自動車メーカーのCMなどテレビで近年よく紹介されているのが「残価設定型クレジット」です。
数年後の下取り価格を購入時点で設定し、価格から差し引いたものを月々返済していく方式で、自動車ローンよりも月々の支払額が安くなります。ただ、残価設定型クレジットを利用すると、逆に損する場合もあると言われています。
「損得」一概には判断できず、購入する車や車の乗り方、買い替えのタイミングなどさまざまな要素によって変わるでしょう。
残価設定型ローンと自動車ローンではどちらが損?得?
マイカーの購入を検討するにあたって、資金をどうするかが問題になります。車種によっては何百万円単位のお金が必要なので、一括で支払えないという方も多いでしょう。
ローンを組む場合、自働車ローンか残価設定型クレジットが候補にあがりますが、どちらがお得か気になりませんか?金利などさまざまな要素をチェックして、月々の支払額や総返済額など総合的に比べてみましょう。
残価設定型クレジットと自動車ローンを比較する際、金利は重要なポイントです。金利が安ければ、利息支払いを少なくできます。
自動車ローンはどこで借り入れるかによって金利が異なります。
金利は1~4%が相場です。低金利ではありますが、審査が厳しいと言われています。また審査結果が出るまでに3~5日程度かかり、他のローンよりも長いです。
ディーラーローンは販売店の提供するローンのことで、金利の相場は3~10%です。銀行のローンと比較して、金利は高めです。しかしディーラーで申し込めるので手間がかからず、審査もスピーディになります。
金利は4~6%が相場です。銀行ローンとディーラーローンの中間くらいとされています。
実際自動車ローンと残価設定型クレジット、どちらがお得か具体例で比較してみましょう。
ここでは一例として、310万円の新車を50万円の残価設定もしくは頭金を用意した場合でシミュレーションします。
金利2.975%と仮定すると、月々の返済額は4万6689円と計算できます。利息の支払い総額は20万円ほどとです。
金利6.80%と仮定すると、月々の返済額は5万1238円と計算できます。利息の支払い総額が47万円ほどです。金利が高い分、利息を余計に支払わないといけません。
下取りに出すのが3年後もしくは5年後が多いです。金利3.90%と仮定すると、
月々の返済額は4万2400円と計算できます。利息の支払い総額が23万円ほどです。
月々の返済額は3万3200円と計算できます。利息の支払い総額が36万円ほどです。
残価設定型の損得は車種によって異なる
残価設定型クレジットを利用して損か得か、一概には結論を出せません。
ケースバイケースとなるためです。残価設定型クレジットを利用して損する人もいれば、得する人もいます。
損得を決める要素はいくつかあります。その1つに「どの車種を購入するか」があります。車種によっては残価設定型クレジットだとむしろ余計にお金を支払う恐れがあるでしょう。
一般的にリセールバリューの高い車種は残価設定型クレジットを利用すると損します。
リセールバリューの高い車だと、購入時の残価よりも実際の買取額が高くなる可能性が高いです。つまり、残価設定すると十分に差し引きされない恐れが出てきます。
では具体的にどのような車種がリセールバリューが高くなるのでしょうか?いくつかピックアップしてみました。
リセールバリューの高い車の特徴を見てみると、いくつか共通する特徴が見られるでしょう。以下で紹介する車両を購入しようと思っているのであれば、残価設定型クレジットの利用は慎重になった方がいいかもしれません。
新車の中でも販売前から注目を集めている車種があります。トレンドの車は多くの人が欲しいと感じ、中古車でも人気がある可能性は高いです。
中古車市場の需要が高ければ、その車の中古車査定額もおのずと高くなります。残価よりも高い買取価格のつく可能性も十分あります。
ファミリーカーとして人気が高いです。新車で購入すると高いので、中古車で買おうと考えている人は少なくありません。
燃費に優れているためガソリン代が安くなるなど、経済的なので人気があります。
このような車種はリセールバリューが高いので残価設定型クレジットを利用すると損するかもしれません。
特定のファンのついている車種はリセールバリューが高くなる傾向にあります。安定した需要が中古車市場でもあるためです。
愛好家の多い車種として代表的なのが、SUV車です。悪路走行性に優れているので、アウトドアが趣味な人や雪国の人から人気があります。
SUV車の中でも「シティ系」と「クロスカントリー系」がありますが、後者の方が人気が出やすいです。クロスカントリーは悪路により強いので広くニーズがあります。
クロスカントリー系の中でもはしご型と呼ばれる車種は特に人気です。フレームが頑丈なので、安心して運転できると言われています。
