タクシーでは無線が使われていることがあります。また、携帯電話よりも使い勝手がいいことから、車内に無線機やトランシーバーを搭載している方もいます。

こうした無線機などを搭載する場合、保安基準上の問題はないのでしょうか?

この記事では、保安基準と無線の関係などを詳しく説明していきます。

車で無線機が使われることがある

タクシー業界やトラック業界など、車内に無線機を設置して業務で活用することは珍しくありません。今は携帯電話やスマートフォンがあるので無線機は古く感じられるかもしれませんが、現代でも通用する使い勝手の良さがあります。

では、車に無線機を設置して使用する場合、どのようなルールに注意する必要があるのでしょう?

無線機の定義やトランシーバーとの違い、保安基準上気をつけなければいけない点などを以下で説明していきます。

無線とは?

無線とは?
無線とは、線を使用しないで光や電波などを使って通信を行うことです。特に電波は空間内で広く拡散するという性質があるので、今までも電波を利用してテレビ放送やラジオなどで用いられてきました。

こうした特長を活かし、警察などは現在でもあえて携帯電話ではなく無線を使った連絡方法を採用しています。無線機は電波帯も広く、携帯電話のように個人で持ち歩いているケースが少ないことから混線もあまりしないという利点があります。

無線の中でも特に「IP無線機」と呼ばれるものは、東日本大震災や熊本地震などの大規模自然災害が発生した際も問題なく通信ができました。こうした実績があることから、無線通信は今も活用されているのです。

最近は暗号化の技術がどんどん発達したこともあり、上記のような用途にとどまらず携帯電話や無線LANなど個人レベルの通信でも活用されています。また光も、その強い指向性を利用してリモコンなどに使われています。

無線の種類

無線の種類
無線機にはどのような種類があるのでしょう?一般的によく使われるトランシーバーや、最新のIP無線機などと比較しながら解説していきます。

トランシーバー

トランシーバーは無線機の一種で、「特定小電力トランシーバー」とも呼ばれます。

通常、無線機を使う場合は総務省に無線局免許状の申請が必要ですが、トランシーバーは通信範囲が300メートルの範囲内と狭いことから無免許で誰でも使えるのが特徴です。

主に業務用での使用を想定して作られており、小規模のイベントや店舗内でスタッフ同士が連絡を取るのに使われたりします。

携帯電話と異なり、通信料が一切かからない点も魅力と言えるでしょう。

業務用無線機

業務用無線機と呼ばれるものは、主にタクシーや警察、消防などで使用されるものを指します。あくまでも業務用なので通信範囲が幅広く、最大通信距離が10~20キロとなっている点がトランシーバーとは大きく異なります。

業務用無線機を使う場合、業務内容によっては無線従事者免許を保有しているスタッフが配置されていなければなりません。

タクシー会社なら司令局が免許を持っていれば問題ありませんが、個人タクシーなら運転手自身が免許保有者である必要があります。

IP無線機

IP無線機は、パケット通信網を使うことから、全国どこでも通話可能という便利さが大きな魅力です。デジタルデータでも音声通信でも交信ができます。

さらに機器によってはGPS搭載というものもあり、動態チェックも可能にしています。これだけでも、単なるトランシーバーや業務用無線機とは一線を画す存在だと分かるでしょう。

長距離トラックの運転手や、規模の大きいイベントなどに関係するバス・タクシーなどでも活用されています。

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車で無線機・トランシーバーを使うメリット

車で無線機・トランシーバーを使うメリット
現代は携帯電話やスマートフォンがあるので、無線機は時代遅れに感じる方もいるかもしれません。

しかし、無線機ならではのメリットを活かして今でも様々なシーンや業界でトランシーバーをはじめとする無線機が使われています。

ここからはそのメリットについて説明します。

無線機とトランシーバーの関係

無線機とトランシーバーはどのような関係にあるのでしょう?

まず、無線機には「電波の受信機と送信機が一体になっているタイプ」と「両者がそれぞれ独立したタイプ」があります。そして、トランシーバーは最初から一体型となっています。

厳密に言えば全て「無線機」です。

ただし、トランシーバーは電波の受信機と送信機が一体になったものの中でも小型で、複数人と一斉に連絡を取り合えるタイプのものを指します。そのため、工事現場やスポーツ大会、大型施設の警備などの様々なシーンで活用可能です。

一方「無線機」という場合は、固定型や移動型のもの、またサイズ的にも小型・中型・大型のものを全て含みます。

また、無線機には使用するのに「免許が必要なもの」と「免許のいらない簡単なもの」の2種類があります。このうちの後者、特に大衆向けに製造販売されたものがトランシーバーで、より専門性の高いものが無線機と呼ばれるものです。

無線機・トランシーバーを使うメリット

トランシーバーを含む「無線機」を使うなら、携帯電話やスマートフォンで十分なのでは?と思うかもしれませんが、無線機には携帯電話やスマートフォンにはないメリットがあります。それは主に以下の3つです。

