残価設定型クレジットにはメリットもあれば、デメリットもあります。そのため、利用を考える際は良いところばかりに目を向けないで注意する必要があります。
よく考えないで利用すると損することもあります。
残価設定型クレジットの特徴を紹介していくので、頭に入れながら自身のカーライフにマッチするかを検討していきましょう。
残価設定型クレジット(ローン)とは?
車のディーラーが提供する残価設定型クレジットは、ローンを組む金額の範囲が一般的なマイカーローンとは大きく異なります。
下取り価格は数年後の車の価値として「残価」と呼ばれます。残価はローンの最終回の支払いに持ち越される形となります。
そのため、ローン契約終了前の最後の支払いで、残価を支払って車を買い取ることも可能です。残価の返済は、一括もしくは再ローンを組めば分割もできます。
また、残価を支払わないでそのまま車を返却することもできます。他にも同じく残価を支払わず車を下取りに出して、新たに別の車に乗り換えるという選択肢もあります。
残価設定型クレジット(ローン)のメリット
残価設定型クレジットには、いくつかのメリットがあります。
- 毎月のローン返済額がフルローンよりも安くなる
- 短期間でのローン契約が前提となっているので短いスパンでの乗り換えがしやすい
車検前に下取りに出せば、車検費用が不要となるので維持費削減にもなるでしょう。さらに、予め設定された残価は、ローン契約終了時まで保証されるので下取り額が下がることはありません。
他にも頭金が不要であったり、ボーナス払いをしなくてもよかったりと、まとまった資金が準備できない人にとっては使いやすいローンだと言えます。
毎月のローン返済額が抑えられる
ローン契約前に設定された残価は、予め車両本体価格から差し引かれ、残りの金額で分割ローンを組むことになります。そのため、必然的にフルローンよりも残クレの方が月々の支払額が少なくなるのが大きなメリットだと言えます。
残価は、ローンの最後の支払いに据え置かれます。車を返却もしくは下取りに出して乗り換えれば、残価分の返済は不要です。
例えば200万円の車を購入し、3年の36回払いのローンを組んだとしましょう。残価は80万円とすると、残クレの場合35回で残価を引いた120万円を支払い、36回目の支払いで80万円の残価を支払うか、車を返却、下取りに出して乗り換えることになります。
フルローンは200万円を36回で支払います。残クレだと月々約3万4000円、フルローンでは月々約5万5000円の返済となり差額が生じます。
利息などを含めると差額に違いは生じますが、残クレの方が支払額が少ないことが分かるでしょう。
3~5年で車の乗り換えがしやすい
車は購入代金は高いので、一度購入するとある程度数年は乗り続けるのが一般的とされています。
しかし、残価設定型クレジットはディーラーが短いスパンでの乗り換えを推奨するために打ち出したローンなので、短期間でのローン契約が可能です。
月の支払額の負担もフルローンより軽減されるので、より乗り換えしやすい環境が整います。車が好きで短期間で色々な車種の新車に無理なく乗りたい人のニーズにマッチしたローンだと言えるでしょう。
また、家族が増えたなどライフスタイルに合わせて軽自動車からミニバンへと乗り換えたいという人向きでもあります。
維持費の節約につながる場合もある
車を購入するにはまとまったお金が必要ですが、購入後使用し続けるにも維持費がかかります。
中でも車検費用は新車購入から3年、以降は2年後に受けなければならないと法律でも規定されています。しかも1回につき「数万~十数万円」もかかるので維持費の中でも結構な出費になるでしょう。
車検前に車を手放してしまえば、車検費用を支払う必要もなくなります。残価設定型クレジットはそれが可能です!
3年のローンを組んで1回目の車検前に車を返却もしくは下取りに出して、別の車の乗り換えてしまえばよいからです。
5年の残クレであっても1回だけ車検を通し、2回目の前に車を手放してしまえば車検費用は不要となり維持費節約につながります。
残価が保証されている
残価設定型クレジットのローン契約時に、ディーラーの方で残価が設定されます。この予め決められた残価は、最終回の支払いまでそのままの額が保証されます。
中古車市場では中古車の価格は、需要や車のモデルチェンジなどによって日々変動すると言われています。そんな中、残クレ契約中の車の下取り額が、中古車市場で下落する場合も十分あり得るでしょう。
しかし、市場価格が下がったとしても、残価はそのままの価格で下取りしてもらえるというメリットがあります!
残価が保証されていると次に車を乗り換え契約もしやすいと言えます。
中古車にも対応しているローンもある
残価設定型クレジットは、新車の適応されるローンだと思われがちですがそうではありません。中古車に対応しているプランもあります!
