車の購入時に組むローンには、残価を差し引いた残金でローンを組んで分割返済する「残価設定ローン」があります。
これは、ディーラーが推奨しているローンで、月の返済額が減らせるなどの様々なメリットがありますが、逆にデメリットもあるので利用するなら詳しく知っておく必要があるでしょう。
残価設定ローンの賢い活用法についてや、仕組みが似ている「カーリース」との違いなども見ていきましょう。
車購入時のローンの種類
車購入時に、分割で購入金を返済するローンを組む人は多いでしょう。
それぞれメリットとデメリットがあるので、利用の際はよく知ってことが大事です。
ローンでは、車両の購入総額を全額ローンに組み込むフルローンがよく知られていますが、「残価設定ローン」を選択することも可能です。
新車を数年後の下取りした際の価値を残価として設定し、車両本体価格から残価を据え置き、残りの額をローンで分割返済する仕組みになっています。
(購入額)-(数年後の下取り額)=ローン返済額
・車の下取りを前提としてて新車に乗り換える
・車を返却する
・継続して乗るなら残価の一括もしくは分割返済をする
残価設定ローンで勘違いしやすいのが、金利についてです。
また、ローンから引かれている「残価分」は、支払わなくていいというわけではなく、分割の最終支払い回に据え置かれているにすぎません。もし、契約終了後に「予め設定した残価よりも車の下取り額が下がった場合」据え置き額と査定額の差額を精算しなければならない場合もあるのです。
残価設定ローンは、ディーラーで下取りを行うためのローンだとされています。そのため、新車購入時に一緒に契約するものです。
ローン契約に必要な書類の準備や手続きなどは、全てディーラースタッフが代行してくれるため、面倒がなく効率的です。比較的スムーズにローン契約が進むのでストレスもないでしょう。
ローンで気になる審査ですが、以下が審査項目として挙げられています。
- 収入
- 他に債務がないか
- 職業 など
銀行系のマイカーローンに比べると審査も比較的通りやすく、それほど厳しくないと言われているのです。
残価設定ローンのメリット

・月々のローン返済額がフルローンよりも安い
・予め下取り額が保証されているので契約終了時に安心
・ローンの期間が短く設定できるので3~5年での乗り換えが可能
それぞれの内容について詳しくご説明します。
残価設定ローンの最大の魅力というと、やはり月々のローン返済額の安さと言えます。
車には毎月「維持費」がかかるので、ローンを組むとローン返済金も支出に加算されます。残価設定ローンにすると、フルローンよりも毎月のローン返済金が少し減るので経済的負担が軽減されます。
そのため、残価設定ローンを利用することで車を購入できるという人もいる位です。
また、通常車の購入でローンを組むと、始めに頭金が必要になります。更に、ボーナス月にはいつもの返済額よりも多めに返済する場合もあるでしょう。
残価設定ローンは頭金もボーナス払いも不要なので、計画的な返済ができるというのもメリットだと言えます。
一般的に車を乗り換える際は、ディーラーの下取りに出すと人気車種ではなく、モデルチェンジの後などのタイミングだと下取り額は大幅に下落します。しかし、残価設定ローンだとローン契約時に予め下取り額が据え置かれ保証されています。
ローン契約終了時に乗り換える際も、中古車市場で価格が下落している車であっても、その額で下取りしてもらえるので安心です。
ただ、ローン契約中に交通事故などで車の大きな損傷がある、修復歴ができた場合は、査定により下取り額が下がる可能性があるので頭に入れておきましょう。
残価設定ローンは短期間でもローンを組むことができるので、短いスパンで車の乗り換える考える人にとってはとても好都合です。
車の乗り換えは大体3~5年の車検前のタイミング行う人も多いでしょう。それは、車検を通すのに数万円費用がかかるからです。車検前に車を乗り換えてしまえば、車検費用は不要なので節約にもなります。
また、新しい車に乗りたいと人もいるでしょうが、毎回フルローンを組んでいては経済的な負担も重いでしょう。その点、残価設定ローンなら、残価分の支払いを抑えて、次に新車の乗り換えることができるのでお得感があります。
そして、車は長く乗るとその分、部品が消耗したり劣化して故障しやすく、メンテナンスや修理が必要となり費用がかかります。しかし、その前に乗り換えることでメンテナンス費も節約できることになるでしょう。
残価設定ローンのデメリット

