車には安全に乗るために必要な点検があります。大切な愛車を安全に長く乗るために、点検は欠かせません。
また、点検はドライバーや一緒に乗る人の安全を守ることにもつながるため、ドライバーが守るべき義務です。
車の点検の種類は主に3つです。それぞれによって点検項目が異なり、費用や点検すべき箇所も変わってきます。
この記事では、それぞれの点検内容をはじめ、点検を受けなかった時のリスクや点検整備を請け負ってくれる場所について解説します。
車の点検には日常点検や定期点検(法定点検)などの種類がある!
車を乗るにあたり、点検はドライバーがきちんと対応しなければならないものの一つです。ただし、ひとえに点検と言っても普段からドライバーができる点検やメンテナンス、ディーラーや整備工場などに依頼して行う点検があります。
普段からドライバーが簡単にできる日常点検では、走行時の違和感がないか、普段は点いていないアラートのランプが点いてないかなどを含めて点検します。
一方で、定期点検の目的は故障や不具合がないかを確認し、車が走行する時の安全性を高めることです。
また、車検は車が保安基準を満たしているかを目的として検査します。
車の点検の種類は主に3つ
車の点検種類は主に3つです。ドライバーが日常的に行う「日常点検」、道路運送車両法に則って定められている「12か月点検」と「24か月点検」、そして、国土交通省が定める自動車が保安基準に適合しているかを確認する検査の「車検」があります。
点検はドライバーが守るべき義務です。義務を全うすることで、自分や一緒に乗る人の命を守れます。
ここでは、それぞれの点検項目や点検サイクルについて解説します。
日常点検はドライバー自身ができる簡易的な点検です。走行距離や運転時の状態などから判断して実施しましょう。
点検項目は15項目あり、主に、エンジンルームの中、車の外回り、運転席を中心に行います。
点検サイクルの目安としては、1カ月に一度するのが理想的です。点検タイミングは、長距離走行前や洗車時などに行うのが一般的です。
普段からこまめに点検し、車を注意深く観察することで、不具合箇所を早期に発見できます。
定期点検(法定点検)は道路運送車両法で定められている点検整備です。この点検の目的は車に故障や不具合がなく、快適かつ安全に走行できるか確認することです。
定期点検はマイカーであれば1年ごと、2年ごとの定期的な点検が法定点検として定められています。
実施される点検内容は1年点検、2年点検で点検項目数が異なります。
車検は車が保安基準に適合しているか確認する検査であり、正式名称は「自動車検査登録制度」です。
購入後初めての車検は3年目のタイミングで実施され、その後は2年ごとに実施されます。マイカーであれば、車検と2年の法定点検を合わせて実施するのが一般的です。
車検は「保安基準を満たしているかの検査」ですが、法定点検は「車が故障なく安全に走行できるかの点検」であり、実施目的に違いがあります。
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定期点検(法定点検)は車の種類によってタイミングが異なる
定期点検(法定点検)は、車種によって3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、12ヶ月(1年)ごと、24ヶ月(2年)ごと、と点検の時期が定められています。
マイカー(普通車、軽自動車)であれば、1年ごとが29項目、2年ごとは1年の法定点検項目数からさらに追加して60項目の法定点検を受ける必要があります。
自家用の中小型トラックやレンタカー(乗用車)の場合、6ヶ月ごとは24項目、12ヶ月ごとで86項目が法定点検時に受ける項目数です。
事業用のバス、トラック、タクシーの他、レンタカー(乗用車以外)、自家用の大型トラックの場合は、3ヶ月ごとに51項目、12ヶ月ごとでは101項目と点検項目数が大幅に増えます。
事業用のトラックやレンタカー、タクシー、公共交通であるバスは、多くの人や物を運搬し公共性が高く、事故を起こしてしまった時の社会的影響も大きいため、より安全に運行できるように細かい点検項目を短いサイクルで実施します。
定期点検(法定点検)は道路運送車両法によって義務付けられています。マイカーの場合、受けなかったとしても罰則はありませんが、トラブルや事故のリスクを減らすために重要な点検です。点検を受けていないことがきっかけで重大な事故を起こした場合、ドライバーに重い罰則が科せられる可能性があります。
また、点検を受けていない場合、マイカー売却時の査定額が低くなってしまうかもしれません。中古車市場の健全性と消費者の利益保護を図る日本自動車査定協会の基準では、査定日から1年以内に定期点検を受けている車は、機能価値加点を15点と定めています。査定額に換算するとを1万5,000円です。同じ年式・走行距離の車がある場合、点検を受けている車の方が安全性は高いとみなされます。
点検を怠るリスクと罰則
日常点検や定期点検を実施しなくとも、マイカーの場合はドライバーに罰則が科されることはありません。しかし、点検を怠ってしまうと早期に気づけたはずの故障や不具合を見逃してしまう可能性があります。
故障や不具合を見逃したまま車を走行させてしまうと重大な事故につながりかねません。
ここでは、点検を怠った場合に引き起こすリスクや科される罰則について解説します。
