自動車ローンには色々な種類があり、特徴もそれぞれ違いがあります。中でも注目されている「残価設定クレジット」は、通常のマイカーローンとどう違うのか分かりにくいという人もいるかもしれません。
マイカーローンは車両本体価格全額でローンを組みます。一方で残価設定クレジットは、車両本体価格から残価を差し引いた金額でローンを組むというのが最大の特徴です。
マイカーローンと比較して月々の返済額やローンの総支払額、金利などに差が生じるのかを見ていきましょう。
残価設定ローン(残クレ)の仕組み

残価は年数を経る度に減っていきます。例えば、3年の残クレだと残価率は車両本体価格の約50%、5年の残クレだと残価率は約30%というようにです。残価率は各自動車メーカーによって異なります。
また、中古車市場で人気があり高値がつきそうな車種に関しては、高めに設定されることもあります。
残価はローン最終回まで据え置かれる仕組みです。そして、契約終了前になると今後車をどうするのか以下の3つから選ぶことができます。
- 残価を支払って車を買い取る
- 下取りに出して新しく車に乗り換える
- 車を返却する
残クレを利用するとお得な点は以下の通りです。
残クレは、車両本体価格から残価分を差し引いた残額でローンを組みます。全額でローンを組むフルローンよりも月々のローン返済額が抑えられるので、家計への負担も軽くなるでしょう。
残クレは一般的に3~5年という短いスパンで組まれることが多いローンです。月々の支払額が減り、しかも残価分を支払う前に下取り、乗り換えを選択すれば短期間でも別の車へスムーズに乗り換えることができるというメリットがあります。
車の残価は中古車市場での車の価値が下がっても、影響受けずに最終回の支払いまで保証されるので安心です。
維持費の中でも、車検費用はある程度まとまった額になります。しかし、車検が来る前に下取りに出し乗り換えてしまうことで、車検費用がかからなくなるので維持費節約にもつながります。
残クレには利用しづらい点もあるので知っておきましょう。
ローンには金利が設定されます。残クレの場合車両本体価格から残価を引いた額でローンが組まれますが、金利は残価を差し引かない元本に対して設定されるため、利息分を多く支払うことになるのです。
契約期間中に車を傷つけるなどして、残価保証条件を満たさない場合は追加金を請求されることもあります。
車の返却や下取りを予定している場合、中古車市場で再販されることになるのでカスタイマイズは禁止されています。
残クレには、月間や年間で走行距離の上限を設けているプランもあります。上限を超えると追加金が請求されます。
残クレはメリットもあればデメリットもあるので、使い方によっては損することもあるため注意が必要です。
短い期間で車を使いたい、車の所有にこだわらないという人にはお得だと言えるでしょう。
例えば、学生時代や単身赴任中だけ車が必要、貯金が少なく車を一括購入できないけれど気に入った車に乗り続けたい、という人には向いています。
一方で、走行距離の上限が設けられている、事故で車を傷つけると追加金が発生するといった点がデメリットです。
通勤やレジャーなどで長距離運転になりがちな人や、運転に自信がなく事故を起こしやすい人などは、残クレで損となるリスクが高いと言えます。
残クレの特徴をよく理解した上で、自分が残クレに向いているかをよく考えてみてください。
自動車ローンの種類
車を購入するのに一括でまとまった費用を準備できない場合は、一時的にお金を借りて分割で返済するローンを利用することになるでしょう。
自動車ローンにはいくつか種類があります。
- 銀行などの金融機関による銀行系のマイカーローン
- ディーラー系ローン
- 中古車販売店などの自社ローン
各ローンごとに金利や審査のスピードや通りやすさなどに違いが見られます。
ローンを利用する場合はそれぞれの特徴を知っておくことも大事です。
マイカーローンの種類① 銀行系マイカーローン
銀行や信用金庫などの金融機関が提供するローンが銀行系のマイカーローンです。銀行から借り入れを受け、返済していきます。
金利が比較的安く、ローン契約後は車の名義が借主になるので、車の乗り換えがしやすいです。
また、住宅ローンなどの借り入れをしていても、借入額に関係なくマイカーローンを利用することができます。
ローン契約時の審査が厳しく、時間を要します。車を担保にできないので、ローン申請者の返済能力の有無をきちんと調べた上で判断しなければならないからです。
そして、自分で銀行に足を運び、全て自身で手続きをしなければならないので、面倒だという一面もあります。しかも、銀行は平日の昼間しか営業していないので、わざわざ休みを取らなければならない人もいるでしょう。
