車が不要となりこの先乗らなくなった時や、交通事故などで車が修理不能となったら廃車となります。そうなると、車の登録を抹消する手続きを行うのが一般的です。
廃車手続き後、それまで加入していた自賠責保険は、保険期間が残っていれば解約手続きを行うことで前払いした保険料が返金される場合もあります。
そこで、自賠責保険の解約手続きの手順や必要な書類、手続きできる場所や返戻金はいくら受け取れるのかなどについて詳しく説明していきます。
廃車とは?
今まで乗っていた車が不要となったら、廃車手続きを行うことになります。車検が切れてそのまま放置したり、車体を解体処分しても廃車にはなりません。
廃車とは、公道を走行できなくするために車の登録情報を消すことです。登録抹消には色々な種類があります。
交通事故や災害で走行不能となり、車としての価値がなくなり解体、処分される場合は永久登録抹消を行います。まずは予めナンバープレートを外して車の解体業者に車体を解体してもらいます。
必要な書類を持参して運輸支局へ出向き、ナンバープレートを返却して書類を提出し、税金の還付手続きを行えば永久抹消手続きが完了です。
海外出張などで長期間車を使うことがない場合でも、自動車税などの納税義務は発生します。その間、税金の支払いなどを避けるために、一時的に車の登録を抹消することが可能です。
自分でナンバープレートを取り外した後に、必要な書類とナンバープレートを持って運輸支局へ出向けば一時登録抹消手続きをすることできます。そこでナンバープレートを返却し書類を提出します。
登録識別情報通知書を受け取り、税金の還付手続きを済ませば一時抹消登録は完了です。そして、一時登録抹消後に車が不要となった場合は、永久登録抹消を行うこともできます。
車を廃車にすると決断し、登録抹消手続きが終われば自賠責保険の解約手続きができます。
自賠責保険は公道を走行するすべての車が加入しなければならない自動車保険です。自動車損害賠償法という法律で加入が規定されており、自賠責保険未加入や期限切れの車は法律違反となります。その場合、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です。さらに、道路交通法違反で検挙され、免許停止の行政処分が下されます。
自賠責保険は運転している人ではなく、車に付随する保険であり、車の車台番号で識別されています。そのため、自賠責保険は車を廃車にし、登録を抹消した場合のみ解約が許されているのです。
自賠責保険は車やバイクの購入時に加入手続きを行います。保険期間と車検までの期間は大体合わせてあるので、車検時に一緒に更新手続きを行うことになっています。
次回の車検までの2年分を予め前払いしているということです。ただし、その間に車やバイクを廃車、登録を抹消すれば自賠責保険も不要となるでしょう。
既に前払いしているため保険期間が残っているのに解約となれば、結果的に保険料を払いすぎていることになります。そのため、自賠責保険の解約手続きを行えば、前払いした分の保険料は返還される仕組みになっています。
廃車時の自賠責保険の返戻金の金額はいくら?