日常点検や定期点検を実施せずに車を走行させていると、故障や不具合に気づけずに事故を起こしてしまうリスクが高まります。
自損事故の範囲であれば、他者を巻き込んでいないため、ドライバー自身のけがや車の損傷で済むかもしれません。しかし、事故によっては、一緒に乗る人や周囲の走行車両、歩行者などを巻き込んでしまう可能性があります。
日常点検や定期点検を怠ることは故障や不具合を見落とすリスクを高め、それが事故を引き起こすきっかけにもなりえます。ドライバーとして日ごろから日常点検をこまめにして、定期点検も責任をもって受けましょう。
前述のとおり、日常点検や定期点検を実施しなくとも、マイカーの場合はドライバーに罰則が科されることはありません。
一方で、バスやタクシーなどの事業用車両の場合は、点検を怠ってしまうと事業主に対して罰則が科せられます。この場合は道路運送車両法違反となり、30万円以下の罰金もしくは、業務停止命令などの行政処分が下される可能性があります。
マイカーの場合でも罰則があるものは、車検切れで公道を走行した場合です。車検切れのまま走行していた場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の刑事処分と、違反点数6点、30日間の免許停止の行政処分が科せられてしまいます。
車の点検を実施してくれる業者
車の定期点検や車検を実施してくれる業者はいろいろあります。メーカーごとのディーラーは自社の車に対して豊富な知識をもっています。車検専門店は安さとスピーディな整備が強みです。その他にも民間の整備工場やカー用品店、ガソリンスタンドなどでも車を点検してもらうことが可能です。
ここでは、各業者の特徴やそれぞれの異なる点について解説します。
自動車メーカーが運営しているため、スタッフや整備士の教育がしっかりと行き届いている安心感があるでしょう。また、どの店舗で点検や車検を受けても技術面での大きな差はありません。
ディーラーは自社の車に精通しており、長年の実績もあるため、豊富な経験と知識を有したスタッフも多数います。また、自動車メーカーが運営しているため整備設備も整っており、トラブルが発生してもきちんと解決してくれるという安心感と信頼感もあります。
ただし、点検や車検時に部品交換が必要な場合、新品の純正部品を使うため、他の業者で受けるよりも費用が高くなる傾向が。ディーラーの点検や車検は企業としての信用にも関わるため安全性重視です。コストを抑えることを重視する人には向かないでしょう。
車検専門店は車検に特化した整備の専門店です。車検を通すことに特化しているため、必要最低限の検査項目で車検が実施されます。そのため、費用は抑えられ、時間もかからずに即日対応してくれる店舗が多くあります。
ただし、車検基準をクリアしている場合、それ以上に予防の意味合いでの部品交換や整備されることはほぼありません。
車検専門店のメリットは費用を抑えて時間をかけずに車検を受けることが可能な点です。先を見越しての消耗品の交換や追加の整備などのサービスは受けにくいため、日ごろからこまめな日常点検やメンテナンスをしている人、低コストと車検スピードを重視する人におすすめです。
整備工場は、地方運輸局長からの認定もしくは指定を受けた「認証工場」と「指定工場」の大きく2つに分けられます。
認定工場は、分解を伴う自動車の整備・点検・修理をすることが可能です。しかし、車検の完成検査までは行えません。
指定工場は、認証工場の中でさらに一定基準を満たした工場が、地方運輸局長から指定を受けます。指定工場では認証工場の作業範囲の他に、車検の完成検査までできるのが特徴です。
整備工場の特徴は幅広い車種に対応している点です。ディーラーのように特定のメーカーにこだわりません。また、故障や不具合で部品交換が必要な場合、ディーラーでは純正品パーツでの交換ですが、中小規模の整備工場では、純正品パーツに代わる費用を抑えた代案を提示してくれる可能性があり、費用を抑えられるでしょう。
デメリットに感じてしまう可能性がある点としては、自動車メーカーと比較した時に規模が小さいことです。そのため、部品の取り寄せ時の取引で取り寄せ先から優先度を低くされた場合、部品の納入に時間がかかってしまう可能性があります。
カー用品店は近隣にあることが多く利便性が高い点がメリットです。また、作業場を併設している場合は迅速な日常点検を受けられます。さらに陸運局の認証を受けている店舗の場合は、法定点検も実施可能です。
リーズナブルな市販品の取り扱いも豊富なため、費用を抑えて点検を受けられます。点検の手軽さと安さが魅力のカー用品店ですが、店舗によって技術面での差があると考えられるため、口コミなどを参考にするのが選択時のポイントです。
ガソリンスタンドは、ドライバーにとって最も身近な場所でしょう。最近のガソリンスタンドは国家資格を有している整備士を配置し、定期点検の他に車検を受けられるところも増えています。
ガソリンスタンドで車検を受ける場合、キャンペーン割引が適用されたり、ガソリン代の割引や洗車、ボディコートなどの特典がついてきたりすることも多くあります。さらに、店舗によっては24時間いつでも受付可能なところもあるため、日中に時間がない人におすすめです。
ただし、カー用品店同様に、店舗によって技術面での差があったり、サービス面で異なる点があったりするため、口コミなどを参考に選択しましょう。
