マイカーをお持ちの方なら、自賠責保険に加入しているはずです。道路交通法上、自賠責保険に未加入の車は公道で運転してはいけません。
そんな自賠責保険料は、何度も見直されているのはご存知でしょうか?
ここでは2020年4月1日に改正された自賠責保険料について詳しく見ていきます。保険料のコストを安くするテクニックについても併せて紹介します。
自賠責保険値下げの概要を解説
2020年4月1日に自賠責保険料が見直されました。これは2017年以来のことで、3年ぶりの見直しです。
自家用車・軽自動車・バイク、それぞれの保険料の引き下げ内容が異なるため、以下で解説します。
全車種平均16.4%自賠責保険がお得に
2020年の新しい自賠責保険料は、全車種平均で16.4%安くなりました。直近の2017年の改定では平均6.9%の値下げだったので、さらに値下げ幅が広がっています。
車種によって、保険料の値下がり幅は異なりますが、ほとんどの車種で10%を超える値下げになっているので、自賠責保険料の負担は今後かなり軽減されるでしょう。
では、皆さんのお手持ちの車の自賠責保険料はどの程度下がるのか、自家用車と軽自動車、バイクの保険料の変化について解説します。
一般家庭で所有している車の多くは、自家用乗用車に該当するでしょう。そんな自家用乗用車の自賠責保険料は、大幅に値下がりしました。
以前の自家用乗用車の自賠責保険料は2万5830円でした。これが2020年から適用される自賠責保険料で「2万1550円」に変わります。
つまり、4280円保険料が安くなります。値引き率でいうと16.6%下がった計算になります。
以前の自家用乗用車の自賠責保険料は3万2350円でした。これが2020年から適用される自賠責保険料で「2万9520円」に変わります。
改定前と比較して6430円の値引きです。率で見ると17.9%となるので、さらに大幅な値下げとなりました。
マイカーとして軽自動車を保有している世帯も多いでしょう。メンテナンスコストが安いうえ、小回りもきくので運転しやすく人気です。
軽自動車の自賠責保険料も今回の改正で値下げされました。
以前までの保険料は2万5070円でしたが、今回の改正により「2万1140円」となります。2年間で3930円保険料が安くなり、値引き率でいうと15.7%下がった計算になります。
以前までの保険料は3万4820円でしたが、今回の改定により「2万8910円」となります。3年間で5910円の値引きです。値引き率で見ると17.0%となり、自家用車ほどではないですがかなり安くなっています。
バイクの所有者も自賠責保険に加入しなければいけません。バイクの自賠責保険も2020年4月1日に見直され、値下げされています。
これまでの自賠責保険料は2年契約で1万1520円でしたが今回の改定で「9680円」に変わります。1840円値下がりし、16%の値下げとなります。
これまでの自賠責保険料は2年契約で9950円でしたが今回の改定で「8950円」に変わります。1000円値下がりし、10.1%の値下げとなります。
離島地域の自賠責保険料
自賠責保険料を決める要素には、車種のほかにも地域が関わってきます。
特に離島における自賠責保険料は、他の地方と異なる設定です。一般的に沖縄県を除く離島、離島を除く沖縄県、沖縄県の離島地域の3種類で保険料が異なります。
2020年4月1日の改定によって、それぞれの地域の保険料も見直されました。以下の項目では沖縄県始め、離島地域に住んでいる人のために、2020年4月1日以降の保険料についてまとめました。
今後、自分たちがどの程度保険料を負担することになるのか、参考にしてみてください。

新しい自賠責保険料は、2年契約で8070円、3年契約で9510円の負担となります。
沖縄県を除いた離島地域で暮らしている人の中には、マイカーとして軽自動車を保有している人も多いでしょう。燃費も安く、ランニングコストがあまりかからないため人気の車種です。
新しい自賠責保険料は、2年契約で7460円、3年契約で8600円になります。こちらの保険料は検査対象車の場合です。
新しい自賠責保険料は、2年契約で5840円、3年契約で6190円になります。
離島地域を除く沖縄県、つまり沖縄本島在住の方も、2020年4月1日から新しい自賠責保険料が適用されます。
2年契約で1万1120円、3年契約で1万4040円となります。
ほかの地域同様検査対象車と検査対象外の軽自動車で保険料が異なります。検査対象車の軽自動車を保有している場合、2年契約で1万1120円、3年契約で1万4040円です。そのため、自家用乗用自動車の自賠責保険料が変わりません。
