車が不要となって登録を抹消した車を再び乗る場合は、自賠責保険に加入することはできるのか疑問に思っている方は多いかもしれません。また、車検切れ車が車検を受けるには、自賠責保険への加入は必要となるのかも気になる点です。
このように登録抹消などでナンバーが既にない車に再び乗る場合や、車検切れの車に対して自賠責保険はどうすればよいかわからない人もいるでしょう。
ここではそういった場合の自賠責保険の加入方法について説明します。また、車検を受けるために一時的に取得する仮ナンバーについても見ていきます。
自賠責保険とは?
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法という法律で全ての自動車が加入しなければならないと規定されている自動車保険です。
法律で加入が義務付けられているので、未加入のままの車で公道を走行すると法律違反となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
自賠責保険は対人補償のみで、交通事故の被害者が死傷した場合の補償のみカバーされます。そのため、車や建物、ガードレールなどが壊れても対物補償はないので修理代は出ません。
また、自賠責保険の対人補償も支払限度額が決まっています。
- 被害者がケガをした場合・・・最大120万円
- 被害者が死亡した場合・・・最大3000万円
- 被害者がケガにより後遺障害を負った場合・・・最大4000万円
自賠責保険の対人補償では、この金額しか補償がなされません。しかも、この支払限度額を超える賠償額が請求されることもあるので、自賠責保険だけで全てをカバーしきれないこともあります。
自賠責保険は新車購入時に加入するのが一般的です。ディーラーや中古車販売店などで車の売買契約手続きと共に、自賠責保険の加入手続きも行うことになっています。
ただし、自賠責保険は一度加入すれば永久的に保険契約が続く保険ではなく、期限が決まっています。通常は車検時に保険を更新するので、購入時は初回車検時までの3年間です。2回目以降の車検は2年ごとなので、自賠責保険契約も2年ごと更新していきます。
ただし、車検期間と自賠責保険期間の時間にズレが生じると、自賠責保険だけ期限切れになる可能性もあります。そのため、自賠責保険だけ1ヶ月ほど余分に契約しておくのが一般的です。
車検時に整備不良で整備し直しとなっても自賠責保険はまだ有効期限が切れないので、車検を通す際に同時に更新手続きができるので効率的でしょう。つまり、自賠責保険の契約期間は以下のようになります。
37ヶ月(3年+1ヶ月)
25ヶ月(2年+1ヶ月)
自賠責保険は保険期間が決まっており、契約期間が経過する前に更新手続きをしなければなりません。
契約期間が過ぎると、保険が期限切れとなります。期限切れは自賠責保険に加入した事実があると言っても、契約自体が無効となるので未加入と同じ状態です。
そのため、保険期限切れの車で公道を走行すると、自動車損害賠償保障法違反となります。法律違反なので罰則があり、未加入と同様の1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられことになるでしょう。
また、この状態で交通事故を起こし相手を死傷させてしまった場合は、自賠責保険に加入していても期限切れなので補償対象となりません。本来なら保険金で損害賠償をカバーできるところが、全く保険金が使えないので全て自己負担での賠償となってしまいます。
交通事故の被害者のケガの状態や亡くなったケースでは、損害賠償が億を超えることもあるなど莫大な金額が請求される場合もあります。
うっかり更新を忘れていると、万一の交通事故の際に自賠責保険が使えないという事態になりかねないので、必ず更新手続きを行うようにしましょう。
自賠責保険が期限切れだと車検も切れている可能性が高い
自賠責保険の保険契約期間が過ぎていると、車検切れになっているかもしれません。なぜなら自賠責保険は、一般的に車検時に更新手続きをするからです。
車検証の有効期限が切れている車は「無車検車」と呼ばれ、無車検車で公道を走行すると道路運送車両法違反となります。6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則、罰金が科されます。また、交通違反として違反点数は6点となり、免許停止の行政処分が科されることになるでしょう。
車検切れで自賠責保険も切れた状態では、さらに「無車検無保険車」となり、この状態で公道を走行すると2つの違反を同時に犯していることになります。
