新車を購入する際の一つの方法として、残価クレジットは認知度が高くなっています。残価クレジットには新車がお得に買えるというメリットもありますが、ちゃんと知っておかなければ後々、後悔してしまうかもしれない「走行距離制限」というルールがあります。

今回は残価クレジットのデメリットの一つでもある走行距離制限にスポットを当て、その考え方と定められた走行距離を超えてしまった場合の対処法なども解説します。

残価クレジット利用時の走行距離制限

残価クレジット利用時の走行距離制限
残価クレジットを利用することで毎月の支払額をグッと抑えることができ、手が届かない新車でも手にすることができるようになります。

しかし、支払額が抑えられるというメリットが注目される一方で、残価クレジットには理解しておかなければならない制限があることも知っておきましょう。

その制限は大きく分けて2つあります。

  • ①車の車内外の傷が基準内であり、事故による修復歴がないこと
  • ②契約時に定められた走行距離を超過しないこと

①に関しては、発生させないように注意しても避けられない場合がある事柄ですが、②に関しては自分自身でコントロールをすれば防げる部分でもあります。

残価クレジットは、契約時に定められた残価で買い取りをするため、これらの制限を設けることで成り立っています。「車体に傷を付けすぎている」「走りすぎている」など、想定していたより車の状態が悪いと、あらかじめ設定した残価より価格が低くなってしまうため、最終的に追加で費用を請求される場合があるので、注意が必要です。

大きく分けて2つの距離制限がある

大きく分けて2つの距離制限がある
残価クレジットを利用するにあたり大きな制約である走行距離制限ですが、いま現在国内メーカー系ディーラー各社で取り扱われている残価クレジットの走行制限には、大きく分けると2つのパターンが用意されています。

  • ①毎月の走行距離が1,000kmであること
  • ②毎月の走行距離が1,500km以内であること

残価クレジットでは、これら2つの走行距離制限を設けることで残価を設定しています。

2つの制限を比べると1,000kmのプランの方が1,500kmのプランより残価を高くすることができるため、毎月の支払額を抑えられます。

これら2つの走行距離制限について詳しく見ていきましょう。

1,000km制限

最初に紹介するのは、走行距離制限が1,000kmのプランです。

国内自動車メーカーのホームページや、ディーラーの販促チラシなどに記載されている残価クレジットの支払いプランの大半がこちらをもとに算出されています。

毎月1,000kmというとイメージしにくいかもしれませんが、具体的な走行距離でいうと毎週250kmくらい走ることが可能です。

都市部に住んでいて通勤では電車やバスを利用しており、車は休日しか使用しない人の場合、休日にちょっと遠くに旅行やレジャーに行くという車の使い方が想定されます。

毎日のように車を使っている場合は、250kmの制限があると自宅からあまり離れた場所に行くことができないかもしれません。

残価クレジットの基本プランは、主に「たまに車を使う人」を想定して設定されています。

1,500km制限

月々1,500kmの走行制限を設けたプランは、各メーカーのホームページでは大々的に宣伝はされていませんが、日常的に車を使う人たちに向けたプランとして用意されています。

このプランの場合、毎日の通勤や通学で車を使う人でも気軽に新車が買えるような距離設定がされており、通常のローンと比べると1,000kmプランほどではありませんが毎月の支払額を抑えることができます。

このプランが大々的に宣伝されていない理由として、通常ローンと比較をしてもあまりインパクトがないのが理由とされています。残価クレジットは、毎月の支払いを抑え、新車を買いやすくするためプランでもあるためです。

日常的に車を使用するライフスタイルの人向けに、1,500kmプランの存在があることも知っておきましょう。

月々の走行距離制限はあくまでも目安

月々の走行距離制限はあくまでも目安
上記で紹介した月々の走行距離制限ですが、残価クレジットを契約している期間中、毎月この走行距離以内でなければいけないということではありません。

例えば、月々1,000km制限の残価クレジットを5年支払いプランで契約した場合、5年間(60ヶ月間)で60,000km以内の走行距離とする旨の契約書を交わすことになります。

つまり、夏休みやゴールデンウィーク、正月などで帰省やレジャーで車を多く使う月に1,500km走行したとしても、他のあまり走行しなかった月で平均をとり、「月平均1,000km」であれば問題がないということになります。

こちらについては勘違いしやすいポイントでもあるため、頭の片隅に入れておくことで月々の走行距離が過分になってしまった場合でも「来月分を減らせばいい」という考え方ができるようになるでしょう。

残価クレジットは走行距離によってローン金額が変わる!

