スパークプラグはエンジン部品の一種で、電気の力によって火花を飛ばしガソリンに着火させます。従って、エンジンの燃焼のきっかけを担う重要な部品です。
車を発進させるときにエンジンがかからない場合、まず考えられるのがバッテリーの不具合です。しかし、バッテリーを交換したばかりでもエンジンの不具合が生じた場合は、スパークプラグの異常の可能性があります。
この記事では、スパークプラグの概要、点検方法、交換方法、交換費用を解説します。他の交換部品同様に、ケアすべき消耗部品として正しく認識し、快適なカーライフを送りましょう。
車のスパークプラグを点検しよう!
スパークプラグは、エンジンを構成するエンジンオイルやエンジンバッテリーなどの他の部品と同様に、経年使用により劣化する消耗部品です。長く使い続けると点火性能が失われるため、交換しなくてはなりません。
そのために、スパークプラグとは具体的にどのようなものか、また点検方法や交換の目安について知っておく必要があります。
点検方法と交換の目安を把握しておくことで、エンジンの不具合が発生する前に交換の必要があるかを自分で判断できるため、未然に自動車トラブルを防止できます。ぜひ正しい知識を身につけましょう。
スパークプラグとは?
ガソリン車のエンジンは、シリンダーの中で運動を起こして動力への変換を実現しています。
多くのエンジンで、「吸入」「圧縮・点火」「燃焼・膨張」「排気」という4つの工程で動作を繰り返す、4サイクル方式が採用されています。各工程で行われる動作は以下の通りです。
吸気バルブを開けて空気とガソリンをシリンダー内に吸入し混ぜ合わせる
バルブを閉じて空気とガソリンの混合気を圧縮し、スパークプラグで点火する
混合気が爆発し燃焼しはじめ、混合気が膨張する圧力でピストンを動かす
押し下げられたピストンが戻るときに排気バルブを開けてガスを排出する
スパークプラグは「圧縮・点火」の過程で火花を飛ばし、ガソリンと空気の混合気に点火する役割を担います。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
スパークプラグの種類
スパークプラグは大きく分けて3つの種類が存在し、使用している素材により異なる特性を持ちます。それぞれの性能の他、消耗部品として適切に点検・交換するためには耐久性を知っておくことが重要です。また、価格にも違いがあります。
装備するスパークプラグを選ぶときは、性能・耐久性・価格から総合的な判断が求められるため、それぞれの特徴を知っておきましょう。
レジスタープラグは電極素材にニッケル合金を使用しています。3種類のスパークプラグの中で一番低価格です。
他の種類に比べて着火性能や耐久性に劣りますが、一番標準的に使用されているプラグで、「一般プラグ」とも呼ばれています。
走行距離10,000km~20,000kmが交換時期の目安です。
イリジウムプラグは電極にイリジウムが使われていることから、その名前がつけられています。
イリジウムを使用すると電極を細く作ることが可能です。繊細な電極構造が点火性能の高いプラグを実現しており、エンジンのかかりがよくなります。
プラグの耐久性が高く車の燃費性能も高いため、レジスタープラグよりも高価格帯の製品ですが、性能にこだわる車好きの層に人気のあるスパークプラグです。
走行距離による交換時期の目安は、レジスタープラグと同程度のものから100,000kmのものまで幅広くあります。
白金プラグは、その名の通り電極に白金(プラチナ)を使用しています。
白金は、ニッケル合金と比較して、融点が高いのが特徴です。高温に強いことから高い耐久性を有しています。また電極の太さは、3種類のスパークプラグの中では2番です。従って着火性能もレジスタープラグより優れています。
白金プラグの中でも、電極すべてに白金が使われているものと、中心の一部にだけ使われているものがあります。白金の使用割合により性能、耐久性が異なるため価格帯に幅がありますが、レジスタープラグよりも高価格帯の商品です。
走行距離による交換目安は、イリジウムプラグ同様に、10,000km~20,000kmのものから100,000kmのものまで商品により幅があります。
ただし、あくまでも目安の走行距離であり、車の使用状況により実際の寿命にはばらつきが生じるため、車検や定期点検時に精査しましょう。
スパークプラグが劣化すると、エンジンがかからない、アイドリング不安定、エンスト、加速不良といった症状を引き起こします。こうしたことを防ぐため、早めに点検するのがよいでしょう。