罰則に関しては刑法により、懲役は長いほうの1.5倍と2つの合計の短いほうを適用します。罰金に関しては2つの合計金額以下です。
つまり、無車検無保険運行の場合、1年6ヶ月以下の懲役もしくは80万円以下の罰金が科せられることになります。
道路交通法施工例により、違反点数の高い違反の点数のみが適用となります。そのため、無車検無保険運行でも違反点数は変わらず6点で、免許停止処分が下されることになるでしょう。
車検が切れた車で公道を走行すると法律違反となります。車検を受けようとすると、ディーラーや整備工場など車検依頼先まで車を運ばなければなりません。
いくら車検のためだと言っても、無車検車を運転して車検依頼先まで運ぶことはできないので注意しましょう。
車検切れの車は車検の継続検査を受けるまでは、無車検車となります。無車検車はそのまま公道を走行させることはできません。
継続検査のために整備工場やディーラーに運ぶには、レッカーを手配しなければならないと思う人もいるでしょう。確かに、レッカーで運搬してもらえば自分で運転しなくても済みますが、車検依頼先まで距離があると、その分運搬代もかさんでしまいます。
無車検車を車検依頼先まで運ぶ方法として考えられるのが、仮ナンバーを取得するという方法です。
通常の登録ナンバープレートを無効にする、いわゆるナンバーなしにして仮ナンバーを付けた車は、自賠責保険が必要なのか気になるところでしょう。
仮ナンバーを付けた車であっても、自賠責保険がないと公道を走行することはできません。そのため、継続検査を受ける前に自賠責保険の再加入手続きが必要です。
仮ナンバーの取得には自賠責保険の加入が条件となっています。さらに、車検を通すには短期間の自賠責保険に加入していなければなりません。
通常は、車検時に自賠責保険の購入手続きを一緒にしてもらえます。
登録抹消した車はナンバーがない
もう乗らないからと一度登録抹消した車は、ナンバープレートも返却しているはずなのでナンバーがない状態です。乗らない車でも廃車にせずそのまま保管して、再度乗りたいという人もいるでしょう。
保管期間が長いと、その間に車検の有効期限も切れてしまっている可能性が高いです。車検が切れていなくても、一度登録抹消した車の車検はその時点で無効となっているので注意が必要です。
登録を抹消した車を再び公道で走行させるには、そのままではナンバーがないので法律に違反します。その上、車検も切れているので再び使うには車検を受けなければなりません。
まず、車検を受けるための整備が必要となるので、車を整備工場まで移動させることなります。しかし、ナンバーがないのでいくら車検のためでもそのまま車を運転して移動させることはできません。
整備工場まで車を運転するなら、使用期間を限定した仮ナンバーを取得する必要があります。ナンバープレートに仮ナンバーを装着させれば、車検切れでも公道を走行させることができます。
仮ナンバーを取得するのは面倒だから、車検切れの車をレッカーで運んでもらうように依頼すればいいと思うかもしれませんが、レッカーも前輪だけを吊り上げた形になるので、後輪は道路に接した状態で運搬されます。そのため、後輪は公道を走行しているのと同じだとみなされてしまうのです。
結局、仮ナンバーが必要だということを覚えておきましょう。
登録抹消した車に再び乗るには、新規登録手続きを済ませ車検を受けなければなりません。新規登録を済ませても、車検をまだ受けてない状態だと無車検車となるので公道を走行するのは法律違反となります。
車検のためディーラーや整備工場に運ぶには、前述した通り仮ナンバーを取得するという手段があります。仮ナンバーを付ければ決められた期限のみ公道を走行することができるようになります。
登録抹消によるナンバーなしの車は、車検も無効であり自賠責保険も解約しているので無効です。仮ナンバーを取得し、車に取り付けて整備工場まで走行する際も自賠責保険は必要となります。
仮ナンバーで走行したとしても、事故を起こして相手を死傷させてしまえば、賠償責任を負わなければなりません。そのため、仮ナンバーを取得する前に自賠責保険の加入手続きも済ませておきましょう。
自賠責保険の加入手続きの方法
自賠責保険の加入手続きはとても簡単です。申請すれば即日加入手続きが完了します。
手続きは自賠責保険を扱う保険会社の支店や営業所で行います。カー用品店や車やバイクの販売店、修理工場やガソリンスタンドなど保険会社の代理店となっているところなら手続き可能です。
- 車検証
