありません。
全高にも上限があり、カスタマイズする際やタイヤを大きいサイズに変更する場合は注意が必要です。
地上最低高(車高の下限)は、厳格に9センチと定められていますが、その数値が守られていれば車の全高はどこまでも高くしてもいいのかというと、決してそうではありません。
車の全高にも「最高地上高」が存在しますので、詳しく説明します。
車の全高の上限「最高地上高」について
ここでは、車の全高の上限について「最高地上高」という言葉を使って説明していきます。
車の車高については地上最低高というものがありますが、全高については最高地上高というものも定められています。
以下では、その内容を詳しく説明します。また、どのような場合に全高が高くなるのかも紹介します。
全高とは、車体そのものの高さを指します。具体的には、タイヤの下面から車体の最も高い位置までの寸法のことです。
全高の最高地上高は、道路運送車両法の保安基準によって厳密に定められており、3.8メートルを超える場合は公道を走れません。
ちなみに軽自動車の最高地上高は2.0メートルとなっていますが、実際には普通自動車でも全高2.0メートル超の車はほとんどないのが実情です。
そのため、この「3.8メートル」「2.0メートル」という数値が、現実に保安基準と照らし合わせる際の判断基準に使われることは、ほとんどありません。
普通車や軽自動車の全高には上限があることを説明しました。より詳しく言えば、最高地上高の数値は規格の種類、あるいはナンバーごとに定められています。
白色の3・5ナンバーの普通自動車は上限が3.8メートルです。
黄色の4・5ナンバーの軽自動車は上限が2メートルです。また、5ナンバーの小型自動車も上限が2メートルとなっています。
4ナンバーの小型貨物自動車も製造時は全長4.7メートル、全幅1.7メートル、全高2メートル以下の規格内で造られることになっています。
そして、いわゆる大型トラックが該当する1ナンバーの普通貨物車は、普通自動車と同じく3.8メートルが最高地上高です。
もし4・5ナンバーの車がリフトアップして、本来の最高地上高である2メートルを超えた場合は、1・3ナンバーに登録すれば3.8メートル以下まで伸ばすことはできます。
車は、カスタマイズして「リフトアップ」することで、車高をさらに高く調整できます。
詳しい方法は後述しますが、リフトアップ仕様車は根強い人気がある一方で、車検時はメリットとデメリットの両面があるので注意が必要です。
車の最高地上高は3.8メートルから2.0メートルだと説明しましたが、それ以下ならいくらでも好きなように調整していいわけではありません。
車検の時は、車検証に記載されている全高の数値を基準にしてチェックします。しかし、この数値を大幅に超えていると、そのままでは車検に合格しません。
では、どの程度なら調整可能かというと、車検証の数値を基準に「±4センチ」の範囲なら大丈夫です。
もしも指定外部品を使ったことで車体の全高が4センチ以上変わるようなら、陸運局で構造変更申請をしなければなりません。
反対に、指定部品である車高調やスプリングを使って4センチ以上変わった場合は、構造変更も不要です。
ただし、大きくリフトアップするなら車の足回りの構造上、難しいところもあるので指定外部品のブラケットやブロックを使うことになるでしょう。
最高地上高に関する基準は、法改正の影響で変わることがあります。
例えば、ジムニーには突入防止装置にあたる構造物が存在しますが、令和3年9月以降はこうした装置の設置は高さ60センチ以下となったため、リフトアップに一定の制限がかかる結果となりました。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
車の全高が変わるパターン
ここまで、車の最高地上高つまり全高の上限について概要を説明しましたが、実際に車の全高が高くなるパターンとしては、車両をカスタマイズ(改造)した場合やタイヤを大きいサイズに変更した場合などが考えられます。
全高は基本的に車検証に記された数値と同一ですが、カスタマイズした時のパーツの選び方によっては、車検証の数値からかけ離れてしまうことがあります。