スパークプラグの点検方法
スパークプラグは放電により火花を飛ばし、混合気に点火しています。火花が飛ばないと、エンジンがかかりません。
スパークプラグの点検は、道具があれば誰でもできます。エンジンがうまく起動しないときは、部品から火花が出ているかを確認してみましょう。
まずは点検に必要な道具を準備しましょう。火花が飛んでいるかの確認までに必要な道具は以下の通りです。
- 軍手
- プラグレンチ
- ラチェットレンチ
- 10mmソケット
- エクステンションバー
ボンネットを開いての点検となるため、自動車部品の付け外しに使用する工具の他、手を保護するための軍手を用意し必ず装着してください。
また、スパークプラグを目視する際には、運転席でエンジンを回す必要があるため一人ではできません。点検をサポートしてくれる協力者(補助者)を用意しておきましょう。
安全な場所に駐車し、まずはエンジンルームを開ける必要があります。しかしエンジンを切った直後はエンジン周辺が熱くなっているためすぐに開くのは危険です。少し時間を置いてから作業に取り掛かりましょう。
熱が冷めたら、軍手をはめてボンネットを開けます。エンジンカバーがついている場合は取り外してエンジンルームを開いてください。
次はプラグコードを外す作業です。
プラグコードはシリンダーごとに一つずつ取り付けられています。エンジン上部にある点検したいプラグコードのあるシリンダーから、プラグコードを取り外してください。コードは付け根を持って引き上げると取り外しができます。
ダイレクトイグニッションを採用している車の場合は、エンジン上部にプラグコードではなくイグニッションコイルが取り付けられています。イグニッションコイルの取り外しは以下の手順で行ってください。
- コネクターを取り外す
- 10mmボルトを取り外す
- イグニッションコイルを取り外す
プラグレンチのソケットをエクステンションバーの先端に取り付けましょう。ソケットをスパークプラグに合わせ、左回りに回転させるとスパークプラグが緩み、取り外せます。
プラグレンチには磁石がついており、レンチにスパークプラグが吸い付けられる可能性があります。プラグレンチを持ち上げる際はゆっくりと持ち上げて、周りの部品にぶつけないように気をつけましょう。
取り外しまで完了したら、次は目視による状態の確認作業です。
ネジ部分から中心電極部分、接地電極部分をチェックしてください。ガソリンで濡れていたり、あるいは電極部分が丸くなったり削れていたりと変形が見られる場合は、スパークプラグが劣化している状態といえます。
適切に火花が飛んでいない可能性があるため、このような状態を確認したときは、交換を検討した方がよいでしょう。
火花が出ることを確認するため、取り外したスパークプラグにプラグコード、ダイレクトイグニッションの場合はイグニッションコイルを取り付けます。
このときプラグコードは、先ほど取り外しの際に持っていた位置をそのままつかむようにしてください。
火花を確認するにあたり、スパークプラグをボディアースに近づけます。
ボディアースとは、車のボディからライトや車内オーディオ、エアコンなどの電気機器に電気を通すための配線の接地のことです。
プラグとボディアースが近づいたところで補助者にエンジンを回してもらい、スパークプラグから火花が飛んでいるかを確認します。このときスパークプラグの金属部分を持つと感電する恐れがあるため、必ず絶縁部分を持つようにしてください。
中心電極と接地電極の間に火花が出ていれば、異常ありません。
火花の確認が終了したら、各部品を点検前の状態に戻します。
取り外したときとは逆の手順で今度は取り付けます。取り外す前に写真を撮って元の状態を画像として残しておくとよいでしょう。
プラグコードを取り付けるときはカチッと音がするまで押し込みます。
ダイレクトイグニッションの場合は、10mmボルトでイグニッションコイルを固定し、コネクターをカチッと音がするまで押し込んで取り付けます。
取り付け位置を間違えないように、元の画像などを確認しながら取り付けましょう。
最後はエンジンがしっかりかかるかを確認します。
スパークプラグからの火花の確認のために取り外した部品を、見た目は元の通りに取り付けなおしたつもりでも、配線の接触が悪いと従前どおりにエンジンが起動しないことがあります。エンジンのかかり方やアクセルを踏んだときの吹かし音、回転数に違和感がないかをチェックしてください。
エンジンの動作に不具合を感じなければ、取り付け成功です。エンジンルームとボンネットを閉めてすべての作業終了です。
