いざ車を使おうとしたら、バッテリーが上がっていて動かない、そのような経験をした方は多いでしょう。その原因の一つが漏電です。
車はエンジンを切った状態でもわずかな電流(暗電流)が流れていますが、この暗電流が異常に多いとバッテリーの上がりを招きます。
定期点検の際には漏電(暗電流)を測定して異常がないかの確認が大切です。
この記事では、初心者の方にもわかりやすいよう、車の漏電点検の重要性と測定方法について詳しく解説するため、ぜひ参考にしてください。
車を点検する際は漏電もチェックしよう
車の定期点検を行うときは、バッテリーがしっかり機能しているか確認するために漏電の有無もチェックしておきましょう。
車は使っていない間(エンジンOFF中)にも暗電流が流れており、これ自体は正常な現象です。しかし、電装品のトラブルなどで暗電流が通常より増えていると、バッテリー上がりにつながります。
漏電が疑われる場合は暗電流の測定が必要です。バッテリー上がりを起こした経験があるなら、定期的に暗電流の点検が予防につながります。
普段から漏電チェックを習慣づけておけば、予期せぬバッテリー上がりを未然に防げます。
暗電流とは?
暗電流(あんでんりゅう)とは、エンジンOFFの状態でも流れ続ける数十mA程度の微小な電流(待機電流)のことです。
例えば、車内の時計やカーナビのメモリー保持、スマートキーやセキュリティシステムなどの待機で、この暗電流は常に流れています。最近の車は電子制御の装備が多いため暗電流の値が大きくなる傾向があるのです。
暗電流は常にバッテリーから電力を消費するため、車を長期間動かさない場合や、何らかの不具合で暗電流が異常に増えている場合には、バッテリー上がりの原因となります。そのため、自分の車の正常な暗電流値を把握したうえで、定期的に測定しておくと安心です。
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暗電流を測定する2つの方法と特徴
暗電流の測定方法には、大きく分けて「サーキットテスターを直列につないで測定する方法」と「クランプメーターで配線に挟んで測定する方法」の2つがあります。
サーキットテスターは手軽ですが、接続時に車両メモリーが消えてしまうリスクがあります。一方、クランプメーターはアース線を外さず測れるため、メモリー消去の心配がありません。
それぞれの方法について、特徴や注意点を詳しく見ていきましょう。
サーキットテスターを使った暗電流測定では、バッテリーのマイナス端子とアース線の間にテスターを直列に接続する必要があるのです。
しかし、マイナス端子からケーブルを外すと、その瞬間に車両のメモリー(時計やナビの設定など)がリセットされてしまいます。
そこで、ワニグチクリップ(ケーブルに挟むクリップ)や暗電流テストフック(端子に引っ掛けるフック)を使い、テスターのリード線を固定した状態でケーブルを外せば、メモリー消去のリスクを大幅に減らせます。
クランプメーターを使用した方法では、バッテリーのマイナスケーブル(アース線)を外さずに、その上からセンサーで挟み込むだけで暗電流を測定できます。
車両側の電源を遮断しないため、測定中にメモリーが消える心配がありません。手順も簡単で時間もかからないため、誰でも扱いやすい方法と言えます。
ただし、暗電流のような微弱な直流電流を正確に測定できる専用のクランプメーターが必要です。
サーキットテスターでの測定方法
ここからは、サーキットテスターを使用して暗電流を実際に測定する手順を説明します。
車両メモリーを消去しないようにするために、ワニグチクリップと暗電流テストフックを使用した方法を紹介します。必要な準備や注意点も含めて、ステップごとに解説します。
暗電流測定の経験がない初心者の方でも実践できるよう、詳しく手順を説明していきます。
まずは、エンジンを停止します。室内灯(ルームランプ)やヘッドライト、カーナビなど、すべての電装品がOFFになっていることを確認しましょう。
エンジンを止めた直後は各装置が動作を終了する過程で通常より大きな電流が流れているため、すぐに測定しても正確な暗電流は測れません。そこで、エンジン停止後は15~20分ほど何も操作せずに放置し、電流が安定するのを待ちます。
