事故や故障で車が動かなくなった場合、レッカーでの移動が必要になります。車に乗る際に加入が必須となっている自賠責保険の補償内容には、このレッカー移動が含まれているのでしょうか?
また、レッカーの移動はいろいろな業者に依頼することができます。どこに頼めるのか、また費用の相場はどれくらいなのか紹介します。
この記事の内容を知っておけば、急な事故や故障でレッカー移動が必要になった時でも落ち着いて対処することができるでしょう。
そもそも自賠責保険とは?
自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法に基づき、原付バイク(原動機付自転車)を含んだ全ての自動車に加入が義務付けられている保険です。そして、交通事故の賠償による加害者の経済的負担を補うとともに、被害者を救済するものです。
自賠責保険には種類が2つあります。
①損害保険会社で契約する「自動車損害賠償責任保険」
②共済組合で加入する「自動車損害賠償責任共済」
もし自賠責保険に加入せずに車を走行した場合は、1年以下の懲役または500,000円以下の罰金が科せられます。自賠責保険の証明書を持っていない場合も、300,000円以下の罰金です。 さらに、自賠責保険未加入での運転は交通違反のため違反点数6点となり、免許停止処分となります。
基本的には車を購入する際に自賠責保険に加入します。加入期間は最短で1ヶ月、最長で37ヶ月です。通常、新車の場合には次の車検までの期間となる37ヶ月、2回目以降は車検ごとの24ヶ月または25ヶ月で契約します。
自賠責保険の費用
まずは普通自動車と軽自動車の自賠責保険の費用を見ていきましょう。
37ヶ月:27,770円
36ヶ月:27,180円
25ヶ月:20,610円
24ヶ月:20,010円
13ヶ月:13,310円
12ヶ月:12,700円
37ヶ月:27,330円
36ヶ月:26,760円
25ヶ月:20,310円
24ヶ月:19,730円
13ヶ月:13,150円
12ヶ月:12,550円
※沖縄県や離島など一部の地域は価格が異なるため注意してください。
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自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険は加入が義務であるのに対し、任意保険は加入するかどうかは自分で選ぶことができます。
また、補償の内容にもかなりの差があります。大まかには以下の通りです。
被害者への補償
自賠責保険:傷害は120万円、死亡は3,000万円、後遺障害は4,000万円まで
任意保険:自賠責保険で補償されない部分を補償
自賠責保険:補償なし
任意保険:対物補償あり
加入者本人への補償
自賠責保険:補償なし
任意保険:人身傷害、搭乗者の傷害など補償あり
自賠責保険:補償なし
任意保険:車両補償あり
基本的に自賠責保険は被害者への対人賠償のためのものです。そのため、交通事故を自分が起こした場合や巻き込まれた場合は補償が足りない可能性が高いでしょう。
レッカー移動が必要になった場合に使用できる保険
車をレッカーで移動する必要が生じた場合、自賠責保険は使用できるのか疑問に思っている方もいるかもしれません。最初に結論から言うと、自賠責保険でレッカーを使用することはできません。
自賠責保険と任意保険の違いで見てきた通り、自賠責保険は対人補償であるため、レッカー移動は対象外となっています。任意保険に加入していれば、レッカー移動もある程度無料で行ってもらえるケースが多いでしょう。
車をレッカー移動しなければならない場面とは?
車をやむなくレッカー移動しなければならないのはどのような場面なのでしょう?
