車のガラス部分に貼る「カーフィルム」には、断熱や遮熱を目的としたものから防犯・プライバシー保護に役立つものまで様々な種類があります。

こうしたカーフィルムを貼った車は、貼り方によっては車検に落ちることもあるので、注意が必要です。

この記事では、カーフィルムが原因で車検に落ちる典型例とその理由、そしてフィルムを貼る場合に考慮すべき対策について説明していきます。

断熱フィルムは車検に通るが…

車の窓ガラスに貼るカーフィルムの中には、「断熱フィルム」「遮熱フィルム」などと呼ばれるものがあります。

フィルムを貼ること自体は違法ではなく、車検にも通りますが、フィルムの選択や貼り方には注意しなければなりません。

こうしたカーフィルム全般に言えることですが、貼ることが認められている場所や、貼る際に順守すべき「可視光線透過率」という数値が定められています。

以下では、その基準の内容について詳しく説明していきます。

断熱フィルムとは?

断熱フィルムとは?
「断熱フィルム」は、数あるカーフィルムの中でも、特に断熱効果と遮熱効果に優れています。直射日光を防いで車内の温度が上がるのを防ぐ効果が大きな特徴です。

その他のカーフィルムの内容と合わせて詳しく説明していきます。

「カーフィルム」の様々なメリット

カーフィルムにはさまざまな種類と特徴があり、ものによって得られる効果やメリットは異なります。

メリットの観点から見ていくと、車内が見えにくくなるためプライバシー保護や防犯にもなるものが「スモークフィルム」「ミラーフィルム」「カラーフィルム」「セキュリティフィルム」です。

断熱フィルムや遮熱フィルムに分類されるものとしては、「ミラーフィルム」「クリアフィルム」「サンシードフィルム」が挙げられます。

ミラーフィルムは、マジックミラーのような形で光や熱を反射します。

クリアフィルムは、紫外線・赤外線ともにカットし、車内の暑さやシートの日焼けなどを軽減してくれる優れものです。

また、これらの中でもスモークフィルムやミラーフィルム、カラーフィルムは、よくリア(サイド)ガラスに使われ、サンシードフィルムはフロントガラスの上部に貼るのに向いているという特徴があります。そのため、車の部位によって貼るフィルムを選ぶといいでしょう。

以下では、カーフィルムを貼るメリットを3つ詳しく紹介していきます。

メリット①プライバシー保護・ドレスアップ

カーフィルムのメリットとして大きいのが、プライバシー保護の効果です。

スモークフィルムやミラーフィルムを貼ると外から車内が見えにくくなるので、遮熱効果以外にも覗き防止や防犯効果が期待できます。

また、カラーフィルムを使えば、車をドレスアップすることができます。カラーフィルムには青や黄色、グラデーションカラーなど様々な種類があり、車の後部のガラスなら色の濃さなどにも制限がないため、好みの色を自由に貼ることができます。

メリット②断熱・遮熱効果

車内の温度を適温に保つカーフィルムは、「断熱フィルム」や「遮熱フィルム」と呼ばれています。呼び名が2種類あるものの、実際には遮熱フィルムのことも含めて「断熱フィルム」と呼んでいることがほとんどです。

遮熱フィルムの持つ断熱効果は、直射日光を遮って、車内が高温になったりシートや車内の物品が熱くなったりするのを防ぐものです。この遮熱効果は、遮熱係数という数値で測定することができます。

直射日光には赤外線と紫外線が含まれており、それぞれをどの程度カットしてくれるかはメーカーやシートにより異なります。

例えば、クリアフィルムは紫外線や赤外線をカットしつつ視界もしっかり確保することが可能です。一方で、スモークフィルムは断熱・遮熱効果がありそうですが赤外線をカットしないものもあります。

現在はほとんどのメーカーで紫外線を99%カットしているので、後は赤外線遮断の効果や運転時の見えやすさなどで選ぶといいでしょう。

メリット③防犯・ガラスの飛散防止

カーフィルムを貼ると、外から車内が見えにくくなることから、「中に人がいるかも知れない」と思わせることができます。そのため、覗きや盗難などで狙われにくくなる防犯効果が期待できます。

また、万が一事故に遭遇しても、ガラスの飛散を最小限にとどめることができます。事故に遭った場合、車内に大きな損傷がなくとも、ガラスが砕けて飛散し怪我を負うことがあります。カーフィルムを貼っておくと、こうした飛散をゼロにはできないものの、被害を抑えることにもつながります。

基本的にカーフィルムは車検に通る

基本的にカーフィルムは車検に通る
カーフィルムを貼ることそのものは違反ではありませんし、車検にも通ります。ただし、フィルムの扱い方によっては注意が必要です。

以下では、車検における基準や施工業者がどう扱っているかについて説明します。

そもそも車検とは?

車検の正式名称は「自動車検査登録制度」です。車が法律上の保安基準を満たしているかどうかを確認するために行われるもので、普通乗用車なら2年に一度(新車は登録から3年後)、定期的に受けなければなりません。

カーフィルムについては、違反となる形で貼られていないかどうかがチェックされることになります。この場合の細かい基準は後で説明しますが、カーフィルムの貼り方で誤りがあれば修正し、改めて検査を受けなければなりません。

カーフィルムが車検に通る条件とは?

