車には「車台番号」あるいは「車体番号」が必ず付与されています。普段車を運転しているだけだとあまり意識することはないかもしれませんが、これはいわば車の「マイナンバー」のようなもので、車検やその他の重要手続きで必要になります。
この記事では、この車台番号(車体番号)の重要性について詳しく解説します。また、車にまつわる番号には「ナンバープレートの番号」や「型式指定番号」などがあり混乱しやすいので、それらも整理した上で説明していきましょう。
車台番号(車体番号)は車の「マイナンバー」
車台番号とは、国土交通省によって一台一台の車に付与する識別番号のことです。名義人が変わっても完全に廃車にされるまで番号は不変で、いわば車における「マイナンバー」のようなものになります。
製造された場所・車種など、車に関する詳細な情報が含まれており、行政上の手続きでも欠かせません。自動車に限らず、バイクや原付にも例外なく付与されています。
車台番号は、一般的に「車体番号」と呼ばれることが多いです。
車台番号(車体番号)の確認方法
車台番号を確認する最も簡単な方法は、「車検証を見る」か「車体に打刻されている番号をチェックするか」の2つです。
特に車検証は車台番号以外にも重要な情報が詰まっているので、必要な時はまず「車検証を見る」ということを覚えておくといいでしょう。
車台番号の確認方法で最も簡単なものは、車検証(自動車検査証)をチェックすることです。
車検証は、車が新規登録された時点から車両の情報が一括で記載されており、大抵の情報は確認できます。車検証の左側に「車台番号」という欄があるので、そこを見てみるとすぐに確認できるでしょう。
なお、車検証は走行時に携帯していないと処罰の対象になるので、ダッシュボードなどに常に保管しておいてください。
車台番号を確認する最も簡単な方法は、前項で述べたように車検証をチェックすることです。それ以外にも、車台番号は車両そのものにも打刻(金属など硬いものに数字や記号を刻みつけること)されています。
国産車であれば、ボンネットの中にあるエンジンルームと車内の間か、あるいは運転席のシートの下などに打刻されているでしょう。
打刻部分をチェックする機会は多くありませんが、ユーザー車検では打刻箇所を把握しておく必要があります。
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車台番号(車体番号)が意味するもの
車台番号(車体番号)は、基本的に数字とアルファベットの組み合わせで構成されています。ケタ数はものによってさまざまで、数桁のみの場合もあれば、十数桁に及ぶこともあります。
これらの番号は車のグレードや車種などを表していますが、記されているアルファベットや数字のどれが何を示しているのかは公表されていません。そのため、一般的な感覚で見れば車台番号はほとんど暗号のようなものです。
車台番号と似ている言葉に「車両番号」があります。これはナンバープレートに記されている平仮名と数字の組み合わせを指すもので、車台番号とは異なります。
車台番号を付与するのは国土交通省ですが、車両番号は陸運局です。ナンバープレートは希望の番号に変えることができますが、車台番号は製造段階で既に番号が決まっています。
また、車体に打刻された番号を変えるのは違法です。車台番号は、車一台ごとに付与された不変の識別番号だと考えるといいでしょう。
車台番号(車体番号)が必要になるケース
車台番号は多くの方にとってあまり馴染みがなく、購入して手放すまでの間、ずっと車台番号のことを意識しないまま終わることも多いです。
しかし、オーナーの知らない様々なシーンで、車台番号は活用されています。
車とその車台番号が一番最初に関係してくるのが、新車登録時です。
国内で製造販売されている車は、工場で車台番号が割り当てられ、完成検査終了証が付帯した形で出荷されていきます。
この完成検査終了証の内容にもとづき、陸運(支)局かあるいは検査登録事務所で新車登録が行われます。交付されたナンバープレートが装着されることで、その車は初めて公道を走ることが許されるのです。
車を所有していると避けられないものに、定期的に受ける点検や検査(車検)があります。中でも車検は最も重要なもので、これにパスしないと車が公道を走れなくなってしまいます。
この車検時に真っ先に行われるのが、車台番号の確認です。もう少し詳しく説明すると、車検には決められた手順があり、最初に車検証とその車の内容が一致しているかどうかを確認する「同一性の確認」が行われます。
ここで不一致の場合は、そもそも車検が受けられません。「同一性の確認」の手続きの中で、車検証記載の車台番号と、車に打刻された番号が一致しているかどうかがチェックされます。
