車のローンには色々な種類があります。通常だと銀行系のマイカーローンやディーラー系ローンなどです。
残価設定クレジットはディーラー系ローンの一種ですが、車両価格から残価を差し引いた額でローンを組むという点が通常のローンとは異なります。
また、車をリース契約するマイカーリースというサービスもあります。
そんな残価設定クレジットを通常のカーローンやカーリースと比較して、どちらがお得なのか詳しく見ていきましょう。
残クレとフルローンを比較してみた
カーローンには、通常のフルローンと「残クレ」と呼ばれる残価設定クレジットとがあります。
・残価分を支払って車を買い取る
・車を返却する
・車を下取りに出して新しい車に乗り換える
そんな残クレとフルローンにはそれぞれ特徴があり、ローンの仕組みにも大きな違いが見られます。審査や金利などさまざまな観点から2つのローンを比較して、どちらがお得なのか見ていきましょう。
残価設定クレジットの特徴(メリット・デメリット)
まずは残クレの特徴のうち「メリット」を見ていきましょう。
残クレでは予め車両本体価格から残価分が差し引かれ、最終回の支払いに据え置かれています。返済回数が同じでもローン額が異なるので、フルローンよりも月々の返済額が少なくなります。
ローン契約時に設定された残価は、契約終了まで保証されています。中古車市場の価格変動に影響を受けないので、下がることはありません。
残クレは3年~5年でローンを組むことが多く、最終回に残価を支払わず下取りに出してしまえば、損することなく新しい車に乗り換えられます。また新しい車で残クレを組めば、3年もしくは5年後にさらに新車に乗ることも可能です。
次に残クレの「デメリット」を紹介します。
ローンに設定されている金利は、いくら車両本体価格から残価が引かれているからと言っても、その残価分は免除になりません。金利が元本に対して設定されるので、利息が高くなってしまうでしょう。
ローン契約中に事故や災害などで車に傷や凹みが生じた場合、契約終了時の査定が減点され、追加金が請求されることもあります。全損の場合はローンの返済に加え、残価分の返済も要求されます。
月間走行距離が1000㎞もしくは1500㎞以下というように、走行距離の上限が設けられている場合がほとんどです。オーバーすると追加金が請求されます。
車を下取りに出すもしくは返却する場合、中古車市場へ再販することを考えて、カスタマイズやドレスアップが禁止されています。
車のフルローンの種類と特徴
通常のフルローンには大きく分けて3つの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
銀行や信用金庫などの金融機関が提供するローンです。一般的に金利が低いのでお得です。
しかし、ローンの審査基準が厳しく時間を要すると言われています。また自分でローン契約に必要な書類を揃えて金融機関へ出向き、手続きしなければならないので手間がかかります。
車の所有権は購入者にあるので、ローン返済中の売買も可能です。
車の販売店であるディーラーが提供するローンです。ディーラーと提携している信販会社が貸し付けを行います。
車の購入と同時に手続きでき、その手続きをディーラーのスタッフ主導でやってもらえるので便利です。ローンの審査も車を担保にするので通りやすく、時間もあまりかかりません。
ただし、銀行系マイカーローンと比べると金利がやや高い傾向にあります。車の所有権は信販会社にあり、ローンを完済すれば購入者へ所有権譲渡がされます。
主に中古車販売店が貸主となって、直接購入者に借入を行うローンのことです。金利がかなり低めなのでお得感があり、審査などもさほど厳しくはありません。
ただし、販売店が倒産すると車を手放さなくてはならないというリスクを抱えています。
残クレと銀行系マイカーローン、ディーラー系ローンのフルローンでは金利が異なるので比較してみましょう。
金利は、約1~5%だと言われています。
金利は、やや高めで約4~7%位が一般的です。
金利は、ディーラーによって違いがあります。フルローンと同じで一律5%位に設定している所もありますが、ほとんどはフルローンよりも低金利になっています。そのため、残クレの金利は約3~6%位が一般的です。
また、残クレは定期的にキャンペーンを行っている場合があって、新年の1月初めや決算期の3月などに「低金利キャンペーン」というものが開催されます。時期によっては金利1%台で残クレを組めるかもしれません。