2年契約で5380円、3年契約で5500円となります。
沖縄本島と沖縄県の離島地域とでも、自賠責保険料は異なります。こちらも、2020年4月1日から新しい自賠責保険料が適用されました。
2年契約で8070円、3年契約で9510円になります。
他地域と同じく検査対象車か検査対象外の軽自動車かの違いで保険料は異なります。検査対象車の軽自動車の新しい自賠責保険料は、2年契約で5960円、3年契約で6370円になります。
新しい自賠責保険料は、2年契約で5380円、3年契約で5500円となります。
普通自動車と軽自動車の保険料の差が少なく
2020年の自賠責保険の改正で、全体的に保険料は値下げされましたが、車種によってその値下げ幅には違いが見られます。2020年の自賠責保険料の改定で、普通自動車と軽自動車の保険料の差が縮まりました。
例えば2年契約の場合、自家用乗用車は2万1550円で軽自動車は2万1140円ですから410円の差です。最近の傾向として、普通自動車と軽自動車の保険料の差はどんどん縮まっています。
2017年以降の軽自動車の自賠責保険料は、普通自動車の80%程度でした。これが2020年の改定によって、軽自動車の保険料は普通自動車の98%です。
両者の保険料にはほとんど違いがなくなっていると言っていいでしょう。
自賠責保険が安くなる背景とは?
2020年4月1日に改定された自賠責保険料は、以前と比較して値下がりしました。しかも、軒並み2桁の値引き率と大幅な値下がりです。
なぜ、これほどまでに自賠責保険料が安くなったのでしょう?
そこには自賠責保険料設定における考え方と、近年の交通事故の背景などが関係しているので以下で詳しく紹介していきます。
自賠責保険が安くなったのは保険収支の均衡のため
自賠責保険料は、これまでに何度も値上げと値下げを繰り返してきました。これは、保険収支を見て適正に調整しているからです。
自賠責保険は、保険収支がプラスになってもマイナスになってもいけないという前提があります。つまり、保険料収入が保険金支出を上回れば値下げをすることになり、逆の収支バランスになれば値上げをしているのです。
そこには「ノーロス・ノープロフィット」という原則が背景にあります。この言葉はどういう意味なのか、以下で詳しく見ていきましょう。
「ノーロス・ノープロフィット」を日本語に訳すと「損も得もしない」という意味です。
任意保険の場合、保険会社も利益を追求しなければなりません。ところが、自賠責保険は損も得もしないように価格を調整しています。
保険料を値上げすれば、保険料収入が保険金支出を上回るでしょう。つまり収支は黒字になって、保険料をプールできます。そこで、次の見直しの際に保険料を値下げして、プールした保険料を吐き出すわけです。
これを繰り返すことによって、トータルで見て損も得もしない収支にしなければなりません。
近年の動向を見ると、定期的に値上げと値下げを繰り返していることがわかります。2017年と2020年には立て続けに値下げしていますが、それ以前の2011年と2013年には連続して値上げしています。
自賠責保険は、対人賠償に限定された保険です。この特徴も2020年の保険料値下げに影響したと考えられています。
任意保険も定期的に保険料の見直しが行われますが、値上げされるのは対物賠償や車の修理の車両保険の支出が多くなるからです。
一方、自賠責保険はたとえ車の修理費用が高まっても、一切の影響を受けません。また、人身傷害や搭乗者傷害のような加害車両に関する保険金は自賠責保険の対象外です。補償の対象が限定されているので、保険金支出も限定的になります。
保険金支出するための条件が、任意保険と比較すると自賠責保険の方が厳しいです。このことも保険料値下げに対象影響したと考えられています。
交通事故減少も自賠責保険料値下げの背景
自賠責保険料値下げの背景として、交通事故の減少も大きく関係しています。交通事故が少なくなれば対人賠償の保険金支出も少なくなり、保険料が下がるからです。
2019年の交通事故件数は、約38万件で死者3215人でした。一方、2011年のデータを見てみると、交通事故件数約73万件、死者数も4979人です。
この8年間で交通事故の発生件数が約半数に激減しています。このような影響もあって、保険料が値下げされました。
実際自賠責保険で支出された保険金を見ても、近年減少傾向であることがわかるでしょう。2019年における保険金の支出額は7110億円でした。
ちなみに、2011年の支出額は8476億円です。1300億円以上支出の抑制されていることがわかります。
自賠責保険料を安くする方法