カーフィルムを貼った車を車検に出す際、押さえておくべきポイントは「可視光線透過率」です。

保安基準上、フロントガラスと運転席・助手席の窓ガラスは、「光(可視光線)」がある程度のレベルまで透過しなければいけません。簡単に言えば、その3面のガラス窓は「透明」でなければいけないということです。

保安基準上の可視光線透過率の最低ラインは70%なので、透過率がそれ以下になると視界が確保できず危険ということになり、車検に落ちます。

また、この70%という数値は、ガラスとフィルムの両方を合わせた状態のもので、フィルム単体のものではありません。最近の車は、窓ガラスの透過率が最初から抑えられているものも多いので、注意が必要です。

車検で問題になるのはあくまでも前方の3面の窓ガラスだけです。運転席より後ろの窓は検査対象ではないため、車の後ろのほうに色の濃い、透過率の低いフィルムを貼ることは問題ありません。

施工業者も車検に通すことを前提にしている

カーフィルムも車検できちんとチェックされるので、多くの場合フィルムの施工業者も車検に通すことを意識しています。そのため、こうした業者に施工してもらえれば、基本的には車検にも通るでしょう。

もしも保安基準に違反する形でカーフィルムを貼っていたにも関わらず車検に通れば、バレた場合に車の持ち主も施工業者も車検業者も罰せられます。

フィルムを貼る場合は「可視光線透過率70%」という基準をしっかり覚えておきましょう。

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カーフィルムが車検に通らないパターン

カーフィルムが車検に通らないパターン
カーフィルムを貼った状態で車検をパスするには、貼る場所と可視光線透過率の2つに注意が必要です。

では、カーフィルムが原因で車検に落ちるパターンとしてどのようなものがあるのかを以下で説明します。

不適合のフィルムやステッカーを貼った

カーフィルムを施工する際、施工業者側でも保安基準に適合することを前提に作業を進めていきます。そのため、車検に通らないようなフィルムやステッカーが貼られて車検に落ちるケースとしては、車のオーナーが自分で貼った場合が第一に考えられます。

車検に通らないようなフィルムとは、それを貼ることで可視光線透過率が70%を下回る結果になってしまうようなものです。もちろん何らかの柄やロゴなどが入っていてもNGで、同じ理由から絵柄の入ったステッカーなども貼ってはいけません。

こうしたフィルムやステッカーを車の前部3面のガラスに貼ると、車検に通る通らない以前に、違法改造車と見なされます。その状態で公道を走れば道路交通法違反となってしまいます。

特に可視光線透過率の数値には要注意です。透明度の高い車のガラスなら問題なく使えるフィルムでも、もともと透過率が低めのガラスに貼ると数値が基準値以下になることがあります。

法改正前の不適合カーフィルムを使っていた

可視光線透過率の基準で、車の前部3面へのフィルム施工について規制が強化されたのは、2003年4月1日以降、道路運送車両法の改正を受けてのことです。そのため、それよりも前から車のフロントに色の濃いフィルムを付けていた場合は、法改正後の車検で落ちることが多いです。

改正されたのは大分前の話なのでほとんどの車は貼り替えが行われているはずですが、ルールに即して古いフィルムの貼り替えを積極的に行っている業者も存在します。

もともと、車の前部3面のガラスに着色フィルムを貼り付けた自動車は、法改正前からその危険性が指摘されていました。そのような車はドライバーが車外の状況を十分に確かめられない上に、歩行者からもドライバーがこちらに注意を払っているのかどうかが分からないからです。

運転時に視界が確保できない車は大変危険です。車検に通らない、あるいは改造車として摘発される以前の問題として注意しましょう。

フィルムの劣化

カーフィルムも経年劣化するので、あまり長期間にわたって貼りっぱなしだった場合は劣化が原因で車検時に引っかかってしまうことがあります。

フィルムを一度貼ったらそれで終わりにせず、定期的に可視光線透過率をチェックしましょう。

カーフィルムを施工した直後は数値が70%でも、ずっと紫外線を浴び続けることでフィルムが日焼けしてしまうケースなどもあります。

施工業者もそこまでは管理していないため、車の持ち主が注意を払う必要があります。

もともとガラスの可視光線透過率が低い

車の中には、もともと窓ガラスの可視光線透過率が低めのものがあります。それは赤外線・紫外線をカットする効果がある機能性ガラスが標準装備として採用されていることが多いからです。

車検の際に問題になる可視光線透過率の数値は、フィルム単体ではなくガラスとフィルムを合わせた際のものなので注意しましょう。

メーカーによって、各フィルムの数値が公表されている場合もありますが、これは単体での数値です。フィルムを貼りたい場合は、車の前部3面の窓ガラスについて、事前に可視光線透過率を確認しておくことをおすすめします。

また測定に際しても注意が必要です。フィルム施工業者が使う可視光線透過率の測定器と、車検時に陸運(支)局や車検業者が使う測定器とで、測定結果が異なるというケースもあります。