ホンダの「Honda中古車限定 据置クレジット」はその一例です。返済金額は毎月3000円以上、支払い回数は12~60回、ただし最終支払い月は初年度登録から8年以内など返済条件が決まっています。
他にもスバルの「スマートプランU」などのプランがあります。
ただし、中古車対象の残クレを利用する際は注意が必要です。新車だと下取り額が残価として設定され、最終回の支払いまで保証されます。しかし、中古車の残クレの場合は残価ではなく「据置額」として価格が設定されるのです。
据置額は最終回の支払いまで保証されないので、中古車市場の価格の影響を受け下落する可能性もあります。そのため、差額が生じたら負担しなければなりません。
メンテナンスパックやキャッシュバックなどの特典つきプランもある
各自動車メーカーでは残価設定型クレジットのプランを打ち出しています。残クレの基本的な仕組みは同じですが、特典などの内容が違います。
例えばスバルの「安心プロテクト3」は補償サービスがセットのプランです。ドアミラーやバンパー、ドアパンチの3つの部分に関しての3年間は無料で修理してくれます。
また、スズキの「かえるプラン」では、半年ごとの点検やオイル交換が無料となるスズキ安心メンテナンスパックという特典つきです。さらにスズキの新車に乗り換えることで、最大5万円のキャッシュバックが受けられる特典まであります。
残クレのプランでも維持費が節約できる、そしてキャッシュバックが受けられるプランを選ぶことで少しでもお得に残クレを使うことができるでしょう。
手続きがスピーディーで楽
車のディーラーが提供する残価設定型クレジットは、ローン契約に必要な手続きを車の購入とほぼ同時に行えます。
しかも、ディーラーのスタッフがほぼ全ての手続きを代行してくれます。本人確認書類や審査に必要な年収などを証明する書類など自分で準備しなければならないもの以外、全てディーラーが準備し手続きも進めてくれるのでとても楽です。
また、ディーラーは車を担保にとるので、ローンの審査基準もさほど厳しくなく、通りやすいと言われています。審査申し込みから審査が通るまでの期間も短いのでスピーディーに効率よく手続き終わり、ローン返済をスタートさせられます。
一方で、審査基準も厳しく時間がかかるとされているのが金融機関系ローンです。その上、金融機関は平日の昼間しか空いておらず、その時間に出向いて、自分で全ての手続きを行わなければなりません。
まとまった費用がなくても購入可能
通常車を購入する際にローンを組んだら、購入代金の何割かを予め支払う頭金が必要となりますが、残価設定型クレジットは頭金を用意しなくてもローンを組むことが可能です!
そのため、車購入時にまとまったお金が準備できなくても購入可能というメリットがあります。
また、夏と冬のボーナス時期には少しまとまった返済をするのが一般的なローンではよくあることですが、残クレでボーナス払いも不要なので、ボーナスが出ない、ボーナスが少額で車費用に回せないという人でも無理なく支払えます。
残価設定型クレジット(ローン)のデメリット
残価設定型クレジットにはデメリットもあるので、特に利用を検討する際は把握しておかなければなりません。
残価設定型クレジットの金利は「元本に対して設定される」ので、利息の支払額が多くなります。
ローン契約中に事故で車が損傷を受けた場合、程度によっては追加金の支払いが必要となるかもしれません。
他にも予め車の走行距離が決められています。もしオーバーした場合は、車の傷と同様に追加金の請求が来ることもあります。
元本に車ローン金利がつくので総支払額が高くなる
自動車ローンには金利が設定されており、残価設定型クレジットでも同様です。
残クレは車両本体価格から残価を差し引いた額でローン組みますが、金利は残価も含んだ金額に対して設定されています。つまり、残価分にも利息がかかるので、フルローンと比べると余計に多く利息を支払うことになるのです。
残価分を最終回の支払いに据え置いて総支払額を計算すると、フルローンよりも残クレの方が利息の分だけ結果的に支払額が増えるという結果になります。
月々の支払額は少ないですが、総支払額だけを見るとフルローンの方がお得ということになるでしょう。
ただ、車は手元に残りませんが返却すれば残価分の支払いは不要となるので、総支払額は残クレの方が少ないという結果になるのです。
返却時に追加金が発生することもある
ローン契約時に設定された残価は、基本的には契約終了までは保証されます。ただし、それとは別に、決められた残価保証条件を満たしていない場合、追加金が請求されることもあるので要注意です。
その一つが、ローン契約中にの事故により車が損傷した場合です。契約終了時に査定が行われ、車の傷や凹みの程度により査定点数が減点されていき、減点数によっては追加金が発生することがあります。