- 古い自賠責保険証明書
車検のない原付や250㏄以下のバイクの場合は必要なものが異なります。
- 標識交付証明書
- 古い自賠責保険証明書
- 軽自動車届出済証
- 古い自賠責保険証明書
自賠責保険は公道を走行する全ての自動車が加入対象となっています。車はもちろんのこと、原付のような小型バイクも加入しなければいけません。
自賠責保険の保険料は沖縄や離島などの一部地域を除いては、全国一律で決まっています。自賠責保険を扱う保険会社はいくつかありますが、どの保険会社を選んでも保険料は同じです。
車の安全性能の向上による交通事故の減少などの影響で、保険利率は2020年4月から改定され、それ以前よりも安くなっています。
1ヶ月から加入でき、月単位で保険料が設定されていますが、自賠責保険は車購入時に加入し、車検時に更新されることが多いので、3年もしくは2年間の保険料を参考までに紹介しましょう。
24ヶ月で21140円、36ヶ月で28910円です。
24ヶ月で21550円、36ヶ月で29520円です。
24ヶ月で9680円、36ヶ月で11900円です。
原付や小型バイクは車検がないので、自分で更新手続きをしなければいけません。そして、月単位ではなく年単位での契約となります。
12ヶ月で7670円、24ヶ月で10160円です。
12ヶ月で7060円、24ヶ月で8950円です。
車検のない原付や250㏄以下のバイクは、損害保険会社の支店やバイクの販売店、修理工場に出向く必要はありません。近所のコンビニで加入手続きができます。
セブンイレブンやローソン、ミニストップとファミリーマートで対応しています。
セブンイレブンはネットで事前登録し、店頭のマルチコピー機で必要事項を入力します。レジで保険料を支払ってステッカーや保険のしおり、払込票を受け取ってから、再びマルチコピー機で自賠責保険証明書を印刷すれば完了です。
ローソンやミニストップは店頭のLoppi、ファミリーマートはFamiポートで操作を行います。セブンイレブン以外のコンビニは保険証明書はレジで発行してもらえます。レジで受け取るのを忘れたり、店頭の機器に必要なものを置き忘れることもあるので注意しましょう。
それぞれのコンビニで自賠責保険を取り扱っている保険会社は違いますが、保険料は一律なのでどこで手続きしても損することはありません。
仮ナンバーの対象車両と申請期間
仮ナンバーは主に、車検切れの車が継続検査を受けるために一時的に発行される仮のナンバーです。他にも新車が新規登録や新規検査を受ける際や、ナンバープレートが盗まれて再登録手続きをする際にも発行されます。
- 軽自動車
- 普通車
- ブルドーザーやロードローラーなどの大型特殊車
- 250㏄を超える二輪車
- 250㏄以下の二輪車や小型特殊自動車
- 原付
仮ナンバーの申請期間は、仮ナンバーを使用する前日もしくは当日のみとなります。仮ナンバー申請時が官公庁の閉庁日の場合は、その前日から申請が可能です。
仮ナンバー申請に必要な書類や手数料
仮ナンバー発行には書類が必要です。
まず、仮ナンバー申請の前に自賠責保険が切れているなら加入手続きを済ませ、発行された自賠責保険証明書を持参します。
更新期限切れの車検証でもよいので、自動車を確認する書類も必要です。
さらに運転免許証などの申請者の身分証明書も必要で、これは申請者の氏名と住所が記載されているものでなければなりません。
あとは保険会社の窓口などに置いてある自動車臨時運行許可申請書を記入する必要があります。この書類は申請者の氏名や住所、連絡先の他に、車名や形状、車台番号に運行の目的、運行の経路や運行期間などを記載しなければならないので、すぐに記載できるように必要な項目をメモして持っていくと便利です。
申請の手数料は車1台につき750円となっています。
仮ナンバーは、一時的に車検切れなどの車が公道を走行してもよいと許可された、仮のナンバーに過ぎません。そのため有効期限が決まっており、期限が来たら返却する必要があります。
なぜなら、特定の運行のみに使用されることを前提に発行されているからです。あくまでも仮に発行されただけのナンバーなので、何日も使用するのは目的に反しています。
道路運送車両法では、仮ナンバーの有効期限は5日間を超えてはならないと規定されています。これは全てのケースで5日間というわけではなく、あくまで最長で5日間という意味です。
つまり、運航の目的や経路などで日数がかかってしまうのはやむを得ないが、それ以外は5日間を超えて使用してはいけないということになります。