セダンは今ではあまり見られなくなりましたが根強い人気があり、クラウンやレクサスなど特定の車種は中古車でも高値査定になることも少なくありません。
同じ車種でも、カラーによって買取価格が異なります。車種によってはボディカラーだけで何十万円も買取価格が異なることもあるほどです。
人気のカラーはリセールバリューもありますから、残価設定クレジットにすると損する可能性があります。一般的には以下のようなノーマルな色は需要が高いです。
- シルバー
- ブラック
- ホワイト
一方ビビッドな色は、買取価格が安く抑えられる傾向が見られます。個性が強すぎて買い手が付きにくいからです。
ただし、例外もあります。その車種のブランドカラーになっている場合です。
例えばフェラーリの場合、レッドのイメージが強いでしょう。このように「この車と言ったらこの色」というボディカラーは人気になり、買取価格も高くなりがちです。
車を購入するにあたって、メーカーやディーラーオプションを付けようと思っている人もいるかもしれません。オプションの種類によっては中古車として売却する際、買い手が付きやすくなる場合もあります。
人気のオプションは、実用性の高いものになりがちです。具体的にはカーナビやETCなどが挙げられます。今ではマイカーにカーナビやETCを取り付けている車両は多いです。
カーナビが付いていれば初めて行くところでも迷子になりにくいですし、ETCを利用すれば高速道路の料金所で手間取る心配もありません。
一方カーナビやETCなどが標準装備されていない車両は、リセールバリューにはあまり影響しません。残価設定型クレジットを組んでも、損する可能性は低いでしょう。
残クレは損か得か?おすすめな人とそうでない人
残価設定型クレジットを利用すると損するか得するか、車種の他に用途によっても違ってきます。どの程度購入する車両を運転するか、普段どのくらい運転するかなど人によって使い方はまちまちでしょう。
残価設定型クレジットを利用すると得する人と損する人の代表例がいくつかありますので、以下で紹介します。
残クレで得するおすすめな人

- 購入した車両は短期間限定で乗ろうと思っている人
- 期間限定で車を利用する人
- 特定のメーカーのファン など
その他にも残クレがおすすめなタイプがいくつかあります。自分で何が当てはまるのか、確認しましょう。
短期間でどんどん車を買い替えたいと思っている人は残価設定型クレジットを利用すれば得する可能性が高いとされています。残クレは数年後に車を返却することが前提だからです。
例えば、人気の新車が出てきたら、そちらに乗り換えたいと思っている人もいるでしょう。このような新しいもの好きの人は、残クレで購入することも検討すべきです。
その他には、ライフステージの変わる時期という人も残クレを組むのがおすすめです。ライフステージが変われば必要な車種も変わってきます。
例えば、独身ならコンパクトカーのようなものでも十分でしょう。しかし結婚して子供ができるなど、家族が増えれば、大きな車両が必要です。
このように近い将来、異なるタイプの車に乗り換える可能性の高い人は残クレの利用を検討してもいいかもしれません。
購入する車を利用する期間がすでに決まっている方は、残価設定型クレジットを組むと得する可能性は高いです。数年後車返却を前提にして、残クレを組めば月々の支払額を安くできます。
例えば、単身赴任することになって数年後には戻ってくることが確定している人です。赴任している数年間だけ、現地で新車を調達して、残クレが満期になったら下取りに出せば済みます。
また、大学入学を気に一人暮らしを始める学生もいるでしょう。もし大学卒業したら地元に戻ってくるつもり、大学在学中に車を購入したいと思っている人も残クレは合っています。
大学に入学すると授業料や一人暮らしの生活費など、出ていくお金も大きくなります。残クレで月々の支払額を安く抑えるのがおすすめです。
特定のメーカーのファンでずっとその車に乗り続けたいと思っている人も残価設定型クレジット向きとされています。
残価設定型クレジットは、数年後に車を返却もしくは乗り換えることを前提にしたローンです。数年後に別の同じメーカーの車に乗り換えたいと思っているのであれば、月々の支払額を安くできます。
また、手続きが手間取らない点も、おすすめな理由です。銀行や信販会社の自動車ローンを利用すると、別の会社が介在するためどうしても手間がかかってしまいます。
残価設定型クレジットなら、車を販売しているディーラーが販促の一環として取り扱っている商品なので、車の買い替えも残クレもワンストップになるわけで、手続きに手間がかかりません。
車を購入するにあたって、中古車よりもやはり新車がいいという人もいるでしょう。誰の手にも触れていない新車の方が、マイカー感が出るという人も少なくありません。
