話題となっている残価設定クレジットは自動車ローンの一種です。
これから車の購入を考えている人ならなおさら、どのような意味なのか、どんな仕組みか特徴を知っておくと車選びやローン契約時に役立つでしょう。
残クレは便利なローンですが、メリットやデメリットもあるので使えば得するかどうかも一概には言えません。
少しでもお得になるポイントは、選ぶ車や各自動車会社の残クレプランなどにあります。ぜひこの記事を読んで参考にしてください。
残価設定クレジット(ローン)とは?仕組みを解説
自動車ローンの一つ「残価設定クレジット」はこれまでの一般的なローンとは大きく違います。
車両本体価格から予め数年後の買取保証額つまり「残価」を差し引いた残りの金額で分割払いするローンです。
一般的なローンは購入額全額を支払い回数で割って、分割で最終回まで全額プラス利息分を支払うことになります。残価設定クレジットは買取保証額が最終回の支払いまで据え置くという形をとっているのです。
例えば、200万円の車を購入する場合、残価が60万円とすると、140万円を分割で支払い60万円は返済の最終回にまで据え置かれるというわけです。
また、残価設定クレジットは「残価設定型ローン」や「残クレ」と呼ばれることもあります。
残価設定クレジットにおける、残価とは数年後の車の価値つまり「下取り額」を意味します。
車は使用年数が経過するにつれ、価値がどんどん下がっていきます。残クレではローンの契約年数を決め、その年数が経過した後の一般的な中古車市場での価値を概算し、残価が設定されています。
つまり、3年の残クレだと3年後の下取り額ということです。そして、3年後よりも5年後、7年後のほうが残価は低くなります。
残価はローンの最終回の支払いまで据え置かれるのであって、残価分の支払いが免除されるわけではないので間違えないようにしましょう。
ローン契約終了後は、車や残価をどうするかを自分で自由に選べるというのも残クレの大きな特徴の一つです。選択肢は大きく分けて3つあります。
返却の場合は残価の支払いは不要であり、車は中古車として市場で再販されます。
残価分が下取り額となり、実質車をそのまま手放すことになりますが、新たにローンを組んで新車に乗ることもできます。
残価分の返済は一括返済もできますが、再度ローンを組んで分割での返済も可能です。
ただし、再クレジットを組む場合、残クレ中の金利が適用されず高くなってしまいます。再クレジットを組むと総支払額で損をするので、乗り換えを選ぶか一括払いで車を手にいれたほうがお得だとも言えるでしょう。
車購入でローンを組む際は、金利も重要なチェックポイントとなります。
ローンの種類は主に以下の3つに分けられます。
- 自動車ローンは主に銀行や信用金庫などの金融機関が提供する銀行系マイカーローン
- ディーラーが提供するディーラー系ローン
- 中古車販売店などが直接貸し付けを行う自社ローン
銀行系マイカーローンが一番金利が低く、2~5%程度です。ディーラー系ローンはやや金利が高めで、4~7%程度となります。自社ローンは主に中古車のみ対応で、銀行系ローン並みの低金利です。
残価設定クレジットは、ディーラー系ローンの一種ですが金利は低く設定されています。プランによって差はありますが、平均3、4%位です。低金利キャンペーン中だと1~2%台となるプランもある位です。
ディーラー系のフルローンよりは残クレのほうが金利が安いという面も利用しやすさにつながっているのです。
ローンの利用に際しては、返済能力の有無を確認するための審査が行われます。
残価設定クレジットでも同様に、仮審査と本審査に通過しなければ利用することができません。
仮審査は2、3日、本審査も残価設定クレジットなら1週間程度で終わるのが一般的です。
残価設定クレジットはディーラーが車を担保にできるので、審査基準もさほど厳しいものではなく審査も通りやすいとされています。必要な書類の準備や手続きなどの全てディーラーが車購入時に一緒に進めてくれるので面倒もなく、効率的です。
残価設定クレジット(ローン)のメリット
残価クレジット(ローン)のメリットを見てみましょう。
残クレは車両本体価格から予め設定された残価を差し引いた金額で分割ローンを組みます。そのため全額でローンを組むフルローンに比べると、同じローン契約年数でも月々に支払額が抑えられるのが大きなメリットと言えます。
契約時に設定された残価は、ローンの最終回の支払いまで保証されています。中古車の場合、市場相場は刻々と変化しやすいので、契約時の残価が終了時では変わってしまうかもしれません。