自賠責保険を解約した際、保険期間がまだ残っていれば既に前払いした保険料が返還されることがあります。
自賠責保険の返戻金の金額は、どこの保険会社でも一律となっています。それは、自賠責保険の保険料が一部地域を除いて、車種ごとに全国一律で金額が決まっているからです。
返戻金の計算は残っている保険契約期間の月割計算となります。日割りではないので保険期間が残り1ヶ月に満たない場合は、基本的に返戻金はありません。そのため、単純に最初に支払った保険料を月割りした計算で算出される返戻金よりは少なくなります。
自賠責保険の返戻金の計算方法
自賠責保険の保険料は、2020年4月1日から以前よりやや安くなっています。
2020年4月1日以降に自賠責保険に加入する、もしくは更新した場合の返戻金は、次の計算式で金額を求めることができます。
例えば、残りの保険期間が1年6ヶ月と4日だった場合を見てみましょう。日数の4日は切り捨てになります。
また、2020年3月31日以前は保険料がやや高いので、返戻金の計算式は以下になります。
この計算式で残りの保険期間が1年6ヶ月と4日だった場合を見てみましょう。同じように4日は切り捨てます。
自賠責保険は数年ごとに料金が改訂されますし、住んでいる地域によっても料金が違います。また、諸経費が差し引かれるため、単純に払った自賠責保険料の月割計算で算出された額にはなりません。
あくまで目安として参考にしてください。
自賠責保険の返戻金は、通常自賠責保険の解約に必要な書類が正式に受理された日から早ければ1週間、遅くても2週間位で指定口座に振り込まれます。
自賠責保険は実際に解約手続きをした日が起算日となり、返戻金の対象となる残った保険期間がカウントされます。廃車業者や車買取業者などに解約手続きを依頼した時点ではまだ手続きが済んでおらず、解約手続きの起算日とはならないので注意しましょう。
また、返戻金の振り込みが2週間経過しても確認できない場合は、一度保険会社に連絡して確認してみることをおすすめします。
自賠責保険の解約手続きから、正式に解約が受理されるまでの期間によっては、返戻金がない場合もあるので注意が必要です。
例えば、廃車業者に登録抹消と自賠責保険解約の手続きを依頼したとします。依頼した時点で、自賠責保険の保険期間がまだ1ヶ月以上残っていれば、当然返戻金があると思うでしょう。
しかし、登録抹消手続きが完了しなければ、基本的に自賠責保険は解約できません。書類不備などで登録抹消手続きが遅れると、その分自賠責保険の解約手続きも遅くなります。
結果的に、自賠責保険の解約日が保険期間の残り1ヶ月を切ってしまう可能性があります。そうなると、自賠責保険の返戻金は月割りでしか計算できないので、解約手続きをしても結局返戻金を受け取れないことになってしまうかもしれません。
このように手続きに時差が生じると返戻金が減ったり、対象外となったりすることもあります。
廃車時の自賠責保険解約の手続き
自賠責保険の解約手続きを自分で行う場合は、加入している保険会社の営業所窓口や支店に必要書類を持って出向きます。自賠責保険証明書に記載された保険会社の取次店(代理店)でも手続きを受け付けています。
ただし、取次店から保険会社へ書類を送るので、タイムラグが生じる点に注意が必要です。直接出向けない場合は、電話でも解約を受け付けています。
その際は後に必要書類を郵送することになります。郵送した書類が保険会社に到着し、受理された日が解約日になるので多少時間を要するでしょう。
例えば残りの保険期間が1年3日あるとして、郵送や取次店を経由すると3、4日経過し、残りの保険期間が11ヶ月と30日になってしまえば、1ヶ月分の保険料を損することにもなります。返戻金が少しでも欲しいなら、直接保険会社営業所の窓口で手続きしてもらうことをおすすめします。
自賠責保険解約に必要な書類・軽自動車の場合
自賠責保険の解約に必要な書類を見ていきます。
保険会社の窓口に置いてあるので直接出向く場合はその場で記載できます。郵送の場合は電話で依頼して送ってもらってください。
運転免許証やパスポート、健康保険証などを持参します。
以下のいずれか一通が必要です。
・解除事由証明書
・検査記録事項等証明書
・自動車重量税還付申請書付表1
・自動車検査証返納証明書
・軽自動車検査証返納確認書
・輸出予定届出証明書
車の廃車手続きの種類によって受け取る書類が違うので、どの書類があるかを確認しておきましょう。