残価クレジットは走行距離によってローン金額が変わる!
残価クレジットの「残価」を決定する際には、購入した車両の3年あるいは5年経過時の中古車相場を予想したうえで残価を設定する背景があります。

一般的に中古車は、年数が経過した車や走行距離が多い車の価格がだんだんと下落していく傾向にあります。

例えば、全く同じ年式で走行距離だけが違う中古車があった場合、その価格は走行距離が多いか少ないかによって左右されることになるでしょう。

残価クレジットを利用した車で当てはめた場合、5年間で60,000km走った車両と90,000km走った車両を比較すると、走行距離が多いほうが中古車としての価値が低くなると想定されます。

最終回に据え置かれる残価が多ければ毎月の支払額が抑えることができ、逆に少なければ毎月の支払い負担が増えるということになります。そのため、走行距離を抑えるということはとても重要なポイントなのです!

走行距離が少なければ残価が高くなる

前述した通り、残価の決め方は走行距離によって左右されます。1,000kmプランと1,500kmプランとを比較した場合、トータルの走行距離が少ない前者の方が残価が高くなります。

一般的に車は、走行距離が少なければ故障のリスクも低いとされています。もし中古車を購入しようとした場合、全く同じ仕様の車が2台あり、片方は15万円高いが走行距離が少なく、もう片方は15万円安いけれど走行距離が多い車だった場合には、少々高くても走行距離が少ない車を選択する人は多いでしょう。

以上のことから、走行距離が少ない方が需要が高い(=すぐに買い手が見つかる)ということになるので、車両の価格はその分高くなる(=高くても買ってくれる)ということになります。

残価クレジット最終回で走行距離がオーバーしていたらどうなる?

残価クレジット最終回で走行距離がオーバーしていたらどうなる?
購入当初はそれほど車を利用するつもりがなく、1,000km制限の残価クレジットプランで購入したが、実際に車を持ったら行動範囲が広くなったり、レジャーや買い物などで使う機会が増えたりして走行距離がかさんでしまう、といったパターンもあるかもしれません。

もし、残価クレジットの走行距離制限をオーバーして最終回を迎えてしまった場合はどうなってしまうのでしょう…?

走行距離に応じて差額を支払う

まずは、規定された走行距離を大幅に超過しなかったパターンを確認していきましょう。残価クレジットでは、契約時に定められた走行距離以内であれば「これくらいの価格がつくだろう」ということを予想して残価を決定しています。

この決められた走行距離を少しだけ越えてしまった場合は「超えた分だけ差額を支払う」ことで、車両の返却を認めてくれる場合がほとんどです。その場合の差額の支払い方法は「1km超過ごとに〇円支払う」というシステムになっており、実費での清算となります。

ローンの最終回に、その分が引き落とされるようにする企業が多くみられます。

支払う差額分はすべて同一?

支払う差額分はすべて同一?
走行距離を超過した部分については、実費精算をすれば問題ありませんが、「走行距離1kmあたりいくら支払えば良いのか知りたい…」と疑問に思う方もいるでしょう。

しかし、この差額の金額については前もって知ることは不可能です。メーカーの公式ホームページにも記載されていません。

そのため、はっきりとはわかりませんがこの差額については車種ごとに異なっていることが多いようです。

安い車の場合は1kmあた3円程度で、高い車だと1kmあた20円程度とされています。

この算出の根拠ですが、軽自動車やコンパクトカーなど、日常使いが多かったり小さい車の場合は差額が少なく、逆にセダンタイプや高級車等といった部類の車の場合は、その精算額が高く設定されています。

超過距離数が大きすぎる場合は返却できない場合も

残価クレジットで設定された走行距離を超えてしまった場合には、実費精算をすればいいパターンはあるものの、必ずしもそれができるとは限りません。

例えば、月平均1,000kmの契約で2倍や3倍の距離を走ってしまった場合は、返却そのものを拒否されることがあります。いわゆる過走行車の場合は市場価値がグッと下がってしまうため、差額を徴収しても中古車としての価値がほぼなくなってしまう可能性があります。

残価クレジットの場合、距離超過が許される範囲としては「契約距離の1.5倍程度」です。1,000kmの場合は1,500km、1,500kmの場合は2,000kmが目安になります。

残価クレジットで契約以上の走行距離を走ってしまう人は要注意

先述した通り、残価クレジットで定められた走行距離を大幅に超過してしまうような車の使い方をすることがわかっている場合は、残価クレジットを使用して車を購入することを考え直すことをおすすめします。

例えば、通勤通学で毎日80km以上走る場合や、毎週のように長距離ドライブをする場合は、購入方法を見直した方がいいかもしれません。

特に、通勤とレジャーの2つの用途で車を使用する方の場合、残価クレジットには向いていないといえます。公共交通機関が少なく、主な移動手段が車であるという人にも向いていません。