さらに、事故により全損して車としての価値がなくなった場合、査定するまでもなく廃車となります。その際は、残価と残りのローン返済分の支払いが求められるでしょう。車はないのにローンだけが残るという事態になってしまいます。
また、自動車税が未納である、ディーラーが指定する点検整備を受けていない場合も条件に違反するとみなされ、追加金が請求されることもあります。
走行距離の上限が決まっており、カスタマイズも禁止
残クレの契約期間が終了し、下取りに出して返却された車は中古車として再販されます。
中古車としての価値を下げないために、残クレでは走行距離に制限を設けている場合がほとんどです。なぜなら、年式の割に走行距離が多い車は、中古車市場でも敬遠されてしまうからです。
月間1000㎞もしくは1500㎞以内、3年で4万㎞以内、5年で6万㎞以内というように設定されています。
走行距離をオーバーした際は超過分1㎞につき5円、10円というように、超過金の支払いが求められます。
そして、カスタマイズも条件で禁止されている場合がほとんどです。カスタマイズがあれば、査定時に違約金の対象となります。
諸経費を組み込めない
車を購入する際は、車両本体の代金だけではなく諸経費がかかります。
- 環境性能割(自動車取得の際に課せられる税金。以前は自動車取得税という名称でした。)
- 自動車税もしくは軽自動車税
- 自動車重量税や消費税
- リサイクル料などの税金関係
- 自賠責保険料(法定費用とも呼ばれます。)
- 車庫証明書費用
- 納車費用
- 車庫証明の手続きを代行してもらう手数料
など、諸費用が数万円かかります。
自動車税など1年後にまとめて1年分を支払うものもありますが、取りあえず車購入時には必要です。
このような諸経費はローンに組み込みことができません。これはフルローンでも同様のことです。ローンはあくまでも車両本体価格に対してなので諸経費は初回に支払わなければなりません。
契約終了時に残価より価値が上がると損することもある
残価はローン契約終了時まで下落することはないですが、逆のケースも考えられます。
中古車市場の価格変動により「契約終了時の査定額が、残価よりも高くなる」場合です。そうなると「下取り価格も上がるのではないか?」と期待する人もいるでしょう。
しかし、中古車市場の動向で下取り額が上がっても予め決められた残価には全く影響しないので、残価が上がることはありません。
結果、査定額と残価分に生じた差額分だけ損をすることにもなってしまいます。
しかし、残価を支払って車を引き取り、別の中古車買取業者に高値で売ることができれば、差額分は取り戻せるかもしれません!
残価設定ローンに向いている人
残価設定型クレジットは、車購入を考えている全ての人に得になるかとい言うと必ずしもそうではありません。
あくまで短い期間での車の使用や乗り換えを前提とするローンなので、できる限り長く1台の車に乗るという人には適さないでしょう。
逆に学生時代だけや地方に転勤した時だけ車は必要というように、車を所有する期間が決まっている人にとっては便利で使いやすいローンだと言えます。
残価設定型クレジットは、「色々な車に乗りたい」「ライフスタイルによって車種を乗り換えたい」という人にも適しています。
また、「ちょっとそこまで買い物に行くのに車を使う」「長距離乗ることはほぼない!」という走行距離が少なくて済む人にも向いています。
残価設定ローンに不向きな人
逆に残価設定型ローンが適さない人の条件もあるので、当てはまるかどうか、自身の場合と照らし合わせてみましょう。
まず月々のローン返済が必要となるので過去にローン返済で失敗経験があり、債務超過や債務遅延を繰り返したことがある人はやめておくべきです。
また、事故により車を損傷すると追加金が発生することから、運転が荒い人や初心者で運転に不慣れな人、苦手な人も事故のリスクが大きいので残クレをは不向きだと言わざるを得ません。
さらに、走行距離が伸びそうな条件の人、例えば長距離通勤をしている、定期的に遠出をする人なども追加金が発生する可能性があるので損することになるでしょう。
メリットとデメリットを知り、利用するかを判断しよう
残価設定型クレジットは誰しも便利に、お得に使えるというわけではないことをまず理解してください。
残クレに向いているのは「車の必要期間が決まっている人」などです。
事故は予測不可能ですが、走行距離の上限に関しては予測しやすので距離が伸びそうな人は損することになりかねません。
また、お得に利用する際は、各自動車メーカーの残クレプランを調べて、また残価率の高そうな車を探すなど事前の情報収集なども必要となってきます。
カーライフなどを見据えながら残クレを利用するかどうか、ゆっくり考えてみましょう。