実際の下取り額が残価よりも安くなったとしても、残価が下がることはないので安心です。
フルーローンを組むとき、頭金として購入額の数%かのお金を支払う必要があります。しかし残クレの場合は頭金なしでローンが組めます。
ボーナス払いも不要なので、ボーナスが出ないもしくは少ないという人でも組みやすいローンだと言えるでしょう。
残クレのプランは各自動車メーカーごとで多少異なります。中でも定期点検やオイル交換が無料となるメンテナンスパックの付いたお得なプランもあるので、利用すれば維持費節約にもつながります。
新車よりも購入額が安い中古車を対象とした残クレプランもあります。月の支払額がさらに安くなるのでお得です。
残価設定クレジット(ローン)のデメリット
残価設定クレジット(ローン)のデメリットもチェックしましょう。
ローンの金利が車体本体価格から残価分を差し引いた額ではなく、通常のフルローンと同様に全額に対し設定されます。そのため利息の支払いが高くつくのです。
ローン契約期間中に交通事故などで車に傷をつけると、契約終了時の査定ポイントが減点となり、減点点数によっては追加金が請求されます。また、車が全損した場合は残りのローン返済額と残価分の返済が求められます。
ほとんどの残クレプランでは、契約期間中の走行距離が設定されています。例えば月に1000㎞以内や1500㎞以内というパターンが多く、3年で4万㎞以内、5年で6万㎞以内など年間の走行距離で上限を設けているプランもあります。
もし走行距離を超えた場合は3㎞、5㎞でいくらというように超過金を要求されるので、注意しなければいけません。
車の返却などを予定している場合は、中古車として再販することを考え契約期間中はカスタマイズ禁止と条件を付けているプランもあります。もし違反すれば違反金を請求されることもあるでしょう。
契約終了時に実際に中古車での価値が残価よりも高くなることもあり得ます。ただし、いくら残価が保証されていると言っても、差額分が支払われることはありません。
残クレの利用に適した条件があります。
まず、残クレは3年や5年など短い期間でのローン契約を前提としています。そのため、大学の4年間、単身赴任の5年間のみなど予めある程度車が必要な期間が決まっている人にとっては便利でお得だと言えるでしょう。
さらに、短いスパンでの乗り換えもしやすいので、新車や人気の車種など色々乗りたいという人にも向いています。また、さほど頻繁に車を使わない、長い距離乗らない人もおすすめです。
残クレは同じメーカー内で違った車種への乗り換えが便利となっているので、気に入ったメーカーの車を色々乗り続けたい人にとってもお得で効率的です。
残クレは利用すると損をする可能性の人もいます。
残クレも、一般的なローンと同じで毎月決められた額を返済し続けなければなりません。過去にローンを組んで支払い遅延を繰り返したなど、ローンでの失敗経験がある人もいるかもしれません。
そういう人はお金にルーズで計画性がないので、残クレの利用はやめたほうがよいでしょう。ディーラーが提携する信販会社によっては、支払い遅延が続くと遅延金を科す場合もあります。
また、車の傷がひどいと契約終了時の査定で大幅な減点となります。追加金発生につながるので運転が上手くない人など、事故のリスクが高いと思うな残クレの利用は控えたほうが無難です。
他にも、長距離運転を頻繁にするので走行距離の上限を超えそうな人も、契約終了時追加金発生のリスクが高いと言えます。追加金を支払うと残クレを利用しても結局は損することになってしまいます。
残価設定クレジット(ローン)で得するポイント
残価設定クレジットを利用する際、少しでも経済的にお得になるポイントがあるので抑えておきましょう。
ローンを組むのに少しでも残価が高いほうが、車両本体価格から差し引かれる金額が多くなり、結果的にローン返済額も安くなります。つまり、残価率が高い車が狙い目です。
中古車のほうが新車よりも車両本体価格が安いので支払額も減ります。
また、各メーカーの残価設定クレジットは内容が少し異なる部分もあります。
例えば、ドアなどの修理費用や定期点検費用、オイル交換などのメンテナンスが無償もしくは安価でできる特典付きのプランもあります。利用することで維持費の一つであるメンテナンス費を節約できるので、トータルで見るとお得だと言えるでしょう。
他にも残クレのローンの最終回支払いで下取りを選択し、同じメーカーの新車に乗り換えるとキャッシュバックされる特典が付くプランもあります。
様々なプランを調べて、少しでもお得なプランを活用してください!