また、トランクやグローブボックス内のランプも消灯していることを忘れずに確認してください。
次に、暗電流測定用のテストフックとワニグチクリップをサーキットテスターのリード線先端に取り付けます。
具体的には、テスターの赤いリード線の先端に赤色のワニグチクリップを差し込み、黒いリード線の先端に黒色のテスト棒(プローブ)を装着して、その先端に暗電流テストフックをねじ込みます。
このように、専用フックとクリップを使って事前に準備しておくと、後の作業をスムーズかつ安全に行えるでしょう。
テスター本体の設定を電流測定モード(Aレンジ)に切り替えます。多くのデジタルテスターでは、黒いテストプラグを「COM」端子に、赤いテストプラグを「10A」端子に挿します。(機種によって異なる場合もあるため注意が必要です)
Aレンジで測定するのは、万が一暗電流が大きかった場合にmAレンジでヒューズを飛ばさないためです。最初に大きい電流レンジで測定し、安全を確認してから精密なレンジに移行します。
バッテリーのマイナス端子(-端子)にテストリードを仮接続します。
具体的には、バッテリーのマイナスターミナル(端子留め具)についている固定ナットを緩め、クランプ(金具)を端子から2~3mmほど持ち上げます。そして、その隙間に先ほど取り付けた暗電流テストフックの先端を差し込み、バッテリー側端子に引っ掛けましょう。同時に、赤いワニグチクリップで持ち上げたマイナスターミナル(金具の側)を挟んで固定します。
狭い場所での作業になるため、工具を落とさないよう注意してください。
バッテリーとテスターの接続ができたら、マイナスターミナルを端子から完全に外します。このとき少し緊張するかもしれませんが、落ち着いてゆっくり作業しましょう。
テスターのリード線を通してバッテリーとアース線がつながっているため、車両電源は維持されています。ターミナルを外し終えると、テスター画面に暗電流の値が表示されます。
テスターのmAレンジ回路は通常0.5A/250Vのヒューズで保護されており、0.5Aを超える電流が流れるとヒューズが切れる恐れがあるのです。そのため、はじめにAレンジで測定する手順を踏みましょう。
次に、より正確に測定するためにテスターをmAレンジ(ミリアンペアの微小電流レンジ)に切り替えます。
一度マイナスターミナルをバッテリー端子に戻して接続を復旧させてから、テスターのレンジ切替ダイヤルを「mA」に合わせ、赤いテストプラグを「mA」端子へ差し替えます。(黒プラグは「COM」のまま)
バッテリーのマイナスターミナルを戻さないままテスターからプラグを抜いてしまうと、その瞬間に車両メモリーが消えてしまうため注意が必要です。レンジ切替の際は必ず一時的にターミナルを接続し直してから行いましょう。
テスターをmAレンジに切り替えたら、再びバッテリーのマイナスターミナルを端子から持ち上げて暗電流を測定します。表示された値がmAレンジでの暗電流値です。
Aレンジに比べ、mAレンジでは測定精度が高くなっています。(一般的に±2.0%rdg ±4digit程度の精度)
Aレンジでおおよその値を掴んだ後、mAレンジで詳細な値を確認すると、暗電流を正確に把握が可能です。(例えば、Aレンジで0.02Aと表示された暗電流は、mAレンジでは20mAと細かく表示されます。)
測定が終わったら、最後に接続を元に戻します。
テスターの表示値を確認し終えたら、バッテリーのマイナスターミナルをバッテリー端子に再度差し込みます。フックとクリップを挟んだままだと端子が完全に戻らないため、きちんと端子に戻ったのを確認したら暗電流テストフックとワニグチクリップを取り外しましょう。
最後にナットをしっかり締め直して、マイナスターミナルを確実に固定したら作業完了です。
暗電流の目安としては、概ね30mA以下であれば正常範囲、30mAを超えるとやや高め、100mA以上ある場合は異常の可能性が高くなります。その場合は、漏電箇所や原因の特定が必要になります。
クランプメーターでの測定方法
続いて、クランプメーターを使った暗電流測定の手順を見てみましょう。基本的な事前準備(エンジン停止や待機時間)は、サーキットテスターの場合と同じですが、クランプメーターでは配線を外さず測定できるため、操作はよりシンプルです。