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自賠責保険解約に必要な書類・普通車の場合

自賠責保険承認請求書は保険会社の窓口に置いてあるので、直接出向く場合はその場で記入できます。郵送での手続きを希望するなら、事前に送ってもらうように依頼しましょう。
本人確認書類は運転免許証やパスポート、健康保険証などです。
以下のいずれか一通を準備しましょう。
・解除事由証明書
・登録事項等証明書
・自動車重量税還付申請書付表1
・輸出抹消仮登録証明書
・一時抹消登録証明書
・登録識別情報等通知書
・輸出予定届出証明書
廃車確認書類は、抹消登録の種類によって受け取る書類も違ってくるので、廃車手続きをした際に確認しておくと良いでしょう。
自賠責保険証明書が紛失していた場合
自賠責保険は加入、更新すると車台番号や保険期間などが記載された自賠責保険証明書が発行されます。
自賠責保険証明書は、法律で規定されているため、車に携帯しなければなりません。もし不携帯だと、30万円以下の罰金に処せられてしまいます。
通常は車検証と一緒に車内に保管されていますが、廃車が決まり自賠責保険を解約しようとして、紛失に気付くというケースもあります。保険期間が1ヶ月未満なら解約しても返戻金はないので、特に何もしなくても問題はありません。
ただし、保険期間が長く残っており、返戻金を請求したい場合は保険会社に問い合わせて再発行してもらう必要があります。どこの保険会社か分からない、もしくは残存保険期間を調べたい場合は、車を購入した販売店や車検を依頼する整備工場、ディーラーなどに問い合わせてみましょう。
交通事故で廃車にするケース
車が不要となった時以外にも、交通事故で車がひどく損傷して廃車にするケースもあります。走行不能になったとしても、修理すればまだ乗れる可能性は残されています。
新車で購入してまだ日が浅い場合、廃車にするのはもったいないと感じてしまうかもしれません。また大事に乗ってきて愛着のある車だと手放すのが惜しいと感じる人もいるでしょう。
車の損傷の程度によっては、修理しても以前と同じ状態で乗るのは難しい場合もあります。見た目にはさほど損傷がひどくないと思われても、車の走行性能に関係するフレームが大きく損傷している場合は問題です。
なぜなら、フレームが損傷している場合は修理しても安全に走行できるかどうか分からないからです。修理代がかなり高額になった場合は、保険でカバーできるかにも注目してください。
修理するより乗り換えたほうがお得になる場合もあるので、慎重に判断することが大事です。
交通事故で車が激しく破損した場合、廃車にするかどうか迷うところです。例えば購入してから半年位の新車の場合、廃車にしてしまうのは惜しいと思うかもしれません。
逆に長年乗ってきた車を手放すのは寂しく感じる人もいるでしょう。どうにか修理して乗れるなら、廃車にしなくても良いかもしれません。
逆にある程度の期間を乗ったし、次に乗りたい車があるなら乗り換えを考えるのも一つの手です。購入してからの年数や走行距離、珍しい車種か、車への愛着はどの位あるかなども考慮してみてください。
ただし、修理が難しく元の性能を取り戻せるか分からないと、修理業者に判断される場合もあります。高額な修理費をかけても、車が元通りにならないなら修理費が無駄になってしまうリスクも高いです。
そういった場合は廃車にするほうが賢明だと言えます。
車がかなり破損した状態でも修理ができると分かったら、まずは修理代がいくらになるか業者に見積もりを出してもらいましょう。修理にかなりの費用がかかるなら、廃車にして修理代を次の車を購入する代金に充てたほうがお得な場合もあります。
車の修理費用は修理業者によってある程度差が生じます。一般的にディーラーは人件費などが高くつくので、修理費はやや高い傾向です。ディーラーも含めて、複数の修理業者に修理の見積もりを出してもらうと費用を比較しやすいと言えます。
また任意の自動車保険から、どの程度修理費用が出るかもポイントになります。任意保険で受け取れる修理費用は、車の時価相当額以下になっているのが一般的です。車は数年乗ると中古車としての価値が、新車の時よりも下がります。
例えば200万円で購入した車の時価が現在100万円なら、修理費用の上限は100万円までで超えた部分は自腹で支払うことになります。保険金の金額がいくらになりそうかという点も、保険屋さんに確認が必要です。
修理費用や保険でいくらカバーできるかなどをトータルで考えて、廃車にするか修理を選ぶかを業者や保険屋さんと相談して慎重に判断してください。