しかし、同じ車種であれば中古車と比較すると新車の方がどうしても割高になってしまいます。中には一括で購入できるだけの資金が手元にないという人も多いでしょう。
自動車ローンを組む場合、全額支払わなくても、ある程度の頭金が必要です。もしその頭金も準備できない、でも新車がどうしても良ければ残価設定型クレジットがおすすめです。
残価設定型クレジットの場合、頭金は必要ありません。残価分を新車価格から差し引いて月々支払いをすればいいので、家計のやりくりもしやすくなります。
将来的に購入した車を売却しようと思っているなら、少しでも高い価格で売りたいでしょう。その場合、残価設定型クレジットの方が得する可能性が高いです。
車の買取価格は、その時のマーケット事情に反映されます。お手持ちのマイカーの需要が低ければ、予想よりも低い買取金額しかつかないかもしれません。
一方、残価設定型クレジットの場合、購入する段階で残価が決められます。たとえ将来その車の査定金額が下がっても、残価は変更されません。
購入した段階で、あらかじめ下取り価格の保証が受けられるわけです。将来買取相場が下落するかもしれない、それは避けたいと思っている人には向いています。
ただし、リセールバリューの高い車は残価よりも買取相場の高くなる可能性は高いです。この場合、損する恐れもありますので注意しましょう。
残価設定ローンを組んだ車は買取に出せる?買取に出すための条件などを解説
残価クレジットで損する恐れのあるおすすめできない人
残価設定型クレジットを利用して、損してしまう人も一定数います。
運転初心者など、運転技術がまだ成熟していない人や普段から運転することが多い人などが考えられます。その他にも残クレの利用は慎重であった方がいい人もいますので注意しましょう。
以下で紹介する特徴に当てはまるものがあれば、他の支払方法と比較・検討した方がいいです。
残価設定型クレジットは、新車価格から数年後下取りした場合の残価を差し引いて月々の支払額を設定することはすでに紹介した通りです。この残価は、車の状態をある程度保っていることが前提で算出されます。
もし「交通事故を起こした」「車をどこかにぶつけてしまって傷が付いた」などの場合は、残価もおのずと下がってしまいます。そして下がった分のその差額は負担しなければなりません。
例えば、免許取り立てで運転初心者の場合、どうしても交通事故リスクは高くなります。そういった人は残クレにしてしまうと追加費用が発生して結局、損をするかもしれません。
家族で車を保有している場合、自分は運転に自信があっても家族の中で苦手な人がいる場合もあるでしょう。この時も残クレにするかどうか慎重に判断すべきです。
残価設定型クレジットの中で注意してほしいのは、月間走行距離の上限が設けられている点です。もしこの走行距離を超えて運転すると、差損分を支払わないといけません。
日常的に長距離運転する場合には、この条件に引っかかる可能性があります。追加費用が発生して、結局損する可能性が出てくるわけです。
メーカーによって走行距離の上限は若干異なります。1ヶ月当たり1000kmもしくは1500kmといったところが多いです。
普段電車やバス通勤で、最寄り駅までの家族の送り迎えや近所のスーパーで買い物する程度ならまず問題ないでしょう。ただし、ドライブが趣味、地方在住で毎日の通勤がマイカーという場合には、少し注意した方がいいです。
残価設定型クレジットは、3~5年後の下取りを前提にして残価を算出してその分を価格から差し引く方式です。
この当初に設定した満期が来た場合、車については3つの選択肢が与えられます。
- 売却する
- 下取りに出して新車と買い替える
- そのまま乗り続ける
もし購入した車が気に入った場合、残クレの満期が来ても引き続き乗り続けられます。ただし、この場合は残価も負担しなければなりません。ほとんどの残クレが一括で支払うか、再度ローンを組むか選べます。
再度ローンを組む場合、これまで同様残価にも金利がかかってしまいます。すると、自動車ローンを組んだ時よりも余計に利息を支払わなければならないかもしれません。
人気になっている車種の購入を検討している人は、残価設定型クレジットを組むと損する可能性があります。人気車種は中古車市場でも高値で取引されることが多いからです。
もしかするとその車を買取に出した場合、残価よりも高値の査定額が出る可能性が出てきます。そうなると、買取に出した方がお得になるかもしれません。
もし、具体的に購入しようと思っている車が決まっているのなら、中古車での人気をインターネットで調べておきましょう。高値で売買されているのであれば、残クレで購入するのは控えた方がいいです。
この時その瞬間の買取相場ではなく、数年間の値動きを見てください。数年安定して高値で取引されている車は、なかなか値崩れは起こさないはずです。