カスタマイズをする際は「指定部品」を使えば問題ありません。指定部品は、装着しても運転時の安全性が損なわれず、環境への悪影響もないと国によって認められたものです。そのため、指定部品を装着する分には全高が4センチを超えても大丈夫です。
しかし、これに該当しない「指定外部品」を使った場合は、構造等変更検査を受けて合格しなければいけないので注意してください。
タイヤを変更する場合、サイズによっては車の全高がアップすることがあります。ただし、タイヤというのは前項で説明した「指定部品」にあたるので、これによって上がった分については継続車検で引っかかることはありません。
問題なのは外径があまりに大きいタイヤを使った場合です。例えば、荷重指数が規定以下だったり、フェンダーからはみ出してしまうほどのサイズだったり、メーターの誤差が規定範囲に収まり切らなかったりすると車検には通らないでしょう。
また、タイヤを変更する場合はワンセットであるホイールにも注意が必要です。ホイールがタイヤから大きくはみ出していると、他の車とすれ違った際に事故が起きる恐れがあるため、車検に落ちることがあります。
車高を高くするメリット
車好きの方が車高を高くするのには理由があります。主なメリットは以下の3つです。
車高を高くすると、純正よりも大きいタイヤをつけることが可能になります。すると全体的に巨大に見えるので、風格・威厳・迫力が強まり、注目度や力強さも増してドレスアップ効果が高まるでしょう。
悪路の走破性については、大きいタイヤが装着可能になることで、未舗装の道路や山道などの悪路を走りやすくなります。ノーマルの車高だと下回りに轍などが引っかかることもありますが、タイヤが大きいとちょっとした障害物は踏み越えていけます。
運転手の目線が高くなると見晴らしがよくなるので、目の前の道路状況のみならず、数メートル先の渋滞なども把握することが可能です。周囲を広い視野で見渡せれば、事故防止にもつながるでしょう。
車高を高くするデメリット
車の車高を高くすることにはデメリットもあります。それは主に以下の3つです。
例えばサスペンションのストロークを伸ばすことで車高を高くしたとします。すると、地形や天候の影響で強風・突風を浴びた場合や、高速道路を走る際など、風圧でハンドルを取られやすくなります。
古い高架下や地下駐車場あるいは立体駐車場では、通過できる車のサイズに制限があります。そこを避けられればいいのですが、気付かずに通ろうとすると接触する恐れがあります。
車高・全高が高い車は見晴らしはいいものの、車体の左右と下部は死角になりやすいです。接近した人・物ほど気付きにくくなるので一層の注意が必要になります。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
リフトアップした車を車検に通すには
ここまで、車をリフトアップするのはどんな時か、そのメリットとデメリットは何かを説明してきました。
次に、リフトアップした車は車検に通るのか、通らない場合があるとすればどのような手を打てばいいのかを解説します。
指定外部品を使ってカスタマイズした結果、車の全高が4センチ以上増えるのであれば、そのままでは継続車検には通りません。そのため、陸運局で構造等変更の申請を行い、検査を受ける必要があります。
この構造等変更申請に伴う車検は、新規検査の意味合いもあります。「カスタマイズによって車が生まれ変わったので、前回受けた車検の有効期間を一度リセットして、また一から車検をやり直すんだ!」と、考えておく分かりやすいでしょう。
そのため、前回の車検の有効期間が長く残っていると、その分損をしてしまうとも言えます。カスタマイズに伴う構造等変更申請を予定しているのであれば、前回の車検が有効期間を迎えるタイミングで行うようにするのがおすすめです。
カスタマイズ(改造)によって車の全高が最高地上高をオーバーしてしまうとしても、それが法律上の「軽微な変更」にあたるなら、そのままでも車検に通せます。
では、この軽微な変更とはどういった事柄を指すのでしょう?