金利だけを見ると、銀行系マイカーローンがダントツで低いと言えます。残クレもタイミングよくローンを組めれば、銀行系マイカーローン並みかそれ以上に低金利でローンを利用することができるのでお得だと言えます。
ローンの審査に関して残クレとフルローンを比較します。
ディーラー系ローンの一種なので、ローンの申し込み手続きのしやすさはとってもラクです。車の購入と同時にローン契約も進められるので効率的です。手続きもほぼディーラーのスタッフがやってくれるので、手間も時間もかかりません。
審査に関しても、もしローン返済が滞った場合は車を担保として没収するという形をとることも可能であり、通りやすいと言われています。
自分が必要な書類を揃えて、ほとんどの場合は金融機関の営業時間内に出向いて手続きを行わなければいけないので大変です。
また、ローン審査は厳しく、収入や他の借りれ状況、過去の返済遅延などの金融事故に関してチェックされます。返済能力がないと判断されると、返済不能な場合に本人に代わって返済するための保証人をつけることを要求されたり、ローン審査が通らなかったりすることもあります。
車両価格が約150万円の一般的な軽自動車を購入し、5年の残価設定クレジットと通常のフルローンを組んだ場合の支払いシミュレーションを見てみましょう。
年利は4.9%で、5年後の下取り額(残価)は約54万円と想定します。すると、「月々の返済額は約2万円」となり、契約終了時に残価保証条件を満たしていたとして残価分を下取りに出すと、最終的な総支払額は「約126万円」と算出できます。
年利は約6%として計算します。「月々の返済額は約2万9000円」となり、総支払額は利息を合わせて「約178万円」と算出できます。
車両価格約200万円の一般的なコンパクトカーを購入し、5年の残価設定クレジットと通常のフルローンを組んだ場合の支払いシミュレーションを見てみましょう。
年利は4.9%で、5年後の下取り額(残価)は約32万5000円と想定します。すると、「月々の返済額は約3万5000円」となり、契約終了時に残価保証条件を満たしていたとして残価分を下取りに出すと、最終的な総支払額は「約206万円」と算出できます。
年利は6%として計算します。「月々の返済額は約4万円」となり、総支払額は利息を合わせて「約241万円」と算出できます。
現金価格320万円の一般的な普通車のミニバンを購入し、5年の残価設定クレジットと通常のフルローンを組んだ場合の支払いシミュレーションを見てみましょう。
年利は4.9%で、5年後の下取り額(残価)は約126万円と想定します。すると、「月々の返済額は約4万5000円」となり、契約終了時に残価保証条件を満たしていたとして残価分を下取りに出すと、最終的な総支払額は「約265万円」と算出できます。
年利は6%として計算します。「月々の返済額は約6万円」となり、総支払額は利息も合わせて「約385万円」と算出できます。
カーリースの特徴
残クレと仕組みがよく似ているということで、何かと比較されやすいのが「カーリース」です。
最長で7~9年のリース契約も可能で、リース代は車両本体価格から数年後の残価を差し引いた額に、税金や車検代をプラスし、契約月数で割った金額になります。
契約期間が終わると車をどうするか以下の3つから決めます。
- 車を返却する
- 再リース契約をする
- 別の車を新たにリースする
(場合によっては、車の買取が可能なリース会社もあります。)
月々定額支払いなうえに、車の維持費が一部含まれているので、家計管理しやすいところがメリットです。
残クレとカーリースを月々の支払額で比較すると、どの位の違いがあるのか知っておくと便利です。
例えば、150万円の一般的な軽自動車の場合…
月々のリース代は「約3万4000円程」になります。
残価は約54万円と想定します。年利が4.9%と仮定すると、ローン最終回までの「月々の支払いは2万1000円」です。月々の支払額は残クレの方がカーリースよりもかなり安いことが分かります。
しかし、残クレの場合は税金や車検費用などの維持費が含まれていないので、必要なときに別途支払わなければなりません。それぞれ特徴が違うので、どちらがお得かは一概には言えないのが現状です。
ただし、残クレで最終回の支払い時に車を買い取ることになると、車の所有権は取得しますが残価分の支払いがあるので、総支払額が通常のローンよりも増えてしまいます。