・元の購入総額に対して金利がかかるので、トータルで見ると総支払額がフルローンを上回る
・契約中に事故により修復すると、追加金や残価額の一括返済を求められる
・走行距離に上限がある
・人気車だと残価よりも実際の査定額が高くなり損することもある
それぞれの内容について詳しくご説明します。
残価設定ローンは、購入総額全額に対する金利となります。つまり、残価に対しても金利がかかるので、総支払額はフルローンより増える傾向にあります。
毎月のローン返済額はフルローンよりも安いですが、その分元本が減るスピードが遅いので、フルローンよりも余分に利息を払うことになってしまうのです。
例えば、200万円の車を3年間の残価設定ローンを組むとします。
残価を50万円、金利を年3.9%で計算すると、月々の支払額は約3万4000円程で、総支払額は約217万7000円と算出されました。
一方で、一般的なフルローンの場合月々の支払いは約5万9000円と残価設定ローンよりも高くになります。しかし、総支払額は約212万円3000円と残価設定ローンを下回るのです。
残価設定ローン契約中に交通事故により車に損傷が見られると、返却を選択できないケースがあるので要注意です。
例えば、事故で損傷すると、修復歴のある車ということで一般的に車の価値も下がってしまいます。すると、ローン契約終了時に据え置いた残価よりも、査定額が下がった場合に「差額分を支払う義務」が生じるのです。
全損になった場合は、契約終了を待たずに車両を返却できず、引き取って「残価分も含めた返済」が余儀なくされます。全損で修理にできない場合は解体ということになるので、車がないのにローンだけを返済し続けなければならないという事態に陥るのです。
しかも、相手がいる事故や、単独でもガードパイプなどを破損した場合は、賠償が必要となります。自動車保険に未加入だと、賠償金まで全額自腹となるので、かなりの経済的負担となるでしょう。
残価設定ローンには、こういったリスクがあることを覚えておくべきです。
予め残価設定ローンの対象車には、走行距離の制限が決められている場合がほとんどです。
それは、中古車として販売する際に、年式が新しくても走行距離が多い車は価値が下がり、需要も減ってしまうからです。車は長距離走ると当然エンジンなどに負荷がかかり、部品などが消耗、劣化して修理やメンテナンスが必要となってしまいます。
契約時に前もって決められていた、上限走行距離を契約終了時に超えていると「負担金」が発生することもあるでしょう。通学や通勤で車を頻繁に使う、長距離を習慣的に乗るという人は特に注意が必要です。
走行距離の制限は各自動車メーカーによって違いがあります。月間1000㎞もしくは1500㎞、走行距離が2年で3万㎞以下といった条件がつけられているのです。
ローンを組む前にある程度、月間走行距離を計算しておくと良いでしょう。
残価が契約時に既に決まっていると安心な反面、車によっては契約終了時に残価よりも「査定額が高くなる」場合もあります。
例えば、中古車市場で人気の車種でモデルチェンジから間もない車だと、中古車市場での需要も高まり価値が下がりにくいと考えられています。いざ、車を手放す時に中古車買取業者にもっていけば下取り額よりも結構な高値で売れるのに…その選択はできません。
査定額が高かったとしても、ディーラー側で敢えて価格を上げてくれることはありません。実際の価値よりも安く引き取られるので、ローンを払った当人は結果的に損をすることになるでしょう。
そういったことも予め了承しておくことが大事です。
残価ローンは上手く利用すればお得になる?
残価設定ローンは月の返済額が安くなるなどのメリットがある反面、金利分だけ総支払額が高くなるなどのデメリットもあります。そのため、車を購入する人全てが利用した方が良いとは限らないのです。
まずは、特徴をよく理解して、その上で利用した方が良いかどうかを慎重に検討した方が良いでしょう。ただ、特性を生かして上手く利用すれば、人によってはお得で使いやすいと感じる場面も多々あります!
自身のライフスタイルに応じて、使った方が良いのか、良くはないのか判断は分かれます。
更に、自分がどのように車に乗っていきたいかによって残価設定ローンが向いている、向いていないも違ってくるので、メリットばかりを鵜呑みにしすぎないことが大事です。
残価設定ローン向きの人とは?