修理代と車を買い替える費用を比較し、修理代が安かったからといってすぐに修理に出すのはリスクが伴います。交通事故などで破損が激しい車は修理して見た目はキレイに修復できたとしても、短期間で故障する可能性があります。
特に車の骨格部分にあたるフレーム、骨格部分は車を走行させる上でとても重要な部位です。フレームに大きな損傷が生じると、修理しても走行中に車全体のバランスが悪くなり、安全な走行が難しくなります。
修理しても、依然と同じ性能や乗りやすさを保てずに不備が起こる可能性があることも、頭に入れておかなければなりません。修理後の故障リスクに関しても修理前に業者に相談したほうが良いでしょう。
交通事故で車を廃車にし、新たに購入して乗り換えるなら自賠責保険も解約するのが一般的です。
新たに購入した車に対し、再び自賠責保険に加入するという手続きを取ります。ただ、自賠責保険の更新をしたばかり、まだ新車で購入して間がなく加入したばかりというケースもあるでしょう。そうなると保険期間がかなり残っているので、そのまま解約するのが惜しいと思うかもしれません。
新たに乗り換えた車にそのまま、廃車にした車の自賠責保険を車両だけ入れ替えて継続させることは可能です。しかし、車両入れ替えには条件がいくつかあり、その条件をクリアする必要があります。
また早めに廃車手続きを行い、自賠責保険を解約すれば返戻金が還付されるので、全く損をするというわけではありません。一度解約してから加入し直すほうが、手続きもスムーズに進みます。
自賠責保険は、「車を廃車にして、もう乗らない!」という場合にのみ、残った保険期間分の返戻金が還付されると思われがちですが、廃車後に新たに車を購入し、乗り換える場合でも廃車手続きが完了したことが証明できれば返戻金は還付されます。
解約後の自賠責保険の保険期間が1ヶ月以上残っていることが返戻金還付の条件となるので、きちんと確認しておいてください。
ただし、廃車にするにも諸費用がかかる場合があります。レッカーで解体工場まで運搬する費用や、解体費用が約1~2万円位かかります。
車を解体した際に発生する鉄くずなどの処理代はリサイクル料金として、車を購入する際に予め支払っているのでかかりません。
自賠責保険の返戻金は、廃車にかかる諸費用に相殺されることが多いようです。そのため、最終的には廃車の諸費用から返戻金を差し引いた額が返金されることになるでしょう。
返戻金が少なく廃車にかかる諸費用に不足する場合は、逆に支払いを請求されることになるかもしれません。廃車買取業者によっては事故で大破した車も買い取り、運搬費用などが無料の所もあるので費用を節約するなら探してみる価値はあると言えます。
車を廃車にして、買い替える場合に加入していた自賠責保険の保険期間がまだ残っている場合は、そのまま次の車に引き継ぐことができます。解約しないで、車両情報のみを入れ替えるという方法です。
ただし、現実には条件がいくつかあって、クリアしないと入れ替えることはできません。
廃車にする車と買い替える車が軽自動車や自家用車など車両区分が同じであり、名義も同一で廃車手続きが完了していること
新たな車の車検の有効期限よりも、廃車にする車の有効期限が長いこと
新車に乗り換える場合、購入から初回までの車検は3年となります。車は購入時に自賠責保険に加入し、車検時に更新するのが一般的となっています。そうなると車検が切れる頃に、自賠責保険も切れるように期間を設定してあるはずです。
ただ、通常は自賠責保険のほうが1ヶ月ほど余裕を持たせて長い保険期間を設定しています。そうなると、自賠責保険に加入もしくは更新してから1ヶ月以内に車を廃車にしてしまったとすれば、この条件を満たしている可能性はあります。そうでなければ、現実的に自賠責保険入れ替えの条件をすべて満たすのはかなり厳しいです。
実際には自賠責保険を一旦解約し、再び加入し直すケースのほうが多いのはそのためです。
業者に依頼すれば手間もかからず、スムーズに手続きを終えることができます。
自賠責保険の解約に関するQ&A
自賠責保険の解約についてよくある質問をQ&A形式で紹介していきます。
それでも分からない場合は、自賠責保険を扱っている保険会社に電話で加入の有無を確認してみるのも一つの手です。保険会社の数はさほど多くないので、連絡して廃車後に証明書紛失に気付いたが保険を解約したい旨を伝え、登録番号から加入の有無を調べてもらいましょう。
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