サーキットテスターに比べて手順は少なく簡単ですが、正確に測るためのポイントがあります。順を追って見ていきましょう。
クランプメーターで測定する場合も、まずエンジンを停止して車を完全にオフの状態にします。ライト類やカーナビ、室内灯などの電装品すべて切れているのを確認してください。
そのまますぐに測定を開始せず、15~20分程度は車に触れずに待ちます。エンジン停止直後はコンピュータ類が動作を終了する過程で一時的に電流が高くなるため、少し時間を置いて暗電流が安定するのを待つ必要があります。
テスター計測時と同様に、トランクやグローブボックスのランプ消灯も忘れず確認しましょう。
測定の準備ができたら、クランプメーター本体の電源を入れます。クランプヘッドをバッテリーのアース線(マイナスケーブル)に挟む前に、近づけた状態で電源をONにし、レンジを4000mA程度に合わせましょう。
クランプメーターは電源投入時に自動ゼロ調整を行います。実際の測定位置で電源を入れると正しくゼロ調整され、測定精度が向上します。
もしクランプを大きく開いた状態で電源を入れると、正しくゼロ調整がされない場合があるため注意しましょう。
準備ができたら、クランプヘッドでバッテリーのマイナスケーブルを挟み込みます。すると、メーターに暗電流の測定値が表示されるのです。
一般的な乗用車では暗電流は数十mA程度ですが、車種や装備によって異なります。また、アース線が複数ある場合は、可能であれば2本まとめてクランプします。
物理的にまとめて挟めない場合は、1本ずつ測定して値を合算してください。クランプする向きが逆(電流の流れとクランプメーターの矢印マークが反対)の場合、一時的にマイナス(負)値で表示される場合がありますが、その場合は絶対値を読み取ればOKです。
例えば、バッテリーの劣化で容量が低下していると、エンジン停止中でもバッテリーが上がりやすくなります。また、ヘッドライトや室内灯の消し忘れなど人為的なミスによってもバッテリーが上がり、「漏電かも」と誤解される場合があるのです。これらの場合、暗電流自体は正常範囲であり、原因は別にあります。
他にも、オルタネーター(発電機)の不良で走行中に十分充電できず、結果的にバッテリーが弱ってしまうケースも漏電と混同されがちです。
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漏電しないための注意点
最後に、車のバッテリー上がりを防ぐために普段から心がけたいポイントを紹介します。漏電(暗電流の異常増加)を起こさないための注意点を押さえておきましょう。
例えば、電装品の配線チェックや定期的なエンジン始動、万一バッテリーが上がった場合の対処法など、知っておくと役立つポイントです。ちょっとした心がけでバッテリー上がりを防げるため、ぜひ実践してみてください。
カーナビやドライブレコーダー、ETC、追加の照明など後付けの電装品を取り付けた際は、配線方法を必ず確認しましょう。
本来アクセサリー電源(ACC)から取るべき電源を常時電源から取ってしまうと、エンジンを切っていてもその機器に電力が流れ続け、暗電流(待機電流)が増加してしまいます。
配線ミスやショート(短絡)がないか、ヒューズが適切に入っているかもチェックしましょう。また、増設した機器がエンジンOFFで確実に電源OFFになるよう配線しておくのが大切です。
車にあまり乗らない方は、定期的にエンジンをかけて車を動かす習慣をつけましょう。
暗電流はたとえ正常範囲内でも、長期間放置すればバッテリーを消耗させます。最近の車は電子制御の装備が多く、わずかな待機電流が常に流れています。
週に一度程度は30分以上のドライブをしたり、アイドリングでも良いのでエンジンを動かしたりしてバッテリーを充電してください。定期的に走行させると、バッテリー上がりを予防できます。
もし長期間まったく車に乗れない場合は、バッテリーターミナルを外しておいたり、ソーラーチャージャーなどで補充電したりするのも有効です。
自分で行うのが難しい場合はJAFやロードサービスを依頼してください。エンジンがかかった後はしばらく走行して充電し、それでも再度バッテリー上がりが起きるようならバッテリー交換を検討しましょう。