主に3つのケースが考えられますので、ひとつずつ見ていきましょう。
車をレッカーで移動する必要がある場面として真っ先に考えられるのは、車の故障です。走行中の事故による損傷、急なエンジンのトラブルやタイヤのパンク、飛び石による前が見えないほどのフロントガラスの損傷などが考えられます。
このように故障の状態がひどく、車を運転して修理工場に持っていくことが困難な場合に、レッカーで前輪または後輪を持ち上げて固定した後、けん引しつつ移動を行うことになります。
故障したことが分かった場合、無理に車を走らせることは避けましょう。無理をして事故を起こしたのでは元も子もありません。そのため、レッカーを依頼するのが安心です。
次にレッカーでの車移動が必要となるケースは車検切れです。
車検が切れている状態で公道を走ることは、道路運送車両法により禁止されています。違反した場合には6ヶ月以下の懲役または300,000円以下の罰金、また違反点数6点、さらに30日間の免許停止処分です。
注意しなければならないのは、車検切れの車をレッカー移動しようとして、前輪または後輪を公道で転がすことも違反となってしまう点です。
車検切れの車を移動する場合には、セーフティローダー車などに積んで車のタイヤが車道に触れないようにするか、輸送用に仮のナンバープレートを発行してもらった上で、レッカー移動することになります。
車検切れの車をレッカー移動する場合、仮ナンバーを取得することが必要となります。仮ナンバーの正式名称は「自動車臨時運行許可番号標」です。これを取得することで最長5日間は公道を走ることができるようになります。
ただし、仮ナンバーは自賠責保険に加入していなければ取得ができません。もし自賠責保険が切れている場合には、自賠責保険再加入後に仮ナンバーの発行手続きをし、その後レッカー移動となります。
レッカー移動完了後、仮ナンバーは速やかに返却しましょう。
自賠責保険の再加入と仮ナンバーの発行で、必要な書類や手続き場所は以下になります。
以前加入していた保険会社で申込書に記入し再加入手続きを行います。
必要なものは、自動車検査証(車検証)、自動車損害賠償責任保険証明書(自賠責保険証明書)、保険料です。
車検証と自賠責保険証明書は、期限が切れているもので問題ありません。
仮ナンバーの発行申請は自分の住んでいる市区町村の窓口で行います。
必要なものは、自動車検査証、自動車損害賠償責任保険証明書、身分証明書、自動車臨時運行許可申請書、認印です。また、1車両につき750円程度の手数料もかかります。
自動車損害賠償責任保険証明書は、仮ナンバーを使用する期間が含まれている証明書であることと、原本であることが必要です。
身分証明書はマイナンバーカードや運転免許証など、現住所と氏名が確認できるものになります。
自動車臨時運行許可申請書は、市区町村のホームページや窓口から入手できます。申請者や車の運行経路、期間を記載する申請書です。
廃車にする際も「車が動かない」「車検が切れている」などの理由でレッカー移動が必要になる場合があります。
車検が切れている場合には、前述した通りタイヤを公道で転がしての移動は禁止されているので注意しましょう。
また、廃車にする場合のレッカー移動は、任意保険でも対応してくれないケースがあります。任意保険のロードサービスの対象になるのは、基本的に走行中に動けなくなった車です。保険会社によって対応は異なりますので、事前に確認することをおすすめします。
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レッカーの依頼先とは?
レッカーの移動を対応してくれる業者は複数あります。レッカー移動が必要となる状況に応じて、依頼先を選ぶことができるでしょう。下記でいくつかご紹介します。
JAFとは、英語表記の「Japan Automobile Federation」から頭文字をとっており、正式名称は「日本自動車連盟」です。車の所有者や使用者の権益を保護する目的で様々な活動を行っています。
車に乗っている多くの方が会員となっており、会員であれば15kmまでのレッカー移動は無料です。入会金2,000円、年会費は4,000円となっています。
会員でなくてもJAFにレッカー移動を依頼することは可能です。ただし、費用が発生しますので注意しましょう。
任意保険に入っている場合、自分の加入している保険会社にレッカー移動を依頼することができます。
ある程度無料で対応してくれますが、保険会社によって無料の範囲は異なりますので、自分が加入している保険会社のホームページを確認しておきましょう。
なお、通常は保険を使用すると等級が下がってしまいますが、ロードサービスはその要件に含まれていないので安心して利用することができます。ただし、保険会社によっては年間の使用回数制限が設定されています。
また、ロードサービスを受けられるのは事故に遭ったり故障したりした車が任意保険の契約の対象となっている場合に限ります。契約対象外の車については対応してくれませんので、依頼する前に契約内容を確認してください。
さらに、廃車工場への移動の場合にはロードサービスを利用できないケースもありますので、この場合も保険会社に聞いておきましょう。
レンタカーやコインパーキングで名を知られている「タイムズ」のサービスです。
タイムズクラブ+タイムズロードサービスに入会すると、15kmまで無料のレッカー移動がサービス内容に含まれてきます。通常は入会金330円(税込)+月会費220円(税込)が必要です。
動かない車を中古車買取業者や廃車買取業者に売る場合には、売り先の業者にレッカー移動を依頼することも可能です。ただし、レッカー代は業者によって無料のところもあれば有料のところもあるので気を付けましょう。
また、無料と謳われていても、実は査定額から引かれているケースもあります。事前に業者にレッカーの費用がかかるのか確認しておくことをおすすめします。
また、レッカー代が諸経費などに含まれていないかどうか、見積書で確認するのも忘れないようにしましょう。
交通事故で二次被害が予想されるなど、すぐにレッカーで車を移動させなければならない場合、警察がレッカー移動の手配をすることがあります。
しかし、この場合は車を運転していた人が代金を支払わなければなりません。警察は提携業者に依頼しますので、自分で手配するより高額な費用が発生する可能性があります。
ただし、交通事故に関する費用として、レッカーで移動した費用も保険が下りることもあります。そのため、警察が手配する場合でもレッカー代の領収書、レッカー利用を証明できる書類をしっかり保管しておくことが大切です。
レッカー移動にかかる費用の内訳とは?