車検が完了しても便利だからといつまでも付けて公道を走行せずに、用が済んだらすぐに返却するようにしましょう。
仮ナンバー制度というのは、本来であれば公道を走行することを法律で認められていない、車検切れや新規に車検を受ける未登録の車を一時的に走行させるための緊急の措置です。そのため、仮ナンバーを付けて走行する車には走行ルートに制限が設けられており、予め走行ルートを決めて申請しなければならないことになっています。
申請したルート以外の道を走行したり、目的地以外の場所まで走行することはできません。あくまでも車検や整備など正当な理由に基づき、特例的に走行することが認められているというだけです。
決められたルートを外れて運転し、交通事故を起こしてしまったらルート外の運転をとがめられる可能性があります。自賠責保険に加入していれば保険金は出ますが、決められたルートを走行するようにしましょう。
また、運航経路は目的地までの最短ルートでなければいけません。出発地や経由地、目的地のいずれかに申請した市町村の住所が含まれていなければならないことも決まっています。
様々な制限があることを覚えておいてください。
仮ナンバーの使用は1回のみです。車検を受ける際に仮ナンバーを発行してもらい、車を移動させても検査に通らない場合もあります。その際は再整備を行い、再検査を行うことになります。
「まだ期限があるから、そのまま仮ナンバーを付けていればいい」と思う人もいるかもしれませんが、返却なしで使い続けることはできないのです。
これは、仮ナンバーを付けて通過するルートが予め決められていることにも関係しています。再検査の前に再整備を行うことになれば、車検場から整備工場まで車を移動させなければいけません。
予め提出したルートとは別のルートを走行することになってしまいます。そのため、再検査の前に一度返却して、再度仮ナンバーを取得する必要があります。
仮ナンバーの有効期限である5日を超える前に、申請した同じ窓口に仮ナンバーを返却しなければなりません。もし5日の有効期限を超えてしまったら、道路運送車両法違反となります。
その際は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることもあるので注意が必要です。
仮ナンバーを付けて公道を走行している最中に、仮ナンバープレートが外れて紛失してしまうケースもあります。探しても見つからない場合は弁償しなければなりません。
弁償金は地域によって異なりますが、約1500円~2000円位だとされています。紛失の際はすぐに警察署や交番で紛失届を受理してもらい、受理番号をメモしておいてください。
それからすぐに仮ナンバーを申請した役所に出向いて、亡失届を出します。その際は、紛失届を出した警察署や届け出年月日、紛失届の受理番号などが必要です。
盗難にあった場合も同様に警察署に被害届を出してから、役所に連絡しましょう。盗難の際は弁済は免除となります。
発行された仮ナンバーは申請者自身が車に取り付けることになります。
基本的には、本来車の前後に取り付けているナンバープレートと同じ位置に取り付けなければなりません。
街中で車内のダッシュボードの上に仮ナンバーを置いてフロントガラス越しに見えるようにして走行している車を見かけることもありますが、これは間違いです。この置き方は、道路運送車両法に違反することになります。
法律では取り付け方について明確に規定はないので、仮ナンバーを申請した役所で取り付け方を確認しておくとよいでしょう。走行中に外れて紛失すると大変なので、ねじなどでしっかり固定してください。
また、ナンパープレートと一緒に臨時運行許可証という書類も発行されます。臨時運行許可証は仮ナンバーを正式に取得し、使用していることを特別に許可されたという証明になります。そのため、ダッシュボードの上に置いて、外から見えるようにしておきましょう。
自賠責保険の名義変更は必要あるの?手続きの仕方も教えます!
公道を走行するには自賠責保険加入を忘れずに
公道を走行する車は自賠責保険に加入しなければなりません。法律でも規定されており、未加入や期限切れは法律違反となり罰則が科されるので注意が必要です。
交通事故を起こした際には保険金も下りず、補償もないのでかなり経済的な負担が重くなると予想されます。車検切れの車が継続検査を受けるために仮ナンバーを取得する際も、自賠責保険の加入が必要条件となります。
仮ナンバーを申請するなら自賠責保険に加入しなければならないので、自賠責保険なしでの公道を走行することはないでしょう。