そういった場合は、残価クレジットとは違ったローンの組み方で車を買うのがおすすめです。基本的には、通常ローンを組むのが良いでしょう。

通常ローンについも詳しく確認し、自分自身に合った車の買い方を検討してください。

通常ローンを組む

通常ローンを組む
残価クレジットはローン金利が安いことが最大の売りでもありますが、走行距離を気にしなければいけなかったり、一定以上の傷やへこみを付けてはいけなかったり、買った状態からカスタマイズをしてはいけなかったりと、強い制約を求められます。

特に走行距離制限の場合は、車を所有する本来の目的である「車を使用して日常生活を便利にする」ということを気にしながら走行しなければなりません。そうなってしまうと、カーライフそのものを楽しめなくなってしまう可能性があります。

多少月々の支払額が高くなったり、支払期間が5年から7年間に伸びたとしても、通常ローンで組んでしまうのも一つの方法といえるでしょう。通常ローンにすることで、走行距離や傷などを気にせず、気軽に車を使用することができるようになり、残価クレジットを利用するよりも精神的にもゆとりができるかもしれません。

ディーラーでローンを組む

通常ローンは車を購入するディーラーで組むのが一般的とされます。

残価クレジットの場合、一般的に4.9%の金利が設定され、キャンペーン中だと1.9%といった低金利で車を購入することもできます。

通常ローンだと低くても5%と残価クレジットよりも金利が高めです。それでも、支払いプランによってはそれほど差額が出ないこともあります。ローンの担当者にシミュレーションをしてもらい、どれくらい差額が出るのかを確認してもらうと良いでしょう。

残価クレジットの場合、金利上は低く見えても据え置かれた残価が高い車の場合は、その分金利負担が高くなる場合もあります。通常ローンの方が最終的にお得になることもあり得るため、支払いのシミュレーションをしておくことも大切です。

金利の安い銀行で借り入れをする

金利の安い銀行で借り入れをする
意外と知られていませんが、銀行や信用金庫などの金融機関から販売されているマイカーローンを利用することも一つの方法といえます。

昨今の超低金利の影響もあり、銀行のマイカーローンの金利も下がっている傾向があります。借り入れをする金融機関(銀行や信用金庫など)によっては、キャンペーン時の残価クレジットか、それ以下の破格の金利で借り入れをすることができるかもしれません。

ローンを組む手続きなどに少々手間がかかりますが、お得に車を買える場合もあるので、マイカーローンを利用するパターンも検討しておくのも良いでしょう!

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走行距離制限を無視して残クレを利用し、最終回で一括払いをする

走行距離制限を無視して残クレを利用し、最終回で一括払いをする
残価クレジットで定められた走行距離制限を超えるのがわかっている場合でも、敢えて残価クレジットを利用するというのも一つの手段です。

その場合は、車を最終回で返却することはできなくなりますが、最終回で「買い取り」を選択し、一括返済をしてしまえば問題はありません。

その場合は、最終回の支払額がいくらで、最終回までに月々いくら積立貯金をすれば買い取ることができるのか、という支払計画をシミュレーションしたうえで契約するようにしてください。

積み立てが厳しい場合は、残価クレジットから銀行のオートローンに借り換えるなどする「再クレジット」をすることも可能です。こういった方法もあることを頭の中に入れておくと良いでしょう。

残クレ最終回前に走行距離が少ない場合は中古車買取も検討の余地あり

残クレ最終回前に走行距離が少ない場合は中古車買取も検討の余地あり
今までは走行距離制限を超過してしまった場合の対処方の解説でしたが、逆に制限された走行距離よりも少ない場合はどうすればいいのかという点も考えておきましょう。

走行距離が少なく、さらに車の状態が良く、目立った傷やへこみがない場合は、ただ返却するのがもったいない場合もあります。

そんなときは、中古車買取店に車を持ち込み買取査定をしてもらいましょう。査定の結果、最終回の支払額を超える金額が出た際には、中古車買取店に車を売却してしまうこともできます。その差額分が自分の利益となるため、次に車を買う際のオプション代にすることもできます。

この方法は全ての車に当てはまるわけではありませんが、時代の流れに左右されにくいジャンルの車(例えばミニバンやSUV、軽自動車など)や、中古車市場でも人気のある車やグレードの場合は、高く売れるかもしれません。

残価クレジットの最終回は必ずディーラーに車を返さなければいけないわけではないので、こういった選択も頭に入れておいてください。

まとめ

①残価クレジットには走行距離の制限があります。
②走行距離制限は、一般的に1,000kmか1,500kmの2つのプランがあります。
③毎月の走行距離制限というわけではなく、契約期間全体の走行距離と覚えておくと良いでしょう。
④仮に走行距離制限を超えてしまった場合は、1kmあたの料金で精算をすることができます。
⑤最終回で返却できない場合は、車を買い取ってしまうこともできます。
⑥走行距離が少なかったり車の状態が良ければ、中古車買取も視野に入れると得する場合があります。

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