高残価低金利の車を選ぶ
残価設定クレジットでは、車両本体価格から残価を差し引いた金額でローンを組むため、残価率が高い車のほうがお得になります。残価率が高い車ということは、中古車市場で人気の車種だと言えるでしょう。
ある自動車メーカーで新車時に大幅値引きを行った車は、下取りに出す際に値引き分を引かれて下取り額が減らされることがあるので、こういった車はやめたほうが無難です。そのため、新車時の値引き額も注目すべきポイントなります。
国産車では、圧倒的にトヨタ車は残価率が高い車種が多いメーカーだと言われています。
ミニバンの「シエンタ」「ボクシー」「ノア」、SUVの「ランドクルーザー」「ハリアー」などは中古車市場でも根強い人気を誇ります。
また、注意したいのが同じ車種でも中古車市場での再販価格が異なるという点です。
例えばトヨタのアルファードでも、3.5ℓの上級エンジンよりも2.5ℓの税金の安い適度な排気量のタイプのほうが中古車市場では人気であるため残価率が高くなっています。
カラーもブラックや光沢のあるパールホワイトなどのベーシックなカラーが人気です。キャンペーンなどで対象車を限定して、金利を1%台にまで下げる低金利を実現するプランもあります。
低金利に該当する車なら利息に支払いが減るので結果的にお得になるためおすすめです。
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各メーカーの残価設定クレジットの内容を比較
各自動車メーカーで残価設定クレジットの内容はほぼ同じですが、サービス面で違う点もあります。それぞれ比較することでより自分に合ったプランの利用が検討できると言えるでしょう。
例えば、スズキの残クレは半年ごとの定期点検とエンジンオイル交換が無料で付く、メンテナンスパックがプランに組み込まれています。さらに、最終回の支払い前に新たにスズキの新車への乗り換えを選ぶと、最大で5万円のキャッシュバック特典が付くのがお得です。
三菱の残クレでは3つの部位の修理補償と、事故による修復歴の一部補償などがプランに含まれています。
マツダでは、通常の残クレの他にも据置額設定型クレジットプランがあります。このプランでは据置額は契約終了まで保証されないので、査定時に据置額が査定額を上回るときは差額分の支払いが必要です。しかし、その分契約期間中の残価保証条件に縛られることにないので、カスタマイズが可能になるといったメリットも生じます。
残価設定ローンでは中古車もおすすめ
中古車も残価設定クレジットの対象として、プランを出している自動車メーカーも多いです。
車は新車だと購入額が高くなりますが、中古車だと何割か安くなります。残クレにすれば、さらに月のローン返済額も安くなるため家計への負担も減るでしょう。
ただし、中古車の残クレの場合、残価が据置額として最終回の支払いまで持ち越されます。据置額の場合は最終回の支払いまでに中古車市場での価値が下がってしまうと、据置額が下がる可能性があるということになります。
つまり、生じた分の差額は負担しなければなりません。支払い回数と据置額は自分で任意に設定できるプランもあるので、高く設定しすぎないようにすれば差額も生じにくいと言えます。
ただ、購入した時点で既に中古車なので、3年落ちを購入して3年の残クレを組んでもローン支払い最終回では6年落ちにまでなってしまいます。中古車の場合、中古市場でよっぽどの人気車でなければ据置額はあまり期待しないほうがいいのかもしれません。
自分にとってメリットが大きいかを慎重に判断しよう
残価設定クレジットは、お得な面もあれば不便であったり損したりする面もあるので、使えばよいとは一概に言えないところがあります。
各自動車メーカーによって残クレプランは異なります。お得なプランを打ち出しているメーカーの車には自身が乗りたい車がないかもしれません。
そんなときは、お気に入りの「メーカーの車を選ぶ」か「プランを取る」か、どちらを優先させるかは、自身で判断することになります。
車は大きな買い物になるので、プラン内容を理解してじっくり検討した上で判断してください。自分の中での優先事項をはっきりさせ、利用によるメリットは大きいのかをよく考えてみましょう。
また、残クレではよく低金利キャンペーンが行われます。残クレを利用すると決めた場合は、お得なタイミングを逃さずローンを組むことも大事です。
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