それよりは、カーリースにして返却した方が経済的だと考えられます。
残クレは各ディーラーごとにプランがある
各自動車メーカーでは、それぞれ残クレのプランを打ち出しています。ローンの仕組みや内容は基本的に同じですが、支払い回数や特典などで違いが見られます。
支払い回数は一般的に36~60回、3~5年のローンとなっていますが、もっと回数が増やせるローンもあり、特典は主にメンテナンスの一部がサービスでついてくるといった内容です。また、金利もメーカーによってさまざまです。
少しでもお得に残クレを活用するためには、各メーカーではどのような残クレプランがあるかを予め把握しておきましょう。また、金利や特典など項目ごとに比較してみると、違いが分かりやすいとも言えます。
ディーラーの残クレプランの金利比較
各自動車メーカーの残クレプランの金利を比較してみましょう。
残クレは銀行系マイカーローンやディーラー系ローンのフルローンよりは一般的に低金利だとされています。ただし、メーカーによって違いがあるので一概には言えません。
ホンダ・・・約3~4%
マツダ・・・約3%
スバル・・・約4%
スズキ・・・約3%
日産・・・フルローンも残クレも全国統一金利で大体4.9%で提示されている
金利は時期によって変動しやすく、新春売り出しキャンペーンなどの低金利キャンペーンが行われると2%、1%後半のかなりお得な金利で残クレが組めることもあるので、こまめにチェックするのがおすすめです。
残価設定ローンを組んだ車は買取に出せる?買取に出すための条件などを解説
ディーラーの残クレプランを特典で比較
残クレには、さまざまな特典がついているプランもあるので注目して見てみましょう。
スバルの残クレは、バンパーとドアミラー、ドアパンチの3つの部分の故障や損傷に対し、3年間の無償修理がサービスでついています。
三菱の残クレは、修理補償と修復歴補償が特典としてついてきます。窓ガラスとドアミラー、タイヤの3つの部位に関しては修理が無償です。
残クレでは事故により車が損傷し修理すると、契約終了時の査定で減点がつき、追加金を請求されることがあります。しかし、修復歴補償があれば、万一事故で車を修理して下取り額が下がっても、一部を補償してくれるので安心です。
スズキの残クレはオイル交換や定期点検などがついてくるメンテナンスパックが特典となっています。スズキで新車を購入すると、最大で5万円のキャッシュバック特典もありなど、利用すればとってもお得です。
ディーラーの残クレプランを使いやすさで比較
各自動車メーカーの残クレの中には対象車が限定されているプランもあれば、全車対象となっているプランもあります。
対象車が限定されていると、気に入った車が含まれていなければ利用できませんが、対象車限定のプランは他のローンよりもかなり金利が優遇されているなど、メリットも多いとされています。
あまり車種にこだわりがないなら、よりお得なプランを利用するのも節約となるでしょう。
マツダの残クレには残価を据置額として設定するプランもあります。据置額にすると、ローン契約終了時まで残価は保証されず、中古車市場の価格変動によっては残価が下がるかもしれません。
ただし、通常は残クレはではカスタマイズは禁止ですが、このプランだとカスタマイズOKとなっています。そのため、カスタマイズしたい方向けだと言えます。
それぞれの特徴を理解して自分にあったものを選ぶことが大事
車を購入する際に使うローンには、色々な種類があります。
フルローンと残クレだけでも特徴が違い、それぞれにメリットデメリットもあるので事前によく知っておくことが大事です。
何を優先させるかによっても、選ぶローンが違ってきます。
「短期間で新車乗り換えたい」「月々の支払いを抑えたい」といったことが優先なら残クレが向いています。「手続きは面倒でも低金利でローンを組みたい」なら、銀行系マイカーローンがおすすめです。
ローンといっても、各自動車メーカーによって条件や特典なども違ってくるので、よく下調べしておきましょう。自分の収入状況やライフプランなどを考え、一番適したローンを使うことで計画的に返済していけるでしょう。
返済が滞ると、車を手放さなければならなくなるリスクも抱えています。そのため、車のローンを組むときは慎重に行う必要があります。
また、車の購入や所有にこだわらなければ、カーローンを検討するのも有効です。
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