車検を通すたびに自賠責保険料は負担しなければなりません。車検が近づくと自賠責保険料を支払うために、家計のやりくりに頭を悩ませている家庭も多いでしょう。
自賠責保険を含め保険料コストを安くする方法についてまとめました。
自賠責保険料を安くする方法はない
自賠責保険料の金額を決めている要因は、車種と加入期間、住んでいる地域だけとなります。また、自賠責保険料はどの保険会社で加入しても一律です。
個別の事故リスクや年齢、運転する人などが任意保険と違い保険料を決める要素に含まれていないため、安くする術がありません。
それでも、もし自賠責保険の保険料を安くしたければ、加入期間を長くするという方法があります。自賠責保険は加入期間によって、割引率が異なる設定になっているからです。
ただし、この割引率もどこの保険会社でも同一となっています。通常は2年契約で加入する人が多いのですが、さらに長期契約することで、多少自賠責保険を安くすることは可能です。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
自動車の任意保険で安くするのがおすすめ
自賠責保険だけでなく、任意保険に加入すべきとよく言われています。
自賠責保険はあくまでも被害者を救済するための保障で、その内容も最低限です。対人や対物賠償の発生する交通事故を起こすと、自賠責保険だけでは賄いきれない場合が多いです。
そこで、自賠責保険の不足分を任意保険でカバーする形になります。この任意保険は、保険会社や補償内容を比較することで保険料を安くできます。
任意保険の保険料を安くする主な方法についてみていきましょう。
自賠責保険と違い、任意保険は各保険会社が独自の基準で保険料を設定しています。まったく同じ条件でも保険会社ごとに保険料が異なるため、それぞれの保険会社を比較すると良いです。
現在、加入している任意保険の保険料を割高に感じているのなら、ほかの保険会社の見積もりをチェックしましょう。そうすることで、保険料負担を軽減できるかもしれません。
コマーシャルでもしばしば宣伝していますが、ネット型自動車保険は保険料が安いと言われています。店舗を構えないことでお店のコストや人件費を従来の代理店型よりも圧縮しており、それをお客さんに還元しているからです。
これから任意保険に加入する際にも、複数から見積もりを取るようにしてください。
任意保険の保険料を大きく変える要素として車両保険があります。任意保険の保険料が高いと感じているのであれば、車両保険の見直しを検討するのも一つの手です。
例えば、免責金額を設定するだけでも保険料を安くすることができます。免責とは、車両保険で修理する際、一定金額までは自分で負担するという条項です。
具体的に見ていくと、例えば免責金額5万円の車両保険に入っていて、事故で修理代が40万円発生したとします。この場合支払われる保険金は35万円で、残りの5万円は自腹です。
免責金額を設定する、大きくすると保険会社からすれば負担する保険金が少なくなります。その分、保険料を安くしてくれるという仕組みです。
どの程度なら修理代を出せるか検討し、無理のない範囲で免責金額を設定してみるといいでしょう。
任意保険では運転者や年齢を限定できます。運転する人の条件を限定することで、保険料を従来よりも安くできるので見直してみてください。
例えば、だれが運転しても保障される保険を、本人や配偶者など家族の運転時だけ保障される任意保険に見直します。これだけでも保険料は安くなります。
その他には、年齢条件を設定することで保険料を安くすることも可能です。年齢条件を上にすればするほど、保険料は少なくなります。
過去の統計を見ると交通事故は年齢が若ければ若いほどリスクが高いからです。ただし、年齢条件を付ける際には注意も必要です。
例えば、今後子供が大きくなって自家用車を運転する可能性もあります。親に合わせて年齢条件を設定して、子供が事故を起こした場合に保障の対象外にならないようにしましょう。
家族で複数の車を所有している世帯もあります。そして複数の任意保険に加入しているケースも多いかもしれません。その場合、それぞれの任意保険で補償内容が被っている可能性があります。
その重複部分を取り外すことで、保険料を安くできます。
ちなみに被りやすい保障内容として考えられるのは、「人身傷害や弁護士費用特約」「個人賠償責任」などです。一つの保険で家族全員を保障しているものが多いので、複数に加入する必要はありません。
一度保険証券などを見て、それぞれどんな内容になっているか確認しましょう。重複しているものがあれば、その部分を外すのが得策です。
任意保険を見てみると、一定の条件を満たすと保険料が割引になるサービスも少なくありません。