フィルムを貼る際は、可視光線透過率が基準値ギリギリにならないようにして、少し余裕を持たせておくと安心です。

車検の検査員が誤解している

保安基準上、問題がない貼り方でカーフィルムを施工しているにも関わらず、車検で通らないケースがあります。こうしたケースの中には、車検を行うディーラーや検査員が「カーフィルムそのものが違反」と勘違いしていることもあるようです。

こうした勘違いは、2003年の道路運送車両法の改正内容を誤解していることから生じていることが多いです。改正ではあくまでもフィルムの「貼り方」に制限が設けられたのですが、フィルムそのものが違法だと間違って認識している可能性があります。

車検体制の問題

可視光線透過率の測定結果が車検場によってまちまちであることから、カーフィルムの貼り方に問題がないのに車検に落ちてしまうこともあります。

車検場によっては測定器が導入されていなかったり、また導入されていても器具ごとに測定精度が異なったりすることがあります。こうした誤差の処理方法についても明確な定めはありません。

こういった理由で車検に落ちるのを防ぐには、フィルム施工業者やメーカーが発行する「可視光線透過率測定証明書」をあらかじめ発行してもらうのが有効です。

カーフィルムを貼った車を車検に通れるようにする方法

カーフィルムを貼った車を車検に通れるようにする方法
ここまで、カーフィルムが原因で車検に落ちるパターンをいくつか紹介してきました。では、上記の内容を踏まえて、カーフィルムを貼った車が車検で確実に通れるようにするにはどうすればいいのでしょう?

その方法を4つ紹介します。

①DIYではなく業者に施工してもらう

前述しましたが、フィルムの施工業者は基本的に「車検に通るようにすること」を前提にフィルムを貼ります。そうしないと違法行為になってしまうからです。そのため、カーフィルムの施工はDIYではなく専門業者に依頼するのが最も確実です。

また、プロに依頼すれば、防犯・プライバシー保護・遮熱など目的に合った適切なカーフィルムを提案してくれるでしょう。仕上がりも美しくなる上に、可視光線透過率についても心配する必要がないので安心です。

②可視光線透過率測定証明証を発行してもらう

カーフィルムをスムーズに車検に通すために、メーカーやフィルム施工業者による「可視光線透過率測定証明書」を発行してもらうのも有効的です。

可視光線透過率測定証明書は通称なので、それぞれ個別の名称は発行者によってまちまちではありますが、可視光線透過率が70%以上を示す証拠の一つとして活用されています。

この証明書は、フィルム施工前と施工後の可視光線透過率を測定し、保安基準に適合していることを証明するものです。ただし、名称や様式は業界でも統一されていません。

中には、より信頼度が高いものもあります。例えば、日本自動車用フィルム施工協会(JCAA)が発行している「ウィンドウフィルム保安基準適合証明書」です。

これは、施工前・施工後に「国家資格ガラス用フィルム施工技能士」が透過率を測定し、その結果を国土交通省と共有するというシステムで運用されています。もともと、カーフィルムの車検時の取り扱いの基準が曖昧であることの対策として生み出されたものです。

③校正証明書つきの測定器を使う

可視光線透過率の測定器は使い方が車検場によって異なり、それが理由で車検に落ちることがあります。

この状況を防ぐために、校正証明書付きの測定器で、自分の車の透過率を一度測定してみるのもいいでしょう。

測定器の中には、経済産業省が所管する公的機関、JEMIC(日本電気計器検定所)が校正証明書を発行しているものがあります。これなら精度も信頼が置けるので、車検時に測定結果を堂々と示すことができます。

④不適合カーフィルムを貼り変える

前述したように、車の前面3か所にカーフィルムを貼る場合は、可視光線透過率に注意しなければなりません。規制が強化された2003年4月1日よりも前から濃色のカーフィルムなどを貼っている場合は、速やかに貼り変える必要があります。

またDIYでカーフィルムを貼った場合、もともとの車のガラスの可視光線透過率に考慮していなかったため保安基準不適合になってしまうことがあります。こうした場合も、同様にすぐ貼り変えましょう。

DIYする場合は、貼る場所についても注意が必要です。例えば、ステッカーをボディに貼ったものの、それが車の前面3か所のガラスにはみ出してしまったという場合も、違反と見なされます。

また、最近は車全体に独自の絵柄をラッピングする車が多いですが、これも同様に前面3か所の窓ガラスに及ぶと違反です。

DIYでフィルムを貼ったりラッピングしたりすると失敗や違反になることがあるので、できるだけ専門の業者に任せましょう。

まとめ

①断熱フィルムはカーフィルムの一種で断熱・遮熱効果がある
②カーフィルムにはプライバシー保護などのメリットもある
③前席3面について、カーフィルムを貼った状態で「可視光線透過率70%以上」でないと車検で落ちる
④フィルムそのものの問題や検査員・検査体制に理由があり、車検に落ちることもある
⑤もともとガラスの可視光線透過率が低い車もあるので注意する
⑥カーフィルムを貼った車を車検に通すには、専門業者に施工を依頼するのがおすすめ

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