これは、エンジンが不正に改造されたものではないかなどを確認する意味があります。そのため、ユーザー車検を行う場合は、自分の車の車台番号をきちんと把握しておかなければなりません。
ユーザー車検は打刻された番号を検査員に見せることによって、チェックを受けることになります。
車台番号が必要になるケースとして、自動車保険の手続きも挙げられます。
自賠責保険とは別に保険会社と契約する任意保険の場合、運転免許証や車両型式、登録番号に加えて車台番号も確認されるでしょう。
実際の契約では、上記の番号類のチェックは車検証を出せば事足りるので、「車台番号をチェックされている」という感覚はあまりないかもしれません。しかし、車検証によって保険の対象になる車の同一性を確認しています。
販売されている特定の車やタイヤ、チャイルドシートなどが法律上の保安基準に適合していないことが判明した場合に、メーカーが改善措置を取るのが「リコール」です。
そのため、リコールが発表された場合、自分の車が該当するか確認しなければなりません。ここで、車台番号の出番です。
国土交通省のサイト内の「自動車のリコール・不具合情報」で自車の車台番号を入力すれば、リコール対象車に含まれているかどうかが確認できます。
廃車手続きを業者に任せたが、手続きが終わったかどうかを確認したいというケースがあるかもしれません。
スクラップになること=廃車ではなく、書類上だけの抹消登録でも廃車にしたということになります。
この場合も、車台番号を使って確認することができます。「自動車リサイクルシステム」というWebサイトがありますので、車台番号と廃車手続き時にもらっている引取証明書の「移動報告番号」を入力することで、確認が可能です。
車が盗難に遭ってしまった場合も、車台番号が大きな役割を果たします。
まず警察で被害届を出して「受理番号」を受け取ることになりますが、この被害届を出す手続きの中で車台番号が必要になります。
受理番号を入手したら、その他の必要書類を揃えて今度は管轄内の陸運(支)局で一時抹消登録の手続きを取ります。こうすることで車の使用が公的にも一時的にストップすることになり、税金もかからなくなります。
車台番号(車体番号)の改ざんは法律違反
専門の知識や技術があれば、車台番号の打刻部分を物理的に書き換えることも可能です。しかし、車台番号の改ざんは法律違反なので罰則が科されます。また、改ざんが明らかになれば、売却などもできなくなることがあります。
打刻部分の数字の改ざんが疑われるケースとして挙げられるのは、パネルを含む打刻部分の周辺に不自然な溶接や塗装が行われている場合です。文字の形や並び方が不自然でないか否かもチェックポイントになります。
車台番号の改ざんはありえない話ではなく、何も知らずに中古で購入した車を修理に出したところ改ざんが判明したというケースもあります。
何者かが盗難車であることを隠すために改ざんを行う事例がある、ということは覚えておきましょう。
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車台番号(車体番号)が識別できない場合は?
ほとんどないケースと言ってもいいですが、ひどい腐食や事故、または不正行為が原因で車台番号が識別できなくなることがあります。
そうした場合に執られる「職権打刻」という措置と、そのデメリットについて説明します。
車台番号は車体に打刻されているので、よほどのことがなければ消えてしまうことはありません。ただし、何らかの理由で識別が難しくなることもあります。
例えば、盗難車である事実を隠すために削ったり潰したりするケースです。他にも、潮風にさらされ続けることで腐食する「塩害」や、冬道で散布される融雪剤の成分によって腐食する「雪害」があります。
ただし、いずれも定期的な点検を行っていれば、車台番号が識別不能になるほどひどく腐食することは普通ありません。
事故などに遭遇したことで車台番号が刻まれたパーツが破損し、交換するケースもあります。
似たようなケースとして水害などで水没したことにより腐食すると、同じく交換が必要になります。
日本のメーカーが海外向けに製造した車を逆輸入する「並行輸入車」は、識別以前にもともと車台番号がありません。
いずれの場合も、次項で述べる「職権打刻」という方法で新しい番号が付与されます。
車台番号が識別できないと、様々なシーンで不便ですし、不正行為もとられかねません。そのため、陸運(支)局で新たに番号を付与して打刻します。この手続きを「職権打刻(しょっけんだこく)」と言います。
職権打刻という呼び名ではありますが、実際には数字を刻み込むわけではありません。現在は、番号が書かれた金属製のプレートをセキュリティラベルで貼り付けるというやり方が採用されています。