車検を実施する場所によって費用や対応可能な範囲は異なります。
自動車メーカーが運営するディーラーは自社の車に対して精通しており、高い専門性をもっているのが強みです。一方で部品交換が必要な場合は純正品パーツを使用するため費用が高くなる傾向があります。
車検専門店は費用と時間を節約したい人におすすめです。ただし、必要最低限のサービスとなるため、消耗品などのチェックを含むこまめな点検を実施していない場合は、別途別の場所での対応が必要です。
整備工場はディーラーと異なり、幅広い車種に対応できます。特殊な車種やカスタムカーなどの点検や車検には整備工場がおすすめです。
カー用品店やガソリンスタンドは身近な店舗です。日常点検の延長線で簡単なメンテナンスなど費用を抑えて実施できます。車検も実施しているところはありますが、店舗によって実施の有無は異なります。また、技術力にも店舗によって差があるため口コミなどのレビューを参考にしましょう。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
車の点検を効率的に進めるためのポイント
車の定期点検は一度受けると次回以降に受けるタイミングが分かります。実施タイミングが近くなってから、慌てて予約を取ろうとしてもすでに希望日は他の予約でいっぱいになっている可能性があります。早めに業者へ連絡したり、見積りを取ったりして、適切なタイミングに実施できるようにしましょう。
ここでは、車の点検を効率的に進めるためのポイントを解説します。
車の点検をスピーディに対応してもらいたいなら、メーカーや全国規模で展開している業者に依頼するのが一つの方法です。
大手はさまざまな整備設備があり、専門知識を持つスタッフも多数在籍しています。また、修理が必要な部分や部品の交換が必要になった際も、部品在庫が店舗に十分にあることがほとんどです。
規模が小さな業者の場合は、大手と比較すると設備数や整備士の数が少ないため、混雑状況によっては時間がかかるでしょう。一方で大手は規模の点から比較した場合、定期点検や車検にかかる時間を短縮することが可能です。
定期点検や車検をスムーズに行う上で最も重要なのは事前準備です。事前準備とは、あらかじめ依頼をしたい業者から見積りを取り予約することです。車検期限までに余裕をもって行動しておくことで、自分の予定なども考慮した上で車検日程を予約できます。
また、早めに予約すれば、希望する日程での予約も取りやすくなります。車検期限間際や希望日の直前に予約を取ろうとした場合、業者側のスケジュールがすでに予約で埋まっている可能性があるため、早めに見積りを取って予約しましょう。
なお、事前に複数の業者から見積りを取ることで、費用の比較ができ、費用を抑えるための検討も可能です。
点検時に引っかからないために、普段からドライバーがこまめに日常点検しておくことも大切です。
日常点検をこまめにすることで、車の異常にも気づきやすくなります。故障箇所や不具合を早期に発見できれば、事故発生防止につながります。
また、エンジンオイルやタイヤなどの消耗品をこまめにチェックすることで、交換時期の感覚が分かるようになるでしょう。交換が必要だと分かれば、カー用品店などで部品を購入できます。整備場が隣接している店舗の場合、そのまま交換してもらうことも可能です。
こまめなメンテナンスが定期点検や車検時の整備作業の削減につながり、結果的に費用を抑えられるでしょう。安全に乗るのはもちろん、定期点検や車検時をスムーズにするために、日常点検しておくことが予防策の一つです。
定期点検や車検時に、業者側は車の安全品質を確保するために、多めに整備項目を設けて実施する傾向があります。ドライバー自身がこまめに日常点検している場合は、点検や車検を出す時に日常点検していることを伝えるのも効率的に進めるための一つの方法でしょう。
例えば、エンジンオイルやタイヤの交換時期など、車の状態を業者側に詳細に伝えることで、業者も点検をスムーズに実施できます。こまめに日常点検を実施している人や車に詳しい人は、実際に必要な点検作業を絞りやすいため、業者から提案された整備項目を事前に確認しましょう。
点検項目を絞ることで整備にかかる時間と費用を節約できます。
日常点検している中で不具合や部品の損傷などにより、部品交換が必要と事前に分かっている場合は、業者にあらかじめ伝えておきましょう。
定期点検や車検を予約する時に部品交換が必要なことを合わせて伝えておくことで、業者側での部品手配がスムーズに進み、点検や車検にかかる時間を短縮できます。
特に、特定の車種などの部品であまり汎用的でないものは業者の店舗や整備工場に在庫がない場合もあります。その場合、取り寄せて到着するまでに時間を要することが多いため、部品交換が必要な場合は事前に伝えておくと、点検や車検をスムーズに進められるでしょう。
次に点検や車検を依頼する業者から見積りを取り、費用を比較することがおすすめです。業者によっては各種割引サービスを用意している場合があります。例えば、Webによる申し込みで利用できる「インターネット予約割引」や前もって予約する「早期予約割引」などが適用されれば、費用を抑えることが可能です。
その他は、日常点検をこまめにしたり、自分が用意できる消耗品をカー用品店などで安く入手して交換したりしておくことで、点検や車検時の費用を抑えられるでしょう。