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マイカーローンの種類② ディーラー系ローン
ディーラー系ローンというのは、車のディーラーが提供するローンです。正しくは、ディーラーと提携している信販会社が一括で車購入資金をディーラーに支払い、購入者から信販会社へ分割で返済するという形を取ります。
車購入と同時にローン契約が行える上に、手続きもほぼディーラーが代行してくれるので楽です。
ローン審査はスピーディーで通りやすく、車両本体価格の割引や特典のサービスなどが受けやすいと言われています。
車の名義はローン完済まで信販会社やディーラーにあることと、銀行系マイカーローンよりは金利はやや高めといったデメリットもあります。
また、ローンが適用されるのは車両本体価格のみで、車購入時にかかる諸費用は実費での支払いが求められる場合が多いです。
マイカーローンの種類③ 自社ローン
自社ローンはあまり馴染みがないかもしれませんが、主に中古車を購入するときに使われます。
銀行などの金融機関や信販会社などを通さないで中古車販売店が貸主となり、ローンの貸付をダイレクトに行うローンです。
審査が早くて、低金利なので利用しやすいのが特徴です。
ローンを組むにあたり、保証人や頭金が必要となることがあります。さらに、金利を下げた分を車両価格に利益を上乗せしていることもあるので注意が必要です。
名義はローン完済までは中古車販売店にあるので、店が倒産すると車を手放さなければならないこともあります。
自社ローンはかなりの低金利で販売店とダイレクトに手続きできる分、面倒もなくベストなローンだと思われがちですが、その分保証もないので、急に資金繰りが悪くなるなど店の経営状態が悪化すると返済した分や車まで失うことになるのでリスクは高いと言えるでしょう。
マイカーローンを利用する際に一番気になるのが「金利」でしょう。
銀行系マイカーローンは、約1~5%ほどだと言われています。一方で、ディーラー系ローンは約4~8%とやや高めに設定されています。
ディーラーによっては新車販売促進の一環として、低金利キャンぺーンを行うことも多いです。キャンぺーン期間中は2、3%台の金利を提供する販売店もあるなど、銀行系マイカーローン並みの低金利でローンが組めることもあります。
自社ローンは、中古車販売店が独自に金利を決めるので1%とかなりの低金利の所もあります。
金利はお店によって差があるので、色々調べたり交渉したりすることも大事です。
ローンを組む際には、返済能力の有無を判断するための審査が行われます。ローン審査には種類が2つあります。
- 申請の翌日~3日ほどで結果が分かる「仮審査」
- 時間を要する「本審査」
年収や雇用形態、勤続年数などの情報により返済能力を判断します。
他社からの借り入れや、借入時の返済状況などの債務履歴を信用情報機関に問い合わせて判断します。
それでも、ディーラーは車を借金の担保として考えるので、ディーラー系のローンは審査基準はさほど厳しくなく、本審査も1週間~10日位で終了します。
一方、銀行系マイカーローンは車を担保にとれないので、その分本審査は慎重に行われ、審査基準も厳しいです。本審査には2、3週間ほどかかるのが一般的です。
ある程度、生活できる月収を得ており、過去に遡って債務超過や支払い遅延などがなければ、よっぽど審査に落ちることもないと言われています。
銀行系マイカーローンは、新車や中古車などの購入はもちろん、カーナビなどのオプション搭載品の購入や免許取得、車検費用などにも使えます。
基本的に車の用途には制限がないので、オートバイやキャンピングカーでもローンを組むことが可能なのです。
一方で、ディーラー系ローンは基本的にそのディーラーで取り扱う車両購入に対してしか使うことができません。
他のメーカーの車に乗り換えたいとなれば、車を購入するディーラー販売店で新たにローンを組み直さなければならないなど、融通が利かない所があります。
また、銀行系マイカーローンは繰り上げ返済なども回数無制限、手数料無料で可能な所もあります。しかし、ディーラー系ローンでは、繰り上げ返済ができない、もしくは回数制限が設けられ手数料がかかるのが一般的です。
支払い回数の変更ができないディーラーもあるため注意が必要です。
残価設定クレジットとマイカーローンを比較・金利の違い
残価設定クレジットとマイカーローンには金利に違いがあります。
銀行系のマイカーローンは1%台と、かなりの低金利の所もありますが、2~4%が平均的な金利です。
ディーラー系のフルローンの金利は低くても4%台~とやや高めで、4~7%が平均です。