①複数の人に一斉に連絡できる
この利点を活用し、業務連絡やイベントの現場などで素早く連絡を取り合うことができます。

②繋がるスピードの速さ
携帯電話やスマートフォンで一斉に連絡をしようとすると、どうしても時間がかかるでしょう。無線機は携帯電話やスマートフォンに比べると通信範囲が狭くなりますが、かわりにその範囲内でシーンごとに使い分けて通信ができます。そのため、災害現場などの通信手段として多く利用されています。

③仕事中でも印象がいい
携帯電話やスマートフォンは私物として用いるイメージがあることから、従業員同士が連絡を取り合っていても悪印象を持たれることがあります。一方、無線機やトランシーバーはそのような印象を持たれません。

車載用トランシーバーの種類

トランシーバーの中には「車載用」のものがあり、さらに「IPモデル」と「デジタルモデル」の2種類に分類されます。いずれも購入、あるいはレンタルによって利用することが可能です。

特に人気が高いのは「IP無線機」と呼ばれるものです。全国規模で使えるため通話範囲に制限がなく、携帯電話やスマートフォンと同じような感覚で使うことができます。また、場合によっては通信キャリアのLTE回線を使えるので、車での移動中でも相手方と会話できるのも魅力です。

個人用として人気が高いのが、アナログ方式とデジタル方式を兼ね備えたトランシーバーです。デジタル方式の長所も備わっていることからクリアな音声でやり取りができます。また、運転時のコマンド操作がしやすいのも利点でしょう。

ただし、IP無線機の場合は登録局手続きと携帯電話と同様の契約が必要になります。個人で利用するには少々ハードルが高く、業者が業務用に使う場合もレンタルすることが多いです。

無線はタクシーなどで使われている

私たちの身近なところで業務用の無線機が使われているのはタクシー業界でしょう。

走行しながらお客さんを捕まえるいわゆる流し営業が主体の東京は別ですが、地域によっては無線配車による営業がまだまだ多く存在します。

こうしたタクシーは、ショッピングモールの前や駅前のタクシー乗り場などを無線配車の待機場所としていることが多いです。そして、そこで他のタクシーと共に順番待ちをする形で、フリーで乗り込んでくるお客さんにも対応しています。

車で使用する場合のルール

車で使用する場合のルール
運転中に携帯電話やスマートフォンを操作することは禁止されていますが、無線機の操作は違法ではないのでしょうか?

車載用の無線機を設置するにあたって、他に注意すべきルールとしてはどんなものがあるのかも説明します。

車載用トランシーバーは法律上、問題ない

運転中に車載用トランシーバーを使うのは違法ではないかと思う方もいるでしょう。確かに運転中に携帯電話やスマートフォンを使うと検挙されますが、車載用トランシーバーであれば問題ありません。

運転中に携帯電話を使うと片手運転の状態になり、事故が起きるリスクが高まります。そのため道路交通法上も禁止されているのですが、問題なのは「片手で操作する」点であって、ボタン一つで会話できる車載用トランシーバーは該当しません。

車載用トランシーバーは、電波の送受信機とマイクが分離しています。さらにマイクを手で持たなくとも利用可能なので、道路交通法上も全く問題がないということになります。

実際、車載用トランシーバーはタクシーなどでも業務用として頻繁に使われており、もともと取り締まりの対象外なのが分かります。

資格は必要か?

開設する車載局がアマチュア無線局なら運用者には資格取得と開設許可の両方が必要ですが、デジタル簡易無線の登録局なら必要なのは開設の手続きだけです。それ以外のものや業務用の場合、事業者は資格取得・開局許可が必要です。一方、運用者は無資格でも問題ありません。

例えば、タクシーの場合は監督者だけが資格を有していれば違反にはならず、個別の車載機を使う運転手(運用者)は無資格でもいいことになります。

登録手続きが必要

車載用トランシーバーはとても便利なアイテムですが、実際に利用する場合は登録申請を行わなければなりません。これは電波法に基づく手続きで、車に無線機を据え付けた状態で移動する場合は「陸上移動局」にあたることから申請が必要になります。

手続きには「個別局登録申請」「包括登録申請」の2種類があり、前者は1台だけを使う場合の申請です。後者は2台以上を同時利用する場合のもので、業務用の場合はこちらを申請することが多いです。

両者の手続きの違いは、申請時に必要な収入印紙の金額と、封筒の枚数です。申請書類の入手方法は、車載用トランシーバーについているものを使うか、メーカーのサイトから機器の型番に合わせてダウンロードすることになります。

そして、個別局登録申請の場合は、書類と収入印紙2,300円と返信用封筒1枚を用意します。包括登録申請の場合は、印紙が2,900円、返信用封筒2枚を入れ、最寄りの総合通信局へ提出してください。