例えば、大学在学中や、自宅では家族が車を使うから、単身赴任中のみ車が必要という人などが当てはまります。予め必要だと思われた期間が過ぎても、下取りに出して新車に乗り換える、残価を支払って乗り続けることもできるので効率的です。
更に、短い期間新車に乗り換えて色々な車を乗りたい、モデルチェンジしたら乗り換えたいという人にも向いています。他にも、気に入った特定のメーカーの車に乗り続けたいという場合にも適しているでしょう。
残価設定ローンはディーラーが行うローンなので、手続きなども全て任せておけます。メーカーを変えると信販会社なども変わる場合が多く、手続きがやや面倒になります。
しかし、同じメーカーの車に乗り換えるなら、面倒な手続きもやってもらえるので効率的です!
残価設定ローンを使わない方がよいケース

・ローン返済の失敗経験がある人
・長距離運転する人
・運転に自信がない人
・カスタマイズ好きな人
クレジットカードの分割払いなどで、予想以上に返済金が多かった、支払いが滞った経験がある場合などが当てはまります。
ローンの返済を穴埋めするために別のローンを組む、いわゆる借り換えを数回行うことで、結局は自転車操業となり自己破産に追い込まれてしまうこともあるのです。
また、走行距離の上限が決まっているため、長距離運転する人も不向きです。
その他に、事故を起こし車に損傷を与えると、残価と実際の下取り金に生じた差額の支払いを求められることがあります。そのため、運転に自信がない、初心者やペーパードライバーだった人は事故のリスク高いので向いていないと言えるでしょう。
加えて、車のカスタマイズができないので、カスタマイズ好きな人も利用しない方が良いと言えます。
残価設定ローンで得する車種とは?
残価設定ローンを利用するなら、「高残価となる車種を選ぶこと」ができるとお得です。中古車市場で需要が高く、価値が下がりにくい車種は残価も高く設定される可能性があるからです。そうなると、ローン返済額がより少なくて済みます。
更に、各ディーラーで「低金利として紹介されている車を選ぶこと」もおすすめです。残価設定ローン対象車は、全て同じ金利とは限りません。車種によってや、ディーラーによって、ローンの条件や金利などが違ってくるのでよく調べておくと良いでしょう。
残価設定ローンと仕組みが似ているカーリースとは?

車両価格から下取り価格を残価として差し引き、残りの金額を契約年数で割って月々の支払額が決まる点は、残価設定ローンと似ています。また、車の返却を前提にするのも同じ考え方です。そして、車の返却時に傷などがあると、追加金を支払わなければなりません。そういったところも似ています。
カーリースと残価設定ローンでは、どちらがお得?
カーリースには税金や車検費用などが含まれているので、よっぽど急なまとまった出費に悩まされることはなく、家計管理がしやすいでしょう。一方残価設定ローンは月々に返済額はリース代より安いですが、車検や税金は別途支払う必要があります。
どちらにもメリット、デメリットがあるので一概にどちらがいいとは言えません。
例えば、車検前のタイミング、3年や5年未満で乗り換えるなら残価設定ローンでも良いでしょう。一方、車検を意識しないで、好きなタイミングでリース契約したいならカーリースがいいなど、自分のライフスタイルや車に対する考え方によっても選択が変わってきます。