その一つがイグニッションコイルに不具合があるケースです。
イグニッションコイルは、ダイレクトイグニッションを採用している車についている放電用変圧器で、スパークプラグに直接電力を供給することで電圧の損失を抑える役目を果たす部品です。
イグニッションコイルに腐食や錆があると、スパークプラグに電気が流れなくなるため、スパークプラグ自体に異常はなくても火花が出ません。
スパークプラグに異常がない場合は、プラグを取り巻く周辺部品の点検もしてみましょう。
スパークプラグに火花が飛ばないとエンジンがかからない
エンジンはガソリンと空気の混合気体に着火し、爆発を起こして排気する動作を繰り返すことにより動力を生み出しています。そのため、着火の火種となるスパークプラグからの火花が飛ばなければエンジンは動きません。
前述したスパークプラグから火花が出ているかの点検では、もし火花が出なかったときに、どこに原因があるかまではわかりません。原因を突き止めるためにはいくつかの点検を組み合わせる必要があります。
ここでは現在の主流である、シリンダーが3つあるタイプのダイレクトイグニッションシステムを採用している車を例に、ケースごとの原因を解説します。
セルモーターは回っているのにエンジンがかからない場合は、スパークプラグそのものの異常以外にも、イグニッションコイルやエンジンコンピューターの不具合が考えられます。この場合、3つあるシリンダーのすべてのスパークプラグの火花を点検してください。
3つすべてのスパークプラグから火花が飛んでいなければ、すべてのシリンダー内のスパークプラグかイグニッションコイルが個別に不具合を起こしていることは確率的に考えにくいため、エンジンコンピューターに不具合があると推察できます。
エンジンはかかるが調子が悪いというケースでは、3つのシリンダーのうち、少なくとも1つは火花が飛んでいるといえます。そのため、シリンダー内の個別の部品、すなわちスパークプラグかイグニッションコイルに不具合があると推察されます。
この場合、パワーバランス点検という方法が有効です。
パワーバランス点検とは、3つのシリンダーのうち1つを選び、意図的に機能を停止させることで、エンジンの不具合の様子が変わらないか、さらに出力が下がるか、あるいはエンジンがかからなくなるかを順に検証する方法です。
あるシリンダーの機能を停止させてもエンジンの様子が変わらなければ、そのシリンダーではもともと火花が出ていなかったと分かります。逆にエンジンの具合がより悪化した場合は、そのシリンダーはもともとは正常な働きをしていたからです。
異常のあるシリンダーを特定できたら、次は中のスパークプラグとイグニッションコイルを順に取り替えて実験することで、プラグとコイルのどちらに原因があるかを特定します。
パワーバランス点検は特別な機器を必要としないため、自分でも行えます。
車検付きメンテナンスパックは必要なのか?費用対効果を徹底解説!
スパークプラグから火花が出ない時の対応
スパークプラグから火花が出ないときは、どこに原因があるのかを特定し、基本的には原因である部品を交換する必要があります。
スパークプラグは、一般的なレジスタープラグで、走行距離10,000km~20,000kmが交換の目安です。イグニッションコイルはプラグに比べて寿命が長く、走行距離100,000kmもしくは使用期間10年が目安です。ただし、車の使用頻度や運転状況などで前後するため注意しましょう。
エンジンコンピューターそのものの点検には専門的な知識と道具が必要です。DIYで点検や交換作業をするのはハードルが高いため、専門の車部品業者に依頼することをおすすめします。
また、部品だけでなく、交換にかかる工賃も発生します。工賃はエンジンの形式によって異なりますが、構造が単純な直列型だと部品の脱着が少なく1本あたり1,000円程度と比較的安価です。
古い型やエンジンが後部についているなどの特殊なタイプの車は、交換作業が複雑なため余分に費用がかかります。特に、水平対向エンジンなど交換が難しい構造の車では、1本10,000円程度の費用が発生する可能性があります。
スパークプラグを交換できる場所
スパークプラグの交換を依頼できる場所は、ディーラーショップ、自動車整備業者、カーショップ、ガソリンスタンドなどが挙げられます。
ディーラーショップでは部品の信頼性が高く安心ですが、費用に重きを置くなら、その他のお店で交換するのがよいでしょう。
カーショップやガソリンスタンドでは、改造車などの特殊な車は対応できない可能性があるため注意してください。