電波送受信用アンテナの問題

電波送受信用アンテナの問題
無線機を車で使用する場合のルールとして、ここまでで資格申請や登録手続きのことを説明してきました。

一方、無線機器の設置によって、電波送受信用のアンテナが車検時の保安基準に抵触しないかどうかも注意が必要なので、解説していきます。

無線・トランシーバーのアンテナの形状に注意

無線機やトランシーバーを車に設置する場合、特に注意しなければならないのがアンテナの形状です。

車の保安基準上、アンテナを含む「突起物」についての規定があります。規定から逸脱すると、摘発の対象となったり車検に通らなかったりします。

「突起物」に関する保安基準

車を公道で走らせる場合、道路運送車両法の保安基準に適合した状態でないと、取り締まりの対象になります。また車検にも通らなくなるので、遵守しなければなりません。

無線やトランシーバーが問題になることがあるのは「突起物の規定」です。保安基準上、車体から5ミリ以上突き出ており、曲率範型が2.5ミリ未満のものがチェック対象となります。これが車のフロアラインより上から地上2メートルまでの範囲に取り付けられていると、違反になります。

無線やトランシーバーを設置するとアンテナが必要になるので、設置する時は注意しましょう。ダイバシティアンテナの基部が2メートル以下の場所にあるTVアンテナは、特に注意が必要です。

他にも注意を要するものとして、ゴムカバーが先端についていないルーフキャリアなどが挙げられます。バックカメラが2メートル以下の位置にある場合や、ボンネットピンなども気を付けましょう。

アンテナのシャフトは「突起物」と見なされない

車載用無線機を設置する場合、アンテナに注意しなければならないと前述しましたが、気を付けないといけないのは「先端部分」です。

アンテナのシャフトは突起物とは見なされません。一見すると突起物のカテゴリに当てはまりそうでも、パーツによっては心配する必要はありません。

例えば、サイドミラーやホイールの回転部分、牽引フック、ワイパー、グリルなどはチェックの対象外になります。

ちなみにグリルとは、車のヘッドライトの間にある網目状のパーツのことです。突起物として見なされないのは、この網目の隙間が4センチ以下のものに限ります。それを超えるグリルには突起物があってはいけません。

普通は保安基準に抵触するような突起物の存在について意識することはほとんどないでしょう。しかし、油断して社外品のパーツを取り付けると違法改造と見なされる可能性がある上に、その突起物によって人を傷つける恐れもあるので注意が必要です。

平成21年1月1日以降製造の車に適用される

突起物に関する規定は、万が一歩行者が接触した場合のために、鋭利な角や尖った先端部分を持つ外装部品をあらかじめ規制するものです。対象となるのは平成21年1月1日以降に製造された自動車となります。

尚、この場合の自動車にはバイクやオートバイ(側車付のものを含む)、三輪自動車、キャタピラやそり付きの軽自動車、被けん引自動車は含まれません。

あくまでも平成21年1月1日以降に「製造」されたもので「登録」されたものではない点も、注意が必要です。

平成29年3月31日まで適用が猶予されていた

保安基準上の「突起物」の扱いについては、当初は上記の通り平成21年1月以降に製造される車に適用される予定でした。しかし実際には、平成29年3月31日までの間、適用が猶予される措置が取られました。

これは、霊柩車や社名表示灯を備えている一部の事業用の自動車について、基準に適用させるための準備が整っていなかったことが施行直前に判明したからです。

そのため「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(細目告示)」の一部を、この猶予のために改正するという流れになっています。

この経緯を知らないままだと、平成21年1月以降に製造されたにも関わらず、保安基準に引っかかる形で突起物が存在している車を見つけて矛盾を感じることもあるでしょう。しかし、上記の理由から必ずしも違反ということではありません。

これからアンテナを設置する方にとって、この経緯はあまり関係ないかもれませんが、覚えておくとより理解が深まるでしょう。

車検に対応したアンテナもある

保安基準が改定されたことで、車検に対応したアンテナを製造しているメーカーも多いです。そうしたメーカーでは、保安基準を満たさない製品についてはホームページ上であらかじめその旨を記載するなどの対応を取っていることもあります。

また、現代の車は無線も含めて様々な通信機能を持っていることから、ニーズに合わせて「シャークアンテナ」や「フィルム式のアンテナ」など多種多様な製品が作られています。こうした現状を踏まえてアンテナを選ぶといいでしょう。

まとめ

①車でトランシーバーや無線機が使われることがある
②無線とは、線を使わずに電波や光などを使って行う通信のこと
③無線機による通信は、連絡を複数人にできたり、スピードであったり、手を使わないスマートさなどのメリットがある
④車載用トランシーバーなど無線機の搭載自体は保安基準上問題ない
⑤ただし、登録手続きや資格取得、アンテナの形状や設置位置については要注意
⑥保安基準に従ってアンテナを設置しないと、車検で落ちる可能性がある

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