一方で、残価設定クレジットの金利は2%台からの所もあります。2~5%が平均ですが、銀行系マイカーローン並みの低金利となっています。
残クレは同じディーラー系のローンであっても、フルローンにはない低金利なのでお得感があります。また、低金利キャンぺーン中だと2%台を切る場合もあるくらいです。
ディーラー側も残クレを利用してもらえると、短いスパンで新車に乗り換えてもらえることにつながるため、新車販売の売り上げアップにつながります。
そのため、残クレを推奨して利益を上げるために低金利キャンペーンを行っているのです。
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残価設定クレジットとマイカーローンを比較・月々の支払額の違い
車のローンを組むときは、月々のローン返済額がどの位になるかもチェックしなければなりません。
残価設定クレジットは、車両本体価格から残価を差し引いた残額でローンを組みます。そのため、車両本体価格全額でローンを組むマイカーローンと比べると、明らかに残クレの方が月々の支払額が少なくて済むと言えます。
例えば、200万円の車を購入してローンを組んだとししましょう。返済回数は60回の5年契約で、残価は約64万円と仮定します。
マイカーローンは実質年利が1.5%、残クレは2.9%で計算すると、マイカーローンの月々の返済額は約3万5000円、残クレの月々の返済額は約2万6000円です。
残クレの場合は最終回の支払いまで、残価分の約64万円は据え置かれることになります。
実質年利や借入額などによって差は生じますが、例を見ても残クレの方がマイカーローンよりも月々約1万円ローン返済額が少ないことが分かります。
残価設定クレジットとマイカーローンを比較・総支払額の違い
月々の支払額は残価設定クレジットの方がマイカーローンよりも一般的に少ないですが、総支払額には違いがあります。
残クレの場合はローンの支払いは車両本体価格から残価を引いた額で組まれますが、金利は残価分を含む購入金額に対して設定されます。そのため、利息の支払いも多くなるわけです。
また、残価分がローン最終回の支払い分に据え置かれているだけなので、支払いを免除されるわけではありません。
もちろん、車を返却するという選択をすることで残価の支払いが不要となることもあります。
ただ、買い取る選択をした場合の総支払額はマイカーローンよりも増えることになります。
例として200万円の車を購入し、5年のローンを組んだとします。マイカーローンは実質年利1.5%、残クレは2.9%で残価は約64万円と設定しましょう。
総支払額はマイカーローンは約208万円、残クレは約220万円となり、約12万円もの差額となります。
残価設定クレジットとマイカーローンを比較・審査や対象車、手続きなどの違い
ローンを組む際の手続きや審査についても、マイカーローンと残価設定クレジットを比較してみます。
残クレはディーラー系ローンなので、車購入と同時にローン契約を結ぶことが可能です。自身では本人確認書類などを準備する必要はありますが、他の書類はディーラー側が準備して手続きを主導してくれるのでとても楽です。
販売店に出向くのが難しい場合は営業マンが自宅まで来てくれるので、忙しい方でも効率よく手続きできるでしょう。
また、残クレの場合は車を担保にできるので、ローンの審査も比較的通りやすく、スピーディーに進むと言われています。
一方で、銀行系のマイカーローンは自分で必要な書類を揃え、銀行などの金融機関の営業時間内、平日の昼間に出向いて手続きしなければなりません。
車を担保にとることができないので、ローンの審査基準は厳しく、審査が終わるまでにある程度の時間を要するのが一般的です。
カーライフにマッチしたローンを選ぼう
残価設定クレジットとマイカーローンは、「総支払額」「月々の返済額」「金利」などで違いが見られます。
ただ、双方ともメリット、デメリットがあるので一概にどちらが良いかは言えません。
手続きが多少面倒で審査などにも時間がかかっても、とにかく金利が安い方が良いと言うなら断然銀行系マイカーローンです。
一方で、手続きもやってくれるなど全てお任せできるディーラー系ローンでも、短いスパンでの乗り換えを希望するなら残価設定クレジットがおすすめです。
自分の中で何を優先させるか「今後のカーライフプラン」によって、どのローンを選ぶかが変わってきます。
車は大きな買い物であり、途中でローンを組み直すとなると違約金や余分な手数料などが発生する場合が多いものです。
後からやっぱりこちらのローンが良かったと後悔しないように、支払いシミュレーションなども行いながら慎重に選んだ方が良いと言えるでしょう。