まず、カスタマイズ時に指定外部品を使わずに、安全性や環境への配慮が認められている「指定部品」を使った場合は、軽微な変更にあたるので、そのまま車検に出して問題ありません。
指定部品を使ってカスタマイズしているのであれば、構造変更申請は不要ですし、継続車検にもほとんどの場合で合格します。ただし、検査官や地域によっては不合格となるケースもあるので、少し慎重に構えたほうがいいでしょう。
指定部品に該当するものとしては、タイヤ、コイルスプリング、ショックアブソーバ、車高調などが挙げられます。
また、指定外部品を使っても、全高が4センチ以上増えないのなら、これも軽微な変更にあたります。
車の車高がカスタマイズによって増えたとします。車検証に記載されている数値よりも4センチ以上アップしており、さらに使われているのが「指定外部品」であれば、そのまま車検に出しても不合格となります。
その場合は陸運局で構造等変更申請を行い、新規に検査を受けなければなりません。
例えば、指定外部品であるブロックやブラケットを使って4センチ以上のリフトアップになったら、構造変更の手続きを考えましょう。
構造変更を行うと、その内容によっては自動車税、自動車重量税、自賠責保険料の金額が変わることもあります。もしも残存期間があれば、自動車税と自賠責保険の分は日割り計算で返ってきます。
車検の時だけ車の全高を元に戻し、検査にパスしてからまたカスタマイズするという考え方もあるかもしれません。
しかし、こうした車検逃れは、もし事故を起こした時にその事実が発覚すると、罰則を受ける上に保険会社から保険金の支払いがなされないなど、大きなリスクを背負うことになります。
車検前に車高のセルフチェックをする時のポイント
車を車検に出す際、事前にセルフチェックを行うと合格する確率も高くなるでしょう。
では、車高について不安がある車をセルフチェックする際、車体はどのように測定するのが適切なのか、4つのポイントを説明します。
車の全高を測定する場合は、荷物を全て下ろして空っぽにするのが原則です。積載物があるとその分車が沈んでしまい、正しい寸法が割り出せなくなってしまうからです。
ただし、実際の車検の現場では余程の重量物でない限りわざわざ車から物を降ろすように言われることは少ないでしょう。
例えば、車のフロントガラス部分に置いているぬいぐるみや、チャイルドシートなどはそのままでも大丈夫です。
もしもタイヤの空気圧が規定値よりも下だったり、パンクしていたりすると、車体が沈んでしまうので事前にタイヤの空気圧も確認しましょう。
この時に注意したいのは、タイヤも車種やサイズごとに空気圧の規定値が異なっているという点です。
それぞれの空気圧の最適値はメーカーによって「車両指定空気圧」として定められているので、運転席ドア開口部の貼付ラベルなどを見て確認しましょう。
空気圧に不安があるからと言って圧を上げすぎると、今度は規定値を超えてしまい、車高が高くなる恐れがあります。あくまでも空気圧は規定値を基準にしてください。
車の全高を測る際は、測定場所が平面であるか、水平かどうかも注意しましょう。
例えば、凸凹がある場所ではそれぞれのタイヤにかかってくる圧力が異なるので、正確な高さが算出できなくなります。
また、斜面などの傾斜がある場所も車体が斜めになってしまうことから正確な車高・全高が割り出せません。
車高・全高の測定は、できるだけ平らで水平かつ舗装された場所で行うようにしましょう。
最後に、車の全高を測る際の測定方法についてです。
まず道路運送車両の保安基準では、車体の寸法を測定する場合は「センチ単位で行い、1センチ未満は切り捨てる」と定められています。
実際に車の全高を測定する際は、1センチに満たないミリ単位の部分は全て切り捨ててセンチ単位で測るようにしましょう。
切り捨てられるミリ部分はグレーゾーンであり、現実には車の全高は4センチ9ミリまで高くすることが可能だと言えます。
事実、この測定方法の間隙を縫う形で作られている「車検対応品」の後付けパーツもあります。
しかし、だからと言って無理に全高を高くしようとすると、測定ミスで構造変更が必要になる可能性もあるので注意しましょう。