例えば、ネットから申し込みをすると割引になるサービスはどの保険会社でも実施されています。ネットから申し込む、紙の保険証券の発行をやめるなどで保険料が安くなるかもしれません。
保険会社によって内容は異なるので、チェックしてみましょう。
その他には、早期契約割引を導入している保険会社もあります。保険の満期日から一定の日数以上前に更新契約を済ませると、保険料が割引になるものです。
割引制度を複数組み合わせることで、年間でかなりの節約効果も見込めます。自分ができる割引特典はないか、情報収集をしてみてください。
自賠責保険の今後について
2020年の見直しによって、自賠責保険料は値下げされましたが、これまでの流れを見ても、自賠責保険料は値上げと値下げを繰り返してきたため、これからもずっと自賠責保険料が値下げされ続ける保証はどこにもありません。
今後自賠責保険料はどういった値動きをするかについて以下で考察してみます。
決まったサイクルで自賠責保険料の見直しがなされているわけではありませんが、これまでの傾向を見るとだいたい3年ほどで改定が行われてきました。
実際に、2020年に見直される前の直近の改定は2017年と3年前でした。そう考えると、今後2023年に自賠責保険料の見直しが行われる可能性が高いです。
2023年ごろの改定では、値上げされる公算が「大」とみられています。2017年と2020年は2回連続値下げが行われ、それぞれかなりの値下げ幅になりました。
以上のことから、保険料のプールをこの6年くらいでかなり吐き出していると推測できます。今後は保険料を貯める、すなわち値上げに入る可能性が高いです。
自賠責保険の改定についての記事もさまざまなメディアで見られます。その中でしばし指摘されているのが、近年の自賠責保険料の値動きの激しさです。
何度か紹介したように、自賠責保険料の2020年の値下げ幅は全車種平均で16.4%です。2桁の値下げはユーザーにとっては助かるでしょう。
しかし、ノーロス・ノープロフィットの原則に基づくと、今後同じだけの値上げの可能性もあります。実際に、2011年と2013年に連続して値上げられたのですが、それぞれ11.7%、13.5%の値上げ率でした。
2桁の保険料値上げは、家計にとっては大きな負担となります。近い将来に大幅な保険料値上げも考えられることを視野に入れて、家計のやりくりをしたいところです。
2017年と2020年と連続して自賠責保険料は値下げ傾向にありますが、任意保険料は逆で値上げの傾向が続いている状況です。
実際に、2020年に主要な保険会社で任意保険の値上げを実施しました。値上げの背景として、消費税の引き上げに民法改正に伴う保険金の支払額の増加などが挙げられます。
保険料そのものに消費税はかけられません。しかし、保険会社が自動車の修理費や販売代理店に支払う手数料に消費税がかけられるので、その分引き上げられているのです。
その他には、自動車の装備充実も関係しています。自動ブレーキなど高度な機能が多くの自動車に搭載されるようになり、これらの機能は高価な電子部品を使っている場合が多いです。
修理費もかさむため保険料に反映されました。
任意保険料がもったいないため、自賠責保険だけでいいと思っている方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
自賠責保険は交通事故の被害者に対する補償に限られます。加害者側や物損事故に関する補償は一切ありません。
また、自賠責保険は被害者が死亡しても最大3000万円までです。賠償額はもっと多額になることも珍しくなく、1億円を超えることもあります。
そう考えると、自賠責保険だけでは実際に事故を起こすと足りません。その不足分を任意保険で補う必要が出てきます。
任意保険には車両保険が含まれます。車両保険には水害や地震に伴う車両の破損を保障も含まれるため、愛車を守るためにも必要な保険です。
自賠責保険に含まれず、任意保険で補償されるものに車両保険があります。
愛車で事故を起こした、もしくは不具合が起きたときの修理費を保障してもらえる保険です。最近の自動車を見てみると、最新鋭の機能が装備されている車種も少なくありません。
例えば、衝突被害軽減ブレーキが広く普及していますが、障害物に接近すると自動的に止まるので事故回避ができます。
しかし、もし衝突被害軽減ブレーキが故障してしまうと修理費も高くついてしまいます。障害物を検知するためにレーダーなどのセンサーが設けられ、これが不具合を起こすと修理費用は高いです。
最新鋭の車に乗っているのであれば、ひとたび故障すると高額の修理費を請求されるかもしれません。そのことを想定して車両保険を付けておくと安心です。