一度、車台番号が識別不能になり職権打刻が行われた車は、過去に事故に遭遇していて安全性が低下していたり、盗難車だったりする可能性を疑われます。そのため、売却時に査定額が下がるというデメリットがあります。
見方を変えると、職権打刻が行われている中古車を購入する場合も注意が必要ということです。そうした車は隠れた損傷があって故障しやすくなっている恐れがあるので、購入の際はメンテナンスノートなどをきっちり確認しましょう。
車台番号(車体番号)が抹消されるケース
車台番号は、その車が乗られている間は不変ですが、廃車になれば抹消されます。
また、自動車税の滞納と車検切れの状態が長く続くと、行政上の措置として車台番号が強制的に抹消されることがあるので、注意が必要です。
車を処分すると、その車は「永久抹消登録」という手続きを経て、車台番号も抹消されます。
抹消登録手続きには「一時抹消登録」もありますが、これは一定期間車の使用をストップする場合になされるもので、車台番号までは消えません。
しかし、永久抹消登録の場合も、解体されずに書類上の抹消処理となることがあります。廃車手続き後も車の車台番号が生きているケースがあるので、気になる場合は専用サイトで検索してみましょう。
例えば、海外転勤などで長期間車を放置し、車検切れと自動車税の滞納が3年ほど続くと、その車の車台番号は「職権抹消」として陸運局の権限で抹消されます。
こうした事態を防ぐには、自動車の使用を一定期間ストップする一時抹消登録の処理が有効です。職権抹消を受けると税務署から通知が届きますが、手続きを取れば車台番号は復活させられます。
税金を滞納して3年以内なら車台番号が残っていることもあるので、陸運(支)局に問い合わせましょう。
その他の車の「番号」について
ここまでで車の車台番号について説明しましたが、その他にも自動車に関する番号には様々なものがあります。
以下では、型式指定番号・型式・自動車登録番号(車両番号・自動車ナンバーのこと)・VINコードについて説明します。
車検証を見ると「型式指定番号」という項目があります。これは、メーカーが新車を製造販売する際に国土交通大臣に申請し、安全性などの審査をパスすることによって与えられる番号です。
つまり、保安基準に適合している証だということです。この番号は、主に取得税の徴収額を見積もる際に利用されます。
また、番号だけでメーカー、エンジンの種類、グレード、さらに車台番号を組み合わせれば、ボディカラーや内張りの種類が分かります。
次項で述べる型式も車検証には記載されているので、それをあわせて見れば、性能・装置・構造やユーザー層も分かることになります。
こうして見ていくと、一枚の車検証にはその車のほとんどの情報が詰まっていることが分かるでしょう。
その道のプロなら、車そのものを見なくとも車検証一枚でどの車がどんなものなのかを把握できます。
車検証に記載されている「型式」は、性能・装置・構造が同じ車に与えられる分類指標です。車の新規登録・新規検査の際に付与されるもので、これによって車の特性やユーザー層の特徴が分類されます。
このように型式にはグレードや製造された年代、安全性などのデータが凝縮されています。
いわゆる車好きの方は、有名な車であれば車種名よりも型式で呼ぶこともあり、それにより何代目のモデルなのか、どんな仕様・グレードなのかがすぐに分かるのです。
車に関する番号として「自動車登録番号」というものがあり、「車両番号」や「自動車ナンバー」とも呼ばれています。これは、車のナンバープレートに記載された数字・記号の総称で、車の用途や管轄地域などの情報が含まれています。
自動車登録番号とナンバープレートは陸運(支)局の管轄地域ごとに発行されており、同一の番号が同時に2つ存在することはありません。一方、車の所有者やその住所が変わると番号も変わるという点が、車台番号と大きく異なる点です。
自動車登録番号が記載されているナンバープレートを装着することで、その車は道路運送車両法上の保安基準に適合していることが証明されます。また、車のデーターベースである自動車登録ファイルにも登録されていることも示しています。
その他にも、自賠責保険や車庫証明書の発行など、車に関する行政上の手続きをスムーズに進めるのも大きな役割です。また、事故や犯罪にその車が関わった場合、車両や持ち主を特定するのにも役立ちます。
輸入車、特に米国車と欧州車に関する番号として、「VINコード」と呼ばれる個体識別番号のシリアルナンバーがあります。これは17桁からなり、国産車でいうところの車台番号や型式指定番号などの全ての情報が含まれています。
VINコードはメーカーごとにやや異なる点があるものの、最近はおおむね共通の形式になっています。車体の様々な箇所に記載されており、フロントガラスの内側のダッシュボードなどを確認すると見つけられるでしょう。