自腹でレッカー移動を行わなければいけない場合、費用はどれくらいかかるのでしょう?大まかな費用の内訳を説明します。
レッカー移動の基本料金は業者によって変わってきます。
故障した車であれば8,000円~10,000円程度、事故で全く動かせない場合には10,000円~15,000円程度となることが多いでしょう。
業者の作業がどれくらいになるのかにもよりますので、基本料金にはそのぶん差が出ると言えます。
動かない車のクレーン車による引き上げも必要となる場合には、基本料金以外にも別途で費用が発生します。
通常は1時間ほどの作業で2,000円程度です。しかし、車が大型であったり水没していたりすると特殊なクレーン車が必要になるため、10,000円を超えるケースもあります。
レッカー移動を行う場所や時間帯によっても費用は変わってきます。高速道路や20時以降の夜間になると、費用が割増しされます。
高速道路でしかも深夜である場合、通常の費用より50%ほど高くなってしまうこともあるでしょう。
レッカー移動に伴う費用は、走行した距離によっても異なってきます。
通常は10km単位で費用が変わり、10kmで5,000円ほど、20kmで10,000円ほどです。
たまたまレッカー移動が必要になった場所の近くに整備工場があれば幸運ですが、そのようなケースは稀であるため、だいたいは10kmを超えることを覚悟しましょう。
JAFの場合、会員は15kmまで無料ですが、15km以上は1km超過ごとに730円の費用が発生します。
各保険会社のロードサービスの無料距離は異なりますので、距離を超過した場合の費用は調べておきましょう。
JAFの非会員でレッカー移動を依頼する場合の費用の参考です。昼間と夜間では、かなり差がでることが分かります。
・基本料金:8,380円(昼間AM8時~PM8時)、10,480円(夜間PM8時~AM8時)
・作業料金:4,750円
・けん引料金:1kmで730円
※レッカー車で4輪吊り上げが必要な場合は+9,500円です。
・基本料金:16,770円(昼間AM8時~PM8時)、19,900円(夜間PM8時~AM8時)
・作業料金:4,750円
・けん引料金:1kmで730円
一般道、高速道路どちらも、作業内容によっては追加費用が発生する可能性があります。
車検と自賠責保険の関係
車検と自賠責保険の関係は何なのでしょう?
車検は道路運送車両法によって車の所有者に受けることが義務付けられています。一方、自賠責保険は自動車損害賠償保障法により加入が義務付けられています。
法律は違うとはいえ、どちらも義務となっているため、車検の際に自賠責保険も併せて車の所有者が法律を遵守しているかどうか確認します。
また前述した通り、車検切れの車をレッカー移動するために仮ナンバーを発行するためにも、自賠責保険は必要です。このように車検と自賠責保険は切っても切り離せない関係と言えるでしょう。
また、車検の有効期限は満了日いっぱいですが、自賠責保険の有効期限は満了日のお昼12時までです。満了日が同日の場合、自賠責保険のほうが先に切れてしまいます。そのため、一般的には車検の有効期限より長めに自賠責保険に加入します。
自賠責保険だけでは心もとないと言える理由
任意保険は自賠責保険とは違い、義務ではありませんが、加入しておいたほうが良いと言える理由があります。
自分が事故を起こしてしまう可能性、他人の起こした事故に巻き込まれる可能性は、車を運転する以上確実にないとは言い切れません。
もし自分が事故を起こしてしまった場合、自賠責保険では自分や車の補償は対象外です。さらに被害者への補償にも上限があります。上限を超えた場合には自分で負担しなければならず、経済的に重くのしかかることになるでしょう。
万が一に備えて、任意保険に入っておくことは自分と家族の生活を守るのに役立ちます。とはいえ、お金のかかることではありますので、保険会社を選ぶ際には相見積もりをとる、割引を利用するなどで費用を抑えることも検討しましょう。